MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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017話

「そろそろ時間だな」

 

修練の門への入っていった面々、一日という修行期間だが門の中では60日という特異な時間の流れの中。それが間もなく終わろうとしている、時計の針が丁度一日が過ぎたのを示すと門が開かれ中から門へと入っていったメルヘヴンを守る為に戦う戦士達が戻ってきたが、その結果全員は凄まじいまでの成長を遂げていた。

 

「この中で一番の成長格はジークとギンタだな爺さん」

「ああ、正直此処まで伸びるとは予想外だった」

 

今でさえ魔力を抑えているが二人の成長は途轍もなかった、これならこの先も戦っていけると安心できる修行の出来上がり具合であった。

 

「それでは本日よりウォーゲームを再開いたします、レギンレイヴ姫!」

 

姫によって落とされて赤と青のサイコロ、地面に落ち数回回転した後停止した賽の目。示された数字は6と4。

 

「決まりました。対戦人数は6、場所は氷原ステージ!!」

「6人か、スノウは修練の門の中。一人休みになる必要があるな」

「其れなら安心しろ、俺は出ねぇ」

 

6人という人数、現在スノウは身体を休める為に修練の門の中に入っている為メルの人数は7人。誰か出れないという事態になるのだがそんな中でないと言ったのは一番の実力者であるアランであった。

 

「何でだよおっさん!アンタ一番強いじゃねぇか!!」

「理由はある、今回はお前らがどれだけマシに成ったか見せてもらうぜ。俺が居ないと勝てねぇんだったらその程度の戦争だったって事だ」

「おっさん、この状況で俺たちを試すのかよ……よぉしやってやろうじゃん!!」

 

確かにアランはこの中では一番の実力者だが、何時までもそれに頼り切るのは良くない。その為に自分たちは修行したのだから、このゲームは自分たちの力だけで戦い抜く。

 

「(ステータス回覧、してみるか)」

 

シャドーマンの戦いでは正直見る気もなかったステータス、ふと気になったので見てみる事にする。

 

真名(対象)】:ジークフリード

【種族】:『擬似英霊融合体』

【属性】:『混沌・善』

【精神状態】:平常

【ステータス】:筋力C 耐久B 敏捷C+ 魔力C 幸運D 宝具B

【スキル一覧】:直感 B :騎乗 B :仕切り直し A :第六感(シックスセンス) C

 

成長したステータス、既に魔力は英霊ジークフリートに追いついている。それどころか努力では成長しないはずの幸運が上昇しているのに驚きを感じる、それだけ自分の中の何かが変わったという事になるのだろうか。なら好都合、幸運は様々な物に補正を掛ける。攻撃、回避、防御、ある意味最強のステータスだろう。

 

「ではこの六人を氷原ステージへ!!」

 

ギンタ、ジャック、ドロシー、ジーク、ナナシ、アルヴィスはアンダータの光に包まれ今回の戦場となる氷原ステージへとやってきた。あたり一面あるのは氷、正に氷原。

 

「さっむ!?さむいっすね此処!?」

「まあ氷原だしな、ドロシー、スープを一応もってきたが飲むか?」

「うん飲む飲む~♪」

 

メルの調理担当であるジークは用意も周到なのか保管用のディメンションARMに作り置きのスープを入れていたらしい、それを出してドロシーに差し出す。

 

「あっ~!!ジークずるいぞ俺にもくれよォ!!」

「わしも貰うぞ!」

「おいらも欲しいっす!!」

「自分にも頼むで~」

「では俺も貰おう」

「解ったから並べお前ら」

 

全員にスープを振舞っているとポズンが声を上げた、氷原の向こうに出現した6人組。だがその中で邪悪な魔力を放出しながら甲高い声を上げている奇抜な髪型をしている女が居た。

 

「寒いね寒いねぇ~、こんな時は熱いあつぅ~い物を食べるのに限るねぇ!!お前たち全員の焼肉だよォ!!この美しいラプンツェル様がねぇ!!ありがたく思いなぁああ!!!」

「な、何だあれ……」

「ちっちゃいの!それと不細工なロンゲ!それと不細工!も一つ不細工!猿、それにブス!!てめぇら全員地獄に叩き落とすよぉおお!!!あっはははははぶっ殺して絶頂しちゃうからねぇえええ!!!」

 

異様なほどにハイテンションだがその口から出る言葉は下劣な物ばかり、それに容姿を含めても美しいとは程遠い。まあ美的センスという物は人それぞれなので何も言えないが。

 

