『Start up Model:ARX-8 Rebatein/Artificial Intelligence:AL』
『Start up Model:Chamber/Artificial Intelligence:Pilot Support Enlightenment Interface System』
「変身!!」
ヴィヴィオの声とともに腕輪の光が全身を包む。
まばゆい光。それに目がくらむなのは達はヴィヴィオから視線をそらす。
光はすぐに収まり、ヴィヴィオの姿を表していく。
体長は成人女性には及ばない程度の大きさ。白と黒が目立ち、ゴツゴツとした機械に全身を包んでいる。
「ヴィ、ヴィオ?」
頭部からはポニーテールのような長い髪が生えており、その顔の目に当たる部分は薄く光ったラインが浮かび上がっている。
右手に機関銃のようなもの、左手には短い剣を持っており、その背中には黒いブースターがついていた……
「その姿は?」
「えっへん!ヴィヴィオの最強フォームだよ!」
『ええヴィヴィオ嬢は準最強です』
『我々の性能は高い』
ゼストに向かって胸を張るヴィヴィオに聞き慣れない声が2つ。
発生源はヴィヴィオの両腕にはめられた腕輪から……
「ゼストさん、どうする?」
「ふむ、私はどちらかと言えば近接戦が得意でな。あの金髪と赤髪二人を引き受ける」
「じゃあ、ヴィヴィオは残りだね!」
その言葉とともになのは達は気を引き締める。
ヴィヴィオからはあまり強い敵意は感じない。それでも威圧感は凄まじいものであった。
「チェインバー!」
『了解。重力制御、良好』
「アルちゃん!」
『こちらも戦闘準備完了です』
「じゃあ、行くよ!」
その言葉とともにヴィヴィオの姿がブレる。
「――ッ!!」
反応できたのは一人だけだった。
高町なのはへと突進したヴィヴィオの攻撃を受け止めるフェイト・テスタロッサはその驚くべき早さと攻撃の重さに驚愕する。
「んー!!フェイトママはゼストさんが相手するの!」
「そうも言ってられない……よ!!」
フェイトの切り払いを躱し、空中に浮遊する。
ヴィヴィオの顔は見えないが、戸惑うことなく攻撃してきたことになのはは酷いショックを受けた。なのはにとってヴィヴィオは間違いなく自分の娘であり、愛情を持って接してきた。だが、それなのにこんな一切の躊躇もなく攻撃を仕掛けてくるのはあんまりではないのか。と、まるでヴィヴィオに裏切られてしまったかのような錯覚を覚えてしまう。
「なのはさん!!」
「――っ!!」
また攻撃が来た。今度は魔力弾。狙いはなのはだけではない。後ろにいる部下であるティアナやスバルも狙われている。
「防がれるね……じゃあ今度は同時攻撃だよ!チェインバー!!」
『了解。デフレクター・ビーム、発射!』
腕輪から聞こえる声とともにヴィヴィオの周囲からレーザーが照射される。
それは編曲し、シールドを張っているなのは達の横をすり抜けて迫ってきた。
「クッ!!」
寸でのところで躱すが、その先には機関銃を構えたヴィヴィオがいる。
「なのは!!」
直ぐ様フォローへ入ろうとするフェイトではあるが、近付いてくる影に気付き攻撃を受け止めた、
「貴様の相手は私だ」
槍を打ち付けたゼストは鍔迫り合いになりながらもそう呟く。
そして、左手に持ったバーンバズーカをシグナムへと撃ち放ちながら槍を突き上げた。
「がら空きだ!!」
背後からヴィータの縋が迫る。ゼストはそれを一瞥することもなく、バーンバズーカの後ろ部分から魔力弾を発射した。
「な!そんなのありかよ!!」
攻撃を当てることで直撃を防いだヴィータは直ぐ様距離を取る。
たったこれだけの手合で理解できる。目の前の相手はエース級を相手にしても一歩も引かないどころか、1対1ならば勝ってしまうかもしれないと。
そして、ヴィヴィオは、あの上月典矢という規格外が作り上げた機械に身を包み、初めての戦闘だというのになのはたちと互角に近い戦いをしている。
いや、なのはが戦いに身を入り込めていない事を考えれば押されているとも言えた。
「余所見する暇はないぞ……」
その言葉とともにゼストは何かを発射する。
鼻につく臭いがする物……ヴィータにはこの匂いは覚えのある匂いであった。
「ガスか!?」
「超可燃性の魔力だ。じっくりと味わえ」
バーンバズーカから魔力弾が発射された。それは直ぐ様空気に触れると爆弾のように膨らみ、巨大な炎を纏って爆発した。
◇
「うわ、すごい爆発だね」
『好機』
『いえ、待ってください。右斜め前から攻撃が来ます。迎撃を』
「わかったよ!!」
アルからの言葉を受け取り、短剣を振るう。
ガギンと言った音と共にそれはエリオに止められていた。
『前方より熱源反応接近』
「はい!」
機関銃から魔力弾を発射し、ティアナが放った魔力弾を相殺する。
「貰った!!ディバイン、バスター!!!」
『……ラムd』
「大丈夫だよ、アルちゃん」
背後から現れたスバルがその魔力を込めた拳を撃ち放つ。
高町なのはの魔法を初めて見てから憧れたその魔法。無論スバルにとっても思い入れが深く自身を持ったその一撃は……
「ほら、言ったでしょ?」
ヴィヴィオへとダメージを与えることは出来なかった。
「う、そ……」
「今度はこっちのばん!」
エリオのデバイスを掴みクルリと回転したヴィヴィオはそのままスバルへとエリオをぶつける。
「クッ!!」
「ガハッ!!」
反撃することも出来ずにスバルはエリオを受け止め、そのままヴィヴィオにエリオごと吹き飛ばされた。
「フリード!!」
今度はキャロの使役する竜。それに目を輝かせるヴィヴィオを無視し、両腕のAI達は自動武装と呼ばれる、ヴィヴィオの意思とは関係なしに攻撃する物で迎撃する。
近づこうとも近づけない。攻撃しようともその前に潰される。
ヴィヴィオが命令しているわけでもないその弾幕は凄まじく、フリードリヒに対抗する手段は無かった。
「ふへ!?」
突然、ヴィヴィオの動きが止まる。
両腕、両足、そして腹部にピンク色の輪のような拘束魔法……バインドがかけられたいた。
「あまり、我儘はダメなんだよ?ヴィヴィオ」
「ひっ!」
「少し、頭冷やそうか」
豹変したかのような顔で、俯くなのはに思わず声を上げてしまう。
その瞳は濁っており、普段ヴィヴィオへと語りかけていたなのはの面影はどこにもない。涙目になるヴィヴィオに顔が隠れているため気付かないなのはは、己のデバイスのレイジングハートを構えて、小さな声で呟いた。
「ディバインバスター」