ドラゴンクエストⅢ~それは、また別の伝説~   作:ルーラー

4 / 10
第四話 絆のかたち(後編)

○リザサイド

 

 アリアハンの貧民街(ひんみんがい)

 ここはその名のとおり、アリアハンに住む人たちの中で特に貧しい人たちが住んでいるところだ。

 だからなのだろう。貧民街に入ったとほぼ同時に、もの欲しそうな視線がわたしに集中した。

 

 ここには昔、アレルと一度だけ一緒に来たことがある。そして、そのときにわたしは理解した。ここに住んでいる人間になにかを恵むようなことは、基本、しちゃいけない、と。

 別に法律で禁じられているわけじゃない。蔑んでいるつもりもない。ただ、恵まれた人間が不幸な目に遭うからだ。

 恵んでもらった人間は、大抵、恵んでもらえなかったここの人間から妬まれ、下手をすると恵んでもらったものを手放すまでリンチを受ける。たとえ恵んでもらったそれが一ゴールドでも、パンの一欠片であっても。

 だから、誰も貧民街の住人にはなにかを恵むことは出来ないし、しない。とにかく、しちゃいけない。

 

 だから、わたしが『その少年』を見つけたとき、一瞬ながら判断に困ってしまったのは、仕方のないことといえるだろう。

 

「う、うう……」

 

 彼はボロボロだった。年の頃は十四、五歳。髪は黒。――もしかして……。

 

「――あなた、もしかしてモハレ?」

 

 わたしはまず、ボロボロになっている彼を気遣わず、ただそう呼びかけることを選んだ。もちろん彼の状態は気になったけれど、この貧民街で他人を気遣うなんてことは、するべきじゃない。

 

「……う?」

 

 果たして、わたしの言葉にわずかに反応する彼。しかし、その返事は肯定なのかどうなのか、はっきりしない。わたしはひとつ嘆息して、

 

「盗賊バコタに頼まれたんだけど、わかる?」

 

「……う、父ちゃ……? けほっ……」

 

 とりあえず、彼がモハレであることは間違いないようだった。しかし見たところ、あちこち打撲を負っているようで、会話が成り立つ感じじゃない。回復呪文『ホイミ』で治してあげて、ちゃんと話をしたいところだけれど、言うまでもなく、ここでそんなことするわけにはいかないし……。

 

 ……ふむ。じゃあ、こうしようかな。

 

「ほら、立ちなさい! もう逃げることなんて出来ないわよ! あなたはこのまま牢屋行きなんだからね!」

 

 意識的に大きな声で、モハレにそう言うわたし。こちらを見ていた人たちは途端にあさってのほうに目を逸らし、当のモハレは目を白黒させる。しかし当然のことながら、引っ張るわたしに抵抗する力は残ってないのだろう。抗議の声すらあげずにモハレはわたしに引っ張られる。

 

 そうして、貧民街から出てしばらくしてから、

 

「ホイミ!」

 

 わたしは回復呪文でモハレの打撲を治してあげた。

 

「……ど、どういうことだべ……?」

 

 状況が呑み込めていないのだろう。不思議そうに訊いてくるモハレ。

 

「ろ、牢屋行きってのは……?」

 

「あ、それウソ。ああでも言わなきゃ、貧民街の人たちから反感買いそうだったからね。――それで、あなたがモハレで間違いないのよね? 盗賊バコタの息子の」

 

「そ、そうだべ。だども、どうして父ちゃんのことを知っとるべか? 父ちゃんはいま、城の牢屋に――」

 

「その牢屋に行って、バコタに会ったのよ。で、わたしが今日旅に出たアレル――オルテガさんの息子を追う旅に出るつもりだって言ったら、あなたのことも一緒に連れて行って欲しいって頼まれたの。このままじゃ飢え死にするだけだからってね」

 

「そうだったんだべか……。オイラが旅に……」

 

