カッコ好いかもしれない雁夜おじさん   作:駆け出し始め

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肆続・カッコ好いかもしれない雁夜おじさん

 

 

 

 体がダルイ。

 洒落にならない程ダルイ。

 

 と言うかダルイと言うよりヤバイ。

 マジで死にそうだ。

 と言うか現在進行形で死へと向かっているぞ。

 って言うか何で俺は死にそうになってるんだ?

 

 ……………ええと…………………………そうだ、確か魔力を根こそぎ持っていかれたんだ。

 そしてそれだけじゃなくて生命力もゴッソリ持っていかれたんだ。

 

 ………ああ………………なら死ぬよなぁ………。

 ………生命力を生み出す為に必要な生命力も持っていかれたら、そりゃ生きていられないよなぁ………。

 

 

 …………………………桜ちゃんを残したまま死んでしまうことになるけど、無い袖は振れないよな………。

 ……………一応、俺が召喚失敗で死んだら教会に電話するように言っておいたから大丈夫だと思いたいな………。

 …………………………悔しいけど、魔力どころか生命力も無ければどうしようもないからな………。

 

 ………………………………………いや、まだ俺の右手に魔力が………令呪が残ってるじゃないか。

 此れを使ってサーヴァントに俺を回復させるように…………………………駄目だ。

 召喚されたのがペルセウスなら、回復関係の技能が在るかどうかすら怪しい。

 だから……………令呪1画を魔力源にして1画の令呪を生命力に変換しよう。

 

 というか、令呪の縛りが無いサーヴァントを放置していたら桜ちゃんが危険じゃないか!

 最悪今現在魂食いの標的にされてるかもしれないんだ!

 急いで起きないと!!!

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「桜ちゃん!!!」

 

 無理矢理令呪の魔力を生命力に変換して復活した俺は、痛む体を一切無視して急いで体を起こした。

 が、――――――

 

「「あいたっ!!」」

 

――――――勢い良く何かに頭をぶつけた。

 

「~~~~~っっっぅぅぅ………………何だ何だ?」

 

 割と頑丈な筈の俺が痛みに悶えるなんて何とぶつかったんだ?

 少なくても、恐ろしいことだが桜ちゃんとぶつかったのなら、桜ちゃんが一方的に吹き飛んでいるだろうから桜ちゃんじゃない筈だ(万が一を考えて跳ね起きるのは出来る限り自重しようと心に留めた)。

 

 そして涙で滲む視界を左右に動かした時、俺の左腕を不安そうに握り締めている桜ちゃんが見えた。

 

「っ!」

 

 桜ちゃんの姿を確認した瞬間、有無を言わさず胸に掻き抱きながら起き上がり、兎に角ぶつかった何かと距離を取るべく後方へと大きく下がった。

 

 大きく後方に下がると同時に意識が遠ざかって膝から崩れ落ちて再び倒れ込みそうだったが、胸に掻き抱いた桜ちゃんの温かさと、腕にかかる桜ちゃんの重みが、遠退き掛けた意識を辛うじて繋ぎ止めてくれた。

 そして俺を支えてくれた桜ちゃんに内心でお礼を言いながら、急いで涙が滲む目元を拭いながら自分の現在状況を確認した。

 

 現在瀕死で残魔力ほぼ0の俺の前には…………………………謎の毛玉が蠢いていた。

 

 …………………………は?

 何で毛玉が? いや、毛玉にぶつかっても痛くないだろ? いやいや、何かあの毛玉蠢いているぞ? ってか淀んだ空気と何かの呟きが漏れてるぞ?

 

 

 …………………………一体全体俺は何を召喚したんだ?

 最悪、ペルセウスがあの剣を持ってた時に乗ってた馬が召喚されるかもしれないくらいは覚悟してたが、生憎と毛玉が召喚される覚悟はしていない。

 

 いや………あれはケセランパセランなのか?

 もしそうなら大当たりだじゃないか!

