魔導書は冒険譚を綴る   作:日λ........

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書籍版入手しました。近場に無かったので少し出かけて購入。なので少し更新が遅れると思います。元々不定期の予定でしたが。web版との様々な違いを楽しめて面白いです。
読みやすくなっていたりすることと、追加されたNPC達がwebモモンガさんが喉から手が出るほど欲しがりそうな人員が揃っていてデミえもんの仕事量が減ってる事に感動しました。
マジでアルベド来てくれって言いたくなる環境だったもんなぁ……


二話「魔法と実験」

 

アルベドを落ち着かせた後、自分はモモンガさんとメッセージでやり取りをしつつ、セバスたちの帰還を待った。

どうやらセバスたちは無事このナザリックの外に出る事が可能となっていたらしく、ユグドラシルNPCのシステムの縛りからは完全に解かれている事を確認。そして今、外での調査を終えたセバスとプレアデスの一人から、その報告を聞いていた。

 

「__では、説明してくれ。セバス」

「はい、モモンガ様。現状、ナザリックは本来建てられていた場所である沼地ではなく、平坦な草原の上にあります。念のために『プレアデス』内でガンナーの技能をもつシズ・デルタを私の背にのせて飛行し、上空から彼女に敵対する存在に危険な存在がいないかナザリックから半径5キロ程確認させましたが、いるのは無害な野生動物のみでありました」

「ありがとうセバス。これで僕らが置かれている状況について、正しく理解することが出来たよ。しかし……草原か。ナザリック周辺にはそのような物は無かった筈……」

 

しかも聞いた限りだと、周辺には危機となるモンスターも居らず、野性動物がほとんどだと聞く。

しかしモンスターならともかく、普通の野生動物くらいしか見当たらないとは……

 

「セバス、帰ってきたところに申し訳ないのだが、階層守護者達を第六階層の円形劇場に召集を掛けてくれ。そこでナザリックの現状についてを話すとしよう」

「かしこまりました。失礼いたします」

 

そういって、一礼した後セバスは玉座から離れていった。

そうして直ぐに、モモンガさんとのメッセージでの会話を開始する。

 

『……コンソールやGMコールも使えず、ユグドラシルではナザリックが建っていた筈の毒の沼地も無く、加えてモンスターではない野生動物が闊歩している?まさか……ここは『ユグドラシル』ではないのでは?』

『その可能性も十分ありえますねぐりもあさん。となれば、私達は本当に『ユグドラシル』で使えていた通りにスキルや魔法が使えるのか……不安になってきました。現に、コンソールは使用不可になっていますし』

『そうですね。既に一部、現実の物となったスキルの効果を自分達は実感している訳ですが、現実の物となったが故に『ユグドラシル』の仕様とはまったく違った物になっているみたいですから。精神作用無効や精神狂気耐性がああいう形で作用していますし、自分の場合は魔力探査がえらく高性能な物になってます。レーダーとしてだけでなく、一種の嘘発見器や大まかな精神鑑定にも使えますよコレ。確かにユグドラシルでもシンプルだからこそ強力な補助スキルでしたが、現実化するとここまで汎用性のある能力だとは……』

『あのスキルがそのような物に……これは、早急に自分達の力を確認するべきでしょうね。我々は『ユグドラシル』では嫌われ者でしたから、我々以外のプレイヤーがいたとしても味方になるとは限りません。むしろ、敵になる可能性の方が高いでしょう』

 

確かに、異形狩りの連中には話の通じない奴も多かったからなぁ……そんな奴等からすると、ここは是が非でも破壊したい場所である筈だ。

ならば、ここが草原であるというのもマズイ。簡単に発見されてしまうこの地形ではいくら人里離れていたとしても、見つかるのは時間の問題だ。

物理的に隠すか、幻惑魔法で偽装するかしなくては。

 

『それと、NPC達の忠誠心に関して確認しておきたいですね。命令に従ってくれてはいますが、私達がどう思われてるのか知る必要があると思うのです』

『……実は先ほど、それに関してアルベドと話して分かった事があるんですよ。魔力探査の精神鑑定の力も、アルベドを通して分かった事なんです』

『へえ、そんな事が……もしかして、さっきアルベドに泣き腫らした後があったのはそのせいですか?』

『そうです、モモンガさん……アルベドからは、このナザリックを去っていったギルメン達が、自分達という子供を捨てて去っていった最低の親のように思われてたようなのです。ほかのNPCからどう思われているかは、まだわかりませんが……』

