「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね！」
「司令官、ごきげんよう。本日はお日柄もよく、なのです」
「どうしたんだ？暁。そんなにあらたまって」
「失礼ね。朝の優雅な挨拶はレディのたしなみよ」
「たちなみか」
「た・し・な・み・よ！ちゃんと言ったじゃない！」
「悪かった悪かった。……ごきげん麗しゅう、リトルレディ」
「ふふんっ、わかってるじゃない」
「そうか。……適当に言ってみただけなんだがな」
「……って！リトルは余計よ！子供じゃないって言ってるでしょ！」
「まあまあ、一緒にこたつにでも入ろう。美味しいみかんもあるぞ」
「し、仕方ないわね。べ、別にみかんが食べたい訳じゃないんだから」
「ん？なんだ、その手に持っている雑誌は？」
「これはファッション雑誌よ。立派なレディはファッションも完璧じゃないと」
「へえ」
「何よ！その気のない返事は！」
「ちょっと待って。このみかんの皮が」
「司令官のばかばかばか！ちゃんと聞きなさいよ！」
「わかったわかった。ちゃんと話を聞くから」
「もうっ！それでね司令官。今日は暁のコーデネートを手伝ってもいいのよ？」
「完璧だったんじゃないのか？」
「と、当然よ！」
「じゃあどうしてだ？」
「……今朝、響に言われたのよ。姉さんは似たような服が多いねって」
「ふうん？」
「た、確かに持ってるのはワンピースとかが多いけど、でもねでもね」
「うん」
「色とかも違うし、組み合わせもいっぱいあるんだから！」
「じゃあコーディネートはいらないな」
「そ、それとこれとは話が別よ！」
「はいはい、コーディネートすればいいんだろ？」
「そうよ！……ありがと。お礼はちゃんと言えるし」
「そうか。暁は偉いな」
「頭をなでなでしないでよ！もう子供じゃないって言ってるでしょ！」
「そうむくれるな。それで、いつもとは違う格好か」
「うん」
「あれだ、別に服装を変えなくても、身につけているものや持っているバッグなんかを変えたらいいんじゃないか？」
「例えば？」
「そうだな。暁はワンピースにポシェットを持っていることご多いよな？」
「そうよ？」
「例えばそれをハンドバッグにして、帽子なんかをかぶれば大分印象が変わるんじゃないか？」
「それよ！流石ね司令官」
「ほら、これなんていいんじゃないか？軽くて丈夫。水にも強くてそれでいて収容量も多い。遠征とかにも持っていけそうだぞ？」
「どれどれ…………って、ランドセルじゃない！もう、許さない…許さないんだから！」
「いたたた、謝るから太ももを抓るな」
「真面目に考えてよ！」
「すまん、すまん。そうだな、思い切ってズボンでも履いてみたらいいんじゃないか？」
「……どんな？」
「例えばこの雑誌に載っている……こんな格好はどうだ？少し派手かもしれないが暁に似合うと思うぞ？」
「こんなの！レディじゃないわ！レディはもっとお、お、お淑…やか？でないと」
「おおーちゃんと言えたな」
「拍手しないで！馬鹿にして！」
「まあ、大人のレディだってたまにはこういう、パンク？パンクファッション？……みたいな服を着てるぞ？」
「……ほんと？」
「ほんとほんと」
「……じゃ、じゃあ今度買ってみるわ」
「そうか」
「ありがと、司令官」
「どういたしまして」
「ふふんっ、待ってなさいよ響。普段とは一味違う、暁の魅力でぎゃふんと言わせてあげるんだから！」
「元気だなー、暁は。しかし、今日は少しからかいすぎたな。……今度髪飾りでも買ってやるか」
「眠かったらどうぞ。私の膝を貸そうか」
「なあ」
「なんだい、司令官」
「こたつはいいなぁ」
「そうだね」
「響、その持っているみかんを貸してみろ」
「食べたいのなら目の前にあるじゃないか」
「違う違う。今から響の持っているみかんの房の数を当ててみよう」
「そんなことができるのかい？」
「まあ、貸してみろ。このみかんは……九つに分かれているな」
「……本当だ。どうしてわかったのさ司令官」
「向いたみかんの皮があるだろ？その皮のヘタの部分を見てみろ」
「ヘタが取れてて少し窪んでいるね」
「その窪んでいる部分に白い粒のようなものがあるだろ？」
「うん」
「その粒の数で実の数がわかるんだ」
「へえ、それでわかったのか」
「ああ。因みにどうして同じ数なのかは知らない」
「ふうん」
「…………」
「…………」
「暇だな」
「そうだね」
「今日も一日平和だったな」
「そうだね」
「すること、ないよなぁ？」
「仕事は午前中に終わったよ」
「そうだったな」
「そうだね、お茶でも淹れてこよう」
「頼んだ」
「今朝、ほうじ茶をもらったんだ」
「そうなのか？」
「うん。それで、いつものお茶とほうじ茶どっちがいい？」
「そうだな、せっかくだからほうじ茶をもらおう」
「了解」
「ほうじ茶の香りは落ち着くなぁ」
「そうだね」
「そういえば知ってるか？」
「何をだい？」
「最近、深海棲艦の動きが活発になってきたらしい」
「もうそんな時期なんだね」
「ああ、もう直ぐ大規模な出撃が始まる。俗に言うイベントだな」
「今回のはどんななのかな？」
「さあ？……まあ、この鎮守府にはあんまり変わりはないだろうけどな」
「そうだね。いつも多少出撃が増えるくらいだからね」
「平和なのは喜ばしいんだがなぁ。することが本当にない」
「司令官。お茶が冷めるよ」
「おっとそうだった。……うん、美味い」
「いつもとは違った感じだ」
「ああ。しっかし、こたつに入って熱いお茶を飲むとどうも眠くなるな」
「眠かったらどうぞ。私の膝を貸そうか」
「それだと響が寒いだろ？」
「このくらい平気さ。それに最近は空気が暖かいからね。大丈夫だよ」
「そうか。それじゃあお言葉に甘えて」
「司令官の髪は硬いね」
「ひっぱるな。そりゃあ響の髪と比べたらなぁ。他の男のは知らん」
「うん」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ、司令官」
やっぱり響を書いている時が一番です。