 そうつぶやいて、彼は少しうつむいた。もしかしなくても、怖じ気づいたのだろうか。まあ、それが自然な反応なのだけれど……。

 しかし、その心配は必要なかった。

 

「――すごいべ! やっとアリアハンから出られるべ!」

 

「……えと、怖くないの……?」

 

「そりゃ怖いに決まってるべ!」

 

 ……全然説得力がなかった。

 

「でもそれ以上にワクワクするだよ! 手に入れろ! 金銀財宝! スリもモンスター相手にやれば罪にならないべ! 罪悪感もゼロだべよ!」

 

 ……なるほど。バコタは彼にそういう風に教えてたんだ。まあ、そのとおりではあるんだけど……。

 

「ねえ、モハレ。じゃあ、いままで人間相手に盗みを働いてたときは、罪悪感あったんだ?」

 

 ふと気になってそう問うと、彼はなぜか親指をグッと立ててみせ、

 

「全然なかったべよ!」

 

 満面の笑顔。……ダメだ。彼、根っからの盗賊だ……。

 

「あの大盗賊カンダタを超えるには、その程度のことで罪悪感を覚えてちゃダメだべ!」

 

「それもバコタが……?」

 

「んだ! 父ちゃん、しょっちゅうそう言ってただ!」

 

 子供になに教えてるのよ、バコタ……。

 

「ところで姉ちゃん、あんたの名前はなんていうだ? 名前教えてもらえねえと呼びづれえだよ」

 

「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったわね。わたしの名前はリザよ」

 

「リザだべか。歳はいくつなんだべ?」

 

「――女性に年齢を訊くのは失礼なことだって、お父さんから教わらなかった?」

 

 わたしが発してみせた圧力に、モハレは少したじろいだ。

 

「お、教わらなかっただよ。それに、オイラより年上か年下かわからねえと、接するスタンスが決めにくいべ」

 

 まあ、それは確かにそうだ。でも、わたしからっていうのが納得いかない。

 わたしが明らかに不満そうな表情をしたからだろう。モハレは「仕方ないだ」と嘆息混じりにつぶやいて、

 

「オイラは十五歳だべ。名前はモハレ」

 

 いや、名前はわかってるから。――でも、

 

「じゃあわたしのほうがお姉さんね。わたしは十六歳だもの」

 

「な~んだ。オイラより年上だったんだべか……」

 

 なぜか残念そうにつぶやくモハレ。

 

「なんでそんなに残念そうなのよ……」

 

「オイラ、一度でいいから、年下のヤツ相手に威張ってみたかっただよ……」

 

 その発言に、わたしは思わず額に手を当てて空を仰いでしまうのだった。

 

 

○アレルサイド

 

 アリアハンの割と外れに建っている大きな店。そこがルイーダさんの経営しているルイーダの店だ。

 ちなみに、一階が酒場で、二階はルイーダさんとリザの居住スペースとなっている。

 

 もしリザがまだここにいたら、と思って、僕は酒場の中を見回して彼女がいないことを確かめてから中に入った。その後ろを苦笑しながらクリスがついてくる。

 

「こんにちはー」

 

 まだリザが二階にいる可能性があるため、二階には届かないよう、少し声を抑えてそう口にしてみた。

 

「お帰り、アレル。なにをこそこそしてるのよ」

 

 返してきたのはルイーダさんではなく、テーブルのひとつについていた母さんだった。どこかいたずらっぽく笑いながら続けてくる。

 

「リザちゃんだったら、ここにはいないから安心しなさい。旅に出る前にアレルは一度ここに戻ってくるからって言う暇もなく飛び出して行っちゃったからね、あの子」

 

 それを聞いて僕は少し安心した。あとはリザが戻ってくる前に旅立つだけだ。

 僕は次に母さんの向かいに座っている祖父――かつては『始まりの勇者』と呼ばれたゼイアスおじいちゃんのほうに視線を向けた。するとおじいちゃんもまた、昨日の稽古のときとまったく違う優しい眼差しを僕に向けてくれた。

 

「アレル、頑張ってくるんじゃぞ」

 

