カッコ好いかもしれない雁夜おじさん   作:駆け出し始め

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今回の前半部分はほぼ原作通りの粗筋です。
微妙に差異は在りますが、基本的に読まれなくても構わないものになっています。
寧ろ原作との間違い探しのようになってしまう為、読まれないことを御薦めします。
全て省略してライダー戦迄飛ばすと、手抜き感が凄まじく溢れてしまうので執筆しただけですので、本当に読まれなくても問題ありません。





拾捌続・カッコ好いかもしれない雁夜おじさん

 

 

 

―――――― Interlude In ――――――

 

 

 

 雁夜達が冬木市を離れた日の数十分後、アサシンによりキャスターの蛮行が明らかになった。

 日が昇ると直ぐに聖堂教会が参加しているマスターを招集してキャスター討伐を命じたが、当然其処に雁夜どころか雁夜の使い魔すらいなかった。

 だが、そのことに対して時臣と璃正どころか聖杯戦争に参加しているマスターの殆どが安堵していた。

 

 時臣と璃正は令呪増画の目論見を崩す最大の要因が存在しないことに安堵し、ウェイバーとケイネスは捜索中に鉢合わせすることがないと安堵し、切嗣はキャスターを餌にサーヴァントやマスターを狩れる機会を失わずに済んだことに安堵していた。

 但し綺礼だけは然して興味がない為、安堵もしなければ落胆もしていなかった。

 が、サーヴァント達は何だかんだで子供好きだろう雁夜や玉藻が冬木に居れば、直ぐにでもキャスターを討伐して被害を食い止めることが出来たと思い、少なからず残念に思っていた。

 特にセイバーは己がマスターがビルを爆破したり子供を見捨てて勝利を目指しているだけに、恐らく今次の聖杯戦争のマスターで最も良識を持つであろう雁夜や玉藻の存在を切に望んでいた。

 だが、何処をどの様に監視しているかも解らなければ、雁夜達が何処に居るのかも判らないセイバーには連絡手段は無く、当然セイバーの期待は見事に空振りに終わり、更に1日もせずにキャスターによる被害は出てしまった。

 

 何とか一人でも助けようとアインツベルンの森を疾駆したセイバーだったが、結局誰一人助けることは叶わず、更にランサーの助力を得たにも拘らずキャスターを逃してしまい、セイバーは更に悔やんだ。

 だが、セイバーが悔やんでいる最中にランサーがマスターの危機を察知したのを知り、セイバーは何も出来なかったがせめて騎士の誇りだけでも守り抜こうという想いを胸に、ランサーと再戦の約束を交わしてランサーを見送った。

 それが益益マスターとの間に溝を広げると考えもせずに。

 

 そしてセイバー陣営の不仲に拍車が掛かっている中、ライダー陣営はウェイバーが見事にキャスター陣営の陣地を発見して強襲した。

 生憎とキャスター達は不在であった為陣地を破壊するだけになったが、その最中にアサシン二名の襲撃をウェイバー達は受けた。

 が、ランサーと手負いとはいえセイバーを同時に相手出来るライダーが遅れをとる筈も無く、難無く二名のアサシンを倒した。

 

 そしてライダー達がキャスター達の陣地を破壊した前後、深夜に徘徊していた凜がキャスターのマスターと接触し、見事囚われていた子供達を解放した。

 だが、帰宅する途中キャスターが召喚した海魔と鉢合わせしてしまう。

 が、次の瞬間には何処からとも無く清浄な烈風が吹き抜け、瞬時に海魔を塵より細かく切り刻み、更には周囲一体を徹底的に浄化した。

 当然何が起きたか解らず唖然とする凜だったが、兎に角危機は去ったと判断して夜の街を駆けて禅城へと戻ることにした。

 尤も、途中で葵に発見されて車で帰宅することになった。

 無論、確り両親から叱られる事になった。

 

 そして凜が禅城に帰った前後にライダーがアインツベルンの城を訪問し、一献交わしながら王の格を競う旨を告げた。

 実際はただの酒宴だが、王の矜持に触れるナニカがあるのか、セイバーはアッサリとそれを承諾した。

 移動した中庭で王の格を競おうかと話していたライダーとセイバーだったが、突如空より黄金と翠玉で造られた輝舟が中庭に現れ、更に輝舟からギルガメッシュが降り立った。

 何故此の場に現れたのかと警戒するセイバー陣営だったが、ライダーがアッサリと街で見かけたので誘ったと言い、セイバーとアイリスフィールはライダーの勧誘癖は傍迷惑極まりないと確信した。

 だが、ギルガメッシュは以前言った通り聖杯などに興味は無く、単に自分以外が王を語ると言うのが気に食わないので参加しただけだと言い、後は王を名乗る不埒者の願いを知る為だと言った。

 その後ライダーから差し出された酒を飲んだが露骨に顔を顰め、直ぐに宝物庫から神代の酒を取り出して振舞った。

 振舞われた酒の余りの格に驚愕するライダーとセイバーにギルガメッシュは自らの宝物の格を誇り、機嫌良くライダーとセイバーがどのような願いを聖杯に託すか示せと促した。

 