「………あんなのが対戦相手なのかポズン?」

「はい、ラプンツェル様。クラスはナイト、性格はヒスティック且つ好戦的で自己中心的ですがとてもお強いですよ」

「ナイト……ロランについで二人目か、どれだけ強いのか……」

 

ナイトというクラスから考えればラプンツェルはかなりの実力者だ、最低でもロランと同程度の実力と推定しておいた方がいい。そしてチェスの駒は最初の一人としてフォースバトルにてスノウと戦闘をしたMrフックが先陣を切った。

 

「最初はあの男か、ではスノウの仇でもとって来るか」

「カッコつけるな~!」

「そうやそうや、納得いかへん!」

「そう!そう!なんでアルヴィスが一番最初なんすか!!」

「ジーク以外全員パーだったからだろうが!」

 

どうやらこちらの先鋒はアルヴィスのようだ、じゃんけんで決めたようだがジークは参加せずに勝負はチョキを出したアルヴィスで一瞬で決まったようだ。

 

「幸運を祈らせてもらうぞアルヴィス」

「有難うジークだが、祈ってもらう敵でもない」

 

唯一自分が先鋒なのに納得しているジークから応援を受け取ってから前へと出る。

 

「メル、 アルヴィス!チェスの駒、Mrフック!始め!!」

 

始まった第一戦、まずは互いの動きに警戒しているかと思いきやアルヴィスは瞳を閉じ静止した。

 

「な、何の真似だ!?」

「最初は、ノーガードでいてやるよ」

「おのれぇ愚弄するか!!ウェポンARM スクリューサーベル!!」

 

手首に装備されているARMを展開するフック、付け根から刃先までがスプリングのように曲がったレイピアのような剣。それを伸ばすようにアルヴィスへと襲い掛かる、だが目を閉じているのにも拘らず剣の軌道を読んでいるのか全てを避けきるアルヴィス。

 

「如何した、もう終わりか?」

「むむむぅ、後悔させてやるぞよ!ウェポンARM フィッシィングロッド!!」

 

サーベルの次に展開したのは先に鋭利なフック状の針が付いた長い釣竿であった。長い長い糸の先に付いた針をアルヴィスに向けるがその動きは単調な物で避けるのは容易い、だが

 

「追尾せよ!!」

 

突如針は自らの意思を持つかのように動き始めアルヴィスを追尾し、肩の部分の服に突き刺さった。アルヴィスを渾身の力で持ち上げたフックはダメ押しと言わんばかりに新たにARMを展開した。

 

「空中では逃げられぬ!ハープーンピアス!!これで終わらせるぞよ!!」

 

巨大な銛を抱え、それを渾身の力でアルヴィスへと投げつける。空中に放り投げられた身、回避など出来ないがアルヴィスは落ち着いていた。そして銛が身体に迫ったその時!

 

「お、おおおお!!!?お、折ったぁぁああああ!!?!?」

 

その腕で銛の圧し折りそのまま何事も無かったかのように地面に足を降ろした。フックはそれの驚愕し言葉を発せられなかった、彼にとってこれは相手を確実に仕留めてきたコンボだというのにあっさりと打ち破られてしまった。

 

「あの男」

「強い」

「やっぱりカッコいいですぅ♪」

 

チェスの駒のメンバーもアルヴィスの実力の高さに目を張っていた、これでもはもうフックに勝ち目はない。だがラプンツェルとその弟であるギロムはただ単にフックは弱くて使えないとしか思っていなかった。

 

「姉ちゃんあいつ使えねぇぜ」

「にゃははははは!!おいMrフックゥ!!負けたら解ってるねぇ?制裁が待ってるよぉお!!」

「む、無茶を言うな……あの男はまだARMすら出していないんだぞ!?」

 

フックは既に自分とアルヴィスの実力の差をはっきりと理解し自分には勝ち目など無いことは理解していた。だが此処で負けを認めてギブアップしてもラプンツェルに粛清されてしまう、勝つしかない。勝ち目など無くても勝つしか自分に道は残っていない!

 

「(こうなれば某の奥の手を出すしかない!魔力を極限にまで高め、狙いを定め……)」

 

静寂の戦場、アルヴィスはフックの動きを警戒しているのかじっと相手の様子を伺っている。フックは魔力を練り上げ限界まで高め手ながら狙いを定めている、そして魔力が極限に達した時!