 ………って、冬木の聖杯は完全な人外は召喚出来ない筈だよな。

 

 う~~~~ん…………………………幸い、悪意とかは一切感じないから危険はとりあえず無さそうだけど…………………………どうしたもんだろうなぁ………。

 

 ま、考えたところで解らないだろうし、令呪も1画だけだけど残ってるから大丈夫だろう。

 出来るだけ教会にマスター登録する迄は脱落したくないけど、此の儘放置してても先に進めないから仕方ないか。

 

「あー………そこの毛玉、人語を解するなら返事をしてくれないか?」

 

 俺が声をかけると毛玉は蠢動を止めた。

 そして暫く動きを見せなかったが、やがて花が開く様に毛玉が広がり……………中から日本文化を勘違いしたような女が出てきた。

 

 

 …………………………疑問は山程在るが、考えるよりも確認した方が早いな。

 

「ええと………お前はペルセウスか?若しくはその縁者か?」

「いえ、私は希臘の伝承とは縁も縁も無いですよ?」

「………俺が用意した触媒はペルセウス縁の物じゃなかったのか?」

「いえいえ、触媒は間違いなくペルセウスって方の縁の品だと思いますよ?」

 

 ……………一体俺は何を召喚したんだ?

 と言うか、そもそも俺は召喚に成功したのか?

 

「……………お前は俺が召喚したサーヴァントか?」

「う~ん………半分正解、半分間違いってとこですかね?」

 

 何故か終始笑顔なのが胡散臭くてしょうがないが、幸い桜ちゃんを威圧してるわけでもないから、今は気にしないで話を進めよう。

 

「訳が解らないから説明しろ」

「はいはい、なら簡潔に説明しますね。

 

 え~、つまりですね、私はどうしてもあなたに逢いたかったので、本来召喚される筈だったペルセウスさんとかいう方に代わり、私が無理矢理召喚に割り込んで降臨しました」

「…………………………」

「いや~、やっぱり召喚対象と同格以上の者が常世で割り込むとあっさり成功しますね。

 

 しかし長らく封印されてたからヘロヘロだったんですけど、御主人様から大量に魔力を貰って一気に全快しましたよ!

 いや、ホント凄いです!

 割り込んだから聖杯からのバックアップも無いのに、自力で私を完全な状態で降臨させられるなんて、これはもう安部清明も真っ青級のキャパシティですよ!!

 キャー♪ 此れはもう聖杯戦争は勝ったも同然ですよー♪」

 

 ………マスターはサーヴァントの状態を知れるんだったよな。

 ……………とりあえずうるさいこいつは無視してステータスを見よう。

 と言うか初めからこうすれば良かったな。

 ええと、どれどれ。

 

 

 

・・・・・・・・・・―――――― ステータス・始 ――――――・・・・・・・・・・

 

 

【クラス名】

 

・--

 

 

【真名】

 

・ヘトフセ、マチハ、゚、コ、ッ、癸ヒ。」

 

 

【パラメーター】

 

・筋力:A8+ ・魔力:A10+

・耐久:A5+ ・幸運:??

・俊敏:A9+ ・宝具:EX

 

 

【クラススキル】

 

・--

 

 

【スキル】

 

・陣地作成:??

・借体成形:A

・呪術:EX

・神性:EX

・神霊魔術:EX

 

 

【宝具】

 

・ソ蠻キニ・キセネネャフ鍗テタミ。ハ、ケ、、、ニ、ヒ、テ、ウ、ヲ、「、゙、ニ、鬢ケ、荀ホ、キ、コ、、、キ。ヒ

 カタ、ホキチ、キ、ソハヌ、「、遙「カフチナタミ。ハ、ソ、゙、筅キ、コ、、、キ。ヒ、ネ、、、ヲソタハ・ナェ、ヒイ・キ、ソ、筅ホ。」

タナタミ、マク螟ホネャモ。カタ。ハ、荀ソ、ホ、ォ、ャ、゚。ヒ。「、ト、゙、・キセネツ鄙タ、ホソタツホ、ヌ、「、遙「コイ、ネタクフソホマ、霏ュイス、オ、サ、・マ、、ト。」ヒワヘ隍マサ狆ヤ、ケ、鮹ノ、鬢サ、・ウ、ネ、ホ、ヌ、ュ、・スウヲ、ホソタハ讀ホソタハタ、ャ。「クスコ゚、ホ・ュ・罕ケ・ソ。シ、ヌ、マ、ス、ウ、゙、ヌ、ホホマ、マー妤ュスミ、サ、ハ、、。」

