キーンコーンカーン........コーン.......
(何で間があったんだろう....)
「よし、じゃあ今日はここまでだな。議長、挨拶。」
「起立!礼!着席!」
フェルナンド先生の授業が終わる。
議長のアリアの声に合わせて起立し、礼をして、着席する。
フェルナンド先生が出ていくと、教室の中はが
と騒がしくなり始めた。
「ちょっと良いか?」
その中で、一人の男子生徒が俺たちに声をかけてきた。
「ガルム?どうしたんだ?」
男子生徒、ガルムは少し疲れたような顔色と声音で、そう話しかけてきた。
「いや、少し相談に乗って欲しいことがあってな....」
「良いけど、何なんだ?相談って」
「ここでは少し話しづらい、場所を変えよう。」
言うやいなやすたすたと歩いて行くガルム。
心なしかその動きもどこかぎこちない。
「....どうしたんだ?」
「...さぁ?」
マリユスと二人首を傾げる。
しかし答えが出るはずもなく、よく分からないままガルムについて教室を出た。
2
「で、何なんだ?話ってのは?」
校舎の裏まで来て「ここで良い」と言ったガルムに、俺は改めてそう聞いた。
「ああ....けどその前に、カルディナとロザリー、この二人を知っているか?」
「?...ああ、同じクラスなんだから一応知っているが....」
意味が分からないまま取りあえず答える。
「なら話が早い。相談って言うのはこの二人に関することなんだ。」
「その二人と何かあったのか?」
「ああ...実は二日前、カルディナ槍の稽古を付けて欲しいと頼まれたんだ。」
「へぇ...」
これには素直に驚いた。
ガルムが稽古を付けてくれと頼まれたことに、ではない。彼はそれだけの実力を持っているし、一年とはいえ無い話ではない。
驚いたのはカルディナが稽古を付けてくれと頼んだことに関してだ。
彼女もガルムには及ばないものの、かなりの実力の持ち主だったはずだ。
何か強くなりたい理由でもあるのだろうか。
「凄いことじゃないか!何が問題なんだ?」
「ああ、いや稽古をつけてくれと頼まれたことに関しては何も問題は無い。俺も頼まれたからにはできる限りはつけてやりたい。けど、ロザリーがな..........」
「ロザリーがどうしたんだ?」
「アイツがいつも俺の周りにいるのは知ってるだろ?慕ってくれてるのは嬉しいんだが、アイツは俺に近づく奴をことごとく敵視する傾向があってな。......ぶっちゃけると、昔俺に告白してくれた奴を半殺しにしたことがある。」
『..........』
ガルムの言葉に、二人そろって思考停止する。
二の句が継げずにいると、ガルムは疲れ切った笑い声を響かせながら話を続けた。
「ははは.....普段は良い奴なんだがな........少し考え方が過激というか...........正直今回は俺の手に負えない...」
「で、俺たちに頼んできたと。」
「ああ、コレットやレオにも頼んだんだが、コレットは俺が相談する前に「ちょっと!そんな顔してちゃ人生楽しくないよ!ほら、笑って笑って!あはははは!!」と言って俺の顔をさんざんいじくり回した後どこかに行ってしまい、レオは相談は聞いてくれたんだが「リア充め」と一言言って結局手伝ってはくれなかった......」
『..........』
何だろう、少し可愛そうになってきた。
「先に声をかけたのがその二人なら、僕たちに頼んだのはデフロットに代わりを頼むためか?」
「ああ、1-Aで槍使いは後はデフロットだけだからな。」
「なら残念だけど諦めた方が良い。あの変態に、稽古を付けるだけの実力は無い。....それに何より、アレが個人で稽古とか不安すぎる。絶対に手を出す。絶対に。」
「おいマリユス、いくら何でも言い過ぎじゃないか?さすがのデフロットもそこまでの変態じゃない.......はず.........多分......」
マリユスのあまりの物言いに、ついとっさに反論しようとする。が、悲しいかな、言ってる内にどんどん自信が無くなってくる。
「そうか.....」
「あ、でも、デフロットが使い物にならないってだけだからな。僕たちが手伝うよ!」
「いいのか?」
「あんな話を聞いて放っておけるわけがないだろう。.....放っておいたらこっちまで飛び火しそうだし......」
おい、マリユス。
「....ありがとう。この礼はいつか必ずする。」
「いや、そんなたいしたことをしたわけじゃないし。それに、まだどうなるかも分からないしね。」
「そうだな....っと、もう休み時間も終わりか。」
予鈴のチャイムが俺たちの所まで鳴り響く。
「それじゃあまた。」
「ああ、本当にありがとう。」
三人で教室へと向かう。さて、少し忙しくなってきたな。
3
「リア充め」
『そう言うと思ったよ』
教室に帰り、3時間目の授業終わり、デフロットにガルムの話をすると上記の言葉が返ってきた。
「しかし、俺にその代わりをさせようとしたことは褒めてやる。カルディナは俺が代わりに手取り足取り──」
「やめんかこの変態。」
ヒュン!
