MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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036話

「「「「「メル!メル!メル!メル!メル!メル!」」」」」

 

レスターヴァ城に木霊するメルへの応援のコール、間もなく遂に始まろうとしているウォーゲーム最終決戦。遂にチェスの駒を最後まで追い詰めたメルがファントム率いるラスとメンバーと対決する。それを見届けようとメルヘヴン全土から人が集まっていた。

 

「凄い人だなぁ」

「本当っすね、街じゃ見れないぐらいの人が居るっすよ」

「まあ当然だろう。この一戦でメルヘヴンの運命が決まるんだ」

 

これまでチェスの駒を次々と撃破してきたメル、その活躍は空から降り注ぎチェスという恐怖と絶望の軍団を砕きに砕き続けた。これほどの人達が希望を胸にメルの勝利を信じている。自分達という切っ掛けは多くの人達を立ち上がらせる種になった。そしてその種は順調に育ち希望と言う花を付けさせまもなく平和という果実を実らせようとしていた。

 

「おはよう御座います皆さん。遂に今日で最後ですね、まさかこれだけのメンバーで最後まで勝ち抜くとは思いませんでしたよ。ああでもお一人k「おいそれ以上言ったら殺すよ」ひっ!!?」

 

やって来た審判役のポズンが挨拶などをし感想を述べているが途中でジークが此処に居ない事を言おうとした為にドロシーの逆鱗に触れてしまう。瞬間的に切り替わった憤怒の表情と殺気に息を呑み恐怖に身を任せてしまう。

 

「ドロシー姐さん落ち着くっすよ!これを相手しても無駄っす!」

「………それもそうね」

「ふぅ………(た、助かった……)ではフィールド!!」

 

城の一部の地面が大きく割れていき其処からせり上がって来たのは石造りの競技台。ウォーゲームの最初もこのレギンレイヴ城での戦い、ウォーゲームの全ては此処から初まり此処で終わりを告げる。ここから希望が広がるか絶望が広がるかも此処で決まる。

 

「ギンタさ~ん!!ヴェストリから来ました~!!応援してます!!」

「ジャックさん負けるな~!」

「アルヴィス~今日も決めてくれよ~!」

「ドロシーさ~ん快勝しちまえ~!」

「ナナシ様~頑張って~!」

「アランさん今回は勝ってくれよ~!」

 

個人へと飛んでくる声援。希望の星々へと送る勝利へのエール。

 

「その希望もこの方々なら打ち砕いてくれる事でしょう、出でよチェスの駒最後のチーム!!」

 

瞬時に快晴だったはずの空が雷雲に包まれ激しい雷が空を駆け巡る。雷使いのナナシは直ぐにこれが自然現象ではなくディメンション系のARMの雷であると見破る。そして雷は地面へと落ちるとそこへチェスの駒のメンバーを解き放った。以前アルヴィスと戦ったロラン以外の3人は初めて見る顔ぶれ、だが全員が耳に付けているピアスはナイト。全員が13星座(ゾディアック)の精鋭。

 

「ファントムはっ……!」

「ぺタもや……!」

 

司令塔であるペタとその側近であるペタの姿は無い。そんなアルヴィスとナナシの言葉にロランが遅れてくると答えた。自分達を引きずり出したければ勝ち続けてみろと言いたげな態度に全員が顔をしかめた。

 

「二人とも遅れてくると仰ってましたよ、直ぐにリーダーとサブが出てくるのは面白くないって」

「そんな事よりジークに何かしてないでしょうねあんたらぁ!!」

「い、いえ私達は彼に一度も会ってません」

 

歯を食いしばり必死に怒りを抑えようと務めても巻き上がってくる感情。今頃恋人である彼がどのような事になっているのか気になって致し方ない、今までチェスの駒に与えたダメージの分だけ拷問など受けているのではないかとドロシーは気が気ではなかった。

 

「本当でしょうねぇ!?」

「本当じゃよ。あの青年はクイーンが預かっているとは聞いたがのぉ」

「(ディアナが………!!)」

 

ナイトのうちの一人の老人、ヴィーザルの言葉を聞いて更にディアナへの感情が強くなりもう自分を制御出来なくなりつつあるドロシー。そんな感情を無理矢理に押さえながら心を落ち着かせるホーリーARMを使用し漸く落ち着く。

 

「第一試合最初の出場者は?」

「おいらが行くっす!」

 

初戦に志願したのはガイラに頼み込み凄まじい修練を積んできたジャック。今までの彼とは思えないほどに強い意志と自身を醸し出している彼と戦うのは頭に木を生やした如何にも植物使いという姿をしたヴィーザル。

 

