とうとうきました二桁目。そんな時に更新を一週間遅れせるなんて幸先の悪さ。今後も遅筆は治りそうにもありません。
ちなみに毎度毎度このような事を前書きに書くかというと、ネタがこれ以外にないからです!
それではどうぞ。
まるで燃えているかのように世界を染め上げる夕日。彰祐は決して軽いとは言えない足取りで家路につき、我が家のドアノブを握り締める。
「ただいま」
帰ってくる返事はないが、習慣とは変えれるものではない。そのまま迷わずに自室へ向かい、部屋着へと着替えていく。
フォーマルからカジュアルへと変わった今でも、考えることは学校となんら変わりはなかった。
「確かに。勇魔は顔は少しは、すこーしはいいかもしれない。だが彼女だと……?それもなんか雰囲気的に美人であろう彼女だと!?ははっ笑わせてくれる」
見事なまでの嫉妬、ジェラシーだ。
部屋で高笑いをしていると、だんだんと客観的になれたのか恥ずかしくなり押し黙る彰祐。別に聞いている人はいないから良いじゃないかと言う人も、これまたいないのである。
そして彰祐は考えることをやめた。
有り体に言えばボーっとしだした。もうどうでも良くなったのか、はたまた考えすぎで頭がおかしくなったのか。どちらにせよ口を半開きにし、目は何もない中空の一点を見つめている事実は変わらない。
5分くらいたっただろうか、微動だにしない彰祐だったが、彼を動かすことが起きた。
「ん、メールだ」
右上の仮想現実上に表示された質素な便箋型アイコンが点滅して、彰祐の意識は一気に覚醒した。
「差し出し人は──勇魔か」
名前を確認した後に人差し指で欄の一番上を2回触り、本文を表示する。
「なになに、見せたいものがあるから夜の9時丁度に店に来て欲しい、だと?見せたいものってなんだ?」
彰祐はその旨を伝える内容の文章を返信すると──即座に返答は返ってきた。
[だから、それはお・た・の・し・み]
思わず吐きそうだった。
「あいつはいつからそんな趣味してたんだ?」
そうやってメールを眺めてくると、突然目の前に一つの表示が現れた。
早苗からの着信だ。彰祐は承諾を押しTV電話に出る。
『ねぇ、あんたのところにも来た?』
「メールか?来たぞ」
「聞きたいんだけどさ、アイツがこうゆう事する時って大体どんなことが起きるの?」
「いや知らね」
『はぁあ!?』
知らないものはしょうがないじゃないかと彰祐は思ったが、目の前の少女は止まらない。まるで弾丸を浴びせるかの如くまくし立てられる。
いい加減鼓膜が震えすぎで痛くなってきそうなので指を耳に入れうるさいとジェスチャーをして言葉の弾幕を止める。
「一年」
突然つぶやかれた単語に早苗はハテナマークを頭上に浮かべ、彰祐に思わず聞いてしまう。
『なにが?』
「約一年、俺が勇魔と初めて会ってからの日数だ」
『……あんたそれでよく相棒って言えたわね』
「甘いな、あいつがウチの店員になったのは1年もたってない!」
『尚更ダメじゃない!!』
彰祐の目の前に映る早苗はわざとらしく眉間に手を当て、天を仰ぐ。
「だから呼び出すことはあっても呼び出されたことはなかったんだよ」
『より一層不安になってきた。どうしてくれるのよ』
「まぁ、頑張れ?」
『そこで語尾上げないでくれる!?』
「やべっ超不安になってきた。落ち着け俺、師匠も言っていたじゃないか。緊張は有意義、不安は無意味って」
『前から気になってたんだけどさ、その師匠って誰なの?ワグテイルさん?』
早苗のふとした質問に、彰祐の顔つきが変わったのが早苗にはわかった。その少し驚いたような、陰が差しているような表情のまま彰祐は答えた。
「ちがうよ。パンサーも、それにダークだって会ったことないよ」
『ふぅん、その師匠とやらはアンタの親なわけ?』
「そうだよ、それに初代G・Eの店長で探偵。もともとあの店自体が師匠が買った家をちょこっと改装したものだしね」
そこまで話を聞いた早苗は、何かを考えているようだった。そしてその考えがまとまったのか、顔をあげた。
『なら、いまはどこに居るの?』
「──っ」
彰祐は息を飲んだ。傍から見ればいたって普通の質問に彰祐は目を泳がせ、少しの間を置いてようやく引き絞るように言葉を紡ぐ。
「それは──、」
突然、彰祐の家に来客を知らせる玄関のチャイムの音が響いた。その音は通信を通して早苗にまで聞こえたらしく、予想だにしていなかったことに目を丸くしていた。
「ごめん、人が来たから!それじゃ9時に」
そう言って彰祐はテレビ電話を終了させた。切れる間際の早苗は何かを言おうとしていたが二の句を継がせるまえに通話は終わっていた。
彰祐はベッドから立ち上がると少し逸る足取りで玄関へと向かい、ロックを外した。
すると扉が開き、その前には一人の女性が立っていた。
「マヤ姉、どうしたの?」