ハネ、キ、ニ、ホク嵂フ、マツミセン、霏ュイス、オ、サ、・」・イ。シ・倏ェ、ヒ、マ。「ネッニー、キ、ソ・ソ。シ・ヒ、ェ、、、ニ。「シォソネ、ホSKILL、ホセテネP、�0、ヒ、ケ、・」

、ウ、ホハマヒワヘ陦「ツ邱ウ、ィ、、、ニ、ス、・ルア遉ケ、・ウ、ネ、ヌコヌツ遉ホク嵂フ、ッエケ、・筅ホ、ヌ、「、遙「ー・ミー・ホキ霹ョ、ヌサネ、テ、ニ、筅「、゙、・ッホマ、ネ、マクタ、ィ、ハ、、。」

 

【詳細】

 

・・フチホチー、ホタオツホ、マ。「・「・゙・ニ・鬣ケ、ォ、鯡ャ、ォ、・ソク貅イ。ヲソタ、ホノスセホー・ト、ヌ、「、・」カフチホチー、マナチセオ、ヒ、「、・フカ篶モカ衒ホクム、ヌ、マ、ハ、ッ。「クキフゥ、ヒ、マフ鋗ウ。ハ、荀ォ、ヲ・ク・罕テ・ォ・・ヒ、ヌ、「、遙「ヒワシチ、マツ遉ュ、ッーロ、ハ、・」

、「、・。「ソヘエヨ、ヒカスフ」、、テ、ニ、キ、゙、テ、ソ・「・゙・ニ・鬣ケ、ャ。「シォ、鬢ホー・フ、ュイア、キソヘエヨ、ヒナセタク。」、ス、・ャク螟ヒカフチホチー、ネクニ、ミ、・・ウ、ネ、ヒ、ハ、・ッス」

セッスマオワテ讀ヒサナ、ィ。「、ソ、タ、ス、ホソネ、ャ。ヨソヘエヨ、ヌ、マ、ハ、、。ラ、ウ、ネ、ォ、鬢ス、ウ、ノ、・・ソ。」

コヌエ・マヌヒヒ筅ホフサ、ヒシア。「、ス、ホフソ、ェ、ィ、・」

ソタ、ヌ、「、熙ハ、ャ、鯀ヘ、ヒニエ、・「ヘナハェ、ネ、キ、ニサヲ、オ、・ソ、ウ、ネ、ヒ、ハ、・」

 

 

 

・・・・・・・・・・―――――― ステータス・終 ――――――・・・・・・・・・・

 

 

 

 …………………………ナンダコイツハ?

 文字化け部分も気になるが、神性EXって、………それって完全な神霊じゃないか!?

 

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!

 神霊相手に令呪が………況してや1画だけで効くとは思えない!!!

 

 パラメーターからして爺さんを越えてるし、神霊魔術とか使われたどうなるか想像も付かない!

 仮に相打ちに持ちこめたとしても、確実に桜ちゃんも巻き添えを食って死ぬ!!

 おまけに逃げようにも魔力が枯渇状態だし、仮に全快時でもラインを辿られたら一発で追い付かれる!!!

 

 どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする!!!???