 

「今だ!いくぞ!アンガーアンカァアアア!!!」

 

魔力を解き放ちARMを発動する、アルヴィスの頭上に巨大な怒りが出現し落下してくる。出現したときにはアルヴィスの頭の頭数十センチの位置にある直ぐに地面に落下し地響きと共に轟音が鳴り響いた。

 

「アルヴィスゥゥウウウ!!!!!」

 

叫ぶギンタ、まさかあの下敷きになってしまったのではないかと心配になってしまう。ジャックやナナシ、ドロシーさえも顔を歪めた。出現から落下までの時間は酷く短く回避は困難、流石のアルヴィスもきつい物かあったかと思ってしまった。しかしただ一人心配などしていない男がいた、ジークである。

 

「……人が悪いなアルヴィス」

 

「うがっ……!?」

 

突然の背後からの攻撃にフックは反応出来ずにそのまま地面に倒れこんだ、必死に頭を動かし後ろを見るとそこにいたのは無傷のアルヴィスであった。フックの切り札でもアルヴィスを傷つけることは出来なかったのだ。

 

「勝者、メル アルヴィス!!!」

「うおおおおお!!やったぜアルヴィス!!!」

「まぁ~ったく心配させおって!!」

「ナイスです~アル様~!!」

「流石アルちゃん」

「アルヴィスには物足りない相手だったみたいね~」

 

「お疲れだなアルヴィス」

「ああ、楽な相手だったよ」

 

戻ってきたアルヴィスはジークのハイタッチし勝利を喜ぶ、ギンタもアルヴィスの元へと駆け寄りハイタッチをする。

 

「なぁギンタ、メルヘヴンは好きか?」

「当たり前だ!」

「好きやなかったら、この場におらへんで自分ら」

「そうっすよ」

「如何したのアルヴィス、その質問?」

「俺もこの世界は好きだな」

 

当然だと言わんばかりの笑顔を見えてくる一同、そんな彼らの言葉と笑みを見てアルヴィスは笑った。心からの笑みを浮かべた。

 

「それなら俺たちは同じだな、一緒にこのメルヘヴンを守ろう!」

「おう!!」

 

新たに決意を新たにする一同、だがそんなメルの背後でチェスは恐ろしいことを始めていた。

 

「負けちゃったねぇ~さあ制裁のお時間だよぉ~Mrフック!」

「くっ殺すつもりかっ!?」

「さぁねぇ~?じゃんけんをしようじゃないか!!」

「じゃ、じゃんけん!?」

 

突然じゃんけんをしようと言われたフックは動揺する、負けたら制裁という言葉におびえていたのに当然じゃんけんをするとは如何いう事なのだろうか。

 

「そうだよぉじゃんけんさぁ!お前にとって一世一代の賭けをよねぇ!!!」

 

「何やってるんだあのドリル頭?」

 

漸くチェスの騒ぎに気づいたメルはそちらを見る、その時ジークは見てしまった。ラプンツェルの瞳に宿っていた邪悪で非道な光を。

 

「ま、まさかあいつっ!!」

「えっ如何したんだジーク!?」

 

「じゃん、けん!」

「えっまっ待て!」

「ぽん!」

 

ラプンツェルの言葉につられて出して手、フックが出したのはパー。対するラプンツェルはチョキ、それが意味するのは

 

「ま、負けたッ……?」

 

その瞬間、Mrフックの意識は途切れた。肉は抉れ骨は砕かれ一瞬で命という花は摘み取られてしまった、ラプンツェルという外道によって。ゆっくり地面に倒れ伏したフックの身体は崩れていく氷に巻き込まれて落ちていった……。

 

「キャハハハハハッハアアアア!!!運が無かったねぇ~Mrフックゥ~!!!」

「おい婆!お前は仲間まで殺すのか!?それはチェスのやり方なのか!!」

 

ギンタの怒りの言葉はラプンツェルの耳に入った、だがラプンツェルは純粋に自分を汚した言葉だとした感じなかった。婆という単語のみに反応し怒りをあらわにした。

 

「ギンタァテメェ今なんていったぁ!?」

「金髪ドリル糞婆と言ったんだ下種が金髪ドリル糞婆!!」

「っ~!!!!!」

「はっきり言ってさっきから腹が立つんだよ!!その濁声も姿も言葉も全てな!!糞婆!!」

 

ギンタを守るように立ったジークは思ったとおりの暴言を吐いた、あの女は本物の下種だ。

 

「全くじゃ、無礼極まりないわ!作法も知らん愚か者じゃ!」

「不愉快極まりないわ、あの婆」

「おまけにほんまもんのブスや」

「最悪っすね!!」

「ギンタァアアアア!!ジィィイクゥゥウウウ!!!あんたらは絶対に殺すぅううう!!!」

「うるせえ婆!!!お前なんか誰も殺させねぇぞ!!」


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