森と荒地が広がる大地。管理局地上部隊の戦闘部隊は戦いが始まってからものの十数分で殆どが壊滅した。
戦場を青く大きな身体をしたロボットが駆ける。両手に持つ銃を乱射しているようで、その全てを命中させ、次々と陸戦魔導師を無力化していく。
何もロボット一体だけが戦っていたわけではない。広範囲にわたっての作戦中であり、その身一つでは逃走する陸戦魔導師を仕留めることは困難だ。しかし、協力者がいるとなると話は変わってくる。
10人の人造魔導師、ナンバーズと呼ばれる彼女達は各々の強みを活かし、陸戦魔導師の足止めや撃破を行い、ロボットが戦う上での援護を行っていた。
奇っ怪な笑い声を上げながら魔導師を無力化させていく姿に敵も味方も些か恐怖を覚えたが、そうも言ってられない。
機動六課の隊長である八神はやては青いロボットをなんとかしようと、自身の部下であり家族である3人の力を借りて戦いを挑んだ。
現在は唯一残っている陸士108部隊の数人とともに戦っているが、その数も段々減らしている。
撃破できればいいのだが、最低限足止めができればいい。今も尚通信が途絶えている機動六課のフォワード陣と合流できれば一気に戦況は傾くことになる。
魔法を発動し、ザフィーラと格闘を繰り広げているロボットへと攻撃する。
死角からの攻撃も交えての攻撃なのだが、それは思いの外当たらない。シャマルがザフィーラに補助魔法をかけているが、この状況がいつまで続けることが出来るのかは不安である。
それに、ナンバーズの姿も無いのだ。はやてにとっては数人の協力者がいることは把握しているがそれが何人で今どうしているかなどは把握できていない。
今にも背後から奇襲してくるかもしれないのだ。闘いながらも警戒を解く訳にはいかない。
『アハハハハ!!中々いいんじゃない?』
「牙獣走破!!」
「ナックルバンカー!」
ザフィーラの飛び蹴りを青い機械はパンチで迎撃し、ギンガ・ナカジマの魔法をひらりと躱す。
何故左手に持った銃を乱射してこないのかは解らない。たまに撃ってくるが、牽制かそれこそ108部隊の弱った陸戦魔導師へのとどめくらいにしか火を吹かない。
「まあ、遠距離攻撃を多用してこんのは都合がいい……後はなのはちゃん達が来てくれたら……」
『八神隊長!ヴァイス陸曹から通信が入りました!!』
「ほんまに!?直ぐ繋いで!!」
待ってましたと言わんばかりに通信回線をシャリオ・フィニーノに繋いでもらったはやては、クラウ・ソラスを撃ちはなった後、興奮気味にヴァイスへと声をかける。
「こちら八神はやて!一体何があったんよ!」
『説明するのは少し時間が掛かるが……不味いことになった』
「なんやって!?」
『簡単に報告すると、敵は撤退したもののフォワード部隊、テスタロッサ分隊長とヴィータ分隊副隊長を除き、戦闘不能になりました』
「嘘!?なのはちゃんとシグナムは!?」
『二人は現在意識不明です。幸い非殺傷武器での攻撃でしたので命に別状はありませんが……』
はやてにはその報告が俄に信じ難いものであった。高町なのはは管理局のエースオブエースと呼ばれ、過去に一度堕とされはしたもののその実力からして管理局でも最強の一角である。シグナムも事近接戦においてはフェイトと同等であり、なのはにも負けることはない。そんな2人がやられたとなると、いかに相手の戦力が高かったというのが見て取れる。
「取り敢えずこちらに合流を!なのはちゃん達の治療も早くしたほうがええ!後、他のみんなは大丈夫!?」
『スバル達はデバイスを破壊され無力化された。その点で言えば高町分隊長達はデバイスが壊されてないので回復したら戦線復帰は可能かもしれない』
「了解!できるだけ早く来てな!シャマル!フォワード陣が合流したらなのはちゃんとシグナムの治療を至急行って!」
「2人がやられたの!?」
誰もが驚愕する事実にはやてはギリッと歯を食いばり、青い機体を見る。
ザフィーラとギンガのコンビネーションを凌ぎながらも他の魔導師達を落としていく姿は見事というしか無い。
「ジェイル・スカリエッティ……とんでもない相手や……」
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「うぅ、疲れたよぉ」
「ヴィヴィオ凄いな!あのエースオブエースを倒したんだろ!?」
「えーすおぶえーす?」
「管理局屈指の実力者……高町なのはのことだ」
「おぉ、なのはママだね!」
「そうだぞ!でもよく倒せたなぁ」
「ヴィヴィオは最強だもん!」グゥ
「最強でも腹は減るようだな」
「うん。チンクもお腹すくでしょ?」
「ああ。そうだな」