 ………いや落ち着け。……………落ち着け。…………………………落ち着け。………………………………………落ち着け俺。

 

 少なくても俺や桜ちゃんを今直ぐ如何こうする気なら、俺が倒れてる間にいくらでも如何こう出来た筈だ。

 それをしないということは、少なからず今現在目の前のこいつは俺達を害す気が無いということだ。………これから害す可能性も十分在るが。

 

 ………………………………いざとなったら戦闘を放棄して、令呪の魔力を使って桜ちゃんを教会に転移させるのを最優先しよう。

 

 

「話し方は謙った方がいいか?」

「いえいえ、ご主人様はとは本音のぶつかり合いこそを所望しますから、普段通りで全然問題無しです!」

「………………解った。

 後、俺の名前は間桐雁夜だ。

 お前の名は?」

「そんな………いきなりお前だなんて………………照れますねぇ~」

 

 ………大丈夫かコイツ?

 幸い、桜ちゃんが心なしか楽しそうにしてるから文句は無いが、そうでなければ極力関わり合いになりたくない奴だな。

 

「おっと、照れて名乗りを忘れるのはご主人様に失礼ですね。

 

 ううっ…うんっ。

 ………それでは改めて名乗らせいただきます」

 

 日本文化を勘違いしてるのか、それともどこぞの風俗店の衣装なのかは判別が付き難いが、服の小さな乱れを直して態度を改め、それから厳かに言葉を紡ぎ出した。

 

「私の名は玉藻の前。

 英霊ではなく日本三大化生に数えられる大化生です。

 そして……………天照坐皇大御神と謳われる神の一側面です」

 

 ………マジかよ。

 

「目的は那須の山で殺生石(―――私―――)を清めてくれた恩返しというか一目惚れしちゃったので、良妻狐のデリバリーにやって来ました!」

 

 ……………は?

 

「あ、それに召喚の時の必死な表情と魂の輝きでもっと惚れちゃいました!

 顔も結構良いですけど、魂がとってもイケメンなのが最高です!!

 もう胸キュンです!」

 

 …………………………胸キュンって………。

 

「それに、他の神様が聞き逃そうとも、私の耳にはピンときました!

 あの時のご主人様の慟哭!頑張りが!

 

 それを聞いてしまったらもう、恩返しも兼ねて私が行かない訳にはいかないじゃないですか!!!」

 

 ………………………………………!?!?!?

 

「ちょっと待て!

 もしかしてあの時の俺の思考って筒抜けだったのか!?!?!?」

「はい。

 それはもう召喚の術式に乗った凄い想いが世界の外側に向けて放たれてましたよ。

 多分ですけど、触媒無しで召喚を行ってたら、小さな女の子を命を賭して守るという考えとご主人様の実力的に、ヘラクレスやアタランテ辺りが召喚されたと思いますね。

 

 あ、因みに今はラインを通してご主人様の大雑把な感情や想いが解る程度で、実際は雰囲気を感じ取るのと余り変わりがありませんよー」

 

 ……………………………………………………た、助かったぁ~。

 ………こんな奴に俺の思考が筒抜けになったら気の休まる暇を通り越して、永遠の暇を取らされそうだからな………。

 

「そういうわけで、私はこれからご主人様とゆっくり相互理解を積み重ねていこうかと思ってますので、ご主人様も遠慮しないでバンバン意見をぶつけて下さい。

 そして互いに仲を深めていきましょう。

 ついでに、体もバンバンぶつけて下さっても構いませんから、愛――――――」

「唸れ!俺のコスモ!!!」(ただの全力チョップ)

「――――――と肉よゼフッ!?!?!?」

 

 ………確信した。

 こいつは桜ちゃんの情操にとんでもなく悪い。

 

 後、今更ながら桜ちゃんを胸に掻き抱いたままだったのを思い出し、少し苦しそうだったので解放し、児童情操教育撲滅者から隠す様に俺が桜ちゃんの前に立った。

 ……………俺の背中から覗くように顔を出してる桜ちゃんが可愛いが、和む前に目の前のPTAに喧嘩を売ってる様な奴に告げる。

 

「おい。

 桜ちゃんの……………小さな子の前でそんなふざけた事言うな」

「っぅ~………。

 わ、わひゃりまひた。

 ひゃ、ひゃひかにひまのははたしが悪かったです。

 

