「ここが..オルタンシア学園か.....」
桜吹きすさぶ校庭で一人呟く。
聞く者は居ない。誰に聞かせるでもなくただ己の居場所を確認し、肯定するために俺は一人呟いた。
そう、今俺がいるのはこのオルタンシア王国最大にして最高の学園。オルタンシア学園。
俺はアルフレッド・オーベル。
この春入学したばかりのピッカピカの一年生だ。
「取りあえず、マリユスと合流するかな....」
共に入学した少年を思い浮かべる。
同じクラスになれると良いのだが、まあ他のクラスでもたいした問題ではないだろう。結局は家で会えるんだから。
「もうすぐ始業式だな.....」
アリーナに向かって歩き出す。
桜舞い散る校庭から、春の足音が聞こえてくる。
───楽しい学園生活になりそうだ。
2
「やあ、アル。同じクラスだな」
「マリユス!」
始業式を終え、クラス発表が出た。俺のクラスは1ーA。クラス分け表を見たときには気づいていたがマリユスも同じクラスらしい。
「クラスまで同じになるなんてな」
「確かに。でも一学年にクラスは三つしかないみたいだぞ?」
「そうなのか?なら珍しいと言うほどでもないか」
マリユスは子供の頃からの腐れ縁で所謂幼なじみだ。正義感が強い奴で、悪を挫くためなら容赦はしない。
マリユスは両親の事情から俺の家に暮らしている。俺にとって家族同然、兄弟みたいな関係だ。
「なぁ、お前らも1ーAか?」
突如かけられる声。反射的に振り向く、いたのは青いボサボサの髪を持った男だった。
「お前は?」
「俺はデフロット。お前らと同じ1ーAの生徒だよ。よろしくな」
「ああ、俺はアルフレッド。よろしく」
そう言いながら差し出された手を取る。しかしマリユスは、
「同い年?……その顔で?」
「どう言う意味だコラ!確かによく実年齢より上に見られがちだけどよ!そこまで言うことねーだろ!?」
「あ、悪いつい本音が出てしまった」
「全く謝る気なくねぇ!?」
マリユスがからかい、デフロットが突っかかる。端から見ているとコントみたいだ……からかって、いるんだよな?本当に本音じゃないよな?
「まあ冗談はここまでにしとこう。デフロット、僕はマリユスだ。よろしく」
「お、おう、いきなり素に戻るなよ、びっくりすんじゃねぇか……あー、まあ、よろしくな」
先ほどと同じようにマリユスの手をデフロットが取る。
そうしたところでちょうどチャイムが鳴り響いた。
各々が自分の席に座る。
俺が座り付くと同時にガラッと音を立てて扉が開いた。
「1ーA全員いるな?私はゲオルグ。君たちの担任となる。これから一年よろしく頼む」
入ってきた先生がそう言って小さくお辞儀をする。
あたりからパチパチと拍手の音が聞こえた。
「早速ではあるが、君たちには五人づつの班を作って貰いたい。立派な騎士になるためにはチームプレーも欠かせないからな。バランスも重要だ。よく考えて決めて欲しい。30分後にまた来る。それまでに決めておいてくれ」
先生はそれだけ言うと出て行った。
しかし、班決めか……マリユス、デフロットをは誘うとして、後の二人はどうするか……
「まあ、とりあえず声かけていくか」
立ち上がり辺りを見回す。
そして俺は手近にいた、金髪の少女に向かって歩いて行った。