『なっ!?それは、違いますよ!?皆、皆このナザリックを去っていったのには仕方ない理由があるじゃないですか!?』

『それでもです、モモンガさん。『ユグドラシル』のシステムに縛られなくなり、魂を得た彼らはいわば僕たちの作った息子や娘達とも言えるでしょう。そんな子達側からすれば、僕たちが来なくなった事って、親が子供を見捨てたのと同然なんじゃ無いかって思うんです。ましてや、彼らは現実の自分達のことを知らないんですよ?』

『……でも、そうだとしたら、なんで彼らは僕たちのいう事を聞いてくれるんですか?』

『それはモモンガさんが、最後まで残ってくれたからです。アルベドは、ずっとギルドを守ってくれてたモモンガさんの姿を『ユグドラシル』の時代から見ていたようなのです。もしかしたら僕たちがアルベドの設定を書き換えなくても、モモンガさんだけには忠誠心を向けていたかもしれませんね』

『では、アルベドはぐりもあさんや他のメンバー達を……』

『いえ、実はアルベド達三姉妹って、『ぐりもあ』の外装データを元にタブラが作ったので。……ある意味母親みたいな物かなって伝えた後に、ちゃんと謝ったら許してくれました。いい子ですね、アルベドは』

『え?』

『いやうん、女の子になっちゃったのは色々複雑ですけども、あの子達の母親になれるなら安いものかと思います。タブラはいい子を残してくれたものですよ、本当』

『……ぐりもあさん、ぐりもあさん!?体だけじゃなくて思考も女の人寄りになってませんか!?今もうほとんど男だった形跡を感じませんでしたよ!?母親とか、そういう人みたいな雰囲気すら感じますし!?』

『ッ!?あ、あれ?言われてみれば確かに……おかしいなぁ?』

 

先ほどから思っていたが自分、こんな性格してたっけ……?肉体の影響、やっぱ大きいみたいだ。

かつて『ユグドラシル』全盛期、ぐりもあをロールしていた時は、人でも異形でも、善も悪も関係なく前を進もうとする意思を持つ者を尊ぶという性格で楽しんでいた。だから異形狩りなど気にせずに、ユグドラシルを楽しもうとする人なら人間種でも異形種でも関係なくPTを組んだし、魔導書としての姿でサポートした事も何回もある。しかしここまで母性豊かという設定にはしていなかったはずなのだが……女の子の体になって、娘といえる存在がいるようになった結果、母性本能が急に目覚め始めたのだろうか?

アルベド達と同じような艶やかな黒い髪と、ある種族レベルを得たが故に変化した、燃え盛るような真紅の瞳。良い意味で女の子にも男の子にも見える、整った顔立ち。そんな姿をした少女が、今の自分の姿なのであるが……そんな少女から母親みたいな雰囲気を出してるって、犯罪的過ぎないかそれ。

気がつくとモモンガさんは頭を抱えている。そこまで衝撃的だったのだろうか……

 

『……驚きすぎてまた沈静化されてしまった。色々と、調べるべき事が沢山あるようですね。肉体の変化の影響に、ナザリックの外の平原の調査、スキルや魔法の確認、NPC達の忠誠心の確認……とにかく、情報が足りません』

『そうですね。でも、焦ってはいけません。一つ一つ、地道に調べていきましょう。種族的には、寿命なんか無いようなものでしょうし、時間だけはたっぷりありますから。あせらず、慌てず、諦めずを大事にしましょう。もちろん、自衛に関しては最優先で対応しながら』

『それは確か、ぷにっと萌えさんの教えですか。楽々PK術以外にも、色々参考になる話が多かったですよね。では、そろそろ始めますか』

『ええ、ギルメンが残した子達に、失望されないように、ですね。では、やりますか』

 

そういって、メッセージでのやり取りを終える。

セバスの報告が来る前に、モモンガさんと自分はナザリックの支配者としての演技をすることを決めていた。彼らが思っているような支配者として振舞う事で、モモンガさんは彼らの失望を招かないようにしていこうとしているようだ。モモンガさんならば、そういう風に振舞っても横暴に思われることは無いだろうと思い、自分もそれをサポートする為にユグドラシル時代のロール風味に振舞うことにした。