 だが、ライダーは器が広く且つ底が恐らく抜けているのでギルガメッシュの物言いに然して不快感は無かったが、礼節を重んじるセイバーは不快感を交えながら、今聖杯を求めていなくても当初は求めていた筈なのだから、その時聖杯に何を託すつもりだったのか話せと言った。

 そのセイバーの言葉に対しギルガメッシュは呆れと苛立ちを僅かに混ぜた尊大な声で――――――

 

[世界の宝物のほぼ全ては起源を我が蔵に遡る。

 例外足りえるのは神々が手放さなかった神宝か、我が蔵に無い起源によって創られた物のみだ。

 ここの聖杯がどの程度かは知らんが、探せば我が蔵から原点の一つや二つは出てくる物に託す願いなど端から在りはしない。

 単に我が宝物を我が物顔で奪い合う盗人共を駆逐するため、こんな戯けた催しに参加したに過ぎん]

 

――――――と、言った。

 ギルガメッシュのその言い草にセイバーは呆れたが、既に朧気ながらもギルガメッシュの真名を看破し掛けているライダーは、ギルガメッシュの言い分も一理あると納得した。

 だが、聖杯の所有権が他人に有ると認めた上で聖杯を望むライダーへ、セイバーはそうまでして聖杯に託す願いは何なのかと尋ねた。

 するとライダーは受肉と言い切り、仮初の生を受けたこの世界に一個の命として根を下ろして世界を制すると、結果だけではなく過程すらも大切だと言った。

 その言葉を聞いたギルガメッシュは、宴の終わりに道化か自身が審判するに値するか試すと言い放ち、ギルガメッシュのその発言を無視する様にセイバーはライダーの王道を否定した。

 そしてライダーに促される儘セイバーは自身が聖杯に託す願いである、故国ブリテンの滅びの運命を捻じ曲げて救い上げると話す。

 するとギルガメッシュは嘲笑し始め、ライダーは露骨に訝しんだ。

 ギルガメッシュとライダーの反応が気に食わなかったセイバーは、身命を捧げた故国が滅んだことを悼む何処が可笑しいかと問う。

 が、ライダーはそれを直ぐに否定し、王ではなく民草が王に身命を捧げるべきだと言った。

 しかしセイバーは即座に暴君の治世だと反論するが、ライダーは暴君であるからこそ英雄だが、自らの治世を悔やむ暗君に比べればまだマシだと告げるものの、セイバーは滅びを誉れとするのは武人だけであり、正しき治世と統制を敷く事こそが王の本懐だと告げた。

 それにライダーは呆れとも落胆とも取れる声でセイバーを正しさの奴隷と称したが、セイバーは気にする事無く飽くなき欲望の為だけに覇王となったライダーには解らないと言い放つが、次の瞬間ライダーは激昂して声を張り上げる。

 〔無欲な王など飾り物にも劣る〕、と。

 

 セイバーの主張する王道に我慢ならなかったライダーは己の王道を熱く語る。

 〔王とは清濁を併せて人の臨界を極めた者〕、〔王とは欲の形を民草に示す者〕、と。

 更にセイバーを、〔救うばかりで導きもせずに放り捨てて小奇麗な理想に焦がれていた無責任な王〕、〔生粋の王ではなく王という偶像に縛られた唯の小娘〕、と断じた。

 その言葉に死体が其処彼処に散らばる丘の上から眺めた滅び行く故国を幻視したセイバーだったが、唐突にギルガメッシュから以前にも誰かから自身の願いを否定されただろうと尋ねられ、セイバーは雁夜から言われたことを思い出してしまい更に憔悴した。

 が、ギルガメッシュはそれに構わず、王を名乗るならば自身へ向けられた意見くらい公開してみろと言い、渋渋ながらも先日の遣り取りを語るセイバー。

 話を強制的に終わらせた綺礼にも興味が湧いたらしいギルガメッシュに促される儘、綺礼と玉藻の会話も語るセイバー。

 そしてセイバーが語り終わった時、ギルガメッシュは綺礼に少なからず興味を持ったがそれ以上に面白い事を聞いたと言わんばかりに愉快気な顔でセイバーへ――――――

 

[まるで真面目に生きていないと叱られた子供のようではないか?