 一瞬、息が詰まる。あまりにも短くて簡潔な、その一言。でもそれにどれだけの想いが詰まっているか、理解できたから。

 

「――うん」

 

 だから、僕はそれだけを口にした。それ以上の言葉は、必要ないと思った。

 

 僕は最後にカウンターに居るルイーダさんのほうを向いて、リザに伝言を頼もうと――した、その瞬間、

 

「あら、誰かと思えばクリスじゃない。久しぶりね~。元気だった?」

 

 母さんのセリフに驚いて、そっちに目をやる。本当に懐かしそうな表情をしている母さんと、戸惑っている様子のクリスの姿が視界に映った。

 

「え、えと……?」 

 

 クリスはそのまま、しばし戸惑っていたが、ふと、なにかを思いだしたのか、

 

「あっ! マリアさんですか!?」

 

「なに、忘れてたの~? 仮にも師匠とでも言うべき人を」

 

 ……師匠? ああ、そうか。クリスは武闘家で、母さんも元とはいえ武闘家。つまり――

 

「母さん、クリスに格闘術教えたことあるの?」

 

 僕の問いに『知らなかったの?』とでも言いたげな表情でうなずいてみせる母さん。

 

「まあね。もっとも、基本的なことを教えただけなんだけど。――あれは確か、『あの人』の訃報(ふほう)が届くちょっと前だったから、七年くらい前かしらね」

 

「もう、そんなになるんですね……」

 

 母さんとクリスはなんだかそのまま思い出話を始めてしまった。早く旅立たなきゃいけないというのに……。

 

「アレル、言い忘れておったのじゃが――」

 

 ひとつ嘆息した僕に、おじいちゃんがそう声をかけてきた。……なんか、さっきのおじいちゃんとの感動的なやり取りが台無しになってしまった感じがする。

 

「お前にはまだ、ひとつだけ教えてやれていないことがあった。『魔法剣』というのじゃが――」

 

「魔法剣? 振っただけで攻撃呪文と同じ現象を起こせるっていう剣のこと?」

 

 世間一般で言うところの『魔法剣』というのはそれのことを指す。しかしおじいちゃんは首を横に振ってみせた。

 

「そうではない。魔法剣は攻撃呪文の力を剣に込める、勇者の血を引く者にしか使えん特殊な『剣技』じゃ」

 

「そんなものがあったんだ……」

 

「火の玉を生み出す呪文――メラの力を剣に込めれば、剣で斬りつけたときの威力は通常のそれを遥かに上回る。もっとも、メラはしょせん初級の呪文じゃ。その力を込めた魔法剣の扱いは、さして難しくない。むろん、ワシとて使える」

 

 おじいちゃんが『魔法剣』を使ったところを、僕は一度も見たことがないのだけれど、おそらくそれは本当なのだろう。『始まりの勇者』とまで呼ばれた彼がこんな嘘をつくとは――いや、よく考えてみたら、これまでもシリアスな感じで話をされて、最後に『嘘じゃよ~ん』なんて言われたこと、何度もあったな……。

 まあ、旅立ちの日に嘘をつくことはさすがにないだろう。……ないと信じたい。

 

「しかし、ワシとてすべての魔法剣を使いこなせるわけではない。主に使いこなせんのはメラゾーマを始めとする上級の呪文と……ギガデインじゃ」

 

 ――ギガデイン。

 『魔法剣』同様、勇者の血を引く者のみが使えるという、雷撃の呪文。

 

「白状すれば、ライデインの力を込めた魔法剣すら、ワシには使いこなせんかった。ワシが使ったライデインの力を宿した魔法剣は、その力を暴走させたも同然のものだったんじゃ。とても、剣技などとは呼べんかった」

 

 暴走した力がモンスターを次から次へと薙ぎ払っていく――。

 そんな光景を想像し、僕は思わず背筋をブルッと震わせた。

 

