MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

14 / 58
014話

「アル、大丈夫なの?」

「ああ心配かけてごめんねベル、俺よりジークの方がおそらく重症だ」

 

サードバトル終了後、アルヴィスとジークは迅速に城の中へとかつぎ込まれ手当てを受けている、ザ・スキュラ。ダークネスARMの中でも上位に位置する程の力を秘めているARMでありその呪いは非常に強力で肉体を確実に蝕む程の呪いを対象に与える。アルヴィスよりもジークに集中していたダークネスの呪いは酷いダメージを与えていた。

 

「いやぁ参った………身体が、動かないな……」

「無理しすぎですぞジーク殿!あれほど強力なダークネスを受けながらそのうえ新たにダークネスの呪いを受けるなど正気の沙汰ではありません!!」

「そうだよお!!ジークさんの身体が今どうなってるのか知ってるの!!?」

「そんなに、酷いのか?」

 

エドとスノウにお説教されながら自分の体の事を聞くジーク、いったい自分の身体がどうなっているのか全く解らない。戦いの最中は必死だった為か体のことなど気にしている余裕など一切なく戦っていたが、温厚な二人が激怒するほど酷いものなのか?

 

「よぉく聞いてください!筋肉は断裂寸前、神経はズタズタ、加えて極度の疲労が体に蓄積しております!!アルヴィス殿は比較的症状は軽くホーリーARMを使用すれば明日には全快するでしょうがジーク殿は別です!!!暫し安静にしてくだされ!!」

「無茶しすぎやでジーク、特に最後の一撃。あれが自分の体を大きく傷つけた原因のひとつやで?」

「矢張り、か………」

 

自分が横になっているベットに立て掛けられているバルムンクを見ながらそういうジーク、正直宝具の発動でここまで体にガタが来ているのは何となく予想が付いていた。ダークネスの呪いで身体がボロボロになっている所に魔力を強引に捻出し発動した為身体には予想以上の負担がかかっていた。

 

英霊を象徴する力宝具、未だ届かぬ英霊の領域。自分がやった事は適切に行う事が出来る実力の範囲を超えていた、その為身体には大きな負担が掛かってしまった。

 

「わ、解っててあんな物ぶっ放したんすか!?」

「まあな。アルヴィスと約束をしたかな、全力を出すと。どうだアルヴィス、俺は、お前の信用に足る人物だったか?」

「―――ああ、勿論だ。そしてチェスを倒すにはお前の力が必要だとわかった、宜しく頼むよジーク」

「任せろ」

 

漸く仲間と認められて嬉しそうにするジークだが不意にドロシーの表情が視界に入ってしまった、悲しげな悲しそうな表情が。彼女に声を掛けようとした時、扉が開いた。

 

「すみません、少し宜しいでしょうか?」

「あれポズンじゃねぇか、如何したんだ?」

 

入ってきたのは審判役をしているポズンであった、いったい何のようなのだろうか。

 

「申し訳ありません、ウォーゲームは三日おきに一日お休みが与えられると言ったのですが明日もゲームを行う事になってしまいました」

「えええ!!?なんでっすっか!?」

「可笑しいじゃねぇかよ!!?」

「そ、それが本日のあの白熱した試合を見た事でチェスの駒の方々が早く戦わせろと……」

 

どうやらジークとアルヴィスの試合が相手を炊きつけてしまったのか明日も試合を行う事になってしまった。本人はやってしまったと落ち込むのであった。

 

「し、しかし了承してくださるのであればこちらの"ホーリーARM 恵みの女神"を与えるという言葉を預かっております」

「恵みの、女神?」

「はい、これは高い回復力をもったARMです。これを使えばジークの怪我も次の試合までには完治している事でしょう」

「おおおっ!それってかなりよくねぇか!?」

「良い条件だ、受けるべきだ」

「そうやな、明日は自分らが頑張れば良いだけや」

「わかった明日も戦うぞポズン!」

「了解しました、ではこちらを」

 

キャプテンのギンタが了承の意を示すとポズンはホーリーARMを手渡し、明日の対戦人数とフィールドを伝えて去っていく。

 

「よぉし、んじゃ……(ッ!)ドロシー治療してやってくれ」

「えっわ、私!?」

「ああ頼んだぞ!んじゃみんな行こうぜ~」

「エ、ギ、ギンタ!?」

「(あ~成程)せやな、怪我人の所に何時までも居座るもんやないないくで~皆~」

 

何かを察したのか次々と部屋を出て行くメンバー、気づけば部屋の中はドロシーとジークの二人っきりとなっていた。何処か気まずい雰囲気な二人、顔を合わせられずに沈黙してしまう。

 

「そ、それじゃあ治療する……ね?」

「あ、ああ頼むよ」

 

漸く口を開いた二人、そっちベットに座りながらARMを起動させるドロシー。恵みの女神からは暖かな光がジークへと降り注いでいき身体の各部を癒していく、ボロボロだった筋肉が修復されていき神経が再構築されていく。身体に溜まっていた疲労も取れていくのが実感でき非常に気持ちいい。

 

「ど、どうかな?」

「ああ、すっげえ気持ち良いよ……」

「よ、良かったねジーくん」

 

治療され、後は安静にするだけとなった身体。がその後の会話が全く続かない、互いに口を紡ぎこの後如何したものかと困っている。が何時までもこのような状況にして置く訳にはおかないとジークが口を開く。

 