モモンガさんの見た目ならともかく、自分に支配者なんてものは性格的に似合わないだろうしね。

手をかざし、その指に嵌めたギルドメンバーの象徴『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』の転移機能を発動させる。目指す先は第六階層の円形劇場(アンフイテアトルム)。

ローマのコロッセオをベースに作り上げた、ナザリックの闘技場だ。

 

 

 

 

「指輪の転移機能に問題はないようですね。よかった……」

「これが使えないとなると、相当活動に制限が掛かりますからね。ナザリック程巨大なギルドとなると、転移機能が無ければ移動だけでも一苦労です。現にセバスが呼びに行った階層守護者達も、まだ誰も来ていないようですし」

 

ここに来た理由は、多少派手に暴れても問題ない場所である事と、セバスたちやアルベド以外のNPCの様子を見に行く為だ。異形種故に大柄な体格を持つものがいても、ここなら問題なく全員集められる。

そして、マジック・キャスターであるモモンガさんと、補助特化。それもある意味ネタビルドに片足突っ込んでる為直接的な攻撃魔法のほとんどが行えず、召喚したモンスターに頼らざるを得ない自分は、魔法が使えなければただのカカシにすら劣る的である。故に、魔法を使用することが出来るのかを確認することは急務であった。

一応、プレイヤー同士での念話を可能とする『メッセージ』も魔法ではあるのだが、アレは魔力の消費は極微量にするものの誰もが使えるシステム側の代物であった為、判断の基準にはならない。やはり、一度は実際に撃って試さなければならないのだ。

 

「確かここは、茶釜さんが製作したNPCが警護を担当していた筈ですが……」

「ええ、ダークエルフの姉弟、第六階層守護者の__」

 

モモンガさんと自分がそう話しながら、闘技場の中に入る。すると、闘技場の上の装飾部分から、ちょうど話していた彼女がジャンプして飛んできた。着地し、直ぐにバタバタ走って此方に向かって一礼してくる。

 

「いらっしゃいませ!モモンガ様、ぐりもあ様!アタシたちの守護階層にようこそ!!」

 

そう、ハキハキと元気に挨拶してきたのはこの第六階層の守護者の片割れ。ビーストテーマーのアウラだ。茶釜さんの趣味から男装をした、ダークエルフの少女である。

いや、設定は何回か見たことがあるからこういう性格なのは分かっていたが、実際に動いている姿をみると別の感動があるものなんだと実感した。この姿を茶釜さんに見せてあげたい。作った側としては感無量である事間違い無しだ。

 

 

「少しばかり邪魔をさせてもらおう」

「こんにちわアウラ。ちょっと用事があったんで闘技場に来させてもらったよ。忙しい所ごめんね?」

「いえいえ!なにをおっしゃるのですか!モモンガ様とぐりもあ様は、このナザリックの絶対支配者!至高のお方達が来て悪い所なんて、このナザリックにはございませんよ!!」

 

え、なにこの高評価。いや、待てよ?ここの闘技場で自分達が主にやっていたことは、自ら出て侵入者を排除していたことだ。

そうだとしたら、自分らが戦ってる姿を一番見てるのかもしれないな。ならば、このリスペクトっぷりにも納得かもしれない。

……なんか嫌な予感がするのは気のせいだろうか?

 

 

「……あれ?マーレは何処かな?」

「え、まだ降りてきてないの!?もー、マーレッ!!至高のお方達が来ているのに、ご無礼でしょう!!」

「いや、無理だよおねえちゃんっ!飛び降りるなんて……」

「早く降りてきなさいよ!は・や・く!!」

「わ、分かったよ……えいっ」

 

そう姉に急かされて、遠慮気味に上から降りてきたのはドルイドのマーレだ。

こちらも茶釜さんの趣味で、少年である筈なのに女装姿である。自分と違って中性的な少女という訳でなく、性別は歴とした男の子の筈なのに、完全に女の子にしか見えない。かわいい。

……業が深いとか思ったけれども、自分も創作畑の人間である為、人のこと完全に言えない。特大のブーメランになって帰ってくる。現状考えると、「おれのかんがえたりそうのおんなのこ」になっちゃってる訳だし……と、イカンイカン。正気に戻れ。

 

「お、お待たせしました。モモンガ様、ぐりもあ様」

「こんにちわ、マーレ。実は、二人に手伝ってもらいたい事があってね」

「こうして、足を運んだという訳だ」

 

カツン、とスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをならし、モモンガさんは言った。

その姿に、何故か二人とも息を呑んだ。

 

