目指せ自営業!社畜局員のミッド暮らし   作:この世全てのゴミ

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ゴミは すべてのストックを ときはなった!



第六話 善意の押し付けはやめよう

「……」

 

 現在時刻は夜の1時、既に深夜帯の時間だ。それなのに、何故か俺は集中執務室で仕事を続けていた。

 カタカタカタカタカキカキカキカキ…作業音が響き、雑音はない。いつもなら集中モードに入っているのだが今はそうもいかない。何せ働きづめなのだ、いつから?―――一昨日から。

 つまり、現在三徹目に突入している。御蔭で目には隈が見え、心なしか少しクラクラする。ふむ、真面目にヤバいかもしれない。少し仮眠を…駄目だ、取ったら確実に丸一日分寝続ける自信がある。これでは予定されている時間にまで仕事が終わらない。

 チラリと、横目で左にある残りの作業すべき書類とデータを見る。その量、書類が二山、16Gメモリースティックが一本。反対側の作業が既に終わった書類とデータへ目を逸らしてみれば書類が一山、3Gメモリースティックが二本…うん、大分頑張ったと思う。

 異常…間違いなく個人で処理できる量を超えているその仕事量を引き受けることになってしまった顛末をぼんやりとする頭で思い出す―――あ、因みに頭は別のこと考えても手だけは動いてますよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今の季節は夏、ミッドでは蒸し暑く辛い季節だ。思わず夏の暑さに犯罪者たちも何か起こす気が起きないのか、事件はメッキリ減る季節だったりする。まあこんな暑い中で犯罪何て起こされたらきっと現場職の人やってらんないだろう。それくらい、夏はキツイ。

 まあ、金持ちや学生等の暇を持て余してるものは別の次元世界に避暑に行ったり海で遊んだりしたりして楽しむ季節らしい。何でも日は長く出ていて長期の休暇もあるから遊びに行くには最適な季節なんだとか。俺は学生の頃でもそんな事は一度も思ったことはないがな。そして今でも思わん、長期休暇?何それ美味しいの?

 そんなこんなで暑い中態々こうして職場でお仕事をしている訳だ。業務内容はいつもと変わらず高町なのはの書類処理補佐である。で、俺がその補佐すべき人物は…

 

「あ、暑いよー…ピースくんエアコンつけよう?」

「駄目です。それよりも手を動かしましょうよ、じゃなきゃお子さんの相手が出来ませんよ?」

「そうは言ってもこの暑さじゃ仕事に身が張らないって…」

「私だって暑いんです。ですが、今は電気代をなるべく浮かすようにって命令が出てるじゃないですか」

「そうだけど…」

 

 グダって居た。暑さに負けたと言わんばかりに机に頬をつけている。

 現在、経費削減の為、電気の使用が大幅に制限されている。その為、この基地の何処に行っても涼しい場所は存在しない。昼休み頃には扇風機を付けて何とかしようなんて言ってる同期の奴も居たが、先ほど飲み物を買いに出た際にそこのベンチでタオルを頭に掛けながら倒れ伏していた。

 デバイスのアプリで現在の気温を調べてみれば気温30度越え、湿度は60%を過ぎていた。間違いなく、超絶不快空間である。決して仕事が出来るような環境ではない。

 すると気付いたら高町なのはが席を立ち、窓を開いた。その瞬間、涼やかな風が室内に―――入ってこなかった。入ってきたのはさらにこちらを不快にさせる熱風。

 

「う、外も全く変わんない…というか外の方が酷いよ…」

「閉めた方がいいと思いますよ。ドンドン室内が熱くなって来てますから」

 

 汗をかきながら高町なのはにそう言う。

 それにしても本当にやる気も集中力も削がれる暑さだ。一応こまめに水分は取っているがそれでも喉が渇いてくる。これ、脱水症状とか熱中症で倒れるんじゃないだろうか?現に、あのエース・オブ・エースはダウンしかかっている。

