MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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穿つ槍 前編

「一辺ジークにも聞いてみようと思ってたんとこがあるんや。カルデアに関わる宝があるってんで前から目を付けとったんやけどな?兎に角謎だらけなんや」

 

ナナシに導かれるままに進む洞窟の中。酷く暗く歪な形状の道、確かに何かを隠すのには絶好も言える洞窟。そしてどんどん奥へと進み続けていくと巨大な壁がそびえ立つ場所へと到着する。完全に行き止まりになっておりこれ以上先にはどうやってもいけそうにない。

 

「この壁の奥に空間があるみたいなんやけど何しても傷一つ付かんのや。怪しいやろ?」

「……どいてろ」

「えっジークさん?!」

「―――竜穿!!」

 

バルムンクを抜刀し一気に振り下ろし魔力の斬撃が壁を抉り木っ端微塵にしていく、土煙が立つ中壁はガラガラと瓦礫に変わり奥の空間を隔ていた壁は消え去り道だけが残された。

 

「開いたぞ」

「相変わらず凄いパワーやのぉ……」

「よく言うだろ、開かない扉は開けるのみ。行き止まりなら道を作るのみ」

「「「それはジークさん/様だけです!!!」」」

「かなり、ドロシーちゃんに毒されとるなこれ……」

 

ジークの変わりように驚きつつ呆れるナナシだが気配を察知し気持ちを切り替えアイコンタクトでジークに合図し互いに戦闘態勢をとる。

 

「ど、如何したんですか二人とも!?」

「お客さんや、ジークやるでぇ!!」

「ああ。6年ぶりに共に戦うとするか!!」

 

接近してくる人影に生気は薄く操り人形のような印象を受ける。間違いなく敵。少なくとも迫ってくる人間には盗賊であるナナシを討伐しに来た討伐隊のよう。

 

「お前ら先に行け、此処は俺とナナシが食い止める!」

「きたでジーク、所謂フェイクガーディアンが!!ほな自分らも行こうか?ジムノート!!」

「流石にファヴニールは拙いから俺はバルムンクで!!」

 

久しぶりにガーディアンであるジムノートを呼び出すナナシと既に斬撃の発射体制に入っているジーク。戦闘の準備は万端、何時でも戦いに入る事はできる。

 

「ナナシさん!あの人たちは操られてるんです、殺しちゃ駄目です!!」

「……解ったわ約束したる」

「絶対ですよ!?ジークさんも!」

「おう」

 

その言葉を聞くとカイ、エリサ、インガの三人は奥へと走りこんでいく。それを確認すると思わずナナシは溜息を漏らした。

 

「街は救いたい、人は殺すな……あの子らこの先苦労するで?」

「だろうな。だが子供が苦労を乗り越えるのを手伝ってやる、それも大人の仕事だ」

「ははははっせやな。さて、やるでジーク!!」

「おう、まずはネイチャーARM タイムトリック!!」

 

懐から一つのARMを勢いよく出したジーク、そのARMより溢れる光は後ろの崩壊した壁をまるで巻き戻すかのように修復して行き元通りの壁へと復元して見せた。時間を戻す事が出来ると言う凄まじい力を持った希少なARMがなせる業である。

 

「わぁおすっごいARMやの」

「まあな、さあ片付けるぞナナシ」

「おう」

 

迫り来るフェイクガーディアンの数々。討伐隊の人間の生命力を力に変えて動くフェイク。ジムノートの発する魔力の強さを感じてかガーディアンに注ぎ込まれていく生命力の力は増していく。そして当然の既決として人間の命は磨り減っていく。

 

「やったれジムノート!」

「砕け、竜砕!!」

 

ジムノートの強力な雷撃がガーディアンを硬直させると同時にその身体を焼いて行く。その雷撃の中を駆け抜けるように魔力によって象られた竜が通過しガーディアンを粉砕し討伐隊の人間全ての意識を吹き飛ばし気絶させる。

 

「相変わらず強いのぉジーク」

「お前こそ、腕が鈍って無さそうで安心した」

 

―――ちっ使えない連中だ。

 

突如聞こえてきた聞いたことの無い声に構えなおす二人、閉ざされた道を遮る二人の前に現れたのは凶悪な表情をした少年とまるで人形のように無表情な少女であった。

 

「にしてもとんでもないのが居たもんだ。前大戦の大英雄のジークにナナシ、面倒なのが居るぜ」

「なんや、面倒なだけでまるで倒せるって言いたげやな」

「その気に成ればお前なんて難なく倒せるんだよ俺は」

「ほう……なら試してみるか……?」

 

さり気無く剣を引き攻撃の準備をするジーク、それに反応し巨大なトカゲのようなガーディアンと翼を生やし身体を燃やしながら空を飛んでいるガーディアンが出現する。だがジークは素早く反転し壁へと強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「但し、戦うのは俺じゃねぇ。こいつらだ」

「ジークさ~ん、ななしさ~ん遅くなりましたぁ!!いっけぇニードル・ワーク!!!」 

 

再び砕け散った壁の向こうから迫ってくる声と何かの足音。かなり大きく重い音を響かせながら戻ってきたカイだがその正体は直ぐに明らかになった。

 

―――それは馬の四肢を持った騎士のようなガーディアンであった。




何故か凄い難産でした……。

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