MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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006話

「ううぅんまぁあい!!」

「お代わり欲しいっす!!」

「私もお願いします!」

「はいはい、器寄越せ」

 

チェスの駒の撃退に成功した一同は安心感からか空腹になったのか腹を鳴らした、そこで料理を始めたのはなんとかドロシーを跳ね除け服を着直し鎧を付け直しているジークだった。元々ドロシーとの旅をしていた際に料理を行っていた彼は戦闘に使用できるARM以外に持ち物を別の異空間に保存出来るディメンションARMをドロシーから預かり、其処に食材を保存していた。

 

其処から食材を出し調理し皆にご馳走していた。その味は正に絶品、本人は趣味だと言い張っているが一流のシェフにも負けない程の味でジャックやギンタ、エドまでお代わりの手が止まらなかった。バッボは紳士ぶってゆっくり味わって食べているつもりだろうが十分にがっついていた。

 

「全く良く食うなお前ら、まあ作る身としては嬉しい限りだが」

「だって美味いんだもん、なあジャックにエド!」

「本当にこれ美味すぎっすよ!!こんな料理食べた事ないっす!」

「私もです!これほどにまで美味なる食事が食べるとは、ジーク殿様様ですな!」

「褒めて追加しか出さんぞ」

「んっ~半年振りのジーくんの愛がこもった手料理、し☆あ☆わ☆せ♪」

「修練の門の中でも食べたけど本当においし~!」

 

程無くして食事は終わり、皆は大満足そうに顔を綻ばせていた。そんな中スノウが皆にドックタグを配る、其処にはバッボのような模様が刻まれている。

 

「これってエンブレムっすか?」

「そう!私達のチームのエンブレム!改めて説明するけどこの世界には大きく分けて三つの勢力が存在するの。メルヘヴンの侵略征服を目的とした"チェスの駒"、それに対抗する"クロスガード"、盗賊ギルドの"ルベリア"だね」

「あれっでもギンタ達ってチェスの駒を倒そうとしてるのよね?」

「そうだよ」

「ならクロスガードってのと合流しちゃえば良いんじゃないの?態々新しいチームなんて作らなくても良いと思うけど」

 

ドロシーの言葉は正しい、新しいチームを作らずとも既に組織として機能している筈のクロスガードと合流出来れば戦力も大幅に上がる筈なのに。だがそれをスノウが否定した、彼女が故郷レスターヴァから逃亡する前日、城の占い師から城から逃げ8人の仲間を探し軍を組織すべしと。それがメルヘヴンを守る物となると。

 

「8人……」

「そ、それって私とジーくんも入ってる訳……?」

「まあ内容から察すると恐らく……」

「えっ~!!?でもジーくんが参加するなら私も参加しま~す♪」

「んじゃジークとドロシー参加決定!」

「俺の意見は……まあ異議は無いんだが」

 

なんだかんだでジークもチェスの駒と戦う事事態に異論は無い、それが他人からの願いを叶えるのが好きであり"頼まれ続けてきた人柄"と称されるジークフリードという英霊の影響かは解らないがジーク自身、一方的な侵略を容認出来るような人間ではなくそれを悪としてみる。

 

「んじゃさ、俺たちのチーム名メルヘヴンを救う戦士達って事で"メル"って如何だ!?」

「うん!すっごく良い名前!」

「異論はありませぬ!」

「おいらも賛成っすよ!」

「バッボズビクトリー突撃隊ではいかんのか……?」

「ミスター、それでは皆の個性が行きませんよ」

「ちょっと可愛いし私も賛成っと」

 

チーム名も決まり気持ちが引き締まった所で一同は移動を開始する事にした、今居るこの島はメルヘヴンのど田舎。まずは海を渡ることになる、そこでエドは移動用のARMであるマジックカーペットを展開しドロシーとジーク以外はそれに乗り空の旅へ。

 

「ARM展開、ウィング。行こうドロシー」

「はぁ~いジーくんの思うがままに~♪」

 

翼を羽ばたかせドロシーと併走するように空を翔るジーク、そんな光景を見るギンタは目を輝かせるがエドだけは鋭い視線を向けていた。魔女だけでも特殊な存在であるのに、そんな魔女があれほどに入れ込むジークという青年、その存在が気がかり。

 

「ギンタ殿、あのジーク殿とは一体何処で」

「う~んドロシーの後に会ったんだ、なんでも記憶が無くてそれを探す旅をしてるんだってさ」

「先程も申し上げた通り魔女のこの世界でも異質な存在、集落であるカルデアからも基本的に出ないと聞きます。そんな魔女が外に出ているだけでも不可解だというのにあれほどに入れ込むジーク殿、気になります」

「うん、私もジークさんは本当に不思議な存在だって思う」

 

スノウもジークへと視線を向ける、正確に言えば彼の剣に視線が行く。ARMとは似て非なる魔剣、下級とはいえガーディアンARMさえ両断する事が出来る力を秘めている剣、そしてその使い手であるジーク。

 

「ジーク殿が善人である事は理解出来ます、しかし謎は深まるばかりですな」

「大丈夫!何時か記憶が戻って俺達に話してくれるって!」

「そうだと、良いのですが………」

 

そんなこんなで海を超え遂に大陸へと足を踏み入れたメル一行、辿り着いたのだ岩場が続く山岳地帯。何処か降りられる場所を探していると真下から槍が飛んできてマジックカーペットを貫いた。

 

「何っ!?がぁっ!?」

「ジーくん!?」

 

飛んできた槍の一本がジークの翼を貫いた、"ARM ウィング"は使用者の身体と同化し翼を生やす物である為発動している間は使用者の身体と同意義になる。そしてその翼にはジークの宝具(・・)は適用されず普通に傷ついてしまう。だがそんな翼に鞭をうち必死にマジックカーペットの下に入り込み傷ついた翼を動かし上昇しようとするが4人かつバッボの重量もあり努力空しく落下していく。

 

「ぐぅう!!!」

 

せめて安定だけでもさせようと必死に絨毯を持ち上げるジーク、そしてそのままカーペットは地面に激突した。

 

「いっててててて………ジ、ジーク大丈夫かぁ!?」

「すっごい勢いで激突したっすよ!?」

「いや大丈夫だ」

「キャインッ!?」

「び、びっくりしたッ!!?」

 

ぬっと擬音が付きそうなぐらいぬるりとカーペットの下から這い出てくるジーク、その身体には文字通り傷一つ付いていない。

 

「ジーくん大丈夫~って皆周り周り!!」

 

ドロシーに言われて周囲を警戒すると周りには多くの人影が岩陰から現れた、マフラーなどで顔を隠し此方を狙っている男達の視線。ジークは剣をとり警戒する。そして一人の金髪の男が歩み寄ってくる。

 

「君らチェスの駒やろ?地獄行きや」

「これは、厄介な事になりそうだ……」


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