桜ちゃんの惨状を見た瞬間、俺は迷わず蟲の海に飛び込んだ。
蟲共が一瞬で群がって来るが、俺の体から噴出する魔力に触れた瞬間、一瞬で消し飛んだ。
そしてあっという間に桜ちゃんの許に辿り着き、最速で体を精査して爺が他に余計な事をしていないかを確かめた。
すると心臓辺りに蟲が寄生していた。
言葉にする時間も惜しかったから内心だけで桜ちゃんに謝りつつ、寄生していた蟲を桜ちゃんの心臓の一部毎消し飛ばした。
そして刹那の間も置かず、過去最高の速度と精密さで桜ちゃんの欠損した心臓を補填するモノを生み出した。
………良し。問題無く心臓は動いているし、桜ちゃんも無事じゃないが死んでいない。
とりあえずの処置としては此れ以上は望めないから、後はゆっくりと休ませながら治療しよう。
だけど………………………………その前に爺を含めて蟲共は生かして此処から出さん!!!
俺の情報漏洩以前に桜ちゃんを…………………………こんな小さな子に此処迄の事をした奴等を許してやる程俺は聖者でもなければ偽善者でもない!!!
遠慮はいらん!全力で断末魔を此処に響かせろ!!!
いや、断末魔を響かせる暇すらやらん!絶望の前で怯え震えて訳も解らず死ね!!!
ふざけた歴史を積み重ねてきた蟲倉から逃げようとしていた爺と蟲共の退路を塞ぎ、時間経過で爆発的に温度を上昇するモノを生み出し、それに爺と蟲共が不条理と言う奇跡に絶望した頃、石すら蒸発する温度になっていたモノを炸裂させた。
そして、間桐の歴史そのものであった爺は呆気無く蒸発した。
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蟲倉を出た俺は先ず桜ちゃんをお風呂に入れた。
桜ちゃん一人でキチンと入れるかも怪しかったから、人形の様になった桜ちゃんの入浴に付き添った。
本当は綺麗にするだけなら魔法で幾らでも出来るが、少しでも全うな人間扱いをしたかったから、魔法とかは極力使わなかった。
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風呂から上がった後、湯冷めしないように確り桜ちゃんの体を拭き、そして髪も確り乾かした後、桜ちゃんの部屋を知らない俺は以前俺の部屋だった場所へと桜ちゃんを連れて行った。
幸い俺が出て行ってからの変化は物置代わりに幾つかの物品が置かれていただけで、ベッドなんかの家具はその儘だった。
可也埃っぽいが、微粒子を引き寄せる物質を生み出して素早く部屋を掃除し、ついでにせめて此の部屋だけでも閉塞感や圧迫感を祓う為、結界から此の部屋を切り離して外と流れが繋がるようにした。
少しはマシな環境になったからか、ほんの僅かだけど桜ちゃんから安心したような気配が感じ取れた。
さて………とりあえず取り急ぎすることは殆ど終わったけど…………………………最後に残った桜ちゃんの手に刻まれた令呪の問題……………此れをどうするか………。
監督役に桜ちゃんが辞退する旨を伝えたとしても、魔術師の常識的に考えて桜ちゃん本人が主張しない限り受け入れてくれないだろう。
そして今の桜ちゃんが主張とか能動的な事が出来るとは思えないし、恐らく威圧感が在るだろう教会の奴の前でそんなことはさせられない。
それに最悪、保護を受け入れられずに教会から追い出された帰りに複数のサーヴァントに袋叩きされる可能性も在る。
かといって召還せずに令呪が誰かに移るのを待ったとしても、誰がマスターか解らないのと同じく、誰がマスターじゃないかも解らない以上、最悪、マスターでも何でもないのに御三家の一つという理由でサーヴァントに攻め入られる可能性が在る。
というかその可能性は恐ろしく高いだろうな。
なにせ数合わせの魔術師なら少しでも自分の情報を隠したいから教会に届出なんてしないだろうからな。
………だからといって桜ちゃんを連れて逃げれば、爺が死んだ以上間桐の後継者筆頭だろう桜ちゃんが居なくなれば遠からず時臣にバレるだろうし、バレれば当然時臣も動き出すだろうし、最悪サーヴァントを引き連れてやってくる可能性が在る。
