それは圧倒的な強さを持っていた。
魔導師に囲まれても何もアクションの起こさない闇の欠片に向かって各々が持つ最大級の威力の魔法を打ち込む。
闇の欠片に命中するも、傷を与えられず……
闇の欠片は攻撃されて、初めて魔導師たちを認識した。
その辺にいる有象無象の存在に向ける視線ではない。その眼に映るのは明確に敵意を持って攻撃してきた小さな存在であると闇の欠片は理解し、動き出す。
魔導師達が全滅するのに1分とかからなかった。
◇
「嘘……でしょ」
余りにも現実離れした光景にアースラの船員は唖然とする。
彼処にいるのは魔導師でも選りすぐりの強者ばかりだ。いかに強い力を持っていようともそうそうやられる事はないと内心で皆が思っていた。
だが、現実は違う。
闇の欠片から放たれた光線に貫かれ、魔導師達は堕ちていく。幸いにも命に別状はなさそうだが、あれだけの高出力の魔法を身に受けては一溜まりもない。
「まさか、あれほどとは……」
闇の欠片が放つ光線一つ一つが高町なのはの放つスターライトブレイカーを匹敵、否、超越した力を秘めている。
その規模の光線をまるで湯水のごとくばらまく姿は圧巻とも言えた。
『………ニセモノ、ゴシュジンノニセモノ』
アースラに留守番しているロボットもモニターに映る戦いを見て今の状況を少しばかり把握した。
自分の大好きな創造主の偽物が好き勝手に暴れまわっているということ。
このままでは創造主の生まれ故郷である地球が危ないということ。
自分の大好きな店にいつも来てくれる女の人が危ない目にあっているということ……
『イカナキャ』
ロボットはふらふらと空中を飛び、アースラの転移装置に向かう。
絶望に包まれている戦場が映しだされているモニターに気を取られている船員たちはその事に気付かなかった……
◇
『ケンサク、ケンサク』
模索する。己の中に眠る大きなブラックボックスを紐解くようにロボットは回路を動かす。
今からロボットが挑むのは創造主の偽物であり、それに近い力を持った存在。生半可な力ではまず太刀打ちさえ出来ない……
『ワード、キタイセイノウジョウショウ』
幾つもの項目に書かれた物の中から必要としているデータを己にインプットしていく。
何故このようなことが出来るのか、どこからこのデータを手に入れているのか……それはロボットですら理解できていない。
だが、知らなくともロボットは作業をすすめる……
『ショウニン、カクニンデキズ』
自身の出来うる限りの限界まで、只々ロボットは強化する……
『サギョウチュウダ……ガガガガ……ゾッコウゾッコウ』
今ここに創造主はいない……ならば頼れるのは己のみ……
『ガイブユニット、エンカクセツゾク』
全ては自分の好きな人のため。自分が大好きな人に喜んでほしいため……
『GNドライブ……ゲンザイノセツゾクスウ……10』
今、一体の小さな
◇
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――ああ、テステス。聞こえるかな?
ダレ?
――ボクが何者なのかは気にしなくていいよ
ワカッタ、ワカッタ
――外部ユニットに関しては任せてね。まだまだ予備もいっぱいあるし
アリガトウ
――じゃあ、お決まりの台詞を言わせてもらおうかな……トランザムは使うなよ?
リョウカイ。トランザム、キドウ、キドウ
――ははは、頑張りな。
キタイセイノウノコウジョウ、コウジョウ
――ん?
ブラックホールエンジン、セツゾク
――ちょ、おま!
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『カイシュウ、カイシュウ』
赤い身体に粒子をまとった小さな戦士は気絶している魔導師たちを回収していく。
それを許す闇の欠片では無く、小さな戦士に向け光線を打ち続ける。
しかし、当たらない。淡く輝くその戦士に掠りもしない。
ならば、全方位を攻撃するまでと、衝撃波を飛ばすが、当たる直前にロボットは姿を消し、攻撃を躱す。
『ハンゲキ、ハンゲキ』
ここからが始まりだった。
トランザムシステム。GNドライブからGN粒子を爆発的に生産し、機体の性能を飛躍させるシステム。
それに加え、機体の性能が引き上がったことにより使用できるようになったシステム。ブラックホールシステム……
紅い身体に蒼き魔神の力を秘めたロボットはブラックホールシステムにより時空を歪めながら闇の欠片へと接近する。
「舐めるなぁ!!!」
『ディストリオンブレイク』
闇の欠片が莫大な魔力を載せた光線を放ち、ロボットの口から放たれ、歪曲空間を通って増幅された光線がぶつかり、爆発的な力を生む。
その日、地球は滅びた
反省はしている。後悔はしていない。
ちゃんとした10話も後日公開するのでもうしばらくお待ちを