「おわぁ!?おまっ!剣はダメだろ剣は!!!当たったら死んでたぞ!?」
「....死ねば良いのに..」
「おいコラ。」
「....ハァ.......頼むから真剣に考えてくれよ....」
俺の言葉にさすがにやりすぎたと思ったのかマリユスは素直に引き下がる。デフロットも渋々ながらも引き下がった。
「けど、真剣にっつってもよー、やっぱ代役を立てるしかないんじゃねぇのか?」
「まぁ、確かにな...」
「けど、代役を頼むとして、誰に頼むんだ?このクラスには他に槍使いはいないだろ?」
「大丈夫だ。俺が代わりに稽古をつければ──」
『却下。』
「............(´・ω・`).....」
「さて、このクラス外となると誰がいるか....」
「うーん....」
俺たちと交流があり、尚且つ槍術でガルムなみの腕前を持つ人物。
誰がいたか....
「あ、」
いや、一人だけいた。あの人なら、上記全ての条件を満たしている。
「どうしたんだ?アルフレッド?」
「.....心当たりが一人だけいる。ほら、レオン先輩の....」
「!..そうか、あの人なら確かに......」
俺の言葉で察したのかマリユスも納得顔になる。
「そうと決まれば善は急げだ。」
「だな。おい行くぞ変態。」
「...人の名前みたいに言うのやめてくんねぇかなぁ...」
「え?お前の名前ってデフロット・ヘムターイだろ?」
「違うわ!!!」
「どっちでも良い、行くぞ。」
またいつものコントを始めそうになったマリユスとデフロットを叱責する。そして、件の人物のいる教室、1-Bに向かって歩き出した
4
「で、私の所に来たと。」
「ああ、突然悪いな。」
「いや、良いんだ。頼ってくれるのは嬉しいしな。」
そう言って、少し照れくさそうに笑うのは、1-Bの議長にして、生徒会書記。さらには生徒会長レオンの妹という完璧超人ステータスを誇る
この人物が俺の言っていた、心当たりである。
学年でも、1、2を争う槍使いの彼女なら適任だろう。
「で、カルディナに稽古をつけてやって欲しい、と言うことだったな。」
「まあ、結論から言えばそうなるな。出来そうか?」
「ああ、そちらに関しては問題ない。生徒会書記とは言っても一年の私は名前だけみたいなものだからな。」
「そんなこと無いと思うぞ?入学式の時の代表演説とか、格好良かったしちゃんとできてたと俺は思うよ。」
「っ!....そ、そうか..ありがとう.....」
突然赤くなって俯くアーデルハイド。それを見て不機嫌そうに頬を膨らませるマリユス。そして何故か「ありゃ、ダメだな..全く気づいてねぇ....」とのたまうデフロットの声が聞こえてきた。
何なんだ.....?
「ゴホン!....それで、結局は代わりをやってくれるって事で良いのか?」
「ああ、だがその前に一つ聞きたい。」
「なんだ?」
「カルディナとロザリー。この二人には本当に意思は変わらないのか聞いたのか?」
「?どう言う意味だ?」
「カルディナには本当にガルムでなければダメなのか。ロザリーには本当にカルディナ二ガルムが稽古をつけるのがダメなのか聞いたのか?」
「.....そういや、聞いてなかったな....」
「ああ、俺もすっかり忘れていた。.....そうだな、先にそれを聞きに行くべきだった。悪い、アーデルハイド。今から聞いてくる。」
「ああ、ならカルディナの方はこちらに任せてくれ。」
「そうか、ありがとう。礼を言う。」
カルディナをアーデルハイドに任せて1-Bの教室を出る。
「お、話は終わったか?」
出たところで外で待機していたデフロットを見つけた。
「ああ、代役を引き受けてもらえることになった。けど、その前にロザリーのとこに行く。デフロット、お前も来い。」
「?ああ、分かった。けど何で?」
「本当にガルムがカルディナに稽古をつけるのがダメなのか聞いてくる。それでOKが出たら何も問題ないだろう?」
「.....なるほどな、うっし、じゃあいくか。」
「ああ。」
放課後は校舎裏で稽古をしているとガルムは言っていた。
ならロザリーもそこにいるだろう。そう考え、俺たちは校舎裏へと向かって歩いて行った。
5
「無理。」
「即答.........」
一瞬で希望は潰えました。はい。
「本当にダメなのか?」
「無理。あんなの見せられて.....大丈夫と思う方が.....どうかしてる.......」
「あんなの?」
「うん......あれは......昨日の模擬戦終わった後........」
────────────
「ふぅ..........」
模擬戦終わり、汗をタオルで拭きながらガルムを探してきょろきょろ辺りを見回すロザリー。
しかし、探し人は見つからない。一年だけとはいえこれだけ集まれば混雑するのも当然、さらに言うと武器種ごとに模擬戦の場所は離れていたため、ロザリーはガルムを見つけるのに数分の時間をかけてしまった。
「あっ...ハンス....」
目的の人物を見つけて、笑顔で駆け寄ろうとするロザリー。
――だが、
「……ぇ?」
運命とは人の想いを嘲笑う、悪辣で、辛辣な物だと言うことを忘れてはならない。
見紛うはずも無い。探し人であるガルムが前方を歩いていた。
「ハンス……?」
呆然と吐き出された少女の声は、確かに震えていた。
両の眼は限界まで見開かれ、視界に映る光景が嘘であってほしいと声なき叫びを上げる。
なぜならば、そこには――
「その
赤い髪をした、少し小柄なかわいらしい少女と............手を繋ぎ歩いていくガルムの姿があったのだから。
To Be Continued....
なんか最後変なことに........
それに場面転換多すぎですね。次から気をつけまーす.....