しかも聖杯戦争が終わっても、魔法使いが当主不在の家の唯一だろう後継者を連れて逃げてれば絶対悪目立ちする。
そして穏やかな日常はまず過ごせない以上、桜ちゃんに悪影響が出るのは目に見えている。
ならば葵さんや時臣に事情を話すしかないが、お風呂の時に家に帰るかと桜ちゃんに聞いたら、尋常じゃない嫌がりようを見せたから、此の案も没だな。
…………………………多分葵さん達全員を自分を地獄に叩き落して見捨てたと思ってるんだろうな………。
縦しんば悪感情が無くても、遠坂の家に戻れば又何処かの魔術師の家に送られる可能性が高いと理解しているっぽいから、遠坂の家に戻るのは別の地獄に行くのと同義なんだろうな。
なら現在最も良い案は……………令呪は俺が貰ってサーヴァントを召還し、聖杯戦争の危険の大半を俺が引き受ける。
そして桜ちゃんが遠坂の人達と話せる程回復する迄守り抜いて、桜ちゃんが間桐を受け継ぐかどうかの遺志を示させる。
もし時臣が間桐が潰れるなら自分達が引き取ると言ったら、俺が代わりに間桐を継いで桜ちゃんを他所の魔術師にやらないように間桐の家に繋ぎ止める。
少なくても他所の家の後継問題に首を突っ込みはしないだろうからな。
…………………………本当は聖杯戦争の間、爺さんやバルトメロイに預かってもらうのが、桜ちゃんの安全という意味では一番なんだろうな………。
少なくとも、どっちも対価を払えば安心して任せられるしな。対価さえ払えば。
だけど……………、何と無くだけど、今、桜ちゃんの傍に俺が居ないと、桜ちゃんは二度と笑ってくれない気がする。
恐怖と絶対の象徴だった爺が死んだ今、桜ちゃんはとても不安定だろうから、そんな時に桜ちゃんが知りもしない奴ばかりの場所に預けるのは無責任を通り越して虐待だと思う。
確かに桜ちゃんを危険に晒すのは愚かだろうけど、子供の為に……………況してや自分が可也の割合で地獄に叩き落す要因になっている以上、無茶でも無謀でも命に代えてでも守りながらでも傍に居るのが大人の役目な筈だ。
少なくても、泣くことも出来ない子に頼られてる時に賢しい計算を優先するのが正しいとはどうしても思えない。
子供の為に骨を折れなきゃ大人は名乗れない。
慕ってくれた女の子の力に成れなきゃ男は名乗れない。
ツケを肩代わりしてくれた恩に報いなきゃ人間は名乗れない。
何より、俺が魔法を手に入れたのは、葵さんや凛ちゃんや桜ちゃんが健やかに暮らしてくれることを命を賭けて願った結果なんだから、此処で見捨てるなんて選択肢は存在しない!
覚悟が決まれば早速行動だ………………けど、………それでも桜ちゃんの意思を確認しなくちゃいけないな。
例え心を抉るとしても、桜ちゃんの未来は桜ちゃんが決めなきゃいけない。
小さい子供には重い選択だろうし、今は何も考えたくない程に辛いだろうけど、それでも決めてもらわなきゃいけない。
その代わり、桜ちゃんが望むならどんな無茶な未来だって叶えてみせる。
だから……………辛いだろうけど、とっても大事なことだから答えを聞かせてほしい。
逃げると言うなら世界すら飛び越えて逃げ切ってみせる。
戦うと言うなら葵さん達が悲しむとしても時臣すら倒してみせる。
普通に生きたいと言うなら時臣にそれを伝えられる時迄守り抜いてみせる。
魔術師に成りたいと言うなら時計塔の超一級講師にだって渡りをつけてみせる。
此の地から離れたいと言うなら此の前買った那須の地で新しい家を興してみせる。
だから…………………………答えを聞かせてほしい。
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明くる日、俺は屋敷中を漁って召還の触媒を探していた。
仮に今回の聖杯戦争を見送るにしても、本来今回使う筈だった分の触媒は在るだろうからと思って探しているのだが、これが全然見当たらない。
………もしかしたら見かけているのかもしれないが、英雄の外套の切れ端とか剣の欠片とか骨の一部とかだったら、パッと見は全然解らない。
