魔物語   作:フール

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俺があの街を訪れたのはこれで四回目になる。一回目は阿良々木君と初めて出会った、GWの始まり四月の二十九日。あの時は確か、阿良々木君と羽川さんが尾のない猫、尾を引かない猫の死骸を埋めてた時だったかな。

 

あとあとになってそれが大問題になったのだが、まぁそれを知ってても俺は彼らの埋葬を止められなかっただろう。埋葬すること自体は間違いなく正しく、褒められたことなのだから。

 

正しい行いをする子供を止める権利なんて大人は持ってないのだ。あるのはその行いを優しく見守ること、そしてその行いを妨害する無粋な奴を止めることや、その行いの結果の後始末くらいだ。歳を取ればなんだって出来るようになるなんて思い違いも甚だしい。歳をとっても出来ないことは出来ない。大人に出来ることなんて出来ることだけなんだ。

 

そして、次に訪れのはそれから九日後……いや、八日後の未明。華のゴールデンウイークも最終日近くだった。具体的な日付で言えば、五月の六日のことだ。やりかけの仕事が終わった俺はふと、この街を再び訪れていた。

 

理由は、そう観光とでもブラブラとでもおこう。何と無くだが、この街を訪れないといけないような気がしたのだ。虫の知らせ、天からのお示し、第六感。とりあえず、そんなモノが俺に働きかけ俺はこの街を再び訪れた。

 

まぁ、その結果は訪れてよかった。

 

もし、訪れていなければ最悪、羽川さんも阿良々木君も死んでいた。力になると約束して契約して、さらに阿良々木君には文字通り命を賭けるとまで言っておいて、その二人が先に死んでしまったら約束を守ることも契約を果たすことも出来ない。約束を守れない、契約を果たせないのは困る。俺は阿良々木君に命を賭けると宣言した。なら、その借りを返す前に阿良々木君が死んで借りを返せないのなら俺は死ぬしかない。

 

『キミが死んだら世界を滅ぼすよ。だから、気をつけてね』

 

俺が死ねば世界が滅びる。それは勘弁してほしい。死んでまで世紀……いや、人類史上最大の事件の原因にはなりたくはない。それに俺だって死ぬのは勘弁だ。

 

 

まぁ、結論から言ってどうにか事件自体は無事に収束した。何せ、あの時問題になった羽川さんにとり憑いていた怪異は障り猫。面倒なので障り猫の詳しい話は置いとく、知りたければ勝手に調べてくれ。

 

簡単にまとめると俺と障り猫は相性がいい。いや、猫と相性がいいのではなく、エナジードレインという障り猫の性質と非常に相性がいいのだ。

 

とにかくだ、あの時は比較的簡単に事件は終わった。いつも、怪異が関わると死にそうな俺だが、どうにかこうにか無事に解決できたのは良かったことだ。

 

それと、良かったこと言うか、一つの誤算は忍野さんに会えたことだ。昔、色々とお世話になったりお世話したりの関係で仲良くやっていたのだが、お互い風来坊な節があり、合うことはほとんどなかったのだ。しかし、まさかこんなことで会えるとは嬉しい誤算だった。忍野さんはこの街の学習塾跡を寝床にしているみたいだったので、俺もその一室をこの時に借りた。

 

それからは、この街を訪れる時はそこに寝泊まりするようになったのだった。

 

そして、三回目。つまり前回になる。前回訪れたのは完全に遊びにだ。阿良々木君からは先のゴールデンウイークに是非またウチに遊びに来てほしいとお誘いいただいていたし、羽川さんもこの街を案内してくれると言っていたので、この街に遊びに来たのだった。

 

日付をより具体的に言うのなら、五月の二十六日だった。阿良々木君がそういった面倒ごとに巻き込まれやすいのか俺自身が巻き込まれやすいのかは分からないが、この時も怪異絡みで一悶着あった。いや、俺がこの街を離れている間にも色々と阿良々木君の周りではあったらしいから、きっと俺じゃなくて阿良々木君が巻き込まれやすいのだろう。

