オルタンシア学園   作:宮橋 由宇

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次話、投稿します。


4話「教師~やはり皆何かがおかしい~」

 

オルタンシア学園に来て三日が経った。今日は色々と個性が強...強すぎる先生方の一部を紹介していこうと思う。

 

 

 

 

 

1時間目『歴史』

 

「オルタンシアの歴史を知るにはまず最初にマゴニア文学、それにおけるマゴニアとは何か知っておいて貰わないといけませんね。マゴニアとはあなたたちも知っている数々のおとぎ話、その根幹となる力のことを指します。また、マゴニア伝承の起源といわれている楽園の島。それそのものをマゴニアと指すこともあります。一般的にはおとぎ話の総称のように思われているマゴニアですが実際には逆で、マゴニアの力でおきた事象、そしてそれを語り継ぎ、書き綴ったものがマゴニア伝承であり、マゴニア文学なのです。炎竜に黄金の土人形、植物の国などのおとぎ話はあなたたちも聞いたことがあるかと思います。これらのおとぎ話に登場する物は現実ではあり得ない物ばかりです。ですが、マゴニアのおとぎ話は所謂『作られた物語』ではなく、過去に起こった事実を記録した物なのです。故に伝承、おとぎ話に登場する物は遠い昔、確かに実在したのです。では何故マゴニア伝承として語り継がれている物だけがこの世界から姿を消したのか。その理由、そして原因はマゴニアの力そのものに関わってきます。マゴニアの力の考察については色々と議論されていますが、今の所一番有力な説は「心象の投影」です。簡単に説明するならばマゴニアの力は『心で思い描いた物を現実にする力』なのです。この説が有力といわれている理由としてはマゴニア伝承の中にこの力が描かれている物がある。あるいは、この仮説を当てはめることで納得いく伝承がある。と言ったところでしょうか。有名な物としては「トロン洞の魔物」があります。トロン洞の奥深くには魔物を生み出す泉がありその泉の主は相手が一番嫌な物に姿を変えることができる。と言う伝承です。相手が一番嫌な物に姿を変えるためには相手の心を覗き、無意識下でも嫌だ、苦手だと思っている物を見つけ出さなければいけません。マゴニアの力はそんな相手の中にいる嫌な物を現実として探し、見つけ、生み出す。時には竜と、時には魔物と、時には人狼として。それはまさに心象の投影の仮説がぴったりと当てはまります。勿論まだ全てが解明できたわけではありません。ですがマゴニアの力はこの仮説から大きく外れてはいないでしょう。私がそう思うようになったのは三年前の魔物の発生を見てからです。私はこの魔物達は人々の不安、恐怖、絶望などの負の感情から生みだされたとかんがえています。そして、その魔物達は──」

「あの......ヴェラ先生...」

「──.....はい、何でしょうアルフレッド君。」

 

途中で口を挟まれたのが気に入らないのか、ヴェラ先生は少しむくれた顔で返す。その顔は可愛い。可愛いのだが今はそんなことは微塵も関係なく──

 

「このマゴニアについての話.......いつまで続くんですか?」

「え?あぁ確かに言っていませんでしたね。すいません。」

 

良かった、終わりはあるのか。もし「え?卒業までずっとマゴニアですよ?」何て言われていてらどうなっていたことか...

 

 

「マゴニアについての話は三年間あります。ちゃんと全部覚えてくださいね。」

 

 

................先生。これは「オルタンシア」の歴史じゃない。「マゴニア」の歴史だよ.............

 

 

 

2時間目『商業』

 

「商業科目担当のジルベールです。よろしくお願いしますね。それではまず デットエクイティスワップ(DES)について勉強していきましょ── 」

「すいません、その前に一つ良いですか?」

 

チャイムと同時に来て、何だかよく分からないけど確実に入学最初の授業で習うような物ではないレベルものを話しかけたジルベール先生を呼び止める。

 

「はい、何でしょう?アルファベットくん。」

「アルフレッドです。...先生が腕に抱いてるその人形なんですか?」

 

そして、入ってきたときから気になっていたジルベール先生が腕に抱く人形を指してそう言った。

 

「ああ、これは私の祖父の形見なのです。これを持っていると大商人だった祖父の力を借りられるような気がしましてね。肌身離さず持ち歩いているんですよ。」

「そうですか.....」 

 

その人形はかなり個性的...言ってしまえば悪趣味だった。ジルベール先生の祖父はかなり特殊な感覚の持ち主だったよう──

 

「それに、凄く可愛いでしょうこの人形。もう我々の家族全員がこの人形の虜ですよ。」

 

...失礼、先生一家は、に訂正しよう。

 

「ダメだコイツ......」

「全く同感だ....」

 

デフロットとマリユスの声が聞こえてくる。

おいダメだろ、そんな本当のこといっちゃあ。

 

「そうだ.....!」

 

デフロットが面白いイタズラを見つけた子供みたいな顔になる。おい、やめろよ、何する気だ......