 え~と、さくらちゃん、ごめんね?」

 

 謝られた桜ちゃんは不安な顔であいつと俺を交互に見、暫くしたら俺の後ろに隠れてしまった。

 

「………気に触ったなら俺が代わりに謝るし、悪感情も俺が受け止める。

 だから桜ちゃんには悪感情を向けないでくれ。

 頼む」

 

 たとえ見ず知らずで直ぐに消えるような相手だとしても、今は桜ちゃんを悪感情に晒したくない。

 だからサーヴァント相手だということも忘れて頼み込んだ。

 

 すると軽いが真剣な感じの声が直ぐに返ってくる。

 

「いえいえ、可愛い反応じゃないですか。

 少なくてもこんな可愛い子の可愛い反応で悪感情を抱いたりしませんよ?

 

 それにこれからご主人様と桜ちゃんと私の三人で、末永く家族として幸せに暮らすんですから、桜ちゃんを笑顔にしようと気合も入るってもんです!」

「………いや、気合入ってるとこ悪いんだが、聖杯戦争が終わったらお前消えるだろ?」

「……………はい?」

 

 余り言いたくないが、2週間そこらの期間しか存在出来ないということを忘れてるようなので告げたのだが、何故かあいつは心底不思議そうな顔をして俺を見返していた。

 そして2~3秒程目を閉じて考え込んだと思ったら、目を開くと同時に手を打ち合わせながら言い出した。

 

「えーとですね、私は聖杯のバックアップ無しにご主人様の魔力や生命力のみで降臨しましたし、今も存在を維持しているのはご主人様からの魔力だけなんですよ。

 つまりですね、別に受肉しなくてもご主人様と契約さえしていれば私は問題無く存在出来るんですよ」

「………は?」

「と言うかですね、ご主人様くらい非常識な魔力貯蔵量と魔力精製量があれば、私程非常識な存在でも支えることは出来るんですよ?

 

 ………と言いますか、ご主人様って若しかして自分の凄さを解ってないんですか?」

「うっ」

 

 …………………………確かにその辺りの事は爺さんやバルトメロイから耳タコな程言われたが、………まさか逢ってそんなに経っていないのに同じ事を言われるとは………。

 

「ふうぅ……………解りました。

 そしたら折角ですから私が説明しましょう。

 並外れた存在が自分の実力を正確に把握していないと周りも危険に巻き込みますから是非とも聞いて下さい」

 

 そう言うとあいつは尻尾の一つで床をペシペシと叩き、座って話を聞く様に促した。

 ……………何か柔らかそうな尻尾を見ていると顔を埋めたくなったが、それをやったら何かが終わりそうなのでその思考を彼方に投げ捨てた。

 そして座る気は無かったが立つのに疲れたっぽい桜ちゃんの為、俺は床に胡坐を掻き、組んだ脚の上に桜ちゃんを座らせる。

 ……………無論リラックスなどせず、いつでも桜ちゃんだけでも転移させられる様に警戒は続けてあいつの話を聞くことにした。

 

「おほん。

 えー、それでは説明を始ます。

 

 知っての通り此処の聖杯は此の世の外側に在る、英霊の座という所からマスターの従者となる存在を招きます。

 そして招かれる英霊とは、人間でありながら何かしら偉業を成し遂げて信仰を得、精霊の領域に昇格した者達です。

 当然英霊を招くという事は精霊を招くのと同じ難易度とも言えます。

 

 ですが、如何に聖杯と雖も流石に英霊をその儘招くことは出来ないらしく、クラス………解り難ければゲームでいう職業という型に嵌めて、嵌りきらなかった要素を削ぎ落としてサーヴァントという存在に劣化させないと招く事が出来ないんです。

 つまり此処の聖杯は英霊を丸ごと召喚するのは出来ないという事です。

 

 

 此処迄は解りますか?

