MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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003話

「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ!こいつのARMになるのは嫌じゃぁ!!」

「な、何よこれ……」

「………」

 

バッポを入手し番人として配置されていたガーディアンの撃破にも成功したジーク達は一旦洞窟から出たのだが、見れば見るほど珍妙なARMであるバッボ。形状は正しくけん玉だが問題は其処ではない、玉となっている部分に表情があり口もあり自我を持っている点である。普通ARMはガーディアンでなければ自我を持たないし、そもそも発動もさせていないのに喋る時点で可笑しい。

 

「お前からは邪悪な魔力がプンプンしとる!触られたくもないわ!!」

「私はあんたを探して遥々っ!?」

 

ギンタの手からバッボを取り文句を言うがその重量にバッポを落としそうになる、その寸前にジークが割って入りバッボをキャッチする。確かにかなりの重量だがジークはなんとか持てる。

 

「大丈夫かドロシー」

「な、何とか……ってちょっと待って坊や!!君こんな重いもの投げたり振り回してたの!?」

「うん!それに持てないんだったらしょうがないよね、バッポ頂戴!」

 

っと純粋な視線を向けてくるギンタ、そして漸く見つけた超激レアARMであるバッボをこのまま渡しても良いものかと迷うドロシー。そんな二人を放置してジークはそっとバッポを地面に置いていた。

 

「ふむ、お主は中々清らかな魔力を持っておるな。名を名乗るが良い」

「ジークフリード、ジークで結構ですよミスター」

 

ミスターと呼ばれ機嫌を良くするバッボ、どうやら彼は紳士らしくそれを誇っているらしい。このような得体の知れない存在の機嫌を損ねるのは面倒な自体に繋がりかねないっと言う考えの下ミスターと呼んだのだが好感触だったようだ。

 

「ジーくん。そのARM、この子、ギンタにあげようと思う」

「いいのか、探してたんだろ?」

「うん。正直それだけ重たいと扱いにくいし、趣味じゃない」

「承知した」

 

再びバッボを持ち上げギンタに手渡す。

 

「ちょ、ちょっと待て!わしはこいつも嫌いじゃ!使われるんだったら其処の礼儀を弁え取る奴の方がええ!!」

「残念だがミスター、私にはこの剣がある」

「そういうこと、但し坊や。そのARMを持っていると襲われると思うわよ、喋るARMなんて唯でさえ激レアだし、それに収穫はあったしね」

 

そう言って左手首に付けられた兜をあしらった腕輪を見せる、それはバッボを守護してたガーディアンARM。ちゃっかりそれを手に入れていたのだ。

 

「んじゃ行こうかジーくん、今度は箒に乗ってね」

「大丈夫か?」

「大丈夫!心配なら私にしがみついてくれても良いよ、何処、とは言わないかね?」

「………お世話になります」

 

絶対自分の足となるARMを手に入れようと心に決めながらドロシーの箒に体を横にして腰掛ける。

 

「それじゃあね~ギンタ~」

「また会えたら良いな」

 

箒はふわりと浮き上がりそのまま空へと駆けて行く、あっという間にギンタは見えなくなっていき次の目的地へと向かっていく。

 

「それにしても謎の多いARMだな、俺としては記憶がない分余計にだ」

「自我を持っているのはガーディアンとしては珍しくないんだけどあのARMは分類不明だから、更に謎が深まるばかりね、それとジーくん次のARMを探そうと思うんだけど良いかな?」

「俺はドロシー()と行動を共にすると宣言したはずだぞ?君に従うよ」

「いやぁんもうそんなジーくんもカッコいい!!」

 

そんなこんなで次の遺跡へと向かう事になった。

 

―――次なる遺跡では巨大な竜のガーディアン"ウロボロス"が鎮座しておりウロボロス自身が次なる担い手を選ぶために戦うという物であり

 

「竜穿!!」

「レオ!!」

 

ジークとドロシーの見事なタッグプレイによってウロボロスを撃破、ドロシーを担い手として選び"ガーディアンARM ウロボロス"をゲット。

 

「やったよジーくん!!このARM古い古い古文書にしか乗ってないぐらいの激レアARMだよ!!」

「そいつは上々だな、かなり手ごわかったしな……」

「でもなんかジーくんに怯えてる感あったね」

「(多分、竜殺しの逸話故だろうな……)」

 

それもあるだろうがジークの身体には邪竜の血が掛かっている、明らかに自分よりも上級の竜の血を被るほどの力持った男に怯えているといった方が正しいのだろう。

 

―――次の遺跡では数々のトラップを突破し奥の鎮座しているARMの入手に成功、そこにあったのは使用者に翼を与え飛行能力を与えるという特殊なARM。ドロシーには既に箒があるためジークが持つ事となった。