 そんな様で王を名乗るとは、やはり見た目に違わぬ夢見る小娘であったか]

 

――――――と言い放った。

 更にセイバーが何とか言い返そうと逡巡している間にギルガメッシュはライダーへ、自身が審判するに値する賊かどうかを試すので受けるか否かを問うた。

 当然ライダーは面白そうだとばかりに即座に了承した。

 すると突如周囲に無数のアサシンが中庭周辺に現れた。

 騙まし討ちする気かとセイバーがギルガメッシュを睨んだが、ギルガメッシュはセイバーを相手にせずライダーへこの程度は倒してみせろと言わんばかりの視線を送った。

 だが、ライダーは倒さずとも味方にしてしまえば万事解決だと言わんばかりに葡萄酒を汲んだ柄杓を掲げ、共に飲み交わそうと声を掛ける。

 が、当然それに応える者は居らず、返答代わりに短剣が柄杓の柄を切断し、葡萄酒を地にばら撒いた。

 それを見たライダーは勧誘失敗と判断し、身に纏う服を戰装束へと変えながら立ち上がり、ギルガメッシュとセイバーへ王の在り方を示すと告げた。

 次の瞬間、城の中庭から突如何処かの砂漠へとアサシンを含めた全員が存在していた。

 

 魔術師でもないライダーが固有結界を展開したことに驚くアイリスフィールだったが、ライダーは自身と苦楽を共にした仲間が等しく心に焼き付けたからこそ可能だと告げた。

 すると、突如優に万に届く大人数が現れた。

 しかも其其がサーヴァントであるだけでなく宝具を持つ者も散見出来、更にライダーの神威の車輪を越えるやもしれないランクの宝具を有する者も居た。

 そしてその大人数を背にしたライダーは、彼らとの絆こそが至宝であり王道と断言し、先陣を切りながらアサシンを圧倒的数の暴力で蹂躙した。

 何もせずに蹂躙戦が終わってしまった者が殆どにも拘らず、王と共に戦場を駆け、王と共に勝利の喜びを分かち合え、そして王と共に轡を並べていることを心から誇っていた。

 その光景を表現し難い表情でギルガメッシュは眺め、セイバーは羨望や憧憬の念が籠もった様な瞳で眺めていた。

 

 結界が解除され通常空間に戻ると、ギルガメッシュはライダーを自身が審判するに値する賊だと告げる。

 そしてライダーは不敵な笑みで返し、それから直ぐに宴は終わりとばかりに空へと去っていった。

 去り際に何かを告げようとするセイバーにライダーは王とは認めないことと、痛ましい夢から早く覚めろと言い残して。

 更にライダーに続く様にギルガメッシュも輝舟へと乗り込みながら、セイバーを阿るような発言をした後に葛藤や苦悩する様で楽しませろと告げて去っていった。

 後に残ったセイバーは、嘗てキャメロットを去った騎士が王は人の気持ちが解らないと言っていたことを思い出し、暗い気分で暫し佇んでいた。

 

 

 酒宴の翌日、ウェイバーは街へと出歩き、書店でライダーの伝承を調べる。

 伝承のアレクサンドロス3世は器は小さそうだが礼節に厚そうな人物なのだが、現在ウェイバーの傍に居る存在はその真逆の地平線の彼方に立つ様な人物であり、然して書物が当てにならないと知りつつもウェイバーはライダーの伝承が載った本を閲した。

 しかし閲している最中に本人が現れてウェイバーが自身の伝記を読んでいるとライダーは知り、本人が目の前に居るのだから尋ねろと言う。

 するとウェイバーは気恥ずかしさを吹き飛ばす様に幾つかライダーに質問をするが、その全ての答えに格の違いを見てしまい、ウェイバーは消沈してしまう。

 

 消沈した儘ウェイバーは何とは無しに主が不在の間桐邸の前に来ていた。

 威圧感こそ無いが、近付くに連れて訳も分からずあらゆる犠牲を払ってでも離れたくなるウェイバー。

 そしてそれはライダーも同じらしかった。

 だが、恐ろしいのは結界の外でもCランクの対魔力を持つライダーに効果があることではなく、何かの干渉を受けていることが全く知覚出来ないことだった。

 少なくとも何かあるのは推測とはいえほぼ確実なのだが、どれだけ両者が周囲に意識を張り巡らせても微塵たりとも不自然な要素を発見出来なかった。

 発見出来なかった理由が魔法だからなのか神霊魔術だからなのか神殿だからなのかも両者には判らなかったが、余計な干渉を行えば抵抗すら許されぬレベルでの干渉を受けると両者とも理解している為、流石にライダーも突撃をする様なことはなかった。

 

 何の収穫も無い儘間桐邸を後にし、空が茜から闇へと変わる頃、ウェイバーの鬱屈した想いが爆発した。

 自らの有能さを示す為に参加した聖杯戦争だったが、自分は成果らしい成果を何一つ上げられず、にも拘らず自分が召喚した者は精霊の域だろうギルガメッシュすら屠れるやもしれぬ規格外のサーヴァントであり、最早自分など唯の魔力供給タンクでしかなく、にも拘らずそれすらも満足に行えないことにウェイバーは心底情けなかった。

 しかも本人達の話を聞く限り、ほぼ一般人が死を前提に他者の為に行動した結果根源に至り、更に小さな女の子の為に精霊の域に居るだろうアーチャーに勝負を挑み、遂には精霊の域に自分を昇格させた間桐雁夜と自分を比較した時、命を賭ける気概以前にその怖さすら知らなかった自分がどうしようもなく惨めになった。