 あ、桜ちゃんも解らなかったらどんどん言ってくれていいですよー」

 

 俺の膝の上の桜ちゃんは話しかけられて震えたが、視線を逸らすだけでそれ以上の拒絶の反応が無かった。

 後、俺は当然理解しているが、桜ちゃんも話を聞いてる時、特に表情に疑問が浮かんだりしなかったことから、大凡は理解出来ているのだろう。

 ……………たとえ魔術の知識は無くとも頭自体は良いからな。

 

「特に疑問も無さそうなので続けますね。

 

 で、聖杯は英霊をサーヴァントに劣化して招きますが、招いた後も一定期間………つまり聖杯戦争中はある程度存在を維持させる為の補助もしているんです。

 そしてこの補助は結構な割合でして、補助さえ在れば普通の魔術師でも戦闘させる程度は十分出来ますし、一流の魔術師なら補助が在れば宝具………つまり超必殺技を何度か使用させられることも出来ます。

 ですが、補助が無ければ一流魔術師でも辛うじて………弱体化させて存在を維持させるのが限界なんです。

 

 しかしご主人様は聖杯に頼らず私を具現した上で私の存在を維持しているんです!

 しかも私は英霊や精霊よりも遥かに上の神霊で、しかもそれを丸ごと具現化した上で維持しているんです!

 解り易くサーヴァント召喚に換算するなら、私は10回以上召喚する魔力が必要と言うことです!

 つまり! ご主人様は聖杯がサーヴァント招く為に溜めた力以上を使ったということなんです!

 

 

 ………解りましたか?」

「いや………いくらなんでも聖杯が数十年集めた魔力より俺の魔力が多いなんて流石にないと思うぞ?」

「はい、良い所に気が付きました!

 

 流石にご主人様が凄くても、聖杯が何十年と集めた魔力を超えて溜めるのはほぼ不可能です。

 ですが、溜めるのが無理なら使い切る前に足せばいいんです。

 

 つまりですね、普通の魔術師が1日で30くらい回復するところを、ご主人様は1秒前後で150万以上回復して貯蔵魔力の少なさをカバーしたんです。

 まぁ、回復させるのに生命力を呼び水にして「」から魔力を引っ張ってたみたいですから1秒前後で回復が止まりましたが、それでも一流魔術師が溜められる魔力の3000倍前後の魔力を叩き出した計算になります」

 

 1秒で150万って、おいおいおい!?!?!?

 

「ちょっと待て!

 1秒に150万回復したとしたならなんで今は殆ど回復して無いんだよ!?

いくら消耗してるにしても回復しなさ過ぎだぞ!?

 

 って言うか、そんな瞬間的に回復するんなら流石に今迄に気付いてるぞ!!」

「あ、多分それはご主人様が自覚してない体の防衛機能だと思います。

 

 恐らく急激に魔力を吸い上げられ、しかも魔力が枯渇して生命力も吸い上げられそうになったから、慌ててご主人様の体が生命力を使って「」から魔力を汲み上げたんだと思います。

 そしてその一連の流れは殆ど体が自動的にやった事でしょうから、普段は殆ど発揮されないんじゃないんですか?」

「……………そう言われれば納得………出来ないこともない………か?」

「あ、因みに生命力と言っても寿命とは違うっぽいですから、普通に休めば全快する筈です」

「……………そうか………」

 

 寿命が縮んだとしても桜ちゃんが元気になるくらいは残っているだろうと思っていた俺は然して気にしていなかったが、後ろで桜ちゃんが握り締めていた俺の服から力を抜くのを感じ、その考えが無責任な考えだったと思い反省した。

 

「まあ…………………………………………………………………………………………………………今ざっと此処辺りを調べましたけど、召喚されたのは私以外では一人しかいないみたいですから、2~3日、家族三人で美味しいご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒にテレビを見たりゲームでもして寛ぎ、そして一緒にぐっすり寝れば、ご主人様も無事全快すると思いますよ。

 あ、掃除に料理は私に任せて下さい♪

 もう、ご主人様が堕落しきって私無しでは生きていけない程完璧にこなして見せますよー♪」

 

