ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

23 / 42
ゴルゴナが親子竜にやった酷いこと一覧
①竜の騎士の仲間(精霊)にとどめを刺す(キルバーンもちょっと悪い)
②バラン暗殺未遂
③バラン捕獲未遂
④バランの妻、ダイの母であるソアラの故郷アルキードを滅ぼす
⑤ダイの実祖父・アルキード王の殺害
⑥ソアラの殺害
⑦バランとダイの仲を物理的に引き裂きダイを孤児に(ボリクスもちょっと悪い)
⑧そういえばダイの生まれ故郷のテランも滅ぼした
⑨アルキードを鬼岩城を使って大陸ごと痕跡消去。完全に滅ぼす(ムー人もちょっと悪い)
⑩アルキード、テラン滅亡をバランのせいにしてお尋ね者にする

これはもうゴメンナサイしても許してもらえないかもしれませんねえ………



連合崩壊

リンガイアの大城塞を包囲し、

徐々にリンガイアを疲弊させていた連合軍であったが、

本国から火急の伝令が次々に各国首脳の元に駆け込んできて、

それぞれの王や将軍達は顔を青くしたり赤くしたり嫌な汗をかいたりで

各軍が急ぎ撤退の準備を始める。

事実上、ここに連合軍は解散となりリンガイアは窮地を脱することになる。

しかも、主要な国々はどこもモンスター達に襲われているのに

リンガイアには組織的に動くモンスター軍団はやって来ておらず、

「大魔王軍何するものぞ。

 カール騎士団率いる連合軍さえ敵わなかった我らに恐れをなしている」

という認識を国民の多くに植え付けてしまった。

会議の場にて大将軍バウスンは、

 

「これを気に講和の道を模索すべきです。

 大勇者アバンは敵でありながらも信じるに足る将。

 彼に仲介を頼めば悪いようにはならぬでしょう」

 

と血気にはやる諸将をたしなめる。

しかし、

 

「百戦百勝のバウスン殿の言とも思えぬ! 何を弱気な!」

 

「そうだ。 連合は散り散りになって本国に帰還しだした。

 今追撃をかければ間違いなく精強なるリンガイア戦士団は奴らを打ち破る」

 

「我らには将軍の一子、北の勇者ノヴァ殿もいる。

 大勇者をも降して、返す刃でモンスター共を倒せば、

 世界は我らリンガイアの手の内に転がり込んでくるのだぞ!」

 

「さよう。 これは世界を掴む千載一遇の好機。 講和などとんでもない」

 

連合にも長年屈しなかった諸将の自信と、

連合と長く争った彼らの”敵国”への憎しみはなかなかに根深く、

2つの要素が彼らの視野を狭くしていた。

 

「魔王軍に世界が滅ぼされれば何もかも終わる。

 世界制覇どころの話ではない!

 今は人間同士足並みを揃えねば、我がリンガイアとて危ないのだ!」

 

繰り返しバウスンは抗弁を試みるが、諸将の反応は芳しくない。

リンガイア随一の名将であり功臣であるバウスンは大権を有しているが、

さすがに単独講和などできるわけもなく、

 

「…………魔物共のことは心配いらぬ。 我らリンガイアは連合の後ろを突く」

 

今まで沈黙を保っていた王の一言で大勢は決した。

バウスンが顔色を変えて、

 

「王! ご再考を! モンスター共は話の通じる連中ではありません!

 どのような根拠でもって魔物が動かぬと断じるのですか!

 魔王軍は人類の敵! 今は他国と協力して―――」

 

尚も抗議を続けようとしたが、

 

「話し合いは終わった………既に動く段階であるぞ? バウスンよ」

 

取り付く島などなかった。

(陛下は変わってしまった……一体どうしたというのだ)

そう思い、祖国と主に一抹の不安を覚えながらも

仕事に一途な真面目人間であるバウスンは国王の命に服するのである。

野心がなさすぎるが故に命令に逆らってまで王をたしなめる…

という発想が生まれないのが彼であった。

早足で廊下を歩き兵舎に向かうバウスン。

と、彼の視界に壁にもたれてこちらを見てくる若者が一人。

距離が縮まると自然、その若者が口を開く。

 

「父さん。 陛下はなんと?」

 

「……ノヴァか。 陛下は……連合軍の追撃をお命じになられた」

 

バウスンの表情は暗く、冴えない。

しかしノヴァは、

 

「……いったいどうしたんです。 元気がないな。

 父さんらしくもない。 連合共は僕らの不倶戴天の敵。

 城壁を頼りに防戦一方だった鬱憤を晴らすチャンスじゃないか。

 自分達も疲れている時は相手も疲れている……父さんの教えですよ。

 リンガイアは限界だったが、連合も苦しかった筈………そこに魔王軍の決起。

 これは勝機でしょう?」

 

勝つことしか考えていない。

負けることを考えて戦いに臨む者などいない。 ノヴァの姿勢も正しいといえば正しい。

やや置いて「…………思えば」と、徐ろにバウスンが言い出した。

 

「お前は幼い頃から戦ばかりだったな………。

 お前の才に頼り、戦場に引っ張りだし……多くの人間の首を討たせてきた」

 

ノヴァは怪訝そうな顔で、

 

「それがどうしたのさ。 今の世じゃ別に珍しくもないだろう。

 それに……僕はバウスンの息子で、才能がある。 戦う才能がね。

 これで戦場に出ないほうが、むしろ国に対して不忠だと思うけど?」

 

