MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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盗賊ギルド

「まあ自分の家だと思ってゆっくりしてくれ。それと……そこまで凝視されると流石に反応に困るのだが……」

「だ、だって目の前に第二次ウォーゲーム大戦の英雄が居るんですよ!!竜騎士ジークフリードって言ったら知らない人が居ないほどの超有名人ですよ!!」

「まあなんでもいいが………」

 

カルデアの結界周辺戦を終えた一同はフェイクARMを根絶する為にバッボの元の記憶が封じ込まれているマジックストーンを探す度に出る事となった。がアルヴィスはフェイクの対策を練る為にクロスガードの本部へ。ドロシーは破られてしまった結界の修繕作業の為にカルデアを離れる事が出来ない。その為にカイやエリサ、そしてインガに同行する事になったジーク。一度ジークの家で話をする事になり今は彼の自宅に居る。

 

「さて、これからミスターの記憶を探す旅に出る事になる。危険な旅になる事は決定しているような物だ、覚悟は出来ているか?」

「勿論だよ!絶対に街の皆を助けるんだ!!」

「私もです!カイを手伝う事をするんです!」

 

目の前の少年の少女は正直言って頼りない、魔力は無いとは言えないがそれ程多くは無い。戦力としては数えられないがこの意気込みは買う事が出来る。自分の親友であったギンタを思い出すような少年だと少女だ。

 

「勿論私も行きますジーク様。最初から怖気づいているような奴に任せてなんておけませんから」

「お前も相変わらずだな、既にカルデアの掟は俺達が改正している。囚われなくてもいいんだが」

「いえやります」

 

インガの強い意志、というよりも一族を辱めたものへの憎しみ。強い感情は戦いに向かう自分を強くしてくれる要因の一つに成りえるが感情によっては身を滅ぼす事にもなる。そんな感情で戦う者は連れて行かない事が一番だが自分だけでは限界はある、腕が立つインガは居た方が良い。

 

「やれやれ……さてとミスター、まずはルベリアへと行こうと思っています」

「ルベリア……となるとあやつに助力を頼むのか」

「ええ。宝探し、ならあいつが一番でしょうからね」

 

地図でルベリアを示しながら策を練るジークとバッボ。提案に察しがつくバッボは致し方ないといった表情をしながらそれを飲み目標を決定した。そして準備をしようとした時にドアが開き其処からバッグが飛んでくる。

 

「準備なら済ませておいたわよジーク、それだけあれば十分だと思うけど」

「ああ十分だ。すまないな―――ディアナ」

「「デ、ディアナァァア!!!??」」

「あっしまったな」

 

ドアの先に立っている人物を目にしながらジークの言葉に驚愕するカイとエリサ、そして失言をしてしまったと軽く頭を抱えるジーク。

 

「デ、ディアナってウォーゲームにおけるクイーンじゃないですかぁ!?」

「な、なななななななんでそんな人がジークさんの家にぃぃい!!!?」

「あー……説明すると面倒なんだが―――という訳だ」

「「成程納得です」」

「えっ今何があったんですか!?何なんで二人納得してるんだ!?たった5秒の間に何があったんだ!?」

「それじゃあミスター、そろそろ行きましょうか」

「うむ。カイにエリサ、行くぞ」

「「はーい」」

 

「えっあれちょっと待って置いてけぼりなの!?」

「(ポンッ)超ドンマイ!!」

「いや何があったのか説明してくださいよディアナ様も!?」

 

 

「っと言う訳でアンダータでルベリアに到着だ」

「ってえっ~!!?すっごいボロボロで誰もいそうにないんですけど!?」

「……もう好きにしてくれ」

 

作戦会議も切り上げ早速アンダータで盗賊ギルド"ルベリア"のアジト。がそこは酷く荒されており何者かに攻撃でもされたかのようにボロボロになっていた。中も酷く物が散乱としており廃墟同然という状況になっている。

 

「まるで廃墟だな……」

「これじゃあ誰も居ないかも……どうしますジークさん?」

「………おい、幾らなんでも少女に手を出すのはNGだぞ三十路」

「なんや気づいとったんかいなぁ?相変わらずキッツイのぉジーク」

 

カイと共にジークの背後に居たエリサの後ろに降り立った男は呆れ半分嬉しさ半分な言葉を口にした。それは嘗ての戦友に会えた喜びからか、それとも久しく会えていなかった女性に会えたからか。そこにはウォーゲームでジークと共に戦いを潜り抜けた男、ルベリアのボス"ナナシ"が立っていた。

 

「ほんまに久しいのぉジーク。ドロシーちゃんとの結婚式以来やな、元気にしとるかドロシーちゃん?」

「ああ元気過ぎる位だ。まあ昔に比べてたら若干はお淑やかにはなったな」

「はっはっは!!自分が若干っていうんやからほんのちょびっとなんやな!」

 

久しぶりの再開ということも会ってか思わず会話に花が咲いてしまう二人。そんなナナシは何気なくジークと共にやって来た少年たちに目を向けると6年も前にいきなり消息不明になったバッボが共にいる事に漸く気が付く。

 

「ってバッボの亡霊~!!?んな訳あらへんか、お久しゅう」

「本当に相変わらずじゃな、んで如何したのじゃこの有様は?」

「いやぁ自分ウォーゲームで有名になってしもうたやん盗賊なのに。したらな、地元の領主に目を付けられてしもうたんや、おかげでボロボロ……。なんとか仲間が逃がして今は此処に自分一人に居るっちゅうことや」

 

事情を聞いたジーク達は自分たちがフェイクを根絶する為にバッボの記憶を探している事、そしてそれに関する事を知っていないかと聞きに来たことを伝えた。

 

「なるほどの~フェイクね。その記憶かは解らんけどありそうな場所は知っとるで。でも、協力して自分に得があるんかいな………?」

 

途端に鋭くなる瞳、先程までのにこやかで友好的な人物だったとは思えない変化に戸惑うカイとエリサ。

 

「教える気がないなら力づくでも教えて貰いますよ」

「止めておけインガ、お前じゃ瞬殺されるのがオチだ」

「ナナシさんの得にはならないけど……街の人達を助けるのに協力して欲しいんです!お願いします!!」

「街の人を…か」

 

その真っ直ぐすぎる言葉と眼差しに思わずギンタの面影を重ね合わせるナナシ、ジークも感じたギンタと似ていると思える感覚。思わず協力したくなってしまう程の善意、ここまで善意を持った人間も珍しい。

 

「そうだな、ディアナとの1日デート券で如何だ?」

「乗ったぁ!!さあさあなにしとるんや君ら、早く行くでぇ!!!」

「こういう奴なんじゃ」


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