錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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大変お待たせいたしました。
リアルであまり時間が取れず、またちょっとストレスで体調を崩してました。そちらは一応よくなったのですが、今度は秋の花粉症と、色々ダブルパンチならぬ連続ピヨピヨパンチを受けております。
そして原作を図書館で借りて気づいたこと。


「あれ? 俺ルーナの存在忘れとるやんけ、クライマックスどないすると!?」


という状態に陥っております。





15. 進路指導

 

 

 

魔法省令

 ドローレス・ジェーン・アンブリッジ(高等尋問官)は、

 アルバス・ダンブルドアに代わりホグワーツ魔法魔術学校の校長に就任した。

 以上は教育令第二十八号に従うものである。

 

 魔法大臣コーネリウス・オズワルド・ファッジ】

 

 

 この通知が学校全体に広がるのは少しも時間がかからなかった。ダンブルドア先生が失踪した次の日、オババが魔法省令で校長に就任することになったのだけど。ただ校長室の絵画、ひいては門番の役をもつ石像は彼女を校長とは認めず、彼女を校長室にいれなかったそうだ。そのせいか、今や元々の彼女のオフィスが仮の校長室となっていた。そして残念ながら、私とフレッド、ジョージの箒はその部屋に鎖でがんじがらめにされていた。もうこの人道具を使う資格ないんじゃないかな。

 

 まぁそれは兎も角。「P・T」に参加していた人は全員オババの懲罰を受けた。以前私が受けた、自らの血液をインク代わりに書き取りをするアレである。そのおかげで、次の日の授業は全員右手に包帯を巻き、目の下に隈を作って受けることになった。この状況に殆どの先生は抗議の声をあげたけど、結局は権力を盾にしたオババには馬の耳に念仏な状態だった。悔しそうな教師陣の顔を眺めるオババの顔は、とても生気に満ちた笑顔だったと言っておく。特にマグゴナガル先生が、いつもの先生らしくもなく血が滲むほど拳を握っているのを見たとき、私は例えようもない憤りのようなものが沸き上がり、懐の杖に手を伸ばそうとするのを必死に抑えていた。

 そんな憂鬱で罰則の続く日々がいくらか過ぎたころ、談話室の隅で何やらフレッドとジョージが話し合いをしているのが窺えた。紙に何やらすごいスピードで書き込んでおり、ああでもないこうでもないと意見を突き合せている。どうやら何か計画しているらしい。

 

 

「二人とも、何してるの?」

 

 

 無粋とは自覚しながらも、私は二人に近づき訊ねた。そばにはロンとハーマイオニーもいる。そこでようやく気付いたのか、二人はこちらに顔を向けた。

 

 

「ああ、実はね」

 

「俺達は常に考えていたんだ。色々としでかしてきたけど、問題に巻き込まれたり、退学になるような一線は超えてこなかった」

 

 

 二人とも、魔導書の解析の時と同じぐらい真剣な表情でこちらに語り掛けてきた。その表情から、これから二人が話すことが嘘偽りのないものであるということが窺えた。

 

 

「常に、俺たちは常に大混乱を起こす手前で踏みとどまってきたんだ」

 

「でも今は?」

 

 

 二人の気迫にロンが恐る恐る尋ねた。

 

 

「今は――」

 

「ダンブルドアもいなくなったし――」

 

「ちょっとした大混乱こそ――」

 

「まさに我らが親愛なる新校長にふさわしい――」

 

 

 二人のいつものコンビネーションによって言葉が紡がれる。はじめは冗談だろうと思った。でも彼らの目を見ると、いたって正気で、そして本気で考えているということが分かった。彼らの目は、行動を起こす前のシロウとそっくりな光を宿していた。

 

 

「ダメよ!?」

 

 

 ハーマイオニーが真っ先に、但し囁き声で二人を制止した。気持ちは大いにわかる。私もできるなら止めたい。

 

 

「ハーマイオニー、君は分かっていないよ」

 

 

 そんなハーマイオニーを宥めるようにフレッドが言葉をつづけた。

 

 