 最早自己弁護が出来ない自分の有様がどうしようもなく悔しく、ウェイバーは八つ当たりと知りつつライダーに当り散らすように嫌味を連発した。

 だが、ライダーはウェイバーのそういう態度こそが自身の分を超えた大望を抱いていることの現れであり、更に覇道の兆しであると評した。

 そして自身も世界を制するという分を超えた大望抱く者であり、自身と同じく己の埒外を向いた大望を抱く馬鹿なウェイバーとの契約が楽しいと満面の笑顔でライダーは語った。

 その台詞を聞いたウェイバーが僅かに顔を赤らめた時、両者は突如異常を感じて川を見遣った。

 

 其処には恐らく制御を度外視して喚び寄せたであろう巨大な海魔に呑まれていくキャスターが居た。

 それを見たライダー達は即座に近くのランサーへ神威の車輪に乗って接触し、休戦を呼び掛けて受諾させた。

 更に直ぐ様セイバーの下へと赴き休戦を呼び掛けて受諾させ、追い付いたランサーを交えて軽く協議した結果、キャスターを露出させてランサーの破魔の紅薔薇で術式を破壊することに決まった。

 

 暫くの間川の上でも戦闘が可能なセイバーと、宙を戦車で駆けるライダーが奮戦したが、大した戦果を挙げられなかった。

 しかし突然空より4つの魔弾が降り注いだ。

 しかも魔弾の速度は超音速と言う速度の為、巻き起こる衝撃波で巨大海魔に大孔を穿った。

 だが、全体の30%以上が吹き飛ばされたにも拘らず海魔は再生を始めだした。

 が、流石に全体の1/3近くを吹き飛ばされた傷を回復するのは時間が掛かるらしく、暫くの間海魔は動きを停止した。

 それを見たギルガメッシュは見るのも嫌だが試してみたいことがあるのか、装填していた最後の魔弾をキャスターへと放った。

 放たれた魔弾は雁夜が伸張させた蜘蛛の脚に匹敵する宇宙速度で放たれた。

 セイバーですら視認が限界で反応出来ない速度で放たれた魔弾は凄まじい衝撃波を撒き散らし、漸く再生しきった海魔を唯の一撃で40%以上吹き散らした。

 更に、魔弾の限界を超えた魔力を注ぎ込んで放った為、魔弾は地面にある程度突き刺さると同時に自壊して内包している神秘と魔力を撒き散らし、海魔に追撃を与えた。

 

 既に半分以上が吹き飛んだ海魔だったが、それでも再生を始めており、暫くすれば再び活動を再開するのは明らかだった。

 だが、既にギルガメッシュは時臣への義理立ては十分に果たし、更に魔弾が射出と同時に自壊しない程度に迄魔力を注いで弾速を上昇させればどうなるかの実験も終わったらしく、汚物は見るに耐えないとばかりに輝舟を反転させて去って行った。

 輝舟に同乗していた時臣はギルガメッシュにキャスターを討伐して欲しかったが、迂闊な発言をすれば刎頚に処されかねない為、あれ程キャスターを追い詰めれば時間稼ぎをしたと言う名目で令呪を得ることは可能な為、特に進言はしなかった。

 

 遠ざかっていく輝舟を尻目に、セイバーが対城宝具を保有していると知ったランサーは、諸人の嘆きを是とするキャスターを討つという、自身やセイバーが信じた〔騎士の道〕が勝つ為に必滅の黄薔薇をアッサリと折った。

 すると直ぐにセイバーの左手は回復して対城宝具を放てる状態へ回復した。

 次にライダーが、市街地にも破壊を齎す威力であろう対城宝具を揮える場を提供する為に、固有結界内にセイバーと海魔を取り込んだ(結末を見届けさせる為にその場に居た全員も取り込んだ)。

 そして、星が鍛え上げた聖剣が、一撃の下に海魔を消し飛ばした。

 尚、キャスターが消え去るのとほぼ同時にキャスターのマスターも切嗣に狙撃されてこの世を去っていた。

 

 

 キャスターが討伐された直後、誰よりも先んじてケイネスは璃正より令呪を補充された。

 しかしその後他のマスターが追加令呪を得られぬ様に璃正を殺害する。

 そして仮初の陣地に戻ったケイネスだったが、自身の婚約者が浚われていた事を知り、ランサーに当り散らす。

 だがそんな時に敵襲があり、ランサーは迎撃に出る。

 襲撃者であったセイバーと胸の透く様な戦いをしていたランサーだったが、突如自らを破魔の紅薔薇で貫いた。

 そしてそれが人質を取られたケイネスが令呪で命じたことと知り、自分が唯一つ抱いた祈りを踏み躙ったケイネスだけでなく、セイバーを含めた周囲全てに血涙を流しながら怨嗟を吐き掛けて消え去った。

 

 ランサーが消え去ったことで契約が完了したことをケイネスと切嗣が確認しあったが、次の瞬間、狙撃がケイネスとソラウを襲い、ソラウは即死したもののケイネスは即死しきれず、命乞いではなく介錯を切嗣に求めるが、交わした契約の為出来ないと切嗣は言う。