マヤ姉と呼ばれた女性は少しはにかむと、家の中に入りながら答える。
「今日おばさんから頼まれたのよ。帰りが遅くなるから彰祐の晩御飯つくってくれないかーって」
そう言いながら黒髪をうなじのあたりで束ねた女性は靴を綺麗に揃え、靴箱へと収める。
本名、上河内 麻耶。彰祐より少し低いくらいの身長に、いつもうなじの辺りで束ねた黒髪。右目にある泣きぼくろが特徴的な彰祐の幼なじみだ。
向かいの家に住んでおり、帰りの遅い彰祐の両親に代わり度々晩飯をつくったりしている。
まっすぐ橘家の台所に立ち、先ほど買ってきたであろう食材をエコバックごと台所の上に置く。
その間に彰祐は二人分のマグカップを出し、その中へインスタントのミルクティーの粉を入れる。
「もう準備したけどさ、ミルクティーで良かったよね?」
同じ形の色違いのマグカップの中へ電気ケトルの中にあるお湯を注ぎながら彰祐はマヤに聞く。
「大丈夫よ」
短い答えが返ってくると、彰祐はスプーンを取り出し底の方に残っている粉をかき混ぜて溶かしていく。
その横を麻耶は通り過ぎ、リビングにあるテーブルの椅子のいつもの定位置へと座ると、少し遅れて彰祐がミルクティーを持ってくる。
「ミルクティーになります、お嬢様」
「なにそれ」
「ちょっと紳士になろうかとね」
「ふふ、似合わないよ」
麻耶はクスクスと笑いながら彰祐から受け取ったミルクティーを一口すすり、そばにあったテレビのリモコンでテレビを点ける。
明るくなった画面のむこうでは、最近話題のモデルや芸人が大御所芸能人のMCとともにトークを繰り広げるバラエティをやっていた。
「最近学校どうなの?」
「まぁまぁ」
「とてつもなく素っ気ないね。お姉ちゃんないちゃうよ」
テレビの音をBGMに、十二畳のリビングで他愛ない日常会話が交わされる。
「もう大丈夫なの?」
「大丈夫って何が?別に怪我なんかしてないけど‥‥‥」
「去年までヤンチャしてたんでしょ?今まで聞かなかったけど」
その言葉に心当たりがあったのか、彰祐は苦い顔をつくった。
「知ってたんだ」
「そうよ、お姉ちゃんはなんでも知ってるわよ」
「なんだよそれ。ま、もう心配しなくても大丈夫だよ。今は普通に友達と遊んだりしてるだけだから」
麻耶を安心させようとした自分の言葉に「あっ」と声を漏らし、彰祐大事ななにかを思い出した。
「マヤ姉。今日9時から用事があるから晩飯早くして」
「別にいいけど用事って?」
答えづらい質問に彰祐は少々逡巡し、最も当たり障りの無い言葉を選び抜く。
「‥‥‥友達とゲーム」
「ゲームねぇ。最近やってないな。最後にやったゲームは彰祐とやった‥‥‥あれ、なんてゲームだっけ?彰祐覚えてる?」
彰祐は軽く首を振って否定した。
どうしても思い出したいのか、麻耶は頭を抱え唸りだした。そして頭から煙でもでるんじゃないかと心配になってきたところで突然麻耶は顔を上げた。
「ねぇ、お姉ちゃんもそのゲームやってみたいな!」
「えェ!? いや、それはちょっと……」
突然の申し出に彰祐が目をそらすと、麻耶はさらにスイッと身を乗り出した。
「そんなにハマってるんなら面白いんでしょ? お姉ちゃんも興味あるなー」
「でも格闘ゲームだよ?」
「そんな事言って。彰祐格ゲーあまり好きじゃないじゃない」
「いや、本当だって」
「ならただ事じゃない格ゲーなんだね!」
「いや、まあスリリングでただごとじゃないけど‥‥‥」
「ならっ!」
麻耶が目を輝かせた瞬間、台所のほうで何かが崩れ落ちる音がした。
「ギャー!今晩の食材達が!!」
駆け足で台所の方に向かう麻耶。
こんなところで2回目の天の助けがきてくれた。
床に落ちたトマトやらレタスやらを拾い上げ、慌ただしく整理し直し始める麻耶。
その姿を見て、彰祐がこみ上げる笑いを堪えずに吹き出す。
しばらく笑ったあと、ついでに晩御飯の準備をしている麻耶を見る目は先ほどとは違う感情を持っていた。
「それに、もうマヤ姉はできないんだよ……」
自分にしか聞こえない声で静かに呟く彰祐は、寂しい笑みを浮かべていた。
???「おしえて~、レックス先生!」
レックス「今回も???は伏字で送らせていただきます」
???「今日はパンサーさんについて教えてください!」
レックス「それは本人に聞いてください。本人を呼んだので自己紹介どうぞ」
パンサー「え、イキナリ!? え~っと名前はドーン・パンサー。武器は2丁のマシンガンです」
レックス「得意技はなんですか」
パンサー「必殺技は秘密よ。アビリティはキャットファインダーって所謂レーダーが使えるわ」
???「なんで必殺技は秘密なんですか!」
パンサー「文句は作者にどうぞ」
???「パンサーさんがヒロインって本当ですか!」
パンサー「そう見えないのは作者のせいよ」
レックス「はい、ありがとうございました」
~???が解るまであと1話~