 

デフロットは懐から七色に輝く前に『聖王』とか付きそうな石を取り出すと黒板に何かを書いている先生の人形に狙いを定め.....

 

「えいっ☆」

 

ガシャァァァン!!

 

「イヤァァァァァァァァーーーーー!!!!!!私の人形がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

(((なにやってんだよぉぉぉ!!!!!)))

 

イタズラが成功した子供のように小さくはしゃぐデフロットを尻目に、教室中の生徒(デフロットは除く)が冷や汗を垂らす。

 

数秒後、目に見えるほどの憤怒のオーラを振りまきながら、ジルベール先生がゆっくりと振り返った。

 

「....今、私の人形に向かってお金で出来た石を投げつけたのは誰ですか?」

 

先生の雰囲気にさすがにやばいと思ったのかデフロットは小さくなって俯く。

だが、さすがにやったことが大きすぎた。他の生徒達がデフロットを庇う義理はない。一人を守るために自分たち全てが犠牲となるか、一人を見捨てて、自分たちが助かるか...選ぶのはどちらか言うまでも無いだろう。

 

『『デフロットがやりました!!』』

 

「ちょ!?」

「....わかりました。デフロット君ちょっときなさい。特別指導です。」

 

デフロットをずるずると引きずっていく先生。去り際に「黒板に書いた文は写しておいてください。後は自習です。」と言って扉を閉めた。

 

.........うん、怒らせちゃいけない人って.....いるよね.....

 

 

※因みにデフロットは次の時間ぼろ雑巾のようになって帰ってきました。

 

 

 

 

3時間目『体育総合』

 

「さて、と.......」

 

体操服を持って立ち上がる。

次の時間は体育。この学園は体育系の授業が多くに分かれているので、基本的な体育は体育総合と言う名前になっている。

 

「...担当が『ベルトラン』先生って言うのがなーんかいやな予感がするんだよなぁ......」

 

体を動かすのは嫌いではないが正直今回は気乗りしない。理由は上記に述べた通りだ。

 

俺たちの中ではもはや禁句になっているが、身体検査の悪夢は未だに俺たちの中にトラウマとして残っている。

 

「まあ、どうにも出来ないのが現状だけどさぁ.....」

 

さすがに今回は何もないだろう...と思う....

アレは何かの間違いだったんだ......多分.......

 

「ん?どうしたんだマリユス?」 

 

着替え部屋の前で止まって妙にそわそわしてるマリユスに声をかける。そういや身体測定の時もこんなだったよな....どうしたんだろう?

 

「い、いや!何でも無い。僕は別のところで着替えてくる、授業にはちゃんと間に合わせるから心配するな!」

「あ..ああ...」

 

身体測定の時と同じように、どこかへと走って行くマリユス。

 

 

どうしてそこまで嫌がるのか。理由が分からず少し傷つくアルフレッドであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、今日は腰振りの練習をする!」

 

『ですよねぇ!』

 

先生の告げた授業内容があまりにも予想通り過ぎてつい声をあげてしまう俺達。

ああ......悪夢がよみがえる.......

 

「と言っても、特に特別なことはしないがな。亀甲縛りをしてコイキングのはねるを実践をするだけだ。」

「それを特別と呼ばずして何という。」

「.......異質?」

「その通りだよ!けどそう言うことじゃねぇよ!」

「デフロット、抑えて。」

「そうだぞ亀甲縛りのはねるを想像して興奮してるのは分かるが少し抑えろ。」

「テメェもなぁ!その毒舌少しは抑えれんのか!」

「無理だな。」

「即答!?」

 

いつの間にか授業そっちのけで言い合う二人。.......おーい...後ろ後ろー....

 

「だいたい、お前が変態なのが──!......いや、何でも無い、授業に戻ろう。」

「ああ!テメー今何言いかけた!もう一度言ってみ..──」

 

ガシッ!

 

「ヒッ!?」

 

デフロットの頭をつかむベルトラン先生。ああ、終わったな..デフロット.........

 

「デフロットォ....俺の授業で良い度胸だなぁ.....良いぜ、てめえだけ特別授業だ。こっち来い。」

「ちょ!?まてって!何で俺だけ!痛い!引きずるな!クソッ、何で俺だけぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

ずるずると引きずられて行くデフロット。

アリーナの中は、授業がなくなったことに対する安堵感やら、引きずられていく級友に対する同情やら、次は自分かもしれないという不安やらで、何とも言えない空気に包まれていた。

 

 

※因みにデフロットは結局帰ってこず、次の時間には何故か赤い肉界がデフロットの席におかれていた。

 


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