 ………改めて確信したが……………こいつは凄い。

 凄いけど……………馬鹿だ。

 

 ……………まあ、馬鹿だけど悪い奴じゃ無さそうだから……………警戒は解かないけど、代わりに一言言っといてやろう。

 

「いや、俺はお前と家族になった気は全然無いから。

 

 大体お前って、露出は凄いし見た目は派手だし遠慮を何処かに置き忘れてるし、言動は軽いわ腹は黒そうだわはっちゃけ過ぎて付いていけないし…………………………うん、俺のタイプから最も遠いな。

 ………なんて言うか異性の人と言うよりも異星人だな。おまえ。

 

 

 ………いいかい、桜ちゃん。

 将来こんな奴になったら社会……………外で生活出来なくなるから、こいつを駄目の――――――」

 

 俺が桜ちゃんの将来を案じて注意している最中、俺は龍の逆鱗どころか全ての鱗を剥がす様な真似をしたと遅まきながら気付いた。

 

「――――――見本にすることもないかな?

 少し元気過ぎだけど、桜ちゃんは少しくらい元気な奴を見本にした方が良いと思うから、こいつから元気を少し分けて貰うといいよ」

 

 殺気や悪意は感じないし、桜ちゃんも全然平気そうだけど、……………俺は感じる。

 こいつ…………………………絶対にヤバイこと考えてる。

 

 ……………マジで俺を監禁したり夜這いするくらい平気でするな。こいつ。

 しかも桜ちゃんにバレない様にするなんて朝飯前だろうから、今夜にでもマジで襲い掛かりそうだ。

 おまけに房中術とか習得してそうなのが果てし無くタチが悪い。

 マスターを案じてとか言う口実が在ったら絶対にこいつは実行する。

 

 

 余計な事を言ったと内心で激しく後悔し、全力で解決策を考えようとした時、矢鱈上機嫌そうだが俺には地獄からの怨嗟としか思えない声があいつから放たれる。

 

「あははー♪

 確かに桜ちゃんはちょっと元気が無いですからねー♪

 うん、ここはまずリラックスするところから始めましょう♪」

 

 そう言ってあいつは桜ちゃんを誘う様に尻尾を動かしつつ、桜ちゃんに微笑みながら更に話し掛ける。

 

「私の尻尾は柔らかいですしモフモフですし暖かいですから、触ると気持ち好いですよー? 安らぎますよー?」

 

 妖艶に蠱惑するんじゃなく、小さい女の子を魅了するように尻尾だけじゃなく臀部を動かす。

 そしてそれに魅了されたのか、桜ちゃんが俺とあいつをせわしなく交互に見ている。

 

 ………あいつ………………外堀を埋め始めやがった。

 

「あ、まだ私が怖いならお父さんと一緒でもいいですよ?

 幸い私の尻尾は沢山在りますから、お父さんと一緒でも全然問題無しですよ?」

 

 やばいやばいやばい。

 本格的に外堀を埋め始めやがった。

 

 だけどそれを阻止する為に今あいつの発言を頭から否定すると桜ちゃんが不安になる。

 だからといって此の儘あいつに発言を許せば更に外堀を埋められる。

 

 ………どうにかしなきゃ拙いのに、良い案がサッパリ浮かばない!

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 結局、桜ちゃんの不安と好奇の混じった瞳に耐え切れなくなった俺は、あいつに踊らされていると知りながらも桜ちゃんと一緒に尻尾の海に飛び込むことになった。

 そして、あいつの言葉通り、柔らかくてモフフモフで暖かかった為、桜ちゃんは直ぐに寝てしまった。

 

 幸せそうとはいかずとも、不安の無い表情で寝ている桜ちゃんを起こすという真似が出来ない俺は、あいつに体を撫で回されたり胸とか脚を押し付けられたりしながら過ごす羽目になった。