「すまない」

「ふぇっ!?ど、如何したのいきなり謝っちゃって!?」

「否……俺も全部察せっている訳ではないが俺が悪いのは理解しているつもりだ、すまない……」

 

身体がARMによって治っているとはいえ身体を起こせない為横になったまま首を曲げて謝るジーク、そんな彼を見てドロシーは思わずため息をついてしまった。どうしてここまで消沈している原因が自分にあると知りながらその詳しい理由を知らないというのだから呆れてしまった。

 

「………(ゲシッ)」

「ぐぼっ!!?」

「ハァッ全くもう、これじゃあ怒るに怒れないじゃない」

「そ、そう言いながら鳩尾に肘を入れないd「何か言ったかな~?私の愛しい愛しいジ~くん♪」ナンデモアリマセンハイ………」

 

鳩尾をぐりぐりと攻撃しながらもジークを見るドロシー、自分と彼は先日正式に付き合ったばかり、月明かりに照らされる中誓い合った。

 

"絶対に傍にいる"

 

だが今日の試合、ドロシーは酷く心配になった。ダークネスARMによる呪いを受けボロボロになった身体であれだけの技を放ったジークの事が、彼女にとってウォーゲームの勝敗など如何でも良かった。それ以上に重要なのはジークの安否である。

 

「ド、ドロシー?」

「………」

 

本当に彼が死んでしまうのではないかとまで心配してしまった、だから彼が生きて戻ってきてくれた事は嬉しいが同時に複雑であった。彼は身体がボロボロになるのを知ってあの一撃を放った、下手をすれば身体が崩壊していたかもしれないのに。

 

「ねぇジーくん、約束して。もう、無茶をしないって……」

「ドロシー」

「お願い………もう、私を不安にさせないで………」

 

横になったジークに抱きつくドロシー、そして漸くジークはドロシーの気持ちを理解した。彼女には自分を心配する感情しかない、昨日の夜にあんな事を言っておきながら自分の行動は自分から死に向かっているような物だと。

 

「(……俺は、どんな大馬鹿者、だな)」

「ジーくん………」

「ああ、すまなかったドロシーって俺本当に謝ってばかりだな」

「本当だよ、少しは謝罪以外の言葉を聞かせてよ」

 

甘えるような声に答えるように未だに動かす事が辛い腕を必死に動かしドロシーの身体を抱きしめる、愚かな自分、せっかく彼女と相思相愛になれたというのに彼女を事を全く考えれていない事に嫌気が差す。

 

「これからは自分の事を考え、そして君の事を考えて戦うよ」

「本当……?」

「ああ本当だ」

「それじゃあキスして」

 

いきなりの要求にきょとんとするジーク。

 

「それ、関係あるのか?嫌というわけではないんだが」

「言葉だけの約束なら誰でも出来るよ?でも、キスは気持ちを伝える行為でもあるのよ?」

「成程ね、なら誓うよ。俺はもう君を悲しませる無茶はしない」

「調子、いいんだから」

 

唇を重ねる二人、不思議と互いの気持ちが解っていく間隔が広がっていく。そのまま二人は抱き合い合ったままお互いの気持ちを共有したまま、共に時間を過ごすのであった。

 

 

暫くした後、こっそり様子を見に来たバッボはベットの上ですやすやと寝息を立てて眠っている二人をみて優しい笑みを浮かべてからそっとをへやを出た。

 

「あの女は正直気に入らんがジークが選んだのならば間違いはないじゃろう。幸せにな」

 

 

 

翌日

 

「さて本日のバトルに参加するのは一体何方で?」

 

ポズンの言葉で前に出たのはギンタ、ジャック、スノウ、アルヴィス。だがサイコロによって決められた人数は5人、これでは4人だけだ。

 

「あのメンバーか」

「4人だ、ドロシーやナナシ、ジークは出ないのか?」

「おい如何したんだよ二人とも」

「今日の試合は5人っすよ!?」

「あたし~今日は乗り気じゃないのよね~♪それにジーくんの付き添いもしたいしね」

 

そういうドロシーの隣には瓦礫を椅子代わりにし、手元には杖を置いているジークの姿がある。既にかなり動ける身体にはなっている物の念には念を入れてという奴である。

 

「んじゃナナシは?」

「自分はこの子とイチャイチャする日や!」

「昨日頑張れば良いとか言ったの誰だよ……」

「オホン!ジーク心配はないわよ、出ておいで5人目!!」

 

ベルが指差す先には城の入り口があった、その扉がゆっくりと開いていき暗闇の置くから一人の男が歩いて来ていた。そこから姿を現したのは

 

「おはよう諸君!」

「あれは、修練の門に無理矢理ぶち込んでくれたおっさんか……!」

 

どうやら少なからず無理矢理半年も修行させられた事を根に持っているらしいジーク、そして特例としてウォーゲームのテストを受けていないアランの参加が認められた。

 

「おうジーク、昨日は随分大暴れしたらしいな」

「まあな、少しはしゃいだせいでこの様だ。まあドロシーが傍に居てくれるから役得だと思うさ」

「おうおう惚気てくれるじゃねぇか。まあいい、お前は今回はゆっくり休んでやがれ」

「見学させて貰うよ、負けたらこの前に修練の門に落としてくれた礼を含めて10倍で返すからな」

 

一応ジークの幻想大剣・天魔失墜の威力を(エド)の中から見ていた身としては割としゃれにならない事を言われている。改めて本気で勝とうと思いつつウォーゲームの舞台となるフィールドに行くアンダータに包まれるのであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。