いや、神秘と言うか年月を経ているのは解るんだけど、それが何に縁が在るのかは解らない。
一応朝帰りした兄貴に聞いてみたが、知らんと一蹴された。
ついでに爺が死んだことを告げると金と金目の物を半分持って息子と何処かに消えた。
捨て台詞に、間桐の家督は俺か桜ちゃんに譲る代わりに間違ってもそっちの世界に引き込むな、という感じの言葉を貰った。
………兄貴が居ると面倒だから文句は無いが、此れであのワカメヘアーも見納めかと思うと少なからず寂しかった。
しかし………、兄貴も知らない、俺も知らない、桜ちゃんも知らなかったとなれば、どうするかな……………。
1.怪しげな物を纏めて触媒にして召還を行う。
2.触媒無しで召還を行う。
3.誰かの触媒を奪って召還を行う
4.爺さんかバルトメロイから何かの触媒を買った後に召還を行う。
5.魔法で生み出した未知のモノを触媒に召還を行う。
6.英雄に縁の深い土地自体を触媒に召還を行う。
当然1は却下。
最悪町工場の人間とかが召還されるかもしれない。
2も当然却下。
触媒が無ければ何が触媒に選択されるか解らない。
最悪、着ている服のメーカーの社長とかが召還されるかもしれない。
3は良いアイディアだけど、今からマスターと触媒を調べて盗むのは可也厳しい。
多分時臣以外の奴から奪うのは時間が足りないだろうし、貴族っぽい時臣が召還する奴は滅茶苦茶俺と相性が悪そうだからパスだ。
多分、貴族とか王様とか皇帝とかが召還されそうだし、相性が悪過ぎて敵になりそうだし。
4も良いアイディアだと思うけど、時間が足りない気がする。
それに今は桜ちゃんを外にあまり出したくないし、置いて行くのも不安が残る。
最悪、桜ちゃんを傀儡マスターにしてるとか思われたら、桜ちゃんに降り掛かる危険の割合がが跳ね上がるしな。
5は悪手だな。
一応呼び出される奴は過去か未来の第一魔法の使い手とは予測が付くけど、同じ魔法の使い手が二名以上居ると戦力ダウンだからな。
なら………6かな?
……………だけど桜ちゃんを連れて行く訳にも置いて行く訳にもいかないし…………………………どうしたものかな~。
………………う~ん………………転移してもいいんだけど、仮にサーヴァントに見張られていて転移を察知されたら凄まじく面倒な事態になるしな~。
サーヴァントの能力で転移したと思われたなら兎も角、サーヴァント以外の奴の能力で転移したのがバレたら、最悪魔法使いってことがバレて集団で攻め込まれる可能性も在るしな~。
う~~~~~~~~~~ん………………………仕方ない、とりあえず外に出よう。
桜ちゃんには窮屈な思いをさせるけど、外からの感知が極端に難しいモノで作ったリュックサックに入ってもらおう。
そして近場の展覧会で英雄縁の品っぽそうなのを買うなり拝借するなりして急いで帰ろう。
あ、それと出かける前に桜ちゃんの衣服や娯楽品を片っ端から注文しよう。
俺のセンスは当てにならないから、明日の昼間にでも店のを纏めて持ってこさせよう。
……………どれか一つでもいいから興味を示してくれたらいいなぁ。
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自分で買っててなんだが…………………………ペルセウスって………微妙な英雄だよな。
ペルセウスが使っていた剣の欠片とかいう、どういう意図で展示してあったのか解らない物をとりあえず買いはしたが(2億円で)、冷静に考えてみるとペルセウスってハズレな気がする………………。
確かペルセウスって、呪いを受けて化け物化した娘のメデューサを助けるんじゃなくて斬首した挙句、首というか頭を盾に括りつけて献上したりもしたらしいから、実は子供や女が嫌いなんじゃないか?
おまけに敵の情報を詳細に掴んで、伝説のアイテムでガチガチに武装して、敗北要素をゼロにしてから挑んだんだったよな?
…………………………もしかしたら俺より弱いんじゃないか?
