「ピース・ルナセル…なんていうか変わった名前だね」
「因みに意味は名前の方の意味はまんまだ」
「同じ年だったんだ…」
「そんなに老けて見える?」
「老けてるって訳じゃないけど…二つくらい年上だと思ってた」
自己紹介を終えて帰ってきたのは変わった名前だねとの感想。
人によっては傷つくかもしれないが俺は既に言われ慣れてしまっているのであまり感慨は抱かない。感想を言われた後の返しも既に今までやってきた自己紹介の数だけやっている。
それにしても二つ上か…いや、あんまり変わんないけどそれぐらいに俺は見えるのか。
「それにしても趣味が模型作りなんだ。もっとこう、運動でもしてるのかと思った」
「趣味に出来る程運動が得意だったら事務員何てやっていない」
「ていうか管理局辞めて模型屋さんになるっていうのは…」
「模型屋さんは管理局に勤める前からやりたかった将来の夢だ。子供のころから変わってないだけ…ほら、俺は少年の心を持ってるから」
「はぁ…」
高町なのはの反応は微妙だ。多分どう返したらいいのか分かんないのだろう。
確かに管理局だったらくいっぱれることもないし、収入も安定するだろう。どこもやめる要素が見つからない。…あ、いやあったわ。慣れて忘れてたけど管理局ブラック企業だった。定時退社とかしたことない。そして残業手当も出たことない…アレ?普通でるもんじゃ…。
まあ、ブラック企業なの以外は誰もが勤めたがる職だ。同じ年の友人にもいいなーと言われた。その友人の職業は自営業のカフェをやってる。そこそこ人気の店でこの前三号店が出来たと報告があった。…なんだあっちの方が勝ち組じゃん。
「模型…好きなんだね」
「まあ好きだな、店を出したいくらいには」
ん、なんか引かれてる?もしかしてエース・オブ・エースは模型が好きな人がお嫌いな人?そうだとしたら俺は彼女と仲良くやっていける微かな1%程の自信が0%へと変わるな。
「あ、そう言えば私の自己紹介はしてなかったね。一応上司さんから話は聞いてると思うけど言っておくね。名前は高町なのは、空戦魔導士の戦技教官やってるよ。歳はピースさんと同じだよ」
自己紹介の内容は有名な彼女の肩書をそのまま並べただけ、多分趣味とかは極力離さないようにしてるのだろう。ヘタなことを話してばらされたり周りに広められたりしたら面倒な事になるからその習慣だと思う。
それにしても同じ年…ふむ……
「見た目より若く見えるな、まだ十代に見える」
「え、そう?お世辞でも嬉しいな」
お世辞ではなく普通に十代に見える。彼女が童顔気味だからだろうか?
…そう言えばこんな噂を聞いた。彼女の出身地である二ホンと言う国では己の戦闘能力を高い水準で保つために肉体はピークからその少し後くらいで肉体を保つことが出来る戦闘民族が居ると言う。もしや彼女はその民族なのでは……?
「何か質問はあるかな?」
質問があるかどうか…丁度いいから彼女が戦闘民族なのか聞いてみようか?…いや、そう言えばそれよりも気になる噂がある。
その噂とはエース・オブ・エース、高町なのはに『男』が居ると言う噂
つい一ヶ月程前から流れ出したもので彼女のファンは今も真偽を探っていると言う。何でもイケメンの強い魔導師だとか。もしここで聞きだしてファン共に情報を売ればいいかn…愉悦が楽しめるのではないだろうか?
それに自分もちょっと興味がある。もし居るのなら、高町なのははどうやら砲撃を撃ってストレスを解消するような人物らしいのでそんな人物どうやって彼女に出来たのか聞いてみたいところだ。
「それじゃあ…噂で言われてる男が居るって本当?」
「うぇっ!?そんな噂流れてるの?!」
「一ヶ月くらい前から」
「ええ~…」
反応から察するに的中半分外れ半分ってところだろうか?
