MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士   作:魔女っ子アルト姫

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010話

「ファーストステージ終了!ギンタの勝ちよりメルの勝利!!」

 

わあああっと沸きあがる歓声、視界に写っている巨大かつ禍々しいガーディアン。ギンタがバッボに嵌められた三つ目のマジックストーンで創造した力"ガーゴイル"。凄まじい魔力・精神力を必要とし、下手をすると精神が壊されてしまうとまで評されるほど強力なガーディアン。

 

「ガーゴイル、流石に俺もあれと真正面からやりあうのは勘弁だな」

 

ドロシーと並びながら思わず本音を溢すジーク、流石の彼もあそこまで強大なガーディアンと正面とぶつかり合いのはきついらしい。まあ大抵のARM使いはガーディアンARMと正面からARMも使わずに戦う事自体愚策な為、ジークの異常さが伺える発言でもある。

 

「では次回のフィールドと人数を発表いたします」

 

落とされて赤と青のサイコロ、地面に落ち数回回転した後停止した賽の目。示された数字は3と3。

 

「次回の対戦も3体3!場所は砂漠フィールドとなります!」

 

砂漠での戦いになる次回のウォーゲーム、連絡を終えたポズンは消えて行きロドキンファミリーも消えている。だが城から静寂が消える事はなく勝利という喜びに身を預けていた。

 

「いやぁあんちゃんも本当に強いなぁ!」

「ああ!ARMも使わずにチェスの駒の一人をぶっ潰しちまうんだからよ!」

「何処まで強いんだよ本当に!」

 

ジークの周りにも人たちが集いその強さを褒め称える、ジークはその言葉を素直に受け取り大した相手ではないとだけ答えた。実際相手はそれ程の実力者ではなかった、魔力も小さく正しく先兵というに相応しい敵だった。

 

「これからの戦い、もっと厳しくなるな……」

 

 

 

 

―――その夜、メルのメンバーは客間にて食事を取っている、ジークも食べる側に居り城の料理人の食事を楽しんでいた。

 

「いやぁ中々美味いのぉ。こういう料理も悪ぉないわ」

「そうだね、私はこういう形式の方が多かったかな」

「そういえばスノウは姫だったわね。身近にいるおかげかその実感は薄いけど」

「いやぁそんな事ないやろ、スノウちゃんの雰囲気はお姫様そのままや。損なわれてはないで?」

 

食事を交えての談笑、美味しい食事もあるからかみなの口は滑らかに動いており雑談に花が咲く。特にナナシは女子陣を口説くかのような言葉回しをしている。そんな時ジークはふとナナシのステータスが気になった。ナナシと出会ってからチェスの駒のせいでばたばたしていたからかすっかり忘れていた。

 

 

【対象】:『ナナシ(偽名)』

【種族】:『人間』

【属性】:『混沌・善』

【精神状態】:リラックス

【ステータス】 筋力D+ 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運C

 

「(偽名、だと?)」

 

ステータスに表示された偽名の表示、ナナシという名前は偽名。っというよりも寧ろ"名無し"なのかもしれない。ある意味での皮肉、何か過去にあったのかは知らないが詮索するのはやめておくとしよう。偽名だと解っても彼は善人であり信用できる。それに

 

「なんやジーク、自分の顔になんかついとるんか?」

「否特には、肉料理のソースがついてるぐらいだ」

「ついとるやないか!?もっと早く教えてぇな!!」

 

大慌てで付いているソースを拭き取るナナシ、それを見て笑いが出る一同。

 

「ったくもう……ほなお返しにジーク、お前さんなんか話題提供せいや」

「何だそれは」

「ようは自分の事に着いてなんか話せっちゅうことや。なんか思い出したことないんか?」

「………」

 

記憶、そう言えばドロシーに初めて会った時に使ったのが記憶がないという物だった。実の所自分の記憶は何一つ欠けていない、生前の物から今に至るまで全て覚えている。さて、何処まで話していいものか………。

 

「そうだな……思い出した事は、あるな」

「本当に!?ジーくん何か思い出したの!?」

「ああ……だが俺が何者かの本質が解る記憶じゃないけどな」

「かまへんかまへん!話してぇや!」

 

期待するような視線を向けてくるナナシ、それに続くように視線を向けてくるスノウ、エド、ドロシー、アルヴィスとベル。肩を竦め口を開くジーク

 

「思い出したのは、たった一つ。俺が、竜と戦っていた事だけだ」

「竜……?」

「竜って御伽噺に出てくる竜?」

 

肯定するジーク。

 

「エド、竜って確か大昔に居たんだよね?」

「はい姫様。その昔、このメルヘヴンにも竜がいたという記述が残っております。しかし謎の騎士に倒された、それがこのメルヘヴンに残る伝説の一つである"竜殺しの騎士"でございます」

 

異世界でも似たような伝説が残っている事に思わず笑ってしまうジーク、そこだけはある意味世界共通なのかもしれない。

 

「っと言う事はもしかしてジーくんってその、伝説の竜殺しの騎士の末裔とかじゃないの?ほら聞いた事ない?先祖の記憶を持った人間がいるって話」」

「先祖帰りに良く似た現象であるあれか」

「ふぅむ十二分に有り得ますな」

 

なんだが話が勝手に進んでいく為かジークは若干心の中で汗をかくのであった。このままでいいのだろかと、まあ嘘は言って無いわけである意味いい方向に進んでいるのだが。

 

「それにホラジーくんが私とこの竜のARMを手に入れる時もかなりウロロン怯えてたじゃない?きっとそうなのよ!」

「ウロロン……ああウロボロスでいいのかなドロシー?」

「そうそれ!」

 

そんなこんなで夜は更けていき、ウォーゲーム二日目が始まろうとしていた。


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