 顎からツウと流れた汗が落ちる。それに気づき何とか手でカバーし書類には掛からないようにする。書類に掛かって気付かぬうちに駄目になってたりしたら目も当てられないからだ。

 流石に上着の一枚は脱ごうと思い、ボタンに手をかけると高町なのはが羨ましそうにこちらを見ていた。

 

「…何ですか?」

「いや、ピースくんは服脱げていいなーって思って」

「そう思われても俺には何もできませんよ」

 

 確かに女性だ。そうやすやすと着ている物を脱ぐのは嫌なんだろう。上着を脱いでしまえばもうYシャツだ。それでこの気温で汗をかいているのだから……まあ、色々透けてしまう可能性があるのだろう。

 

「あーつーいー」

「頑張って仕事をしましょうよ、やんなきゃ終わる物も終わりませんよ?……ってアレ?」

「どうかしたの…?」

「いや、何かメールが来まして…しかも本部の方から。そっちは来ましたか?」

「無いね、メールなんて来てないよ?」

 

 書類が大体片付いたので次はデータの処理に移ろうとしたらPCに一つのメールが来ていることに気付いた。それも時空管理局の本部からだ。

 俺のようなただの下っ端に態々本部から来ると言うのも変な話だ。普通なら高町なのはの方に来るだろうに。

 件名は『管理局事務員へ』…成程、確かにこれは高町なのはに来るはずがない。高町なのは現状でこそ、書類仕事をヒーコラ言いながらやっているが元は戦技教官だ。決して事務員ではない。

 

「えっと内容は……『夏のビッグチャンス!処理王は誰か』…え、これは(困惑)」

 

 本文にはこう書いてあった。

 

『どうも、皆さん仕事はしていますか?夏の暑さなどに負けて自販機のある休憩所でバテたりしていませんか?事務員の皆様を雇っている時空管理局です。今日は経費削減の為劣悪極まりない環境で働いている事務員の皆様に朗報があります。なんとこの度、管理局は第一回、『処理王決定GP』の開催を決定しました。『処理王決定GP』の内容は単純です。その名の通り、一体誰が管理局で最も仕事を捌くスピードが速く、正確かを競い合う大会です。事務処理のスピードのある皆様方は是非、参加してみてください。期間は五日間、この間に自分で仕事を取りに行き、その仕事を速く、正確にこなしてください。後日、結果を発表してその結果が上から十番以内の者には特別なボーナスが送られます。このボーナスは順位が高ければ高いほど高額のボーナスが支払われます。どうか頑張ってください。また、参加賞もありますので書類を捌くスピードに自信が無い方もご気軽に参加してみてください。

 

因みにボーナス額は最高で百万円です。

 

以上、時空管理局本部より』

 

 …正直な感想を言おう、何だコレ?

 

「管理局の今の上の人は暑さで頭が逝っちゃってるの…」

 

 気づいたら隣で覗き見ていた高町なのはがそう言った。

 いや、逝っちゃってるって確かにそう思わざるを得ないよ?何でこのクソ暑い中にいつもより多くの仕事をやらなければならないのか、バカじゃねぇの?そう思ってはいるが口には出さないものでしょう。

 

「もしかして、最近発令された経費削減の為に極力節電するようにって指令はこれが関係してるんじゃ…」

「…流石に無いと思いますよ。まさか削減した経費をこんなモノを開くために節電令を発令したとかだったら本当の上の正気を疑いますね、私は」

 

 流石にそこまで馬鹿じゃない…そう思ってる。それに、二年前のJS事件で上層部の人間はごっそり入れ替わっているのだ。黒かった上層部の代わりに埋められた人なのだからきっとまともで優秀な人材だろうと思うからきっとそんな事はない筈だ。そこ、優秀なら何でもっと人を集めることが出来ずに社畜に労を課してるんだなんて言わない。