 

「それにしてもジーくん」

「なんだ」

「ジーくんの翼って結構禍々しい感じだよね」

「すまない……こんな翼しかイメージできなくて、すまない………」

「わああ!!お、落ちこないでジーくん!わ、私は全然そんなつもりじゃなかったんだってば~!!」

 

時折ドロシーの悪意の無い言葉で落ち込んだりしながらも、ジークとドロシーのコンビは数多くのARMを発見していった。そして、二人が共に旅を始めて少ししてから、二人はとある氷に閉ざされた城へとやってきていた。

 

「へっくちゅ!」

「大丈夫かドロシー、良いタイミングだ。休憩しよう」

 

季節はずれの氷と雪に閉ざされた城、その中も相当に温度が低く寒い。風邪を引きそうな寒さな為くしゃみをするのも当然といえる。

 

「ホラドロシー」

「ありがとジーくん、(んくんく……)ん~本当に美味しい~!やっぱりジーくんの料理は最高ね!」

「お褒めに預かり恐縮至極っと」

 

適当な所に布を敷きながら持ってきた保温性の高い容器から作り置きのスープを出しドロシーに飲ませるジーク、実は彼が旅の間の料理などを作っていたりしていた。

 

「(そういえば、最近ステータス見ていなかったな)」

 

ドロシーと旅をしてからステータスを見ていなかった、それなりに激しい戦いもしてきたから成長していても可笑しくないと思いステータスを見てみる事に。

 

真名(対象)】:ジークフリード

【種族】:『人間』

【属性】:『混沌・善』

【精神状態】:平常

【ステータス】:筋力D 耐久D 敏捷E+ 魔力D+ 幸運E 宝具C

 

筋力がD、敏捷がE+、魔力がD+へ成長を遂げていた。ドロシーとの旅はARMという戦力を増やすだけではなくトラップや番人などとの戦いがあるため自らを鍛える修行にもなる。特にウロボロスとの戦いがかなり良い方面に利いている。

 

「それにしてもなんで凍り付いてるんだろうなこの城」

「自然現象ではないのは確かね、人為的なものだと考えても何の為に……ジーくん」

「ああ、誰か来たな」

 

箒、剣を手に持ち真正面から来る足音に備える二人。影から相手の顔が見えると同時に斬りかかろうとしたが見覚えがある顔が見えた。

 

「あれっギンタ?」

「あ~!ドロシーにジークだぁああ!!」

「またお前か無礼女!!それと良く出来たジーク、今からわしの家来にならんか!!」

「き、綺麗な人っすね!!お友達っすかギンタ!?」

「なんか、知らん顔が増えてるな」

 

なんとも久しぶりな再開を果たしたジークはギンタから事情を聞く事になった。この城はエドワードという犬と共にとある国から逃げてきた姫が逃げ込んできたが、姫がエドワードを逃がす為に城ごと自分を氷漬けにしたらしい。

 

「成程な……それで季節はずれなこんな城が………」

「でも急いだ方が良いわよ?」

「なんでだ?」

 

スープを飲みながら妖艶に口を開くドロシー、その口から放たれた事実は酷く残酷な物。これほど城を氷漬けにするのは熟練者でも難しい物、それを自分ごと凍らせているのだから半日で心臓など止まってしまう。

 

「そ、そんな!!」

「きさまぁ!!よくも人事のように!!」

「だって人事だも~ん、あっジーくんスープお代わり頂戴!」

「畏まりました」

 

「こ、こうしてられねぇ!行くぞバッボ、ジャック、エド!!」

「おう急ぐぞ!紳士として!!」

「お、お姉様さよならっす~!!」

「そ、それではこれにて!!」

 

そう言って駆けて行く4人を見送る二人、そして二人は器などをしまい、更に魔力を開放していく。

 

「「さてと……9人、出ておいで」」

 

二人が殺気と共に魔力を開放していく遠くの方から仮面のような物をつけた者達が這い出てくる。それは二人を囲いながら下品な視線と小さな魔力を解放していく。

 

「最初から魔力を垂れ流しにしてたのはあんた等を誘い出す為、強そうなのは上ね」

「ドロシー、こいつは俺がやる。君が出るまでも無い」

「あらいいの?」

「肌が傷ついたりでもしたら申し訳ないからな」

 

そう言いながらバルムンクを引き抜き魔力を開放していく、その尋常じゃない魔力量に仮面たちは驚いて後ずさりしていく。

 

「さあ俺に敵意を向けたんだ―――覚悟、良いだろうな」

 

その後、謎の悲鳴が上がったが悲鳴の主は二度と、日の目見る事は無かった。


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