 ………桜ちゃんとは違って脳が蕩ける様な匂いや興奮を誘う柔らかな体が俺の精神を削ったが、俺の手を掴んで眠る桜ちゃんを見ると劣情は吹き飛び心が穏やかになった。

 

 そして一応目の前のこいつを警戒し続ける為に桜ちゃんが起きる迄起きておこうと思ったが、尻尾の気持ち良さとさっき迄とは違って桜ちゃんごと優しく抱きしめられる心地良さに抗えず、警戒心を抱いた儘とはいえ眠りに落ちてしまった。

 

 

 







  玉藻の前のステータス


【クラス】

・無し(丸ごと召喚というか降臨している為)


【真名】

・玉藻の前(天照大神=大日如来=ダキニ天)


【パラメーター】

・筋力:A8+ ・魔力:A10+
・耐久:A5+ ・幸運:??
・俊敏:A9+ ・宝具:EX


【クラススキル】

・無し


【スキル】

・陣地作成:??
 工房作成能力はCランクだが、神霊としての知名度次第で相手の神殿すら自身の陣地と出来る。

・借体成形:A
 原作準拠。

・呪術:EX
 原作準拠。

・神性:EX
 神霊そのものであり、聖杯の補助を一切受けていなくとも此のスキルのおかげで一定ランクに届かない干渉を全て無効化する。

・神霊魔術:EX
 神霊が行使する魔術だが、EXの為魔法の域。宝具と違い極めて高い汎用性が在る。不条理の塊。


【宝具】

・水天日光天照八野鎮石
 原作と違い死者蘇生すら可能としている。


【詳細】

 雁夜が那須の山でやらかした時に一方的に見知り、元来の惚れっぽさもあり一目惚れする。
 そして然して時を置かずに雁夜が桜の力に成る為、聖杯戦争に参加するべくサーヴァントを召喚する際、雁夜の心の叫びと想いを聞き、本来召喚されるペルセウスを無理矢理押し退け、割って入る容で召喚というか降臨する。

 雁夜の規格外の魔力供給により、一切弱体化することなく降臨している。
 更に雁夜が酔った勢いで殺生石の怨念関係を祓っているので、化生ではなく神霊として降臨している(弱点はその儘だが)。
 しかも一側面とはいえ、天照大神は大日如来やダキニ天でもある為、日本を含めた亜細亜では規格外の信仰補正が付与される(信仰補正はパラメーター表記には反映されていない)。

 尚、妖怪としての属性を祓われて神霊として存在しているが、玉藻の前の伝承がある為、破魔矢というか矢という概念が天敵となっている。
 その為、アーチャーは天敵となっている(メタ発言ですが、強力な宝具を矢とする四次と五次のアーチャーは特に天敵)。


 雁夜にハッキリとタイプではないと言われるがめげておらず、桜という外堀から埋めて添い遂げようと、全力でその方法を模索して実行に移し始める。
 勿論雁夜に隙が在れば性的な意味で食べる気も在る。
 但し、桜を雁夜が大切にしているという理由もあるが気に入っており、桜が明確に雁夜に敵対しない限りは力一杯愛情を注ぐつもりもある。

 尚、降臨した際に雁夜がいきなり死に掛けてて焦ったが、実際は雁夜の体感時間と異なり数秒で令呪を魔力源にして回復している為、自作自演ぽいとはいえいきなり見せ場が無くなった為に若干落ち込み、更に目覚めた雁夜の意図せぬ頭突きを受けて鼻血を出してしまい、感動的で運命的な出逢いとは程遠くなった為、雁夜に話しかけられる迄尻尾に包まっていじけていたりした。
 因みに受肉はしていないが本体である天照大神は裏側と雖も現世に存在している為、マスター不在でも普通に現世に留まれ、更にマスターからの魔力供給無しでも精霊の様に自然から供給を受けたり信仰補正で自らを保ったりが可能な為、実際は一度具現化してしまえばマスターの必要性は完全皆無なのだが、玉藻の乙女心によりマスターとサーヴァントの様な関係になっている。



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