「じゃが、お前なら。――昨日、ワシを超えてみせたお前になら、あの恐ろしいほどに強力なギガデインの力を込めた魔法剣ですら、制御できるようになるじゃろう。間違いなく、な。まあ、むろん修行をつめばの話じゃが。――再びこのアリアハンに帰ってきたときには、この老いぼれにそれを見せてくれ」

 

「――うん。絶対に」

 

 ……まったく、これでまた生きて帰ってこなきゃいけない理由ができちゃったな。

 そんなことを思いつつ、僕はおじいちゃんにそう返した。

 

 それからおじいちゃんに口頭で、あくまで手短に『魔法剣』の使い方を教わり、最後にルイーダさんのほうを向く。

 しかし、僕が口を開くよりも早く、どこか懇願するような瞳と口調で彼女は僕に告げてきた。

 

「アレル、リザのことなんだけど、やっぱり一緒に連れていってあげられない?」

 

「それは――」

 

 思わず言葉に詰まる。僕だって、本心ではリザについてきて欲しいと思っていたから。でも――

 

「――できないよ。危険な旅なんだ。それにリザを巻き込むことは、できない」

 

「……そっか。でも、これだけ聞いてくれない? リザはね。あたしの本当の子供じゃないんだ。いまから十五年前、だったかな。オルテガと旅をしたことがあるっていうリザの両親がアリアハンに来たことがあってね、それで自分たちの代わりにリザを育ててやってくれないかって頼まれたのよ」

 

「……リザは、そのことを――」

 

「知ってる。ほら、あの子頭も勘もいいし、あたしとリザって全然似てないしね。あたしは呪文をまったく使えないのにあの子は使えるってこともあって、小さい頃から薄々ながらも『もしかして』って思ってたんだって」

 

 どこか自嘲するように笑ってみせるルイーダさん。

 

「それで、実の両親のことをリザに教えたのが二年前。でもあの子、両親に会いたいとか、言わなかったんだよね。そう言ったらあたしが傷つくと思ったのかもしれない。……でも、本当の両親を求めるよりも、あたしと暮らしていくことを選んでくれたのは……やっぱり、嬉しかったな」

 

 言って、彼女は本当に嬉しそうに目を細める。

 

「おっと、話が脱線したね。――あたしとしてはさ、でもやっぱり、本当の両親には逢わせてあげたいんだよ。リザのためにも。そしてあの子の両親のためにも」

 

「逢わせてあげたいっていっても、いまどこにいるのかも、そもそも、そのリザの本当の両親の名前もわからないんじゃ……」

 

「確かにどこにいるのかはわからないけどね。でも、あの二人、ちゃんと名乗っていったんだよ」

 

 名乗っていった? 一体なんのために? まあ、それは置いておくとして。

 

「その二人の名前は?」

 

「父親のほうが僧侶のボルグ。母親のほうが魔法使いのローザ。――ああ、リザが僧侶でありながら攻撃呪文も使えるのは、母親が魔法使いだから、なんだろうね。おそらく」

 

 ああ、なるほど。道理で――って、いまはそんなことはどうでもよくて。

 

「でも、どうして名乗ったんだろう。そのリザの両親。名乗る必要なんて、ないはずなのに……」

 

 だって、本当の両親がいるなんてことは、リザからしてみれば知らないほうがいいことだ。なのにわざわざ名乗るなんて、まるでリザとルイーダさんの関係にヒビが入ったほうがいいとでもいうような――、

 

「やっぱり、本当の親がいるってことを――お前はボルグとローザの娘なんだよってことをリザに知っておいてほしかったんだろうね、もう二度と逢えないと思うからこそ、余計に。知っておいてもらうことで心が救われるってことも、あたしはあると思うよ」

 

「その理屈は、わかるけど……」

 

 でも、リザを育て、一緒に暮らしていくルイーダさんの心情も、もう少し察するべきだと、僕は思う。

 

「まあ、それはそれとして。あたしとしてはあの子を本当の両親に逢わせてあげたい。でも一人で旅に出すのはさすがに心配だし、やっぱりアレルにつれていってもらいたいのよ」

