「フフフフフ..... もう、ハンスったらイケないヒト♪ ――ホント、しょうがない……――プチっと潰して欲しいってコトかな?かな?」
身の毛もよだつ憤怒のオーラを振り撒きながら、一歩、また一歩と大地を踏みしめる様に歩を進めるロザリー。
完全に瞳孔が開ききっており、張り付けたような薄い笑みと相まって筆舌しがたい
とりあえずとっ捕まえて洗いざらい吐かせよう。
具体的には浮気相手の女のこととか、模擬戦の授業でナニやっていたのかとか。
別に恋人でも、夫婦でも何でも無いのだが今のロザリーにそんな言葉は届かないだろう。
ズンズンと道路を踏みしめながら歩を進める。
木々に止まっていた小鳥達がロザリーの殺気を感じて、全力で逃げ出していく。
小動物に怯えられたというのは何気に心が痛いものの、それすらもガルムのせいにしてしまうのは、ロザリーも相当理性がトんでいるせいか。
――失礼なコ達....私が怒ってるのは全部ハンスが悪いんだから.....
憎々しげにガルム達が消えて行った壁の方を睨みつける。
ロザリーの胸中に渦巻く嫉妬の炎はとどまるところを知らない。
激情に振り回される少女がひとり、道のど真ん中で頭を抱えてブツブツ呟くのは見ていて非常に痛々しかった。
幸いと言うか、辺りに人影は無く、醜態を人目に晒す事だけは阻止出来たと言う訳だ。
――だったのだが
「彼女、カルディナが君の大事な彼と何をしていたのか、知りたくはないかい?」
「!?」
突如として響く声に驚きを隠せないロザリー。
振り返る先、果たしてそこにいたのは.....
「.......変態?」
「誰が変態だ!!!」
怪しげなマスクをつけた、上半身裸の変態だった。
「いや、だって......ねぇ?」
「くっ!私だって好きでこんな格好をしている訳ではない....ちゃんと意味があるのだ....」
よく見ると男の上半身にはいくつもの紋様が描かれている。なるほど確かにただの変態ではないらしい。
まあ、変態に変わりは無いのだが。
「それで....さっきのはどう言う意味?怪人変態マスクさん.....」
「どこぞの老け顔変態槍使い見たいなあだ名つけないでくれるか!?」
「いいから.....」
「....はぁ、まあ良い......で、さっきの私の言ったことがどう言う意味か知りたいわけだな?」
「ええ...」
「簡単だよ。彼女、カルディナとガルム...いや、ハンスと言った方が良いかな?....彼らは○○○の関係だと言うことさ!」
「なっ!.....」
高々と響く自主規制音と共に放たれた言葉はロザリーを思考停止に追い込むには十分だった。
まあ言葉だけをとるなら『男』と『と』と『女』なので規制する必要は無いのだが。そこは変態クオリティ、彼にかかればあら不思議、日常会話があっという間に規制のオンパレードに。
「変な設定つけないでくれるか!?私は至ってまともだ!!!」
.....その格好で?
「黙れ。」
「..........あなたの言葉は....信じられない....たった1時間で.....そんな関係になるとはとても思えない......」
変態が一人で何かしている間に、ロザリーはフリーズ状態から復活していたらしい。変態を睨みつけながらそう言葉を漏らす。
「まあ、そうだろうな。だが、これを見てもそう言えるか?」
そう言って変態が取り出したのは一枚の写真だった。ガルムが、カルディナを壁際に追い詰めている。俗に言う『壁ドン』の写真だった。見ようによってはキスしているようにも見える。
「なっ......」
「どうだ?これを見てもまだ信じられないか?」
得意げに笑う変態仮面。その笑みは女子高生を前にした痴漢親父のようで、見ていて非常に気持ちが悪い。
「テメェ後で覚えてろよ!」
はてさて何のことやら....