いや、…………………………別に弱かろうが下衆だろうが構わないじゃないか。
弱ければ脱落した直後にでも教会に駆け込めば問題無し。
桜ちゃんに危害を加えそうなら自害でもさせてから教会に駆け込めば問題無し。
無事勝ち残れば当然問題無し。
俺が魔法使いとバレずに勝ち残れば言うこと無し。
うん。
全然問題無しだな。
よし。とりあえず召還の事はこれ以上考えても進展は無さそうだから、これ以上考えるのは止めよう。
それよりも無心にケーキやクレープを食べている桜ちゃんを眺めよう。
…………………………表情こそ変わってないけど、好きな物が変わらず………と言うか好きな物が残ってて良かった………。
流石に毎食こんなに一杯食べさせるわけにはいかないけど、今日明日くらいは目一杯好きな物を食べて好きな事をしてもらおう。
少なくてもある程度安心してくれる迄は、優しさじゃなくて甘やかしと言われようと、俺は桜ちゃんが望むことを全力で実行する。
……………但し、摂取カロリー過多にならないよう、なるべく低カロリーの物を用意したりはするけどな。
………さて、俺はカロリーバーと栄養ドリンクを腹に流し込んだら一眠りするか。
一応体調は万全にしとかないと、召還に失敗して令呪が消えたらたまったもんじゃないからな。
目覚ましをセットし、帰りに買った幼児向けのビデオを再生させ、桜ちゃんに召還する時間になる迄寝ると伝え、俺はその場で眠りについた。
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目覚ましの音で目を覚ますのとほぼ同時に、俺の右腕辺りが一瞬だけ激しく震えた。
気になって右腕に目を遣ると、そこには桜ちゃんが俺の右腕にしがみついて寝ていた。
そしてそれを見た時、先程の震えは桜ちゃんが驚いて身を振るわせたものだと気付いた。
………くそっ。
目覚ましの音で起きただけなのに、ここまで怯えて目を覚ますだなんて……………。
しかも多分俺が寝て直ぐに桜ちゃんも寝たらしく、寝る前に見たケーキの量と今残ってるケーキの量が殆ど変わっていなかった。
………………馬鹿か俺は!
例え離れなくて傍に居ても、寝ていれば一人にするのと余り変わらないじゃないか!
小さな子が不安な時、寝ている相手に安心感を憶えるわけないだろが!
本当は謝りたかったが、俺が謝っても桜ちゃんが困らせるを通り越して不安にさせるだけだと思ったから謝りはしなかった。
だけど代わりに優しく頭を撫でながら膝の上に座らせ、安心してくれるように祈りながら背後から優しく抱き締めた。
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暫くしたら桜ちゃんは落ち着いたらしく、無言で時計を指差した。
俺も無言で桜ちゃんに指し示された時計を見遣ると、余裕の在った時間が殆ど無くなり、そろそろ召還する時間になっていた。
もう少し此の儘でいたかったけど、桜ちゃんの気遣いを無駄にするのも気が引けたから俺は召還をするべく、桜ちゃんを連れて元蟲倉へと足を運んだ。
元蟲倉へ近づくにつれ桜ちゃんは俺の手を強く握り締めながら縋り寄ってきた。
本当なら近付きもしたくないんだろうけど、俺がこれからの事を説明すると直ぐに納得してくれた。
ただ、納得はしてくれても凄まじく怖くて嫌なのは俯いた顔と握り締めた拳から痛い程解った。
だから桜ちゃんの決意を無駄にしない為にも、途中で引き返したり確認したりはしなかった。
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元蟲倉は当然というか、昨日俺が焼き払った儘だった。
石すら蒸発する高温の炎が荒れ狂った為、辛うじて階段の名残や蟲穴の名残が解る程度の有様であり、まだ相当な熱気が立ち込めていた(入って直ぐに冷却した)。
本来それほどの高温が密閉空間に存在すれば爆発を引き起こすのだが、炸裂させた一瞬後に間桐の家を吹き飛ばせば非常に拙い事になると気付いた為、急いで空気が一定以上膨張しない措置を採った為、間桐家消滅は免れた。
そしてそれほどの惨事が起こって元の有様と殆ど似ていない状態の為か、桜ちゃんは此処に来る前より寧ろ落ち着いていた。
一応浄化する様に焼いて淀んだ空気を消し去ったのも功を奏したようだ。
改めて自分を苦しめていた場所が無くなったのを知って安心したのか、元蟲倉という場所にも関わらず、今迄に無い程安心した雰囲気を出してくれた。
やはり心臓を穿たれて気絶している間に爺が死んで蟲倉は焼き払われたと言われても、実際に確認する迄は不安だったんだろう。
……………くそ、こんなことなら爺の本体を確保して、桜ちゃんの前で焼くべきだった。
…………………………いや、いくら爺でも桜ちゃんの前で殺すのは良くない。
少なくても桜ちゃんが魔術師とか代行者とか裏の道を選ばない限り、人死にに可能な限り関わらせちゃいけない。
たとえそれで長く不安になることがあっても、それはその分俺が何とかすればいいだけのことだ。
俺が楽する為に桜ちゃんの未来を狭める様な真似は絶対にしちゃいけない。
……………しかし………諸に保護者的思考が板に付いてきた気がするな。
……………桜ちゃんは可愛いし良い子だし恩もあるし義理とはいえ俺は叔父だし、何より俺自身が力に成りたいから保護者になるのは全然問題じゃないけど…………………………殆どバツ一状態じゃないか?今の俺って?
