18巻も出たし、がんばるぞい。
頭に左手を当てて相手を待つ。うん、風邪みたいなもんだ。大丈夫だろう。右腕は無い。ゴーグルさんに斬り落とされた。そのトリオン漏れは治まった。片腕でも引き金は引けるわけだし狙撃が出来ないわけじゃないけど、狙いが定まらないとイメージもしにくくなる。だから狙撃はなし。アステロイドとスコーピオンで近接寄りで戦うしかないか。後は最後の切り札だけだ。まず問題ないだろうけど……あれ、俺は何のために戦って……いや、何で戦ってるんだろう。
その相手が見えてきた。こちらにかけてくるのは3人。並んで走ってやってくる。次第にカトリンだけ二宮さんたちの後ろに配置するようになる。……カトリン? 二宮さん? どれがその人だ? 後ろに配置してるのがカトリンって人か……。じゃあスーツ姿のどっちが二宮さんだ? ん、何だ? 何かがサイドエフェクトにより違和感を伝えてくる。何の違和感かまでは分からない。サイドエフェクト? 何だ? 俺は何をしたらいいんだ?
『ネコ君? 来てるわよ?』
「え? あ、はい」
蓮さんの通信に意識を戻される。何だ? 今の感覚。一瞬、記憶がないぞ。二宮さんたちが見える位置に来たと思ったら、次の瞬間、中距離の射程まで瞬間移動したかのようだった。蓮さんの反応を聞く限りだと、おれ自身が止まっていたんだろう。何日か前にも小夜にオペレーターをしてもらった時に同じ様な事があった気がする。
ふー……最後まで気を引き締めてネイバーやらないとな。おっしゃ。
「玄界人だ! 玄界人だろう!? なぁ玄界人だろお前ら! トリオン器官置いてけぇ!!」
九州の端っこにいる妖怪の様な台詞を吐きながら、俺はグラスホッパーで一気に距離を詰める。二宮さんのハウンドが放たれるが、当たる弾は一つもない。その直後の
「(ぐぅっ……あれぇ? 蓮さん、痛覚設定弄ってませんよね?)」
『もちろん、弄ってないけど……大丈夫?』
「(何とか……)」
更に追撃するように飛来してくるのはハウンドの雨。いや、豪雨だ。二宮さんの攻撃を見るのは大規模侵攻以来だけど、かなりのトリオン能力なのだろう威力が空から降り注ぐ。
(香取、行け)
(今のチビネコなら仕留められるっ)
(コイツは1度復帰できる設定だ。忘れるな)
(すみません……行きます)
何かを通信でやり取りしたのか、カトリンがグラスホッパーで距離を取る。いや、ゴール地点に向かった様だ。牽制でハンドガンを放ってきたが、個人戦ほどの圧力も感じない程度だった。寧ろ、二宮さんの放つ
「ボロボロだな音無……」
「そっちこそ、残りは2人だけじゃないですか……それに、ずるいっすねー、威力調節し始めて……」
「接近戦が苦手なら、その距離に貼り付けにするだけでいい。詰みだ」
「……それはどうですかね?」
仮に、今ここでシールドを解除したら当たってもギリギリ生かされる威力。
それはそうだ。倒されてもトリオン体が解除されて生身は残るんだから、それ以上は望まなかったのかもしれない。ベイルアウトもかなりトリオンを消費するらしいからな。そんなトリオン消費するぐらいなら戦闘に使うわって考え方なのかもしれない。
それはさておき、間に合うか? ギリギリだ……駄目だったら仕方ないか。俺は最後の切り札を使う事にした。
『最後の使う?』
「(丁度それお願いしようとしてたところです)」
残りの8ptを注ぎ込んで巨大なゲートが開き、鯨の様なトリオン兵が上空に現れる。
「ちっ……イルガーと言ったか。(香取、急げ。爆破に巻き込まれるなよ)」