 だが、ケイネスを哀れに思ったセイバーが、黙ってケイネスに止めを刺した。

 そしてランサー陣営が死に絶えた時、セイバーは己がマスターである切嗣に対し、聖杯を勝ち取っても渡していいか判らないと告げた。

 更にセイバーの発言だけだと切嗣は無視するので、アイリスフィールが間に入り辛うじて切嗣に今回の釈明を促した。

 切嗣は英雄を、〔血を流すことの邪悪さを認めようとしない愚か者〕、と断じ、セイバーが謳う騎士道など血を流すことの邪悪さから目を逸らす為の詭弁と憎悪混じりに断じた。

 更に切嗣は犠牲が避けられないならば効率こそを重視し、その為に悪辣言われる手段すら厭わず、役に立たない正義に興味など無いと断じた。

 が、セイバーは、恐らく一般人ならば直視出来ない凄惨な選択や死体を積み重ねて得られた平和がどの程度尊く、そしてその事情を知らずに平和を享受することがどの程度幸せなのかと切嗣に問うた。

 真実を覆い隠し、白痴の様に平和を享受させ、平和の尊さも知らずに平和に浸されることが幸せとは素直に思えないセイバーだったが、切嗣はそれでも尊かろうと尊くなかろうが平和であることが悪い筈はないと断じ、更に偽りの平和だろうが人が血を流さないで済む世になるならば、この世全ての悪すら背負って見せると断言し、切嗣は去っていった。

 切嗣が完全に去った後、体に不調を来たしたアイリスフィールは静かに崩れ落ちた。

 

 

 

―――――― Interlude Out ――――――

 

 

 

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 三騎のサーヴァントの魂が聖杯に注がれた頃、雁夜達は那須の山でのんびりと暮らしていた。

 

 

 本来掃除や食材及び日用品の調達をしなければならない筈なのだが、玉藻が数万の軍勢の一部を人型にして管理させていた為、雁夜達が到着した時には既に問題無く日常生活が可能な状態になっていた。

 別段悪い事ではないので雁夜は純粋に面倒事が減って良かったと思っていたが、自分達に挨拶した後はパソコンに向き合っている玉藻の軍勢の一部が何をやっているのかと画面を覗き込むと、何処迄回線を伸ばしているのかは知らないがイントラネットで株の売買をやっており、しかも雁夜名義で行っていた。

 直ぐに玉藻を問い詰める雁夜だったが、玉藻は笑顔で資産運用と答え、しかも那須の町に溶け込ませた分身も存分に働かせた結果、数日で兆単位の利益を上げたと誇らしげに語った。

 それを聞いた雁夜は最近買収した会社の人員整理をして急速に利益を上げている者が居るというのをニュースで聞いていたが、まさか身近に恐らく千人規模で路頭に迷わせた原因が居るとは思わず、軽く眩暈を覚えた。

 が、玉藻は後に設立する会社に招いて忠実な部下にするから平気だと言い、雁夜は色色と深く考えてツッコむのを止めた。

 

 そして自然の中で動物と戯れて(当然狐が多い)遊ぶ桜を見つつ、雁夜はバルトメロイに代金代わりに渡す礼装(実際は宝具)の構想を考え、更に構想を基に他人が使える様に調整しながら作成していた。

 しかもバルトメロイに渡すのは代金代わりの意味よりも、桜に渡す護身具の試作品と言う意味合いが強い為、問題点を洗い出せるように前金代わりに渡すのを試作品にし、更に後金に渡すのを試験品と完成品の影打ちにするつもりだった。

 なので、後金代わりに渡す試験品を途中で渡して問題点を洗い出してもらうつもりでいた。

 無論、破損した場合は当然修復や代替品を用意するつもりで。

 

 

 魔術に関わること自体は頗る気分が悪くなるが、物を作ったりすること自体は寧ろ楽しいと雁夜は思っている為、技術者のノリで雁夜は魔術行使に必要だろう要素を取り合えず詰め込めるだけ詰め込んだ。

 そして後は反応や反映速度及び内部機構の整理をするだけになった試作礼装の羽衣を炬燵の上に置き、大きく伸びをしながら雁夜はその場に寝転んだ。

 すると枕程ではないが柔らかいカーペットに着くと思われた雁夜の頭は、伸ばされた玉藻の脚の上に着いた。

 すると雁夜は驚きと呆れが混じった笑みを浮かべながら玉藻に話し掛ける。

 

「一体何時から其処に居たんだ?」

「2時間ほど前ですかね。

 桜ちゃんが眠ってしまってからはずっと此処に居ましたよ」

 

 玉藻が手で示した先には、何処で祀られている神獣(獣神?) なのかは判らないが、玉藻が自分の欠片(分身)と評する狐やら犬神やらと一緒に眠っている桜の姿があった。

 本来なら人の相手をするような存在ではないのだが、自分達の大本の玉藻の好感度がその儘反映されているのか、雁夜と桜に対して異常に好意的だった為、寧ろ嬉嬉として桜と関わっていた(雁夜に抱き付くのは自分の欠片と雖も許し難かったらしく、玉藻が直ぐに禁止した)。