 このメールは確かに本部から送られてきたものだから内容自体は本当なんだろう。ボーナスの百万円と言うのも魅力的だ。もし取れれば自営業設立の為の大きな資金になるから欲しい、だがあくまで最高百万なのだ。魅力的に見えるが、きっとこれは社畜にもっと仕事をさせるための罠だ。だから俺は参加はしない。まあ残業代がしっかり出るようになるっていうなら参加していたかも知れないが。

 

「ピースくんは出ないの?書類捌くスピード早いでしょ?」

「私なんかより早い人はいっぱいいますよ。例えば魔導士上がりの事務職の人間なんてマルチタスク応用して仕事をしているみたいですし。信じられますか?左手と右手で違う仕事を同時に行ってるんですよ?そんなのに勝てるわけありません。もう怖いレベルです」

「…怖さならピースくんも割と人の事言えないんだけどなぁ」

「今、何か?」

「いや、何でもないよ。さて、仕事頑張ろうか!あ、そうだ。私は明日から一週間は居ないから仕事も少なくなるよ」

「分かりました」

「何か嬉しそうだね…」

 

 こうして、高町なのはと仕事が片付くまで仕事をした。終業時刻は六時。かなり早い時間に終わった!そう思ったのだが…

 

 

――――本当の、仕事地獄はここから始まったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさまー」

「お疲れさまです。時刻は六時を少し過ぎたあたりですか…大分速くなりましたね」

「頑張ったからね!」

「ならいつも頑張ってください」

 

 仕事が終了して高町なのはと共に退社の準備を始める。

 家に帰ったら作りかけの模型を作ろうか、なんて思いながら意気揚々と準備をする今の時間は俺の一日の中で結構幸せな時間だ。肩から重荷が降りたような、そんな感覚だ。

 退社の準備も済み、高町なのはと戸締りを確認し、先に高町なのはを帰らせて最後に部屋に鍵を閉めようとしたその時、悪夢が来た。

 

「おーい」

「ん?ああ●●か、何のようだ?合コンのお誘いならお断りだぞ」

「ちげーよ!まともな理由…っていうか親切で来てやったのに」

 

 親切心?何だろうか、アレか、これから一週間の仕事を変わってくれるとでも言うのか。それだったら泣いて感謝してやってもいい。なんなら土下座だってついてくる。

 そんな考えとは裏腹に、俺への親切心を形にして渡されたのは大量の紙の束と数本のメモリースティックだった。

 

「…これは?」

「ほら、本部からメールが来たろ?アレにお前なら出ると思ったからよ。こうして仕事をかき集めて来たんだ!」

「え?いや…」

 

 なんと言いおったこいつは?この大量の紙束とメモリースティックは全て仕事だと言うのか?HAHAHA、上段にしても中々に鬼畜なもんだな。こんなにユーモアセンスあふれる奴だとは知らなかったぜ。

 

「お、おい」

「別に礼はいいぜ!じゃ、俺はこれから合コンがるから行くな」

「ちょ、待って…って重っ!?走れん!」

 

 待て!行くんじゃねぇ!そう叫ぶがどうやら聞こえてないらしく、●●はそのまま行ってしまった。

 え、この量の仕事どうしろと?やれってことなのか?え、俺のノルマ(高町なのはの仕事)は終わってますよ?おーい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、俺が現在仕事をしている理由である。

 ふふ…死ねる。

 

 





感想、誰からでも大募集中です!感想をいっぱいもらったらゴミは有頂天になり天元突破して新月面の軌道を描いたのちに執筆するかもしれません

今日の小ネタ

同僚「~♪」

ピース「随分と機嫌がよさそうだな…」

同僚「あ、わかっちゃうw?俺明日彼女とデートなんだよねww」

ピース「ふーん…」

同僚「いやさww貴重な休みの日だけど彼女のためなら惜しくない!(キリッって感じでさww」

ピース「へー…」

同僚「なんだよ、反応冷たいな~お前だって明日やす…み……」

ピース「ねえ、明日休みじゃないやつの気持ち考えた?気づいた?(#^ω^)ピキピキ」

みんなも、明日休みだって、吹聴して回るのは、やめよう!

…本気でウザいから

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