MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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023話

微睡の中で漂う我が身、その中で幻のような夢を見る。それは真に夢か否か、それは解らない。あるいは現実、あるいは幻。その二つ、両方なのかもしれない。偉大な竜殺しは不思議な海の中に身をゆだねていた。

 

―――竜殺しの英雄、お前は私のものだ。さあ我が手をとれ。

 

何処かから聞こえてくる声、甘美で心が安らぐような優しい声。思わずそちらへと手を伸ばしてしまう、その先に見えたのは麗しい美女。見つめているだけで心が痺れる様な感覚に襲われ魂が吸い寄せられていく。一歩、一歩足を進めるが

 

―――!!くん!!ジーくん!!

 

誰が、自分の名を呼んでいる。その声を聞いた瞬間に心に絡み付いていた電撃のような痺れが取れていく、だがその声は更に強く心を縛ろうと巻きついてくる。自分の逃がそうとしていないかのように。もう自分はその声には惑わされない、人を惑わす魔性の声。それを振り払い自分を呼び声へと駆ける。手を伸ばすと………

 

 

―――目が覚めた。視界には上がった手を心配そうに握り締めているドロシーがいた。

 

「ジーくん!!良かった目が覚めたのね!!!」

「こ、此処は………俺は、どうなったんだ………」

 

身体を起こすと周囲にはスノウ達が自分に視線を向けていた、ジークが横になっていたのはカルデアの宮殿の奥、大爺がいる広間でギンタと共に横になっていたようだ。

 

「兎に角二人とも無事でよかったっすよ!」

「あんまり大丈夫じゃない……気分悪いし頭クラクラする………」

「俺もだ………二日酔いの30倍ぐらい気分悪い………」

「二人ともたった一人で数十人のチェスとやり合ってたらしいじゃねぇか。無茶しやがるぜ、特にジークはな」

 

どうやらギンタもかなりの数のチェスと戦闘をしたようだが数だけで言えば圧倒的にジークの方が上だったようだ。

 

「下界の様子は如何じゃった?」

「半壊です、ARMは無事でしたが復興は難しいでしょう」

「そうか……奴らにARMが渡らなかったのは不幸中の幸いじゃな」

「はい、そうでs「ファントムがいた」っ!!?」

 

ドロシーの言葉を遮ったギンタの言葉にその場の全員が凍りついた、ファントムがいた。チェスの駒の司令塔が直接此処に出向いてきたというのか、その言葉のインパクトは余りにも大きい。

 

「ギ、ギンタもしかしたファントムと戦ったんかいな!?」

「うん、俺は自分の力を過信してたよ。慢心してた」

「今気づいてよかったんちゃうか………?」

「うん」

 

チェスの大軍を相手にした後にチェスの最高戦力と戦闘をするという無謀な事をしたギンタだがそれそれで彼を成長させる良い薬になり得たのかもしれない。

 

「………俺は、ディアナを見た」

「「「「「!!!!??」」」」」

 

ジークの言い放った言葉はギンタの言葉以上の衝撃を与えた、ディアナ即ちクイーン。それがカルデアに乗り込みジークの目の前に現したということなのか!?

 

「ジ、ジーくん本当なの!!!!???」

「………ああ、ドロシーに何処と無く似ていたあの女……間違いない……」

「なんと………まさかディアナが来るとは……それで何かされたのか竜の血を浴びし騎士よ」

「恐らく、洗脳や魅力系のARMの力を受けたな。だがそれは聞こえてきたドロシーの声で跳ね除ける事が出来たが……恐ろしかったな」

 

身体を抱きしめるように腕を回すジーク、夢のようだが現実だったあの感覚。思い出すだけで鳥肌が立つ、心を走る快感に魂を溶かすような声。正に魔性だ。徐々に人格が消し操り人形に化していくかのような気がした。

 

「本当に、恐ろしかった……ドロシーの声が聞こえなかったら俺は、間違いなく奴の虜になっていたな……」

「正にタッチ差だったって訳か……」

「ジークが敵になるなんて洒落にならないからね」

「ほんまやで」

 

メルの一行で屈指の戦闘力を持っている彼が洗脳などされてしまっては此方を全滅させること等容易い事だろう。正に危機一髪だったといえる。

 

「ARMで思い出した、既に少年への話はしたが騎士よ。そなたにもARMを授けよう」

 

そう言いつつ一旦奥に消える大爺、暫し待つとその手に大きめの箱を持って戻ってきた。ジークの前のそれを開ける、其処に入っていたのは竜を模した腕輪に何かの頭がついている指輪であった。

 

「これは特殊なガーディアンARMでな、通常であれば発動する事さえ出来んのじゃがお主のような清らかな魔力であれば起動させる事は可能だろう」

「これが、俺のARMに………」

 

竜のARMに手を触れた瞬間、身体に中に凄まじい魔力が流れ込んでくる。それは竜、竜の魔力。身体の中へと流れ込んでくる魔力は塞き止める事など出来ずに流れ込み続けていくが徐々にそれは自分の身体に馴染み始めていく。

 

「こ、これはっ……」

 

ゆっくりとARMを腕につけ指輪を嵌めた瞬間、

 

―――ステータス情報が更新されました。

 

以前も聞いた謎の声のようなものが脳内を過ぎる。もしやと思いステータスを確認してみる、すると

 

真名(対象)】:ジークフリード

【種族】:『英霊融合体』

【属性】:『混沌・善』

【精神状態】:平常

【ステータス】:筋力B 耐久A 敏捷C+ 魔力C+ 幸運D 宝具A

 

なんということだろうか、以前の自分のステータスを遥かに超えるほどに成長しているではないか。しかも擬似的な融合体ではなく完全に融合している状態へとなっている。このARMのガーディアンは一体どのような存在なのだろうか、それはこれからの戦いで明らかになる。

 

 

 

―――グルルルッ………漸く、目覚めの時か。




今回短いけど此処まで!次回は、子供大好きナイト登場!

……前回と一緒でも良かったなこの長さ

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