「満天下に謳い上げたい! 俺は今、生きている!!!」
黄色過ぎる太陽を見ながら俺は力の限り叫ぶ。
「腑に落ちないというか解せない事を力一杯叫ばないでほしいんですけど?」
「愛欲・ランクEX持ちは黙ってろ。
俺は今…………穏やかな愛情と言うモノを涙が出そうな程噛み締めている真っ最中なんだ」
数年間ノンストップとか燃え上がり過ぎだ。
燃え上がれ燃え上がれGUNダム、とか歌ってる人も吃驚の燃え上がりっぷりだぞ? いや、寧ろ燃え上がり過ぎて爛れ過ぎたのか?
まあ、兎に角久し振りの穏やかな日常(寧ろ非日常か?)なんだから、先ずはリハビリがてらにダラダラしよう。そう決めた。
さて、そうと決めたら早速草原に寝転がろうとしたが、そこに玉藻が頬を膨らませながら反論してきた。
「さっきまでも十分穏やかだったじゃないですか?」
「……マジでお前以外を思考出来ない状態は、一見穏やかだろうが病んでる状態だから穏やかとは程遠いだろが?
外の風景を見てもそれが何なのかすら解らないし興味も湧かない。
そしてそんな状態を全く不自然に思わないとか…………マジでお前と心身共に融合するところだったぞ」
「え~? 良いじゃないですか。
私はご主人様と溶け合っても全然構いませんよ?」
おいおい。脳内がピンク一色に成って遂にボケ切ったか?
「お前……何か極まった自己愛の気でも在るのか?」
「ほえ?」
間の抜けた顔を見てると、萌えという新単語の意味が解らなくはないな。
こう……欲情とは無関係に抱き締めたくなるというか…………って、いかんいかん、考えが逸れた。
「だから、解り易く言えば多重人格者が別人格を愛せるかとかそういうことだ」
「あぁ~」
「記憶共有はまだ良いとして、お前と人格融合したらどっちも消えるって事だろが」
「納得しました。
……今度からは防壁を張ってシましょう」
「いや、抑防壁の必要が発生する程シなければ済む話だと思うぞ?」
腎虚とか以前に普通は飢えや渇きで死んでるし、そうでなくても寝不足か過労か衰弱で確実に死んでるから、今考えたら絶対に狂ってたな。
ソドムとゴモラの奴等も真っ青な退廃生活だ。いや、寧ろ耐久生活か?
兎も角、文字通り、【あなたの事しか考えられない】、状態はもう勘弁願いたい。
行き着く先は人格融合と言う名の死だからな。
「むぅ~。……ご主人様は際限無く愛し合うのは御嫌ですか?」
…………まいった。
駆け引き無しの直球ど真ん中とか……しかもそんな不安そうな顔でとか…………何で要所要所で防御不可の一撃を急所に叩き込むんだよ!
「あ~……うん…………いや………………嫌じゃないんだよ。嫌じゃ。
ただ俺としては……、小さい子供が毎日を謳歌する様に、起きて・食べて・遊んで・食べて・遊んで・食べて・団欒して・眠る、って日常を一緒に過ごしたいな~って思ってたりするんだよ」
「私は、睦み合う・情けを頂く・情を交わす・歓を尽くす・心を重ねる・膳を据える・愛に浸る・閨を共にする、って生活をしたいです」
「うん。別解釈すれば辛うじてありな感じの気がするけど、絶対全部同じ意味で言ってるだろ!?
と言うか、何の辺りが良妻なんだよ!?」
「年齢や身体障害とかに引っ掛からない限り、床上手は良妻の必須条件です!」
「ああ確かにそうだろうな!
そして悔しいけどその点に関しては良妻と認めるのは吝かじゃないさ!
だけどな、貞淑と程遠い良妻がいてたまるか!」
「失礼ですよご主人様!
私はご主人様以外に身も心も許したりはしません!」
「いいから正気に戻れ!駄狐!!!」
瞬間的に生成出来る限界の創世の風を纏わせた手刀をそこそこの強さで玉藻の脳天に振り下ろす。
全く。黒化と言うか人格が自壊融合し掛けるとか、コイツ本当に神霊かよ?
