錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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大変お待たせしました。
それでは更新させていただきます。今回は短めで行きます。





6. アンブリッジの罠

 

 

 

 

 トレローニ―先生の事件から早数週間後、ついに今年のクィディッチのシーズンが始まった。今年はアンブリッジの暴走によって楽しい年度初めを過ごすことが出来ず、彼女に賛同する一部生徒を除いて楽しみがクィディッチしかなかった。

 考えてみてほしい。今まで休み時間は湖の畔で昼寝したり大烏賊にちょっかい掛けたり、クラブの練習やクィディッチ選手は戦略練ったりと、比較的自由に各々の時間を過ごしていた。しかし今年は何故かアンブリッジにより休み時間も監視される、クラブ活動をするためにまた活動申請しなければならない。更にはクィディッチチームも強制解散され、アンブリッジの許可を得ないと再結成できない法律まで施行されてしまい、特にグリフィンドールは最後のギリギリまで許可が出なかった。

 そのせいか、新キーパーであるコーマック・マクラーゲンを交えたチーム練習を満足にすることが出来ず、準備不足のまま試合に臨むことになった。今回の相手スリザリンは新メンバーを加え、しかも申請その日に許可が出たために準備万端と言ったところか。

 

 しかしうだうだ言っていても始まらない。万全じゃないけど今のベストを尽くすしかない。自然と私たちチームの箒を握る手に力がこもる。ジョーダンさんの実況と共に空へ飛び出すと、すでにスリザリンチームはスタンバイ済みだった。しかし今年初めての試合だというのに天気は曇天、爽快にプレイすることが出来ないのは嫌である。

 そして気づいたのだが、アンブリッジが校長先生やその他外部から来てる来賓と席を並べているのが見えた。周りの観戦者、特にアンブリッジの隣や前後にいる人たちがあまりいい表情をしていないことから、あそこにいる人たちは好き勝手するアンブリッジにいい感情を持っていないのだろう。

 フーチ先生のホイッスルと同時にチップインし、ゲームが始まる。先攻はこちら、早速攻撃を仕掛ける。スリザリンの新ビーター、クラッブとゴイルがチェイサーやシーカーである私にブラッジャーを打ち込んでくる。しかし私たちもやられるだけではなく、フレッドとジョージが打ち返したり、私たちが誘導してスリザリン選手に当てさせたりと、何とかして勝負を繋いでいる。まぁ元々の得点力は高いほうだし、箒のスペックに左右されない実力をみんな持っているから、多少のハンデも実力と経験でどうにかしてしまう。

 ただ先ほどからスニッチ程じゃないけど気になるものがある。それはアンブリッジの視線だ。先ほどから気持ち悪いほど舐めるようにこちらを見てくる。まるで何か起こるのを待つかのように、それがなんとも不気味でいまいち集中できない。

 

 

「マリー!! 気になるのは分かるけど今はスニッチに集中しなさい!!」

 

「っ!? はい!!」

 

 

 いけない、まずは試合を優先しないと。いそいで上空高くに舞い戻り、フィールド全体を見渡す。すると微かに、新キーパーのマクラーゲンのそばで飛んでいるのが見えた。因みに言うとマクラーゲンはテストを受けて入団したんだけど、まぁ実力は確かにあると思う。でも自信過剰な性格が災いしてか、他の人のプレーに難癖をつけては、それに集中しすぎて相手のゴールを許している。まぁハッキリ言うとチームワークを一から学んでほしい人だ。おかげで点数差はさほどなく、いまは一ゴール分辛うじてグリフィンドールがリードしている。

 

 おっと話がそれた。

 私は急いで箒を傾け、スニッチに向かって突進した。マルフォイも私の動きに気付いたのだろう、私と同じ方向に向かい、そして途中でスニッチに気付いた。こうなるとあとはスニッチの動き次第でどっちが取るかが決まるという微妙なラインである。でも少しでも可能性があるならと、私はスニッチに手を伸ばしながらさらに加速した。

 当然スニッチは動き、私たちから離れようと高速で飛び回る。選手たちの合間を縫い、時には空中で反転し、スニッチから目を離さずにマルフォイと揃って追い続ける。アンブリッジの視線なんて関係ない、生まれの家柄育ちの過程など、もはや今の私達には関係ない。理由は分からないけど、口元に笑みが浮かんだままスニッチを追う。ふと目の端にマルフォイの顔が映る。その顔も私同様、汚いものを含まない、純粋に今の状況を楽しんでいるような笑顔を浮かべていた。今の状態の彼なら、私も人として好感を持てるな。そう感じながら、私は最高速度で飛び、スニッチをその手に掴んだ。

 

 

『マリーがスニッチをとった!! グリフィンドールの勝利です!! 試合終了!!』

 

 

 ジョーダンさんの実況が鳴り響き、試合場が完成で満たされる。来賓の方々も拍手をし、グリフィンドール席に至ってはみんな総立ちである。ふとマルフォイに視線を向けた。彼は純粋な悔しげな顔をしていた。どういう心境の変化があったかは知らないけど、どうも今のマルフォイはずるがしこいことはしないだろう。

 そう思った私はマルフォイの許に近寄った。目の前で彼は私に胡散臭そうな目を向けてくるが、私はそれを気にせず彼に手を差し出した。それをみたマルフォイは驚愕に目を染めていたけど、私は微笑みを浮かべながら手を差し出し続けた。

 やがて恐る恐るマルフォイが手を差し出し、私の手を握る。

 

 

 

 

 ガァアアアアアンンン!!