彼氏ではないけど気になる人が居るのか、それとも全く意識していない男友達でもいてその人と噂がたったのか…
「あー…別に彼氏なんていないよ?付き合いが深い男性もそう多くは無いし」
「じゃあ何だっけ…あの魔力の量がヤバイって言われてるの男の魔導師…」
「神谷くんの事?」
「そう、それ。何か凄いレアスキルいっぱい持ってるって言う魔導士」
名前はカミヤ…そう神谷優だ。何でも高町なのはと同じ次元世界出身でレアスキルを大量に持ってて魔力量も破格のSSSランクっていう規格外の魔導師。二年前のJS事件やその前の事件も幼いころから深く関わっていて解決に大きく貢献したって言われてる天才魔導士だ。
しかもルックスと性格もよく女性局員からの人気が凄いだ。この前も職場で隣の局員が写真を見てうっとりしてた。
しかし、高町なのはの表情はなんというか芳しくない。神谷の名前を出したとたん少しだけ苦い表情をしていた。何か思うところでもあるのか?
「その神谷と仲が良いって言われてるけどもしかしてそれが噂の発端か?」
「アハハ…そうかな。っていうか個人的にはにが―――」
ピピピピピピピッ
高町なのはが何か言おうとしたその時、俺のデバイス(もはやただの携帯)が音を上げた。休憩時間に入る前に設定しておいたアラームだ。
「あ、休憩時間終了」
「え、もう?!」
「と言う訳でまたお仕事再開です。頑張って定時退社を目指しましょう」
「何か口調も戻ってるの!?」
「仕事に入りますので」
そりゃ、公私はしっかり分けなければならない。仕事は仕事、真面目に取り組むべきだ。
俺は公私は絶対に分ける。休憩中は私の部分が出て来るが仕事中は公を崩さない。
「では、仕事再開です。大丈夫、三分で書類一枚終わらせるペースでやれば定時退社できます」
「それは絶対無理だと思うな、私」
「では残業ですね、因みに手当は出ません。何せノルマが終わっていませんですから」
「だ、誰か助けてーーっ!」
「その助けに私が居るんですよ」
この後メチャクチャ仕事した。
定時退社は予想通り不可能で、書類がすべての書類が片付いたのは八時だった。
高町なのはは「今日はフェイトちゃんが早上がりで助かった…」って言っていた。そう言えば育児がどうたらこうたら上司が言っていたな。今度からはもう少し配慮(休憩時間を減らす)をしよう。
外で夕食を済ませて自宅へ帰宅、およそ夜十時の事である。
俺が住んでいる場所は都市部から大分離れているボロアパートだ。アパートの周囲も荒れていると言う素敵な立地。まあ、『世紀末崩壊事件』の残響なのだが。
「ただいまー…って言っても誰も居ないが」
返事は帰ってこなく、迎えてくれたのは家の電気を付けていないが故の暗闇だった。
靴を脱ぎ、スーツのネクタイを緩めて上着はソファに放る。そしてそのまま風呂場へ向かい風呂の準備をする。なんとこのボロアパート、外観はかなりボロイ癖に中身は案外良いと言う立地と外観さえ除けばそこそこの優良物件だ。
風呂の準備が終わり、お湯が貯まるまでの間にリビングに戻り趣味に取り掛かる。この時間が平日の唯一の癒しの時間だ。
「さて、確か休日にTamazonで買った奴が…あったあった」
リビングに置いてある棚から一つ、大きい箱を取り出す。
因みにTamazonとは猫がマスコットキャラクターの通販ショッピングサイトだ。
「よーし、作るか―――――次元航行船アースラ、アルカンシェル用のエフェクト付き」
これは絶版の品だったため入手するのに苦労した。購入価格、五万五千円である。
模型屋さんを開くための資金を現在貯金しているため趣味に使えるのは給料の五パーセント程なのである。なのでこの五万五千円はそこそこ痛い出費だった。まだ模型のストックはあるとはいえ新しいものは暫く買えない。
「あのエース・オブ・エースの作業補佐してるんだからもうちょい給料上がんないかなー…」
ああ、やっぱり金なのだ。生きるためにも模型屋さん開くためにもお金が必要、世知辛い世の中である。
しかし、そうは思っても模型を作る手は止めない。だってこれ辞めたら俺の癒しは消滅する。
こんな小さな事を癒しにしかできない。ミッドチルダよ、これが社畜の生活だ
とまあ、こんな感じで俺の一日は終わるのだった。
補足
神谷優:転生者、オリ主。戦闘スタイルはレアスキル(別アニメの能力)と莫大な魔力を使った質量責めで相手を圧殺する。ルックスと性格もよく、大変よくモテる。なのは達とは無印のころからの付き合い。だが、なのはからはあまり良く思われていない模様、理由は……
正統派オリ主で『正義の味方』な性格