「へぷぽっ!?」
「……どこの世紀末のザコだよ?」
寧ろ戦闘力的に俺の方がその断末魔を言う方だろうが。
ま、それは兎も角、唐突に創生の風を叩き付ければ活を入れられるだろうと確信と言える閃きが浮かんだから実践してみたが、雰囲気から察するに効果はばっちりみたいだな。
「~~~っつぅーーーっっっ!
い、痛いです。ご主人様に三行半と共に殴られたかの様に痛いです」
「人聞きの悪いこと言うな」
「これはもう心の致命傷を癒す為にも、ご主人様といちゃラブデートをしなければ治りそうもありません」
「はぁぁ……。取り合えずまともな馬鹿に戻ったみたいで何よりだ」
此の軽い感じの会話こそが玉藻だな。
いや、「シリアスと言うか静かな沈黙も好きだけど、ガキの頃の捻くれつつも素直な感じで付き合えるのも堪らなく好きなんだよな。
後、ファウストの台詞は本当に名言だな。時よ止まれお前は美しい……ってえぇぇぇっっっ!?!?!?」
まさかまさかまさかっっっ!?!?!?
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!
久久にご主人様のうっかりデレを頂きましたーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「忘れろっ!直ぐに忘れろ、今直ぐ忘れろ、永久に忘れろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「無理です! もう玉藻の脳内お宝フォルダへ厳重に保管しました!!!
もうこの命尽きるその時迄失くしたりしません!!!!!!!!!」
「いいから忘れろ忘れろ忘れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「無理です無理です無理です!!!
既に脳内会議でご主人様が用事で居なくて寂しい時、脳内再生して寂しさを慰めると満場一致で決まっています!!!」
「ずっと一緒だからそんなの必要無いだろが!!!???
いいからとっとと忘れろ!!!」
「ッッキャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
又もやご主人様のうっかりデレを頂きましたーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!?!?!?!?!?
ヤり過ぎて俺の理性が怠けてるうううううううううううううううっっっ!!!???」
発言の緩さはボケ老人並なのに羞恥心は普通の青年並ってどんな罰ゲームだよっ!?!?!?
駄目だっ! これ以上は喋れば喋る程に墓穴を掘るだけだ!
此処は落ち着く迄は何処かで頭を冷やそう。
その後、恥ずかしさと冷却期間確保の為に海上どころか空中を疾走して玉藻と距離を取ろうとしたが、当然玉藻を振り切ることなんて出来やしなかった。
しかも、誰かに捕捉されない様に手を打っていたのが災い(幸い?)し、雄叫びと哄笑共に現れる鎌鼬という伝説が生まれることになった。
【後書】
何と無く続編を書ける様な、伏線めいた
いえ、別に続編を書くと決めているわけではありませんが、取り合えず続編を書く際に導入し易い要素を伏線っぽく書いておけば、続きを書きたい時に楽になるという程度の考えで書き足した話です。
まあ、続きを書かないならば完全に蛇足な話ということですね(苦笑)。
因みに雁夜達があの儘無軌道に衝撃波を撒き散らして都市伝説を作り続けた末、とある海岸線で拘束具を着込んだ大天使の少女の現場に突っ込むという構想が在ったり無かったりします。
他にも何処かの銀の福音を轢き逃げしたり、四次試験を終えて戻る狩人試験の舟を轟沈させたり、ちんちくりんの人に合気を習っている合法露出ロリを天高く舞い上げたり、何とかの書の闇をフルボッコする寸前に走行の邪魔とばかりに完全消滅させたり、等等etcetcという構想が在ったり無かったりします。
……最初からクライマックスブレイカーですね。
それでは蛇足の話迄御付き合い下さった読者の皆様に、改めて心から感謝の意を述べさせて頂きます。
どうも簡潔迄御付き合い下さり、本当に有り難う御座いました。