ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

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女っ気がないぞ!どういうことだ!
キアーラを呼べ!

ロト紋4巻のゴルゴナとバラモスゾンビのやりとりが凄く好きです。
ちょこちょこ改変してますが、基本あの会話です。
バラモスの時と同じ会話なんて変だ!と思いましたが……思うだけでした。


腐敗の雷竜

ゴルゴナは、大魔王バーンと直接話すことが許されている。

現在はまだバーンの元にいないが、後の魔軍司令ハドラーでさえ

ベール越しにのみ謁見を許されていたことを思うと、

これは破格の扱いであった。

もっともこれは、ゴルゴナを復活させる際に自然と姿を見せる形になってしまったからで

信頼の証とかそういうものではない。

だが、ゴルゴナの語る『異界の話』はバーンの興味をそそるのに充分なものだった。

強さだけでなく知も兼ね備えている大魔王はこの世界において知らぬことなど、

ほぼ無い……と言っても過言ではない。

神話・伝承・伝説。 真贋織り交ぜほぼ全てを知ると自負するバーンにとってすら、

ゴルゴナの語りの内容は興味深かった。

異世界アレフガルドと地上世界。

主神ミトラ、大地の神ガイア、太陽の神ラー、月と英知の神ミネルヴァ。

そして精霊ルビスと大魔王ゾーマ。

古代帝国ムーの超科学。

世界樹の葉を利用した不老不死の人形と異界の破壊神異魔神。

勇者ロトと、その子孫アルスの活躍。

 

「面白い………実に面白いな。

 特に死者を生き返らすという世界樹の葉と、

 おまえがそこから創りだしたという不老の肉体。

 素晴らしい技術だ………まさに神域へと辿り着いた人類の叡智といえよう。

 それが真実ならば、な……………」

 

もちろん拾った大蜘蛛が、気が違えた”イカれ”で無いのなら……という大前提での賞賛。

 

「ゴルゴナよ……お前の力と知識……。

 嘘偽りでないことを余に証明してみせよ」

 

半信半疑の域を出ないバーンは、ゴルゴナへと迫る。

それは当然だろう。

全知全能たる大魔王バーンが、嘘八百の与太話に躍らされるわけにはいかないのだ。

バーンが片手を軽く振るうと、三人と一匹の姿が宮殿から消えた。

次の瞬間には、彼らは酷く破壊された鬱々とした開けた荒野へと瞬間移動し、

 

「これはこれは………この戦場跡は………、

 ひょっとしてかの冥竜王ヴェルザーが雷竜ボリクスと伝説の決戦を行ったという…?」

 

キルバーンが冷笑を浮かべながら問う。

 

「そう…………この地で”真竜の戦い”が繰り広げられたのだ。

 ヴェルザーとボリクスの闘気と魔力、ブレスによって全てが焼きつくされた地。

 竜の爪痕よ……」

 

数百年前に行われた、未だに語り草となっている名勝負。

 

「ゴルゴナよ。 この地に王となりそこねた竜が眠っておる。

 彼の者を甦らすのは余でも骨が折れる。

 おまえの死者を司るという力を見せるがいい。

 冥王の名が伊達ではないことを………おまえが語ったものが

 真実であることの証明の一端を見せよ」

 

バーンは静かにそう告げた。

 

「はっ………御覧ください………。

 我が極めし地獄の秘術を…………!!」

 

三本指の蜘蛛の腕が、ゴルゴナの全身を覆う烏の濡羽色のローブから鋭く飛び出し、

左右に広々と広げられる。

 

「ぐぶぶ………、我…冥王…

 ここに永遠の暗黒より偉大なる魔界の竜を召喚す……」

 

不気味な6つの灯火が竜の爪痕に灯りだし、

そこから素早く炎が円を描くように伸びていく。

 

「描かれたる六芒の魔法陣……印されたるルーンの秘文字……

 唱えられたる呪文の効力によりて……

 天に燃ゆる金蠍宮(スコーピオン)の火の心臓よ……

 我が従僕にかりそめの命を与えるべし……

 旧き世の殺戮者 猛々しき魔界の竜よ 永遠の闇より来たれ!!」

 

ゴルゴナの詠唱が終わるとともに、

大地より瘴気が染み出し、それに追随するように骨がズズズ…と湧き出る。

 

「…………!?」

 

「こ、これは!」

 

ミストとキルの両名も驚きを隠せない。

地面より這い出た巨竜の骨に、瘴気を纏った腐肉が纏わりつく。

千切れた神経が、筋肉が、やがて旧き偉大な雷竜を形作り――

 

「……素晴らしい」

 

全能の魔界神すら感嘆させた。

 

「グオオオオオ……! アアアギギギギギギギ!!