 

忍野さん曰く「三歩歩けば面倒ごとを引き込んでくる奴」とはよく言ったものだ。俺もそう思う。“ついている”俺も相当だが、阿良々木君も相当なものだ。

 

さて、その前回のことの顛末なんだが、はっきり言って覚えていない。俺自身、あの現場にいたのだが、猿の手、いや悪魔の手を持った少女に殺されかけ、気を失った。そして、気づけば学習塾跡の自室のベッドにいたというわけだ。

 

事件は目が覚めた時には終わっていた。俺が聞いたのは俺が気を失った後のことの顛末だった。俺自身の自己評価としてはよく死ななかったなということだ。

 

俺自身、戦闘は本業ではない。いや、戦闘自体は苦手ではないのだが、誰かを守って逃げずに戦うのは厳しいのだ。俺が完全に守れるのは自分一人だけ。他の人を守ろうとするとてんでダメなのが、この件で改めてハッキリした。

 

しかし、本当に生きててよかった。話を聞けば色々とあったようだが、俺が死ねばあいつは容赦無くこの世界を滅ぼすだろう。今度からは軽々しく約束や契約をするもんじゃないということだな。俺は阿良々木君みたいな主人公(ヒーロー)ではないのだ。身に相応の手段を講ずるのが賢いだろう。

 

 

 

そして、今回その四回目だ。六月の十四日。時刻は黄昏時。赤と黒が混じるこの時間に俺はこの街に帰ってきた。

 

「うーん、こりゃ夜あたり一雨降りそうだなぁ」

 

西の空には夕日が見えるが、上を見れば分厚い雲、東の空も同様だった。これは夜あたりに一雨ありそうな感じだ。

 

『そうだね。なんだか、雨が降りそうだね』

 

少しばかり眠そうなイフの声。いや、こいつは眠たいわけじゃない、ただ寝起きなだけだ。優柔不断に寝たい時に寝て起きたい時に起きるのが彼女だ。だから、起きている時間も寝ている時間もバラバラ。夜行性の吸血鬼の方が規則正しいと思えるくらいだった。

 

「こんな時は早めに部屋に行くか……」

 

もちろん部屋とは忍野さんから貰った学習塾跡の一室だ。貰ったと言ってももともとあの人も不法侵入で勝手に居着いているだけなのでおかしな言い方ではある。

 

『えぇー! あのいけすかないアロハのところに行くの、もう? もう少し遊んで行こうよー!』

 

いけすかないアロハとはもちろん忍野さんのことである。俺は非常に好感をもてる人なのだが何故かイフは嫌っている。もともと誰にだって基本的に好意的に接するイフにとっては珍しい相手だ。

 

「悪いがそんな暇はない。雨に降られたらどうするんだよ」

 

『別に濡れるのはキミだからいいじゃん!』

 

何という物いいだろうか。文字通り他人事とはいえもう少し気を使ってくれてもいいと思うのだが。

 

「分かった分かった。もう大きな仕事も入ってないし、しばらくはこの街にいるから今度どこか連れて行ってやるよ」

 

『言ったね!』

 

「あぁ、いったよ」

 

『約束する?』

 

「あぁ、約束する。そのウチ遊びに連れて行ってやるって」

 

『具体的にはいつまで?』

 

「一週間以内でどうだ?」

 

『長い!』

 

「分かったじゃあ三日だ。三日以内でどうだ?」

 

『うーん、しょうがないなぁ。じゃあ、もし守れなかったらどうする? 何を賭ける?』

 

「何がほしい?」

 

『うーん、右目かな』

 

「分かった。じゃあ右目を賭ける。逆にイフ、もし約束を守った場合はどうする?」

 

『うーん、そうだね。この前の猿の件をチャラにしよう』

 

「OK、分かった。なら、俺はお前と約束して、契約しよう」

 

『うん、楽しみにしてるよ!』

 

そう言ってイフは笑う。太陽のように活発でお日様のように優しく、そしてどこまでも白い声で。

 