写真を信じられないといったふうに見つめていたロザリーは糸が切れたように絶望に染まった表情で崩れ落ちた。
「嘘.....嘘よ......ハンスが.....そんな.....」
「残念ながら、本当のことだ。.......だが......ガルムを取り戻す方法ならある。」
「ほんとうに!?」
「ああ、簡単なことだよ。カルディナ、彼女は『魔女』だ。」
「!?」
「ガルムは魔女の術にかかっている。そして、これは魔女がいなくなれば効果は消える。.......ほら、もうどうすれば良いか分かるだろう?」
「........あの女を殺せば.....」
「そう、君の愛しの彼は戻ってくる....だが、焦らない方が良い。魔女はそう言うことには敏感だからな....実力でねじ伏せて、その後で殺せばいい。」
この方法が最善だと言うように、自信満々に言い切る変態。しかし、ロザリーは納得してはいなかった。
「.........そんな回りくどい───」
「回りくどいことはしていられない...か?まあ、その方法をとりたい気持ちも分かるがな、なあ?『
「!?....なん...で!?」
かつての、ガルムと共に過ごしたあの場所でのコードネームで呼ばれ驚愕をあらわにするロザリー。
「あなた.....まさか........」
「おっと、勘違いしないでくれたまえ。私あの施設の関係者ではないし、あの計画に携わった者でもない。施設の崩壊後、当時の職員から聞いただけだ。」
「........そう.......」
「全く信じてないね。...まあいいさ、それは今は問題ではない。」
「とにかく、陰からの奇襲はやめておけ。それは自らの身を滅ぼすだけだ。正々堂々戦って勝ちをとれば良い。なぁに心配はいらない。君の実力なら何の問題も無いさ。」
言うだけ言って、「それじゃあ健闘を祈ってるよ」と変態仮面は忽然と姿を消した。最初出てきたときも思ったが、やはりただ者ではない。
変態仮面の消えた虚空を見つめるロザリーの目は、決死の覚悟を抱き愛しき人を取り戻そうとする
2
「と、言うことがあったの。」
((なんかめっちゃ怪しい人出てきましたけどォォォ!?!?!?))
「だからあの女だけは赦さない。ハンスは私の物なんだから....フフフフ.......」
(((こ.....こえー...........)))
「なんか、ガルムの苦労が分かった気がするよ........」
「ああ.....これはヤベぇ......さすがの俺でも躊躇うぜ......」
ロザリーの話にデフロットと二人戦慄する。マリユスは「やっぱり僕もこれくらい...」「アーデルハイドも怪しいし.....」「いっそバラしちゃおうかな....」などとぶつぶつ呟いている。正直、こっちも恐い。
「?...どうしたの?」
『何でも無いよ。』
「そう.....?」
デフロットと二人、完璧に同調した動きで左右に首を振る。
ロザリーはそんな俺たちを見て不思議そうに首を傾げた。
「.......ねぇ........もういい......?.......早くハンスのとこに行きたいんだけど.........」
ガルムには、こんな質問をするのだからいない方が良いだろうと退いて貰っている。ロザリーはそのことが気にかかるようだ。
「あ、ああ。もういい、ありがとう。」
そう言ってロザリーを見送る。
ロザリーが曲がり角を曲がって姿を消す。
『...............』
すると俺たちの間に何とも言えない空気が流れ始めた。
そんな空気の中でデフロットが小さく呟く。
「.......なんか.......あれだよな......絶対黒幕的なのいるよな......」
「そうだな....」
「と言うかあれ黒幕以外にどう例えたら良いんだ?」
『分からん。』
変態仮面のことに関しても、一度アーデルハイドと話し合った方が良さそうだ。
「こんなことを軽々と話すぐらいだ 。ロザリーも、相当追い詰められて正常な判断が出来なくなっているみたいだな。」
「ああ、カルディナが魔女だなんて、ふざけたこと言いやがるぜ!」
「それもあるが、一度ガルムにも確認した方がいいんじゃないか?写真のこととか。」
「それもそうだな。じゃあ、ガルムもつれてアーデルハイドの所に行くか。」
「ああ。」
「そうだな。」
マリユスとデフロットと共に、ガルムの元に向かって歩き出した。
んー........(^_^;)
どうしてああなった.......オリキャラなんてだすつもり無かったんだけどなぁ.........
後報告、これから更新報告は活動報告でするようにしますので。
評価、感想などいただけると嬉しいです。