 痛イ……! 体ガ…痛イ…! 早くオレを、安息の眠りに戻スノダ……!」

 

腐臭を放つ雷竜が、激しい痛みに半ば我を失いながらも

己を甦らせたであろう、目前の黒衣の男を威嚇する。

しかし、

 

「それはできぬ!」

 

ゴルゴナは一蹴する。

彼の対応は慣れたものだ。

 

「グ、グ……き、貴様ァ…! 死…ね……ライ…デイぃン!」

 

ボリクスの腐った体が電撃を一瞬纏う。

と、魔界の暗い空を轟音とともに閃光が引き裂いた。

雷光は鋭く蛇行しながらゴルゴナを貫く。 が、

 

「………魔界の者でありながらライデインを使うか。 頼もしいぞ……ぐぶぶぶ。

 しかし、ライデインなどこの冥王に効かぬ」

 

ゴルゴナの衣すら焼けつくこと無く、ライデインはただ大地を焼くのみ。

もちろん、彼の後ろに控える三名も無傷であった。

 

「め、冥王………? 貴様は………ヴェルザーの手の者か……!?」

 

生前の威力には遠く及ばないものの、己の得意とする雷撃が完全に無効化され、

ボリクスの矜持は酷く傷つき、また彼の意気は消沈した。

 

「ヴェルザーなど関係無い。

 …我が従僕よ……おまえの主たる冥王の言葉に耳を貸すがよい。

 いずれ魔界に光を取り戻す”聖戦”が始まる。

 その時、貴様は我のため………そして、大魔王バーン様の御為に戦うのだ。

 我が従僕に命ずる………。

 地上を焼き払い、人間を喰らい尽くせ。 天の神々を討ち滅ぼせ」

 

ボタリ、とボリクスの腐肉が垂れ落ちる。

大地に広がったその腐肉が、すぐさま異形の別種モンスターを形作る。

ボタリ、ボタリ、と更に落ちる濁った汁と悪臭放つ肉。

次々に不完全なアンデッド達が生まれ落ちていた。

 

「なぜ……貴様らのために戦わねばならぬ……!?」

 

「お前の主たる我がそう命ずるからだ……」

 

「ぐ、グオオオオオオオオォォッッッ!!!

 フザケルナ……! オレを誰だと思っている………!

 知恵ある竜……雷竜ボリクスなるぞ……!!」

 

「ぐぶぶぶぶ……古、冥竜に敗れし哀れな雷竜よ……。

 重ねて命ずる………バーン様の手駒となれ」

 

反骨の意気地を折られた雷竜の腐った瞳に、

再び敵愾心が燃え上がる。

かつてのオレならばこのような無礼者は即座に喰らってやったというのに!

そう思うボリクスであったが、体が思うとおりに動かない。 

激しい痛みが絶え間なく襲い、体から自由を奪っていた。

そして気付いた。

 

「!? き、貴様! オレの皮膚を……わざと創らなかったな!?

 このオレを……痛みで縛ろうというのか……!!」

 

「そうだ……おまえは業火の鎖で永劫縛られ続ける。

 我は冥王にして死の支配者………

 我が妖術によって甦った者は誰であれ我が命令に背くことは出来ぬのだ」

 

魔界の大地に風が吹く。

それはそよ風に過ぎず、

荒れ果てた地に僅かな雑草程度しか薙ぐことの出来ぬものだったが、

 

「グゥゥゥゥゥ……、イ、痛イ…痛イ……痛イ……い・た・い…ぃ!」

 

全身を焼くような苦痛が休むこと無く駆け巡り、

誇り高き雷竜から正気を奪っていく。

 

「天と地の全てを滅ぼした時、おまえに再び永遠の安息を与えてやろう」

 

ゴルゴナは冷酷に言い放つ。

その放言っぷりを後ろで聞いていたキルバーンは、

口の中で押し殺しながらも、クックッと笑う。

 

(いやいや……なんとも堂に入った外道っぷりだねコレは)

 

「ぐぶぶぶぶ……腐った肉でできたおまえの体……

 むきだしの神経が刺激され、風が触れただけで気が狂うほどの痛みが走る……。

 だが……その地獄の苦しみが…お前の力を限りなく増幅させるのだ」

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

痛みに狂った竜の咆哮が魔界に木霊する。

 

「ぐぶぶぶ……、聖戦が発動するその時まで

 我が冥界の魔牢にて痛みに狂い続けよ……」

 