「しかし、お前って遊びに連れて行くのはいいけどどこに連れて行けばいいんだ?」

 

『うーん、まぁこの街をプラプラしてキミと話せればいいよ』

 

それは遊びというより散歩じゃね? とは言わない。そんなことでイフが楽しんでくれれば大万歳だ。

 

「しかし、それで楽しいのか?」

 

『うん、楽しいよ! あぁ、後クレープ食べたい。味覚もある程度やろうと思えば共有できるからさ! クレープ買ってよね!』

 

「クレープくらいなら今買ってやる」

 

確か、このあたりのスーパーの前にクレープ屋があったはずだ。前回来た時にファイヤーシスターズの片割れ実戦担当の火憐ちゃんに奢らされ……もとい教えてもらったばかりだ。何でかは知らないがあの姉妹は俺のことを気に入ってくれているみたいだ。

 

『えー! 本当! 本当にいいの!?』

 

少しばかり足を早める。雨が降る前にクレープを買って学習塾跡に行くのが今回のミッションだ。

しかし、何がそんなに嬉しいのやら。こうやってはしゃぐ声を聞くと本当にただの少女のように思えるから不思議だ。いや、きっと彼女もこんな風にクレープを食べて笑える未来があったはずである。そう、考えると……。

 

いかんいかん、暗い考えになってしまった。全くを歳を取ると辛いな。

 

胸ポケットから煙草とライターを取り出しタバコを加える。

 

『だめーっ!! 何考えてるのっ! タバコを吸ったらクレープの味変わるじゃん!』

 

「いや、でも……」

 

『でも、ヘチマもないっ! いい、クレープを食べるまでタバコを吸うことは禁止します! ただえさえ喫いすぎなのに……キミの体は高校生と何ら変わりないんだよ」

 

お前は俺のお袋か! というツッコミはもちろん言わない。言ったら火に油、アルミニウムに水だ。テルミット反応を起こすくらいに騒がしくなるだろう。

 

しかし、クレープを食べるまでタバコを吸うなのと来たか……。

 

俺はクレープ屋に走ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぅ、満足満足!』

 

「お前欲張りすぎだろ」

 

スーパーの前あるベンチに座り俺は言う。腹はパンパン、しかし手にはまだ新品のクレープが入ったビニール袋がある。イフに言われがままに注文した結果、店員さんが引くくらいの量を買ってしまった。具体的に言うと諭吉さん一人と樋口さん一人分の金額のクレープを買ってしまった。

 

もちろん、スーパーの前にあるこの店がクレープ一個何千円もする高級店なはずもなく大量のクレープを買ったと言うことだ。我ながらに馬鹿なことをした。数個買って食べて、まだイフが満足してないならまた買い足すと言ったことをやれば良かったのだ。

 

おかげさまでイフは満足したのだが手にはまだ大量のクレープが余っていた。俺自身甘い物は普段からそこまで食べないため、これだけ大量に食べると吐き気を催すくらいだ。

 

ハッキリ言って気持ち悪い。

 

「なぁ、もうタバコ吸っていいか?」

 

『うんうん、ありがとう! 美味しかったよ!』

 

そう言われると頑張って食べたかいがあったのだが、手元にはまだ大量のクレープ。これ一体どうしろと……。

 

まぁ、いいやとりあえず念願のタバコを吸うか。なんやかんやでしばらく吸えてなかったから半日ぶりくらいか? 普段からヘビースモーカーの気がある俺にとっては驚異的までに吸ってない。

 

胸ポケットからタバコを取り出し、箱のそこを軽く指で叩き一本のタバコを取り出す。普段はボックスタイプのタバコなのだがコンビニに置いていなかったため、今日はソフトだ。

 

タバコを加え、ジッポを胸ポケットから取り出し、カチャリと蓋を開けた時だった。

 

「おーい、兄ちゃん! 久しぶり! 何やってんだ!?」

 

「あぁ、本当だ。お兄ちゃんだ。お久しぶり」

 