僅かに過剰な自信と確固たる信念を覗かせる。

そんな息子の様子を見てバウスンは、嬉しくもあり同時に少し不安であった。

 

「国か………私もリンガイアに……王に剣を捧げた身だ。

 祖国とそこに住まう民を愛している。

 だが………モンスターが動き出した今、

 一国家の思惑を超えて手を取り合うべきではないか……。

 私はそう思っている」

 

「リンガイアには魔王軍は現れてないだろ。

 大城壁と父さん…僕。 精鋭揃いのリンガイア戦士団。

 魔物共もバカじゃないってことさ……知っているんだ。

 リンガイアが落ちやしないことを、ね」

 

「古今落ちなかった城はなく、滅びなかった国はない。 アルキードは記憶に新しいだろう?

 ノヴァ………カールのホルキンスに、お前が負けたように上には上がいる」

 

「………」

 

表情に”ナマイキ”が若干浮かんでいた若者の表情が

ややムッとしたものに変わり、それ以上に引き締まる。

 

「リンガイアを滅ぼす自信があるから魔王軍は動いていないと?」

 

「分からない。 だが、陛下には自信があるようだった。

 まるで………モンスター達が動かないことを知っているかのような………、

 いや、そんなわけがないな………。

 だが、ノヴァ…覚えておいて欲しい。

 私は英雄だ何だと過分な評価を皆に貰っている。

 陛下も私を信頼してくださる……ありがたいことだ。

 だが、私は国を超えて動けない。

 私の生涯はリンガイアとともに在る……それが私の視野の狭さであり、限界だ。

 しかしお前は、国家に囚われるな。 世界を見て欲しい。

 お前は………それが出来る天賦を持っている」

 

「何だか気味が悪いな……父さんが僕を褒めるなんて。

 明日は槍の雨でも降ってくるんじゃないか?

 ……まぁやってみせるさ、僕は”北の勇者”だからね。

 でも、とりあえずは出陣だろ?

 陛下のご命令だし……連合に勝たなきゃ、魔物対策もできやしない」

 

「………そうだ、な。

 今は、目の前の戦に集中すべきだ」

 

その日、リンガイアは主だった将兵全てを追撃戦に投入した。

バウスンを総指揮官としたリンガイア軍の烈火のごとくの強襲に、

アバンを欠いていた連合軍は散々に打ち破られた。

数で圧倒的に上回る大軍、長陣からの撤退直前、本国の襲撃という動揺、

事ここに至って人間同士で争いはしないだろうというある種の楽観。

それらが連合軍に重大な隙を産んでしまった。

リンガイア王の人間性を信頼しすぎてしまったとも言えるし、

王の野心を甘く見ていたとも言える。

ホルキンスとアキームの必死の防戦によってフローラは無事に乱戦を離脱したが、

オーザムは王が戦死し軍団も壊滅、カール騎士団とベンガーナ戦車隊は3割を喪失し、

残留していたパプニカとロモスの少数の将兵は全滅した。

それに引き換え、リンガイアの損耗は1割強で、

十倍とも二十倍とも言われた戦力比をひっくり返しての歴史的大勝利であった。

しかも、敗北した連合諸軍を待っているのは、懐かしき安全な故郷ではない。

魔物が跳梁跋扈する滅びつつある故郷。

5大王国は一転して崖っぷちに追い込まれたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――深夜…リンガイア王の私室――

 

「黒き賢者よ…………そなたの言うとおりに、なった………。

 我らリンガイアは勝った………そなたは………そなたは………、

 まさ、しく…リンガイアの守り神………、

 どうすれば、あなたの……大恩に…報いること、が、出来ようか……」

 

ゆらゆらと頭を揺らした初老の男、リンガイア王。

しかしその見た目は実年齢以上に老けて見える。

髪はか弱く細くなり色素が抜けてすっかり白髪頭となり、

皮膚には水気がなく深いシワがそこかしこに刻まれて、目は落ち窪み唇は乾燥しきっている。

瞳はもうどこを見ているのかもわからぬぐらいに焦点が合っていない。

声もしわがれて、本当に生者なのか疑わしいほどであった。

そんな生ける屍(リビングデッド)の如くの王の目の前に立つは、黒いローブで全身を包む背虫の魔人。

 

「ぐぶぶぶぶぶぶぶ……見事であったぞ、リンガイア王よ。

 そなたの所業に我が偉大なる神もお喜びである。

 王の威光は遍く大陸に行き渡り、魔物達もひれ伏すであろう。

 もはや魔物は王の味方………。

 お前は天命に選ばれたのだ…………それを自覚し、神の声に従え。

 さすれば、リンガイアは……貴様は永遠に讃えられる存在に昇華されよう」

 

「神……の……こ、え………」

 

「左様………天界をも掌中に収める、魔界の神………。

 天、地、魔を従えし大魔王………貴様の主の名を讃えよ……」

 

「う……あ……我が……ある、じ…………」

 

「その名は…………大魔王バーン………!」

 

「バー、ン………神…バーン…………我が主……大、魔王、バーン……」

 

明くる日、リンガイア王から衝撃的な発表が国民にもたらされた。

リンガイア国、魔王軍と同盟す。

同時に国内のモンスター達を国民として扱い、人と魔の理想郷とする旨が通知されたのである。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。