カトリンは……あ、駄目だ。バッグワーム使ってる。あっちから狙撃とか攻撃の意思がないならどこにいるかサイドエフェクトに引っ掛からないっぽい。……しゃーない。全て巻き込んで爆発してもらおう。
◇ ◇ ◇
―――チビネコの話は2日前に華に聞いた。スカウトでの入隊、しかもスカウトしたのは加古さんだという噂。その時点でまずイラッとした。
入隊式の時点でB級確定の実力があったらしいけど、サイドエフェクト発現の予兆が関係してるらしくB級には上がらずに開発室での研究モルモットネコとして飼われていて、少ししたらB級に、そしてこの前の大規模侵攻直前にA級に入ったらしい。またイラッとした。何でB級で活動もそこそこなのにA級に上がるのか。元S級の迅さんや上層部が絡んでるって噂もあったらしいけど、最大の理由はその規格外と言われるサイドエフェクトなのだろうと、次第に周囲に伝わって行ったらしい。それはネコのランク戦を見たのと、私自身も個人戦をやって身を持って知ってる。アレは確かにヤバイ。
心臓・首・頭。生身の人間と変わらないその急所を、切られたり刺されたり撃たれたりすればトリオン体でも即ベイルアウトだ。それ以外ならトリオン漏れだけで済む。でもネコ相手だとそれが即死になる。掠り傷でベイルアウト? 国近先輩に教えてもらった事のあるスペランカーさんも真っ青な即死判定だ。
だから、対人型ネイバー役と言う点では音無ネコは適任だったのは間違いないだろう。アイツのサイドエフェクトは凶悪だ。
始まって見れば、曲がる弾丸の狙撃。手や足に当たったのに即ベイルアウト。分かってはいたけど、多く居た仲間が加速度的に減っていくのは精神的に苦痛だった。
トリオン兵にも意識を削がれた。そもそもチビネコを人型ネイバーと思い切れる訳も無く、ラッドの能力を易々と使う姿にも少なからず驚きを覚えた。
……私は諦めた。二宮さんに囮になると進言したが却下された。そればかりか抑え役を二宮隊でやるから私に目標地点に行けと言い出される。そりゃグラスホッパーは持ってるけど……。「もう無理だ」って言いたかったが仕方ない。私は目標地点へ抜け出す事を了承した。
そして、私は今グラスホッパーで跳んでは駆け、跳んでは駆けを繰り返している。逃げる事が勝ちに繋がる事が納得は行かないが、それしか私には選択肢がない。
『葉子、ゲート発生。爆撃型の大型トリオン兵』
「それ以外も来る?」
『どれだけのトリオン兵が用意されてるかは分からない。目標地点にこの前の新型が居る可能性も否定できない』
大規模侵攻で確認された新型のトリオン兵。そいつに何人かのC級隊員は攫われた可能性がある。B級の諏訪さんも一度は捕獲されたと聞いた。B級でも数人で当たらないと倒せないトリオン兵に私が一人で……? 戦った事がないから勝てるなんて言えない。負けるとも思えないけど、でも不安要素なのは間違いない。
『―――でも、このタイミングで爆撃型、それもすぐに自爆させようとしてる事を考えると、トリオン兵の用意はこれで最後という可能性がある』
(香取、急げ。爆破に巻き込まれるなよ)
「は? 自爆? 爆破!?」
私は華と二宮さんの通信に少し振り向くと木々を薙ぎ倒さんと落下運動を始めている巨大なそれを見た。
『そう、出現直後から落下運動を始めてる』
「最初から言ってよ!」
『逃げぇ逃げぇ香取ちゃん!』
『あんのネコネイバー、やる事えげつないわぁ……』
『あれって大規模侵攻の時に本部に特攻自爆した奴ですよね?』
『まぁネコもウチの隠岐と同じ様に可愛い子に何しても許されるタイプやな』
『いやいや、俺は違いますから』