「お主歳は幾つ位じゃ?」

「14っす」

「ほほう!ワシよりも70も下なのかふぇっへっへっへ。大したもんじゃな」

「子供だと思ってると痛い目に見るっすよ爺ちゃん!」

 

「それではウォーゲーム最終決戦第一試合開始します。メル ジャック!チェスの駒 ヴィーザル!試合開始!!」

「行くっすよ!」

 

試合開始が告げられると同時に駆け出すジャック。その速度は瞬時にヴィーザルの元へと瞬間でもしているかと思わせるほどの速さ。そこから繰り出されてるパンチのラッシュ、以前のジャックとはスピードが格段に上昇しているがヴィーザルはそれを全て見切り簡単に避けて見せている。

 

「まだまだっす!大地のスコップ!!そぉおおらぁああ!!!」

「うごぉ!?」

 

野球のバット宜しくフルスイングされたスコップはヴィーザルの腹部を真っ直ぐに捉え吹き飛ばすが老人とは思えぬ身のこなしでバク転を決め体勢を整える。

 

「あいたたた腰が……少し逝ったかの」

「いや普通はそれだけじゃすまないって!老人なのにどんだけ丈夫なんすか!老成した大樹だってもう少し脆いわ!!」

「よく言うじゃろ年取ると体が堅くなるって」

「意味が違うわ!!そのかたくなるは完全な硬化だよ爺ちゃん、歳取ると硬くなる頭と体の柔らかさだけで十分だボケエエ!!」

「ふぇっへっへまあ落ち着くと良いぞ、そう熱くなると頭が沸騰するZOY☆」

「やかましいわ!!頭から木を生やしてる人間に言われたくないっす!頭が沸く処か養分奪われてカラカラになんだろうが!!」

 

「まあ冗談は置いておいてじゃ。そのスコップ何処で手に入れたんじゃ?」

「父ちゃんからっす!」

「ほほう、それではお主はジェイクの息子か。道理でのぉ」

 

ジェイク。それはジャックの父親の名、そしてこのウォーゲームで戦死してしまった人でもある。この老人(ヴィーザル)の口ぶりはジェイクの事を知っているかのような口ぶりにジャックは察した。

 

「そうか……爺ちゃん、アンタ父ちゃんと戦って勝ったんすね!!」

「ふぇっへっへ中々察しが良いのぉ。ジェイクは強かったぞえ、最後にはワシが勝ったがの。まずは小手小手調べ、シードキャノン!!」

 

赤いローブの中に忍ばせていた右腕を出すとそれは樹木で構成された砲門となりその砲身がジャックへと向けられていた。そこからは多量の植物が発射され迫ってくる。

 

「そう簡単に!当たらないっすよ!!」

 

それらを見事に回避するジャックだが自分の後ろにある客席に直撃してしまい顔をしかめる。このまま回避を続ければ見に来ている人たちに被害を出してしまう。

 

「ふぇっへっへ如何するジェイクの息子よ?」

「くっ………!」

「ジャック君頑張って~!!」

「「えっ?」」

 

如何すべきかと思考するジャックへと向けれた声援、それは女性のもので思わず二人の植物使い(ジャックとヴィーザル)はそちらへと視線を向ける。そこにいたのは1stバトルと4stバトルで対戦したパノが弟であるレノと此方に視線を向けている姿があった。

 

13星座(ゾディアック)だがナイトだが知らないけどぶっ飛ばしちゃえ~!」

「ちょ姉ちゃんなんでブサイクの応援なんかすんの!?此処は普通ヴィーザルさんの応援だろ?」

「なに言ってるのよレノ。ジャック君はメルの中じゃギンタやアルヴィスにナナシ、そしてジークよりもカッコいいひとじゃな~い♪」

「あれ、もしかしてまだ姉ちゃんラリってるの?」

 

「誰よりも?」

「素敵、なんかいのぉう?」

「猿の癖になんじゃあれ」

「ジーくんよりもカッコいいわけあるかよけっ」

「俺よりも………?」

 

地味に傷ついているアルヴィスであった。

 

「うぉおおおおおおお!!!この試合、絶対に勝ったらぁあああああ!!!!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」

「ふぇっへっへ!!やるのう!!」

 

「おい魔力が倍増してるぞ」

「わっかり易いやっちゃ」

 

パノに応援されていると解った途端に魔力が倍増し動きにキレとスピード、そしてパワーが上がり向かって来る植物の砲弾をスコップで打ち返すという荒業で乗り切るジャック。

 

「だが戦いは此処からが本番じゃぞジェイクの息子!」

「望む所っす!!」




使うのを完全に忘れていた中の人のネタ、此処で披露。

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