 

「気持ちはわかるけど……」

 

 僕が困ったようにそうつぶやくと、ルイーダさんはひとつ息をついて、それから自分に言い聞かせるように、

 

「無理な相談だったかな。それによく考えてみれば、アレルだって魔王バラモスを倒す旅に出ようとしてるんだもんね。ごめんね、その辺、もう少し察してあげないといけないわよね」

 

 言って、ルイーダさんはどこか、申し訳なさそうな表情を見せる。

 僕はそれにしばし黙り込んだあと、ひとつの提案をした。

 

「……もしも旅の途中でリザの両親と会ったら、必ずアリアハンに連れてくるよ。――それでもいい?」

 

 僕の言葉に、ルイーダさんは嬉しそうな、でもどこか悲しげな笑みを浮かべてみせる。

 

「もちろんよ。ありがとうね、アレル」

 

 それは、両親が見つからない限り、リザが自分のもとからいなくならないという安心感からくる笑みなのか、それともリザの両親が見つかる可能性が生まれたことに対する笑みなのか。もちろん、僕なんかにはわかるはずもなかった。

 ただ、これ以上リザの両親の話をしても、ルイーダさんは苦しいだけなんじゃないかと、そう思えて。

 

 だから、僕はこの話を切り上げて、母さんとルイーダさんに別れの言葉を告げることを選んだ。実際、そろそろ出発しないとリザがここに戻って来かねないし。

 

「じゃあ、母さん、ルイーダさん。――行ってきます」

 

 別れの言葉。でもそれは、必ず戻ってくる、という意味の言葉でもあって。

 

『行ってらっしゃい』

 

 声を揃えて、にこやかにそう返してくれる母さんとルイーダさん。いまの僕の言葉は間違いなく、父さんの旅立ちを連想させるものだっただろうに、それを笑顔で送り出せるなんて、やっぱり、二人は強いなぁ……。

 

「ほら、じゃあ行くよ。クリ――」

 

 クリス、と言いかけたその瞬間。

 

「ルイーダの店はここかな」

 

 そうつぶやきながらルイーダの酒場にひとりの男性が入ってきた。年の頃は二十前後の黒髪の青年。このあたりではちょっと見かけない、変な格好をしていた。

 彼は僕のほうを向くと、

 

「あっ! 勇者アレル!?」

 

「そ、そうですけど、僕、あなたに会ったことありましたっけ?」

 

 僕の憶えている限り、この男性と会ったのはこれが初めてのはずだった。それほど特徴のある顔立ちではないけれど、変な服装をしているし、会ったことがあるのなら確実に憶えていると思う。

 案の定、青年は僕の言葉に首を横に振った。

 

「いや、僕が一方的に知ってるだけだよ。でもすぐに会えてよかった~。――これから旅に出るところ? だったら僕も同行したいんだけど」

 

「ど、同行って――」

 

「ちょっとロマリア大陸まで行きたくてね。まあ、別にロマリアに用があるわけじゃないんだけど。でもあの大陸に行くには『まほうのたま』が必要でしょ? だからついて行きたいな、と」

 

 そんなこと言われても、正直、困る。

 

「危険な旅だっていうのは充分承知してるし、僕の職業は――え~と、この世界では魔法使いってところかな。ほら、正直言って、呪文が使える仲間がいないと大変でしょ? それに僕は、どんなモンスターがどこに生息してるのかも知ってるし、どこにどんな町があるのかも知ってる。連れて行ってくれれば、それなりに頼りになると思うよ」

 

 『それなりに』って、なんでそんな微妙に自信のない自己アピールを……。それに『この世界では』って一体……?

 

「あの、とりあえず名前を……」

 

 そこで青年はいま気がついたのか「あ、ごめん」と言い、ようやく自分の名を名乗ったのだった。

 

「ごめん、自己紹介がまだだったね。僕の名前はルーラーっていうんだ」

 

 ――と。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。