 そんなムツゴロウ王国で眠る少女の様な図になってしまった桜を雁夜は微笑ましく見つめていたが、ふと思い出した疑問を玉藻に尋ねてみた。

 

「ところで、お前の普段から抑えず解放している神気って、実は相当危険なモノなんじゃないのか?」

 

 先日、特に威嚇していたわけでないにも拘らず、玉藻がその場に存在するだけでギルガメッシュ以外の全員が戦慄を通り越して憔悴していたことを思い出し、それまでは一般人の自分が普通に接していたのだから慣れられる程度のモノだと思っていた雁夜だったが、どうもそういう領域にある類ではないと理解したので尋ねてみた。

 尚、本当はもっと早くに尋ねるつもりだったのだが、風呂場での騒動や教会前でのイザコザやタクシーでの長距離移動等が重なり、玉藻が桜の害になることをする筈も無いという意識も手伝ってすっかり忘れていた。

 そして今更な質問を玉藻は苦笑しながら答える。

 

「前に私の神気を身近で浴び続ければ美容得点が在るって話した時に理解したのかと思ってましたよ」

「いや、人だった俺が耐えられた上に桜ちゃんも普通に耐えられてたから、彼処迄凄いとは思わなかったんだよ」

「まあ、憔悴したりする方がいないと今一理解し難いでしょうから仕方ないかもしれませんね~」

 

 そう言うと玉藻は少し解り易く伝える為、指を顎先に当てながら考える。

 そしてそんな玉藻の何気無い仕草で幸せな気分になっている自分に気付いた雁夜は、ベタ惚れだなと自分に内心で苦笑しながら玉藻の説明を待つ。

 すると考えが纏まったのか玉藻が雁夜に話し始める。

 

「そうですね。私の神気を薄めれば1~2万人は死ぬと思いますよ。

 ゲーム的に言うなら、レベル60未満は即死って感じですか?

 まあ、アイテムや呪文や特技で防げなくは無いですけど、基本永続効果なので可也きついと思いますけどね」

「ちょっと待てっ。

 一つ聞くが、お前の神気を浴びた奴のレベルってどれくらいなんだ?」

「はいはい。えーとですね、

 

・おかっぱ少年が2前後

・おかっぱ女性が5前後

・銀髪の女性が8前後

・不精野郎が15前後

・質問してきた青年が20前後

・毛髪戦線後退野郎が25前後

・去勢候補の槍男が70前後

・宝塚入団予定少女が75前後

・滅殺候補の野郎が75前後

・桜ちゃん曰くキラキラの王様が120前後

 

 ……ってとこですか?

 あ、面倒な宝具は抜いての数値ですから」

「…………」

「一応私の周りから余り神気が拡散しない様にしましたから影響は薄かったですけど、もしいつものノリで神気を解放していたら、障壁のある戦車に乗ってた少年以外のマスター達は死んでましたけどね♪」

 

 軽いノリで話される衝撃の事実に眩暈を覚える雁夜。

 そして改めて桜が何故平然と玉藻の神気を浴びていられるのか不思議に思い、玉藻に尋ねる。

 

「……その数値基準じゃ諸に浴びている桜ちゃんが生きているのが只管気になるんだが?」

「別に不思議でもなんでもないですよ?

 私と初めて会った時はご主人様の不思議物質が桜ちゃんの中で渦巻いて即死判定に抵抗してましたし、不思議物質が桜ちゃんに馴染む過程で私の神気を浴び続けていたので、桜ちゃん自身が私と同質の神性を帯びましたので、少なくても私が悪意的に桜ちゃんを威圧しない限りは平気ですよ?」

「………………は?」

 

 玉藻が何を言っているのか今一理解出来ずに呆けてしまう雁夜。

 そんな雁夜に玉藻は呆れた様な顔で告げる。

 

「ご主人様。若しかして……自分が桜ちゃんの心臓や周辺を不思議物質で補填してたのを忘れてたんですか?」

「い、いや、忘れていないけど、ソレは桜ちゃんの欠損部分を補う為にやっただけで、桜ちゃんの体を侵食する様なモノを生成した覚えはないぞ?」

「……はあぁーーー」

 

 雁夜のその言葉を聞いた玉藻は溜息を吐き、呆れながら雁夜に説明する。

 

「あのですねご主人様。魔法なんて規格外の神秘に触れ続けた物質が何の変化も起こさないなんてある筈無いじゃないですか?

 そりゃご主人様でしたらご主人様が無意識に侵食を抑えたり回帰したり出来ますけど、魔法を使えない桜ちゃんが魔法の侵食を食い止められる筈無いじゃないですか」

「あ゛」

「しかもご主人様が欠損部分の再生を促すように補填したものですから、欠損部分が再生する時其処に在った不思議物質は桜ちゃんの体と融合して変質しましたから、最早完全にご主人様の手を離れてますよ?