「俺たちはもう、ここにいられるかどうかなんて気にしない。本当なら今すぐにでも出ていきたいさ。でもな……」

 

「俺たちはダンブルドアのために、やるべきことをやろうという決意なのさ。これは誰でもない、俺たちの役目なんだ」

 

「それに素晴らしいバックがついているもんでね。いなくなった後の生活も既に確立してある」

 

「三日後だ、三日後に第一幕があがる。楽しみにしていてくれ」

 

 

 そういって二人は寮の自室へと帰っていった。何をしでかすかはわからないけど、正直不安しかない。先ほど彼らが持っていった紙のリストに、「火薬」だの「亜鉛」だの書かれていたけど、何か爆発物でも作るのだろうか? それに彼らの言っていた強力なバックアップ、それは恐らくシロウだろう。退学後の話は私も一枚かんでいるために何も言わないけど、果たしてシロウが行うバックアップとは一体何なのだろうか。行き過ぎたものでなければいいのだけれど。

 

 明くる日から、私たち五年生は寮担当教員による進路指導が行われていた。O.W.L試験も間近に迫った私たちは、二年後には更に試験を受け、本格的に卒業後の進路を決め、就職活動をしなければならない。フレッドとジョージのように、力強いバックアップのもとに店を開くなんてごく少数だ。まぁシロウならバック無しでもできるかもしれないけど。

 それは置いておきまして。この進路相談は私も例外なく受けることになった。其々通達された時間に指定の教室に行くのだけど、私が面談に行ったとき、部屋の中にはマグゴナガル先生だけでなく、クs……御糞なオババの姿もあった。マグゴナガル先生の様子を見ると、どうも私の時だけに見に来ているらしい。先生の一文字に結ばれた口と視線、それとロンの時には出てこなかっただろうピンク色の羊皮紙が一枚、「オレハココニイルゾ」でもいうように存在を示していた。

 

 

「お掛けなさい、ポッター」

 

 

 先生に促され、対面になるように椅子に座る。デスクの上にはこれまでの成績であろう書類と、そのほかに職業パンフレットの様なものが数冊置いてあった。正直教員か魔法省に務めるというもの以外、申し訳ないけど魔法関係の仕事は考えつかない。基本それ以外の職となると、マグルの様なサラリーマンは殆どいないだろう。

 

 

「さて、今回の面談は貴女の進路について話し合い、残り二年でどの教科を専攻、継続するかを決める指導でもあります。ポッター、卒業後に何をしたいか、大まかで構いません、考えてはいますか?」

 

 

 先生に尋ねられ、思考する。後ろで何かカリカリ書いている音が響いているけど、それすらシャットアウトされるぐらい深く思考世界に埋没する。どれほど考えていただろうか、一時間ほど考えたかと思えるような思考の果てに、私は一つの答えを導き出した。

 

 

「お待たせしました」

 

「いえ、五分ほどしか経っていないので大丈夫です」

 

「ありがとうございます。一つ考えられたのが教員です。中でも得意としているのが『防衛術』や『魔法生物飼育学』、『魔法薬学』なのでそちら方面で」

 

「なるほど」

 

 

 マグゴナガル先生は私の話を聞くと、いくつかの羊皮紙、そして何冊かの小冊子を取りだした。因みに私が防衛術と言ったとき、後方から「ェヘンェヘン!!」という咳払いが聞こえたけど、先生共々無視した。

 

 

「成程、教員ですか。確かによく後輩たちの勉強を教えている場面を目にしますね。得意不得意は兎も角、貴方が教えた後輩の成績は確かに上がっています。その知識量も、教え方も素晴らしいという他はないでしょう」

 

「しかしだからと言って、専門分野の知識だけを有していればいいわけではありません。貴女もここの教員を見ればわかると思いますが、自身の専門分野以外の質問をされます。最低でもO.W.Lレベル、加えて貴方たちも二年後に受けるだろうN.E.W.Tレベルの知識も必要となります。」

 

 

 先生はそう言うと、徐に一枚のパンフレットを開いた。

 

 