声をかけられた。顔をあげれば、スーパーからでて来たのは阿良々木君の妹であり、栂の木二中のファイヤーシスターズの二人、阿良々木 火憐ちゃんと阿良々木 月火ちゃんだった。

 

「あぁ、久しぶり、火憐ちゃん、月火ちゃん。今日は買い物かい?」

 

「あぁ、夕飯の買い物だぜ!」

 

いつも通りのジャージ姿……ではなく制服姿のファイヤーシスターズ実戦担当の火憐ちゃんが元気に応えてくれる。

 

「そうかそうか」

 

「あれ、お兄ちゃんは何をしてるのこんなところで何か大きなビニール抱えてさ?」

 

こちらもいつも通りの和服姿ではなく、制服姿の月火ちゃんが首を傾げる。彼女はファイヤーシスターズの参謀担当だ。

 

「あぁ、これかい?」

 

そうビニールを上げながらついでにタバコを箱へとしまう。

 

「あれ吸わないのか?」

 

「うん、流石に中学生の前ではね」

 

副流煙と言うのは主流煙より害があるのだ。それに彼女たちを巻き込むわけにはいくまい。

 

「私たちなら別に気にしないからいいのに……。それに私は煙草の匂い嫌いじゃないよ。火憐ちゃんはもっとね……」

 

月火ちゃんは笑いながら火憐ちゃんを見る。

 

「おいおい、月火ちゃんなに言ってんだよ!」

 

火憐ちゃんはなんだが恥ずかしそうだった。

 

「まぁ、そう言ってくれるのは嬉しいけど流石に吸うわけにはいかないさ」

 

「そうか、そういえばなんだけどさ。兄ちゃんって明らかウチの暦兄ちゃんと同い年くらいだろ? それなのに煙草吸っていいのか?」

 

「うんうん、私も火憐ちゃんと同じこと思ってた」

 

「あぁー、それか、それならあれだよ。バレなければ犯罪じゃないってやつだ」

 

「それだめじゃん、兄ちゃん。まぁ、兄ちゃんのことだし何も言わないけどな!」

 

「そうだね、本当なら火憐ちゃんにボコボコにしてもらって矯正して貰うんだけどお兄ちゃんだし、大丈夫か……」

 

下手をすると俺は女子中学生にボコボコにされてたようだ。何とも物騒な世の中だ。

 

それにしても、中学生にタバコを注意されるとは罰が悪い。話題を変えることにした。

 

「それよりもだ、火憐ちゃん、月火ちゃん。クレープ食べない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあまたなー、兄ちゃん! 今度は家に遊びに来てくれよー! 絶対だぜー! それとクレープありがとうな!」

 

「お兄ちゃんまたねー! 火憐ちゃんの言うとおり遊びに来てねー! 絶対だよ! あと、クレープありがとう!」

 

「はいはい、また今度な。雨が降る前に帰れよ」

 

そう言って二人と手を振り別れる。手元にはあと少しになったクレープ。晩ご飯前だと言うこともあり、火憐ちゃん月火ちゃんもそんなには食べられないといいつつも三つずつも食べてくれた。夕飯が食べれるのか疑問に思い大丈夫かと聞いたところ、甘い物は別腹だからとドヤ顔で返されてしまった。全く女の子って言うのは何年経っても分からないもんである。

 

『騒がしい二人だね』

 

「でも、嫌いじゃないだろ?」

 

『うん、もちろんだよ! 明るくて面白いのは大歓迎さ!』

 

「そうか……。さて、今度こそタバコを吸わせてもらうとするか……」

 

胸ポケットからタバコを取り出し咥えた時だった。

 

「おーい、先輩! 先輩じゃないか!」

 

後ろから声をかけられた。振り向けばこちらに向かってる人影。その人影は俺の目の前まで猛ダッシュで来るとキーッと火花でも出そうな勢いで急停止する。おいおい、そんなじゃ膝を壊すぞ。

 

「やっぱり、先輩だったか! お久しぶりだな、先輩!」

 

ショートヘアに私立直江津高校の制服に人懐っこい笑み。そして、右手の包帯。

 