 おまけに私の神気を取り込みながら変質しましたから、意識すれば神秘の無い物理干渉を遮断する程度の神性は得てますよ?」

「…………なんてこった」

 

 今更ながらに桜に起こった変化を知って愕然とする雁夜。

 そしてその様を見た玉藻は苦笑いしながら話を続ける。

 

「別に死に至る呪いとかじゃないですから好意的に解釈しましょうよ、ご主人様。

 考えてみれば日本や真言密教に於ける最高神と同じ神性を有している以上、少なくても日本古来の組織の半数以上は味方に付けられますよ?桜ちゃんの安全度は跳ね上がりますよ?」

「そう考えれば悪くないのかもしれない……か?」

「まあ、その場合西洋の術である魔術だけでなく、東洋の術である呪術とか私が教える必要があるんですけどね」

「前言撤回。桜ちゃんに腹黒要素満載の呪術を教えるなど認めん」

 

 顔に白粉を塗って白装束を身に纏って一本歯の下駄を履き、頭に五徳を被って其処に火の灯った蝋燭を立て、更に胸に鏡を仕舞って腰に護り刀を差し、その上口に櫛を咥えながら神社の神木へと藁人形に五寸釘を打ち込む桜を幻視した雁夜は、即座に桜が呪術を修めることに反対した。

 だが、雁夜が偏見に満ちた呪術知識で反対したとアッサリと看破した玉藻は不機嫌そうに反論する。

 

「ご主人様は呪術を誤解してますっ。

 いいですか?呪術とは自身の体を使って変化させるモノなのです。

 大体、契約とか誓約とか生贄とかが矢鱈と多くて如何わしい魔術に比べれば呪術は遥かに健全です。

 しかも日常生活だけでなく、夫婦生活をや子育てにも使える便利な術も有るんですから、呪術は絶対に覚えておいて損はありません!」

 

 一定音量を遮音する結界を桜の周囲に張ってある為、遠慮無く声高高に主張する玉藻。

 そんな玉藻を胡散臭い目で見ながら雁夜は言う。

 

「どうせ覗き見とか盗み聞きとかいうストーカー的な要素だろ?」

「そんなのは普通に魔術で出来る筈ですので一推しポイントにはなりません。

 えー、ではまず一つ目の魅力ですが、余計なちょっかいを出すと死体すら辱められるような災厄が降り注ぐ呪いを掛けて対象を護るという術です!

 これは我が子の安全を考慮するなら絶対に覚えておいて損は無い筈です!

 私が教えるなら一族郎党全員野垂れ死にどころか、一族郎党の範囲2~3km以内の人間を野垂れ死にさせて、徹底的に報復の芽を潰せる域迄鍛え上げてみせますよ!」

「物騒過ぎるわ!

 大体、人口が密集している現代でソレやったら洒落にならん被害が出て、寧ろ魔術協会に狙われるだろが!」

「大丈夫です!不慮の事故で死んだりしますので神秘隠匿はばっちりです!」

「どっちみち聖堂教会が動くからアウトだろがっ!」

「むう。それじゃあ急に罪悪感が芽生えて自害する程度のやつにしときます」

 

 渋渋とそう言って玉藻は引き下がり、それなら文句は無いのか特に追求しない雁夜。

 そして玉藻は次の魅力を語り始める。

 

「それでは次の魅力は恋人や夫婦の夜の営み関連です!

 おっと、真面目な話なので打たないで下さいね♪」

 

 声こそ軽いが目は真剣な玉藻を見、取り合えず黙って聞くことにする雁夜。

 

「えっとですね、房中術というのを応用すると、何と生命力を平均化して大体同じ時期に死ねたり出来ます!

 他にも相手を自分の領域迄導いたり、互いの生命力を喚起させて健康になった上に老化防止も出来ますし、相手に生命力を分け与えて瀕死の状態から回復させたりと、愛しい方の為なら覚えておくべき術なのです!」

 

 本当に真面目な話であり、玉藻の言う通り愛しい者の為、若しくは何時か現れる愛しい者の為にも本当に覚えておいて損は無いと雁夜は思った。

 だが、当たり前の疑問が胸を過ぎったので玉藻に尋ねる。

 

「確かに覚えておくべきだろう術だ。それは素直に認める。

 但し、どうやって修得させるかによるがな」

「え、え~と…………私が実演して見せるとか?」

「その後桜ちゃんの顔をまともに見れるなら構わないがな。

 但し俺は付き合わないぞ。

 少なくても桜ちゃんが人生を賭ける程に頼み込まない限り」

「……ですよね~。

 私も呪術で問題解決して桜ちゃんに実践してもらう気は微塵もありませんからね~」

 

 流石に玉藻も桜の前で実践する気は無く、更に桜と実践する気などは皆無の為、止む無く断念した。

 ただ、それでも諦めきれない為――――――

 

「では書物にて伝えるとしますね」

 

――――――と、玉藻は言った。

 そして書物でならば問題無いだろうと思った雁夜は特に文句を言わず、玉藻の次の話を待った。

 

「それでは気を取り直して最後の魅力のダキニ天法です。

 これは凄いですよ?地位や財産をがっぽがっぽと得られますよ?