「これは教員ではなく闇払いの仕事ではあるのですが、ご覧の通り、闇の魔術というのは何も魔法に限ったものではありません。魔法生物や魔法植物など、人以外の対応するこのも多々あります。二年前のルーピン先生の授業でも理解しているとは思います」

 

「はい」

 

「『防衛術』は勿論のこと、貴方の得意とする他の二科目、加えてあなたが比較的不得手とする魔法史も必要となります」

 

「闇の魔術には、勿論我々が用いる現代魔法とは別に古代魔法も存在します。その点『古代ルーン文字学』はグレンジャーと並んで素晴らしい成績を修めているのは素晴らしいでしょう。この成績から考えると、あとは『魔法史』さえ『E:期待以上』となればどの教員になることも夢ではないでしょう」

 

 

 先生の話を聞いていると、どうやら私は教員になれる資格があり、成績に関しても今まで同様、それ以上の努力を重ねれば教師への道が開かれるだろうと。成程、正直自分に教師が務まるか心配ではあるが、ベテランであるマグゴナガル先生が応援してくださるのなら、本気で目指そう。

 しかしここで先ほどよりも大きな音で、後ろから咳払いが聞こえた。そして今回ばかりは先生も我慢できなかったらしい。先生はオババのほうに向きなおった。気のせいか、その眉間には微妙に皺が寄っているように見える。

 

 

「のど飴はいらないのですか、ドローレス?」

 

「あら結構ですわ、御親切にどうも」

 

「ただミネルバ、少し口をはさんでもよろしいかしら?」

 

 

 オババがミネルバと先生を呼んだとき、一瞬だけど先生の眉間がピクリと動いた。

 

 

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「そうですか?」

 

「ええ、それはとても。私の授業における成績や態度などを記したメモをお渡ししたはずですが?」

 

「これですか?」

 

 

 先生は書類の中から毒々しいピンク色の羊皮紙を取り出した。というかピンク色って、どうやったらそんな色に出来るのやら。

 

 

「ええ目を通しましたよ。そしてその上で、彼女の日常生活を垣間見て、彼女は教員に適性があると私は判断しているんです」

 

「ですがそれでしたら理解が出来ませんわ。ミネルバがどうしてポッターの無駄な望みを……」

 

 

『無駄な望み』。オババがそう言った瞬間、部屋の空気が一気に冷え込んだ、様な気がする。目に見えてわかるように、マグゴナガル先生の怒りの感情が感じ取れた。

 

 

「『無駄な望み』? ドローレス、それは貴女個人の感情で決めつけているに過ぎませんか? 貴女のメモだけでなく、この場には彼女が受講している科目の教員、そしてそれ以外の教員の評価があります。それらを鑑みて判断しているのです」

 

「ポッターが教員になる、いえ、魔法界にて職を得るなど万に一つもあり得ないでしょう」

 

「……どうやら話すだけ無駄なようですね。ポッター、誰が何といおうと、自分の道を切り開くのはいつだって自分自身です。我々教員は、貴女が道を切り開くための助力を惜しみません」

 

 

 どうやら先生との面談はこれで終わりらしい。私は荷物をまとめ、部屋から退室した。後方ではゲロゲロリンと鳴き声を上げるカエルと、それを適当に聞き流す先生の音が聞こえてきた。

 余談だけど、この後はシロウの面談で、噂によるとカエルは面談前後の記憶が消えるほど、ノックアウトする衝撃を受けたそうな。そのおかげか、夕食の席でカエルは頭に包帯を巻いていた。どうやらマダム・ポンフリーは態々カエルのために薬は出さなかったようだ。

 

 

 

 

 






お待たせしました。
いや、本当に申し訳ありません。前書きでも少し書いたように、少々執筆できる様な状態じゃなかったです。ハーメルンもお気に入りを読みつつも、執筆ページ開いても一文字もかけないという感じでした。

さて、今回は進路指導に焦点をあて、原作を覚えている方は改変に気づいておられると思います。原作ハリーは「闇祓い」志望でしたが、マリーは教員志望としました。


次は外伝を更新しようと思います。それでは皆様、また次回。



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