「そ、それがあの、モモンガ様にしか触る事が許されていないという、伝説のアレですか!」

「そう、コレこそが我々全員で作りあげた最高位のギルド武器。スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンだ。スタッフの七匹の蛇が咥えたそれぞれの宝石は、全てが神話級のアーティファクト。更に、この杖自体に秘めた力も、神話級を超越し世界級に匹敵するレベルだ。最も凄いのは、この武器本体に組み込まれた自動迎撃システム……」

「モモンガ、話し込みたくなる気持ちは凄く分かるけど、抑えて抑えて。日が暮れちゃう」

「む、あ、ああ、スマンなグリモア」

「す、すごい!」

「凄いですよ!モモンガ様!!」

 

なんか双子の目が凄く輝いてるように見える。これは、アレだな。特撮モノのヒーローのナレーターさんの解説を聞いてる子供の姿そのものだ。

確かにこの武器の秘めた性能は凄まじいものがある。アインズ・ウール・ゴウンメンバー全員で行った廃人的素材集めと、皆で持ち寄った多種多様の課金アイテムを組み合わされて作られたこの武器は、一部世界級アイテムを超えるような性能を使用可能でありながら、それらの機能に回数制限が無いというまさしく最強のギルド武器として完成した。

だが、そもそもギルド武器とは、ギルドの象徴として作られるギルドの特徴であり、一番の急所でもある。つまりコレが壊れた場合、ギルドも文字通り崩壊してしまうのだ。

戦闘に持っていくなんてもってのほか。絶対に破壊されてはならない為に、進入を想定された最後の階層である第八階層のある場所に普段は安置されており、いままで持ち歩く事もできなかったのだ。

なんでほぼ絶対進入不可能な場所に安置していないんだと言えば、そこにぷにっと萌えさん謹製の策と、悪のギルドとしての譲れないこだわりがあるからである。弱点も一種のロマンであるからだ。

そんなこだわりの詰まった一本の杖がコレな訳だが、結局お披露目する事も無く、ギルドメンバーも去り……今に至る。

モモンガさんが、コレの事を説明したくなる気持ちも分かるよ……凄く作るの苦労したから……

まあそんな訳で、試し振りすら完全には終えていない。試作品の方で機能確認はしたが、本物を本当に使うのは、コレが初めてだったりする。

つまりは、コレを口実にして、違和感無く魔法を撃てるようにしようとした訳だ。

 

「そういう訳で、コレの実験を行いたい」

「あと、僕もちょっと魔法の練習にね。しばらく召喚魔法は使ってないから、腕がさび付いていないか確認しに来たんだよ」

「了解しました!直ぐ準備に取り掛かります!」

 

そういって、アウラはこの第六階層に作業用に設置されたモンスター、ドラゴン・キンを使役し、魔法の使用に必要な的を用意していった。

さて、自分のPC「ぐりもあ」の使用できるスキルを試してみようか。

確かにコンソールが消えて、ステータスの確認は出来なくなってしまった。ユグドラシルでは魔法の発動は、スロットにセットした後、そのボタンを押すだけで発動した。

しかし、それらのシステム面での補助が消えた今では、自ら術式を組み、発動する魔法を考えなくてはならないようである。

何故、そんなことを知らない筈の自分がそれを知っているのか。

それは人間を辞め、その身を魔導書に変えたからに他ならない。僕は(・・・)知っている。呼吸するかのように、この体で出来ることが。何を呼び出し、何を使役できるのかを。この身に刻まれた、冒涜的な禁断の知識の数々を!

小手調べだ、来い!

 

「《イア・イタクァ》!」

 

第8位階魔法《イア・イタクァ/暴風の化身召喚》により、恐ろしく冷たい風と共に、黒い風に覆われた巨人が現れる。

ハスターの眷属であり、風の化身イタクァ。『ユグドラシル』ではレベル65のモンスターとして扱われていた、召喚モンスターとしては中の中クラスのモンスターだ。他のクトゥルフ系モンスター同様にいやらしい特性を持っており、その全身に纏った極寒の暴風の影響で接近すると吹き飛ばされてしまう上、氷結属性のダメージまで食らうという近接職殺しともいえる能力を持っている。レベル自体は弱いもののその分消費MPも軽く、近接職を寄り付かせない為に大量に召喚したりと、なにかと使い勝手のいい召喚モンスターであった。