 他にも死期を悟ったり権力を得られたりも出来ますし、壮絶に使いたくありませんが権力者から寵愛を得ることも出来ます。壮絶に使いたくありませんが」

 

 何やら根が深そうな発言をする玉藻の言葉を聞き、権力者からの寵愛は兎も角、金は有れば有る程有利だろうと雁夜は思った。

 だが――――――

 

「役に立ちそうだとは思うが、冷静に考えれば俺が決めることじゃなくて桜ちゃんが決めることなんだよな。

 魔術は済し崩し的に学んでもらうことになったから、少なくても他の事に関しては出来るだけ桜ちゃんに決めてもらいたいから、今度桜ちゃんを交えて話し合ってみるとするか」

 

――――――と玉藻に語った。

 すると玉藻はにこやかに答えを返す。

 

「あ、それなら大丈夫です。

 桜ちゃんも女の子ですから、魅力満載の呪術は絶対に覚えたがります。

 それに一夫多彩去勢拳を伝授している時、呪術で自分以外に反応しなくしたり、逆に懲らしめる為に同姓にばかり反応するように出来ると言った時の食い付きは凄かったですから」

「止めんか駄狐!」

 

 膝枕をされた体勢の儘、素早く手刀を玉藻の側頭部へと振り上げる雁夜。

 しかし玉藻は首を逸らして難無く雁夜の手刀を避ける。

 

 だが、玉藻の側頭部に中って止まる筈だった手刀は止まらず、その儘孤を描き続けた。

 が、直ぐに肘が玉藻の身体に当たって止まった。

 

「「あ」」

 

 確かに手刀は止まりはした。特に雁夜のバランスを崩したりもせずに。

 だが、それは雁夜の肘が玉藻の胸の谷間で受け止められたからであった。

 

「「……………………」」

 

 ただ単に胸の谷間で肘を受け止められただけならば兎も角、玉藻は雁夜の手刀を意図せず胸で受け止めた際に胸を完全に肌蹴させてしまっていた。

 暫し沈黙した儘雁夜と玉藻は見詰め合っていたが、やがて思考が復帰した雁夜は――――――

 

「すっ、すまん!」

 

――――――謝りながら身を捻りながら起き上がって距離を取ろうとした。

 が、焦り過ぎて体重を支える腕を玉藻の胸で止まっている方にしてしまった。

 結果――――――

 

「おわあっっ!!??」

「きゃん♥」

 

――――――体勢を崩して玉藻へと覆い被さってしまった。

 

 見事に玉藻を押し倒した状態になってしまった雁夜は今度こそ直ぐに離れようと、今度は両腕を使い、絨毯と何か柔らかい箇所を支えにしながら起き上がる。

 だが――――――

 

「…………」

 

――――――ちょうど起きたのか、寝ぼけ眼で雁夜と玉藻を黙って見る桜。

 

「……………………」

「……………………」

「……………………」

 

 暫し雁夜と玉藻と視線を合わせていた桜だったが、状況を理解したらしく、頬を朱に染めると同時に急いで身体を反転させ、ワザとらしい寝息の様な息をしだした。

 そして桜の様子を見た直後、雁夜は急いで自分の状況を確認した。

 

 現在の雁夜の状況は、

 

1.頬を赤らめた玉藻を押し倒している。

2.上半身だけ起こし、肌蹴た玉藻の胸を鷲掴みしている。

3.腰を玉藻の股の間に入れている。

4.しかも夜にこれらを行っている。

 

で、あった。

 

 そして諸事情により性知識が同年代より圧倒的に豊富な桜の思考が行き着く先をはっきりと理解した雁夜は急いで桜へと駆け寄って弁解を始める。

 

「ち、違うんだ桜ちゃん!さっき――――――」

「大丈夫。……私は何も見なかった。

 ……起きたら……きちんと目を見て……あいさつできる」

「――――――のはちょっとした事故………………って!? は、話を聞いてくれ桜ちゃん!!」

 

 痛い気遣いを桜から受け、涙目で必死に説明する雁夜。

 だが、桜は目を瞑った儘、宛ら寝言の様に呟き続ける。

 

「大丈夫。……お姉ちゃんになるんだから……気遣いくらいは……簡単」

「本当に勘弁してくれ桜ちゃん!

 全くの誤解だから!!!」

 

 

 

 その後、暫く懸命に説明をする雁夜だったが、状況が状況なだけに桜から全く理解を得られなかった。

 そして、体面や矜持や其の他諸諸が崩壊して限界を迎えた雁夜は、半泣きで外へと飛び出した。

 

 雁夜が落ち着きを取り戻して玉藻達の所に戻るのに3日を要した。

 

 

 


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