間違っても源氏計画の対象になんて見ちゃいないけど、矢鱈子煩悩というか親馬鹿な気はしないでもない。
少なくても桜ちゃんが虐められたら相手の家にガスタンクローリーでも突っ込ませて物理的に消す。
そして将来桜ちゃんが彼氏を連れてきたら、相手の野郎と二人きりで徹底的に話して見定め、遊びとかなら死徒の前にでも放り捨てる。
当然結婚式の時は号泣するな。恥も外聞もなく。
……………思考がずれたな。
今は召還の事に集中するべきだ。うん。
とりあえず召還の魔法陣を描ける様にある程度平らにする。
次は魔力で地面に直接魔法陣を刻む。
そして祭壇に触媒になる、ペルセウスが使っていたという名も無き剣の欠片を置く。
………よし。
準備完了だ。
後は横でずっと不思議そうに眺めていた桜ちゃんを後ろに下がらせて召還の呪文を唱えれば問題無い。
幸い、爺さんの昔話で冬木の聖杯戦争の事は一通り知ってるし、家を漁ってる時に確認もした。
令呪の移植も桜ちゃん本人の同意と魔法というインチキに、間桐の養子である桜ちゃんから間桐直系の俺に移すだけという事実もあり、聖杯の抵抗も全く無く綺麗に移植出来た。
………うん。
魔法陣も触媒も呪文も体調も問題無し。
それじゃあやるか!
「
聖杯自体に託す望みなんてのは特に無い。
「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
それでも聖杯戦争の果ての未来が必要なんだ。
「告げる」
桜ちゃんの幸せに繋がっていると思ったから。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」
その為なら殺意と欲望の渦に飛び込むのに躊躇いは無い。
「聖杯の寄る辺に従い、この意、この利に従うならば応えよ」
だから……………。
「誓いを此処に」
贅沢は言わないから……………。
「我はこの世全ての善と成る者。我はこの世全ての悪を敷く者」
桜ちゃんが幸せになる手助けをする為にも……………。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」
誰でもいいから召還に応じてくれ!!!。
「天秤の守り手よ!!!」
最後の一説を唱えるとほぼ同時に、魔力どころか生命力すら吸い上げられ、俺の意識は闇に落ちた。
間桐雁夜のステータス
【パラメーター】
・筋力:D ・魔力:A5+
・耐久:D ・幸運:??
・敏捷:D ・宝具:--
【スキル】
・魔力操作:A+
魔力の圧縮・拡散・放射・分割・結合・流動・停滞、等といった総合技術。
尚、魔力放出も此のスキルに含まれている(上記のパラメーター表記には反映されていない)。
・特攻魔術:A+++
あらゆる魔術を暴発させてしまう特殊なスキル。
高ランク程自分も巻き添えを食う。
・第一魔法:EX
無から有を発生させる事に因る無の否定。
実際は雁夜が第一魔法と言う解り易いカタチに同系統の情報を詰め込んだ為、第一魔法の完全上位互換状態になっている。
(メタ発言ですが、とある魔術の未元物質が一番近いです)
・魔法回路?:EX
魔法を使う事のみに特化した回路(肉体)。
魔力操作はこのスキルのおまけ扱い。
だが、真の恐ろしさは雁夜の魔法に対する理解や習熟度で増強されていく点にある。
【総合能力】
基礎能力はサーヴァントと比べて低いが、魔力放出で大英雄にも負けないパラメーターになる。
だが肝心の戦闘技術が低過ぎるので、バーサーカーの様なゴリ押しにならざるをえず、パラメーターよりも実際は弱い(近接線でアーチャーに勝てる程度)。
但し魔法で短時間限定の肉体変化を施せば究極の一と戦闘を繰り広げることすら可能となる。
尤も、雁夜の師的存在がゼルレッチという規格外なので、どうしても比較した際に劣ってしまう自分を雁夜は低く見る傾向が強く、基本的に逃げを選択するので戦うことが少ない。
尚、魔法行使の妨げになる老衰という概念が無く、更に精神休養を最適に取れるよう睡眠突入が自在だったり、魔法で生み出したモノを摂取することでエネルギー源にするといったことも可能な為、殆ど人外の領域だが、雁夜自身は殆ど気付いていない為、余計に本来の性能より低くなっている。