「よう、神原。久方ぶりだな」

 

彼女の名前は神原 駿河。直江津高校の女子生徒であり、阿良々木君や羽川さんの後輩にあたる。

 

『あら、猿の娘だね。お久しぶりー!』

 

「あぁ、イフさんもお久しぶりだな!先輩、イフさん先の件は本当に世話になった! 感謝している!」

 

神原はそう言って頭を下げる。

 

「いやいや、待て待て俺は阿良々木君との約束を契約を果たしただけに過ぎない。お前を助けたのは言わば結果的にに過ぎないんだ。だから気にするな」

 

『ボクの場合はあれかなー。別に猿の娘がどうなっても良かったんだけどね。でも、パートナーであるキミに死なれたら非常に困るから結果的に猿の娘を助けたに過ぎないよ。だから、ボクも気にしないでよ』

 

「しかしだな結果はどうあれ、私は救われたんだ。だから、改めてお礼を言わせて欲しいありがとう、先輩、イフさん」

 

そう神原はもう一度深く頭を下げた。

 

「まぁ、そう言うことならありがたく頂いておくよ」

 

『うーん、まぁボクはどうでもいいけどキミがそう言うならお礼を言われておくことにするよ』

 

「うん、今度改めてお礼をするから楽しみに待っててくれ! あっ、それとだな、先輩!」

 

神原は急に思い出したかのように切り出した。

 

「忍野 忍を見なかったか?」

 

忍野 忍(おしの しのぶ)。元、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼 キスショットアセロラオリオンハートアンダーブレード、その成れの果ての少女であり、綺麗な黄金色の髪を持つ幼女であった。

 

彼女との出会いは二回目にこの街を訪れた時の学習塾跡になる。まぁ、そんなことは今はどうでもいい。

 

「忍野 忍がどうかしたのか?」

 

「あぁ、阿良々木先輩から先ほど電話があってだな。なんでも忍ちゃんが行方不明になったそうで探して欲しいということだ」

 

『ふーん、あの吸血鬼がねー』

 

イフはわりかしどうでもいいみたいだ。仲悪いもんなぁ忍ちゃんとイフ。いや、喧嘩するほど仲がいいと言うから案外そうかもしれないが。

 

「へぇー、そうだったのか。でも、ごめん。残念ながら俺たちは忍ちゃんを見てないよ」

 

「そっか、それは残念だ。もし、見かけたら阿良々木先輩に伝えてくれ! それじゃあ! お礼の件覚えておいてくれよ!」

 

「ちょっと、待て神原よ!」

 

「ぐえっ……」

 

走り出そうとする後輩の首襟を掴みその走りを止める。

 

「どうしたんだ先輩!」

 

「お前クレープ好きか?」

 

「クレープ? 私は甘い物が好きだから勿論クレープも好きだぞ」

 

「そうか、ならこれをお前に餞別として送ろう」

 

そう言って手に持っていたビニールを差し出す。保冷剤も入れているし、悪くなっていることはないだろう。

 

「なんなんだこれは? まさか、婚約指輪!」

 

「な訳あるか! 何でクレープの話から指輪になるんだよ! クレープだよ! クレープ!」

 

この後輩はたまに……いやいつもとんでも無いボケをかましてくるから困る。なんで、こんな奴と関わってしまったんだろう。

 

「そうか……。クレープか、それは残念だ。しかし、クレープをくれるのはありがたいが私はこの通り忙しくだな、これから街中を文字通り走る回って探さないといけないのだ」

 

「そうか、じゃあ走りながら食べればいいじゃないか。神原、お前なら朝めし前だろ」

 

「そうか、確かに。この神原駿河、得意技はBダッシュ、走りながらクレープを食べるなんてわけないな! それに先輩からもらったクレープを食べないのは罰が当たりそうだ。ありがたく受け取っておくよ! ありがとう! それじゃあ、タバコはほどほどにな、先輩!」

 

そう言って怒涛のように走り去る神原。時々、俺はあのアホの子がとても心配になる時がある。あいつ大丈夫かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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