ゴルゴナの黒きマントが不気味に伸びると、そのまま猛る竜を覆い包む。

ボリクスの巨体がすっぽり覆われると黒のマントはそのまま地の影と融け合って、

雷竜を、その腐肉から産まれた不死生物ごと魔界から消し去った。

 

しばしの沈黙がながれ、

 

「素晴らしい見世物であった…ゴルゴナよ」

 

大魔王の素直な称賛であった。

 

「お褒めに預かり恐悦至極……」

 

ゴルゴナが猫背を更に俯かせて平服する。

 

「死を司る冥王の名に恥じぬ力だ………。

 改めて余から冥王の称号をおまえに授けよう」

 

「ははーっ」

 

今さっきまで雷竜が存在した場から、

ゆっくりとその視線をゴルゴナへと向けるバーン。

 

「お主の力は見届けた。

 ならばその”知”にも期待させてもらうぞ…?

 おまえの言っていた不老不死の人形……再度造り出すがいい」

 

「……そ、それは…難しいかと思われまする……。

 こちらには、我が故郷に存在した世界樹が無く……

 例の人形は死者をも甦らす世界樹の葉から、

 その成分を抽出することが肝でございます故……」

 

その言葉に、しばし大魔王は考えこむような素振りを見せ、

徐ろに片手で美し整えられた白いアゴ髭を撫でる。

 

「無いのならば創り出せば良い。

 進化の秘術を秘めたる我が鬼眼の力……お主に貸し与えてやろう」

 

ニヤリと老帝が笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔王バーンのお気に入りである魔界の第7宮殿。

そこに戻ってから、ゴルゴナの破格だった扱いはさらに良くなった。

それは『気まぐれで拾った半蟲半人のペット』から

『正式な側近』へと昇格した証。

ゴルゴナへと与えられる道具・書物の類はより上質のものへと変わった。

そして中でも別格の物が、

 

「この宝玉には余の”鬼眼”の力が込められている。

 進化させるものの種類、大きさにもよるが……大体10回も使えば魔力が切れる。

 この”進化の秘宝”を5つ、お前に授けよう。

 それを使いきるまでに………一定の成果を余に見せるのだ」

 

進化の秘宝であった。

この宝玉の力にゴルゴナは戦慄した。

 

(こ、これが大魔王の力………我の及ぶところではない…)

 

何の変哲もない植物に使っただけで、

高位の魔族に迫ろうかというモンスターが生まれたからだ。

ゴルゴナは感動と同時に絶望した。

出し抜けるかも知れぬ……という淡い希望が、完全に身の程知らずな野望だったことを悟った。

 

(純粋な魔力は…異魔神とそう大差はないかも知れぬ。

 だが、バーン様の魔力の応用力・転換力は……恐らく異魔神を上回っている。

 それに……奴は我がいなければろくに動けぬ不出来な神であったし、な)

 

かつて自分の故郷を滅ぼした時に見た異魔神の高密度言語魔法。

あれは自然災害を連発するかのような恐るべきものだったし、

海王リヴァイアサンから知性を奪った超魔力も見事だった。

だが、異魔神は独り立ちできぬ哀れな破壊神でもあった。

降臨に必要なお膳立ては全てゴルゴナが行った。

不滅の肉体も、自分が用意した。

ムー帝国における暴走に学んで、

異魔神の肉体に仕込む『キルスイッチ』の準備も密かに推し進めていた。

あの時……エッゾで勇者一行を追い詰めた時に、闇のオーブの行方さえ掴んでいれば。

そうすれば異魔神を己の傀儡として、世界を思うがままに支配できたのに。

ムーを復活させ、新たな太陽王になれた筈だったのに。

その暁には、兄弟の誼でタオを相談役なりなんなりにして飼い殺してやっても良かった。

だと言うのに精霊ルビスに誑かされた愚かな兄は……!

瞬間的に、様々な記憶と感情が交差する。

 

(フン……だが、今となっては全て過去のことよ。

 我は………この世界に……大魔王バーン様に賭ける……。

 この御方がいれば……永遠の安寧と至福は、手に入る…!)

 

死を回避し、美味い飯を食い極上の美酒に酔い、

世の美女達を囲ってどっぷりと欲望の極楽に浸かり続ける。

そんな余りにも俗物染みた望みを魔界の神へと願う。

そして願いの代償として魔界の神へ捧げる供物は、

 

「人間共……そして神々……グブブブブブ」

 

一人の元人間の欲のために、地上の人々と天上の神達……

その全てが犠牲の祭壇へと祭り上げられた。

 




本当は進化の秘宝じゃないくて進化の秘法ですが…
秘宝の方がこのssだとぴったりなのでこれで行かせていただきます。

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