「それにしてもハコちゃん遅いなぁ……なにしてるんだろ」
「ハコなら私達をここに転送してからも最後の仕事で戦ってるぞ」
「手伝いたいけど、もうアルちゃんもチェインバーもエネルギー切れだよ……」
『面目ない』
『同上』
「まあいいじゃん。ハコなら大丈夫だろうし」
「おーい、ケーキ焼いたけど誰か食べる?」
「「「はい!!!」」」
「……あまり食べ過ぎるなよ、夕飯が入らなくなるぞ」
「はぁい、わかってるわよ、ディエチ」
「そう言えばスカさんはぁ?」
「ドクターなら今頃ゆりかごのところにいるわね」
「ゆりかご?」
「まあ、気にしなくていいよ」
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◇
フェイトとヴィータはバリアジャケットと騎士甲冑を纏いヘリから飛び降りる。
フォワード部隊が壊滅したのも自分達の実力不足が原因なのだ。それによって戦況が著しくないのであれば戦えない他の人達のために自分達が頑張るしか無い……
フェイトは既にソニックフォームとなり、下で戦いを繰り広げている青い機体へと空を駆ける。
巨大な大剣となっているバルディッシュを振り上げ、上空から不意打ちで斬りかかった。
『おっと、危ないねぇ』
だが躱される。並の反応速度では視認できても回避は困難である筈だが青い機体には通用しない。
直ぐ様刃を飛ばし、後方へ下がる。
一撃でも喰らえば危険なのだ。速度で翻弄して一気に畳み掛けないとフェイトには勝ち目がない。
「鋼の軛!」
ザフィーラが魔法で動きを止めようとするが躱されてしまう。
しかし、その軛によって出来た死角からギンガが飛び込み、打ち下ろしからの打ち上げによるコンビネーションを叩き込む。
ストームトゥース、防御破壊と直接打撃を組み合わせたコンビネーションなのだが、それは青い機械には無意味であった。
『残念だけど、ここでリタイヤだ』
「きゃっ!」
ギンガの身体を掴みあげ、至近距離から銃を接射する。
魔力弾による衝撃で気を失ったギンガをザフィーラに向かって投げ捨て、上空から振り下ろしてくるグラーフアイゼンを片手で受け止める。
地面に亀裂が入るが、あまりダメージを与えたようには見えず、ヴィータは舌打ちをした後、跳び下がった。
『さて、役者は揃ったかな?』
対峙するのはザフィーラにフェイトとヴィータ。後方に控えるのははやて。
シャマルは既にヘリに向かいなのは達の治療を行っている。
そう、それ以外の陸戦魔導師、即ち陸士108部隊も含め、管理局地上部隊は機動六課を残し全滅したのだ。
『安っぽい言い方だけど、ここから先に行かせる訳にはいかないんだ』
「この先にジェイル・スカリエッティがいるんだね」
「何でヴィヴィオを巻き込んだ!」
「何?ヴィヴィオが来ていたのか?」
「ああ、なのははヴィヴィオにやられた」
「信じられんが……」
「ヴィヴィオを戦わせるなんて、許せない……」
敵意を見せ、魔力を高めている3人を前にロボットは銃を持った手で頭部を掻きながら小馬鹿にした口調で言い放つ。
『あ、そうなんだ。で?それが何か問題?』
ピキリという擬音が走り、ヴィータは怒りの表情を隠さずにアイゼンのカートリッジをロードする。
「容赦しねえぞ!!」
「……限定解除」
「二人共、落ち着け!」
ザフィーラが止めようとするも二人共目の前の敵を殲滅しようと突っ込む。
「轟天爆砕!!」
「ジェットザンバー!!」
巨大な刃と巨大な槌が青い機械へと襲いかかる。
その攻撃を見て青い機械は何をするでもなく、その攻撃を食らう……
「な!?」
「何で、避けなかったの?」
2人の攻撃に避ける素振りすら見せなかった機械に困惑する。
だが、その疑問を晴らす暇もなく、機械から銃が発射された。
「クッ!」
「フッ!」
フェイトは持ち前の速さで躱すが、ヴィータは躱しきれずに数発被弾してしまう。
ダメージは大したことではないが、それよりも攻撃が全く聞いていない事が問題であった。
「二人共……非殺傷設定を解け。目の前の相手は人間ではない」
「ほんと?」
「それを早く言え!馬鹿!」
非殺傷設定。基本的に対ガジェット等機械類を相手にする場合はそれは意味も持たないどころか、威力を激減させてしまう。
ヴィヴィオを見たから仕方のないことではあるが、二人は非殺傷設定で攻撃を繰り出していた。これではダメージがほとんど通らないのも無理は無い。
「今度こそ行くぞ!」
『いいじゃん、盛り上がってきたねぇ!!』
最近主人公出てこないなぁ……
主人公の方の視点に合わしてないから仕方ないんだけどね。
というわけで、次くらいから主人公出番入ります(多分)