 

 

 

 前に私の側頭部に衝撃が走り、私は乗っていた箒から投げ出された。地上からあまり高い場所に滞空していなかったとはいえ、それでも私がいたのは頭から落ちれば良くて首を痛める、最悪首の骨折か即死の高さだ。しかし突然のことで私も対処ができない。成す術もなく地上に落ちる私の頭は、しかしながら冷静だった。視界の端に二つの影が映り込む。一つはマルフォイ、彼の表情を見る限りこの事態は全くの予想外なのだろう。そしてもう一つはクラッブ、その姿は棍棒を振り切った姿をしており、どうやら彼がブラッジャーを態と私に当てたみたいだ。

 

 体を襲う浮遊感。全身で受ける風。放っておいたら間違いなく死んでしまうような態勢。ああでも、最初から分かっていたわけではないのに、本当なら自分でどうにかしなければならないのに、どうして貴方はいつも助けてくれるのだろう。

 

 私は地面につく前にシロウに抱きかかえられ、それからゆっくりと地上に降ろされた。いまだ頭が揺れている感じだが私はシロウに支えられながら身を起こした。本来ならすぐにでも医務室に行かねばならないのだが、無理を言って立ち上がった。

 周りは騒然としており、スリザリンチーム側でクラッブ含めた数人はフーチ先生から怒られていた。当然だ、下手すれば死んでいたかもしれない行為なのだから。しかしクラッブは反省する様子はなく、フーチ先生の説教を鬱陶しそうな顔で聞いていた。ついでに言うとフーチ先生が来る前、どうやらクラッブはグリフィンドールチームの選手を貶める発言を何人かとしていたらしく、侮辱の対象となったウィーズリーの双子はチームメンバーから取り押さえられ、その選手もまた怒りに目を燃やしていた。次いで言いうと私も侮辱されていたらしい、聞こえなかったけど。

 でもその後のクラッブの発言には固まってしまった。

 

 

「死ななかったからいいじゃないですか」

 

 

 恐らく結構な声量で叱りつけている先生には聞こえていないだろけど、私の耳にははっきりと聞こえた。気が付けば体が動き、クラッブの頬を貼り飛ばしていた。ビンタをされたクラッブは状況を理解していない。しかし無理が祟ったのか、私は力が抜けて膝をついてしまった。周りも私の行動に呆然としていたが、いち早く復活したフーチ先生とシロウに連れられ。医務室に運ばれていった。その時に見えた、ニンマリと笑ったアンブリッジの顔が印象的だった。

 

 結果として私は暴力を振るったとして、フレッドとジョージも危険行為の未遂として罰則を受けた。しかし罰則を言い渡したのはフーチ先生ではなくアンブリ……糞がえ……■■■だった、そしてその内容がクィディッチの一生涯プレイ禁止という、越権行為なにそれ美味しいの、とでも言いたくなるような理不尽極まりないもの。対するクラッブは書き取りのみ、しかも私の様な呪いの類ではない普通のもの。

 このことを知ったシロウや他の先生方は抗議をしたが、いつの間に制定された御糞な法律や教育令により、アンブリッジの権力は教員や生徒の退学追放権以外はダンブルドアと同等のものになってしまった。それを知ったシロウは度々学校から抜け出すようになり、スネイプ先生とマグゴナガル先生、そして■■■以外の授業は最低限のことだけやって自分のことをするという状態になった。いったいこれからどうなるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――潮時だな

 

――承知している。これは私の責任だから。

 

――では計画に移ろうかの

 

――すまないが君にも協力してもらう

 

――それが最善だというのなら

 

――始めよう

 

 

 

 







 はい、ここまでです。今回は短めに仕上げました。
 いやしかし学校はまだしも、親戚関係が面倒くさい。うちは分家なのに、しかも私自身は分家当主でも当主候補でもないのに、親戚一同集う会に出席しなければならない理由がわからない。何が楽しくて年寄り連中の中に混ざらなければならないか理解不能。そして何が楽しくてお見合い写真を見せられる、私まだ学生、しかも相手は年が一回りも上。勿論断るの一択。
 以上、ここひと月ほど更新できなかった愚痴でした。



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