イタクァはドラゴン・キンの設置した的をその拳で一撃粉砕した後、自分の下へ次の指令を聞くかのように顔を向けてくる。『え?これだけでいいの?』といわんばかりに首を傾げながら。

 

「あー……僕の近くで待機してくれイタクァ。風は抑えてね」

 

その姿にすっかり毒気が抜けた自分がそういうと、全身にまとわりついている黒い風の勢いが緩む。そして、自分のことを守るかのように目の前に立ってくれた。

魔法の発動に関して、更に分かった事がある。自身が覚えている魔法を使用しようとすると、頭の中にそれらの記述と思われる本のページが浮かび上がるのだ。恐らくこれは、ぐりもあの本来の姿である魔導書の内容であろう。

おかげでその魔法の使用方法から消費魔力、超位魔法であるならば必要な経験地の量も、細分化されて分かるのだ。つまり結果として、『ユグドラシル』で使えていたように魔法を扱う事が可能である。

なるほど、自分の種族《スペルブック》は、現実の世界となるとこのように自らの体を触媒にして魔法を放つのか。

さて、次はモモンガさんの番だ。

 

「《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル》!」

 

 

そういってモモンガさんが発動したのは、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの7つの宝石に秘められた魔法の一つ、《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル/根源の火精霊召喚》

その余波で召喚した地点にあった的は消し炭と化した。というかこんな派手なエフェクト入ってたっけこの魔法!?自分の良く使う神話生物召喚系の魔法も、中々に派手なものは多いのだが、基本不気味だったりゾッとする演出が入るのでここまでシンプルに強そうな召喚魔法は意外となかったりする。……いや、炎という意味ではコレ以上に厄介なのを出すのもいるにはいるが、燃費悪いからなぁアレ。自分の種族との相性最悪だし、仕方は無いのだが。

自分に来た余波は召喚したイタクァが全部防いでくれました。中々気の利く神話生物だね。本だから、無効化の装備つけてはいるけども炎特攻なんだよなぁ……出来れば喰らいたくないね。

 

「す、凄い!」

「うわぁ……!」

 

その凄まじい光景を、アウラ達はドラゴン・キンにしがみ付きながら見ていた。確かに、コレだけの強力な召喚魔法となれば、普通はMPだけでなくなんらかのコストを支払って発動するものなのだ。

それをただMP……魔力だけで召喚し、使役しているのはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの性能の凄まじさをまじまじと実感してしまった。アレでサブの機能なのか……やっぱ自分らあの時頭可笑しかったんだな。

……実はぬーぼーさんと一緒に、あの杖に隠し機能を仕込んだのだが……活躍しない日を祈るしかない。ある意味ルベド以上の最終手段だし。

 

「プライマル・ファイヤーエレメンタル……レベル80後半だ。アウラ、戦ってみるか?」

「い、良いんですか!?」

「あ、あの僕、しなくちゃいけないことを思い出したので」

「マーレッ!こんなチャンス、滅多にないんだよ!!」

「えええええ……わかったよ、おねえちゃん……」

 

マーレには悪いが、実験に付き合ってもらおう。モモンガさんが覚えている多種多様の様々な攻撃魔法を試さず、杖に記録されたこの召喚魔法を使用した理由は、フレンドリーファイアの設定が外れているのかの確認も込めているのである。

ついいつもの感覚で撃って味方に誤射するなんてシャレにならない。ここまで現実的になってしまっていると、もはや間違いなく可能な事であろうが、それでも確認せずそのままでいるよりもよっぽど良いだろう。

おどおどしてるが、レベル的にマーレやアウラならば、それ程苦労せず倒せる相手だ。危険も、ほどほど程度であろう。

闘技場の中心で、召喚された火の精霊と、アウラ達が構える。そして

 

「プライマル・ファイヤーエレメンタル!双子を攻撃せよ!!」

 

モモンガさんが、戦いの開始を告げた。

 

 




今回難産でした。おかげでこんな半端な所で切る事に。
ちなみにメッセージで話せる相手が目の前にいる上、素の状態で話し合う事に活用してるせいか逆にNPC達と通信できる事が判明していなかったりします。
要は原作だとモモンガさんはフリーチャンネルで周辺一体に通信してた所を、ぐりもあが居るせいでチャンネル固定しちゃってる感じです。素で話し合える相手がいるお陰で心情的には原作よりもリラックス出来ていますが、判明するまで少しの間不便になる模様。

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