「ヴィヴィオ!!」
桃色の魔力砲撃に飲み込まれたヴィヴィオを見てフェイトは思わず声を上げ駆け寄ろうとする。
だが、それはゼストに止められた。
「そこを、どけぇ!!」
「させん。貴様達は私が相手をすると言っただろう?」
何故この男は味方であるヴィヴィオを放っておいてまで自分達を止めるのだろうか。疑惑とともに怒りが沸き起こる。
「それに……」
槍を振り払い。ヴィータの攻撃を除け、シグナムへと魔力弾を放ちながらもゼストは目の前の相手に呟くように告げる。
「貴様達の娘は、強いぞ?」
力があるというわけではない。強力な武器は持っているが、子供であることを考えれば持て余しているといえる。
だが、そうではない。ゼストはあまり接していないながらもヴィヴィオのその本質を見抜き、見定めていた。
近すぎては見抜けない強さ。日々の生活では見抜けないそれは、間違いなくヴィヴィオをこの戦場に駆り立てた物。
心技体。まだまだ未熟なところはある。
だが、その中でも肝心の心という部分にヴィヴィオは達越して完成していた。
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『パイロットの外部、内部にダメージはなし』
『しかし、装甲の破損。精神的な疲労、負荷、及び気力の低下が見て取れます』
うん、痛くはないはずなのに物凄く疲れている。すごいしんどくて、今にも寝ちゃいそうになっちゃう。
『現状のエネルギー残量から、武装解除をすれば防御システムに重きを置けるため切り抜けられると断定』
『退避にエネルギーを使えば十分逃げられるとも言っておきます。ですが、今の攻撃を3発喰らえばエネルギー残量はほぼ無くなります』
そうなんだ、もうハコちゃんが言っていた5分の時間を稼ぐということは出来ているから逃げてもいいんだね……
『ここは撤退が望ましい』
『どうしますか?』
……でも、ヴィヴィオが逃げちゃったり倒れたらなのはママは行っちゃうんだよね?
『肯定』
『ですが、最低限の仕事はしました』
うん、ヴィヴィオは頑張ったよね…………
――それでも
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◇
パラパラと小石や砂が落ちる音が聞こえる。
すさまじい威力が篭ったなのはの一撃は直撃したヴィヴィオの装甲を壊していた。
腹部から頭部にかけ鎧が剥がれたヴィヴィオは、ゆっくりとしたスピードで地面に倒れようとしていた……
「………」
だが、倒れなかった。あと一歩という所で踏みとどまった。
それを沈黙しながらもなのはは内心で驚く。今の一撃は正直やり過ぎとも言えるほどの威力を込めたものであった。それほどヴィヴィオの纏っている鎧の強度が凄まじいのかは分かりかねる。
だが、沈んでいないのなら沈めるまで。もう一度砲撃を放つためになのはは魔力を高める。
「あ、はは」
小さな声が聞こえた。
発信源はヴィヴィオ、何かがおかしいのか、自傷気味に笑うその顔は少しだけ悲壮感が漂っている。
「きっと、なのはママがしようとしていることの方が正しいんだよね……」
誰に告げているのかは解らない。
どういった意味で言っているのかは解らない。
――ねえ、どうしてルルーシュとスザクは喧嘩してるの?友達なんだよね?
――……ウーン、カンタン二ハイエナイケド、フタリトモマチガッテイルッテシリナガラモガンバッテルカラダヨ!
――間違ってるの?何で間違ってる事をするの?
――ヴィヴィオ嬢、この世には不条理な事や納得出来ないことが沢山有るんですよ。
――ふじょーり?
――不条理、事柄の筋道が立たない事
――わかんないよぉ
「それでも」
――じゃあ、ヴィヴィオが納得できなかったらどうすればいいのかな
――カンガエレバイイヨ!
――考えるの?
――しかし、それでも納得出来ないものはある。
――そういう時はどうすればいいの?
――そうですね。一度、それでもって言ってみてください。貴方がしたいことを相手にぶつけるんですよ。
――それでも……
――ソレデモトイイツヅケロ!バナージ!
――ふふん、私も勉強してるんですよ!
「それでも、ヴィヴィオはスカさんの友達だから」
立ち上がり、強固な意志を持った瞳でなのはを見つめる。
覚悟は出来た。正しいことは解っている。だが、それでも自分は間違った道を歩き続ける。
言葉にするのは簡単だ。格好いい言葉を並べるのは立派に見えるかもしれない。
人から見たらその姿は滑稽に見えるかもしれない。何故そのような事をするのかと非難するかもしれない。
だが、ヴィヴィオの瞳の強い意思に高町なのはは微笑んだ。
「わかったよヴィヴィオ。そこまで言うんだったら、本気で相手をするね」
限定解除。隊長格としてリミッターを設けている魔力を開放する。
レイジングハートの先端にとどめている魔力は凄まじい勢いで増長する。
「ヴィヴィオの覚悟、見せて貰うよ」
今から行う砲撃は凄まじいものだ。非殺傷設定とはいえ直撃すればそれこそ意識を失うほどの一撃を秘めている。
それでも躊躇はしない。目の前にいるのは覚悟を決めた人間唯一人のみ。
「行くよレイジングハート」
『All right』
「来るよ、アルちゃん」
『ええ。大丈夫です』
見るだけで腰の抜けそうな魔力を相手にヴィヴィオは立ち向かう。
「エクセリオンバスター!!!」
先ほどのディバインバスターよりも巨大で強大な威力を持った砲撃はヴィヴィオへと突き進む。
飲み込まれれば今度こそ倒れてしまうかもしれない魔砲。だが、それを目の前にしながらもヴィヴィオは不敵に笑った。
『ラムダ・ドライバ起動!!』
凄まじい斥力がヴィヴィオを中心に発生する。
ヴィヴィオの意思によりその斥力は増し……いとも容易く、なのはの砲撃をかき消した。
「……やるね」
「うん。だって、ヴィヴィオは最強だもん!!」
覚悟の証明は終了した。意志の強さは思い知った。
技量は未だ未熟。肉体は未成熟。
『見事でした』
『その意思、驚嘆に値する』
だが、その精神力は目を引く物がある。だからこそ、ヴィヴィオのパートナーである2機は己の主人を誇りに思い。この場において勝てる可能性のある唯一つの道を提示する。
『ヴィヴィオ嬢』
「どうしたの?」
『勝ちたいですか?』
「勿論」
『パイロット』
「ん……」
『今なら退避は可能』
「ヴィヴィオは逃げないよ」
ならば、後は勝つのみ。
『よろしい。Start up Engine:Degenerate furnace』
『Start up Engine:Solar furnace』
2機の動力部分が開放される。
矢澤ハコにより組み込まれたその動力。
『右手を前に』
「こう?」
出現するのは空間にポッカリと開いた黒と紫で彩られる穴。
景色が歪むように見えるそれは言い知れぬ不気味さが漂っている。
『ええ、その穴から取り出してください』
「これは、剣?」
『ええ、貴方の最強の武装の一つ……グランワームソードです』
まさに大剣とも言えるその武器を構えるヴィヴィオの装甲に変化が生じていく。
白と黒に彩られた鎧は、少しずつその色を変え……
蒼い外装へと変化した。
まさかの2機目が登場