「うっさい!!」
『来るで、気を付けぇ』
「っ!」
背後を一瞬の光が照らしてくる。直後、全身に衝撃が来る。グラスホッパーによる加速で肺を撫でられる程度に殺された衝撃に気色悪さを感じながら足は止めない。その後から来るのは土埃。それすらも次のグラスホッパーで抜け出すと、眼の前には何事もなかったかのような景色が広がり続けている。
『っしゃあ!!』
『後はゴールだけやんな!』
生駒隊の声がうるさい。
それ以上に、トリオン体で聞こえるはずの無い心音が、
うるさくて心地よかった気がした。
◇ ◇ ◇
トリオンによる爆弾を落下させる爆撃行動を取らずに直ぐさま自爆モードへと移行されたイルガーはその巨大な身体に詰まった莫大なトリオンを見事に散らせた。二宮もベイルアウトし、ネコ・サイレントもその姿を消していた。
しかし、全てが焼け野原で周囲の森林も吹き飛んだ光景の中で一つだけ少々色を変えただけの人工物が存在していた。
ネコ屋敷である。まるで焦げた猫の様に少しばかりの煙を上げているが、建物自体が燃えているわけでもなく、どこかが崩れ落ちた様子もない。王の城と呼ぶに相応しい堅城である。
猫の口が開く。いや、ネコ屋敷の玄関が開かれた。
「あー……ベイルアウト出来るようになったけど、試合終了にならないってことは……そういう事ですかね?」
『えぇ、残念だけどね』
ネコ・サイレントの身体は穴だらけだった。片腕は無く、片足もスコーピオンで立てている状態だ。
二宮は最後まで自分の役割に徹しており、あくまでもネコを身動き出来ないようにハウンドを止めなかった。ネコはイルガーの自爆と同時に二宮のハウンドの雨をシールドで防ぐのを止め、無理矢理に掻い潜り、グラスホッパーでネコ屋敷へと逃げ込んだ。穴だらけになったのはハウンドと最後に仕留めに掛かられた時のアステロイドだ。供給機関や伝達系統をやられなかったのはただの偶然だ。
ネコはその場にネコ座りをする。
「あー強かったなー……」
『ふふふ、お疲れ様』
転送が始まる。試合終了である。
ネコ隊作戦室に戻り、トリオン体を解除する。
「蓮さんありがとうございました」
「お疲れ様ネコくん、更新されてるわよ」
何が? と思ってパソコン画面を覗き込むと、物語の続きが更新されているようだ。
◇ ◇ ◇
―――王様はひとりぼっちでした。戦いに敗れ、傷ついてもひとりぼっちです。
玄界人はネコ・サイレントとの戦いに勝利し、都市に向かいました。しかし、そこには廃墟となった光景しか残っていませんでした。玄界人が交渉に来る随分前、既に『コデアル』は他国により侵略され滅ぼされていたのです。
―――王様は本当にひとりぼっちになりました。
ネコ・サイレントは玄界人と接触する前に既に滅ぼされた自国を見て涙した事もありますが、ただ協力するのはプライドが邪魔したのでしょう。ネコ・サイレントは傷付いた身体を立ち上がらせ玄界人が乗ってきた遠征艇に向かい謝罪します。
ここにコデアルと玄界の和解は成り、コデアルはゆっくりとマザートリガーの終焉を迎え崩れ落ちていきました。名も無き国の王様は玄界へと移住し、ボーダーという組織でひっそりと暮らすことになりました。
―――王様はもう一人ではありません。
◇ ◇ ◇
……もう滅んでたのかコデアル。何とも言えない悲しさや空しさを感じる物語である。じゃあここから復讐の物語が始まる。何てこともなさそうな感じだし、物語としてはボーダーと協力していく事になるんだろうな……。
蓮さんが俺の頭を撫でてくるが、俺元から日本人でボーダー側だからね? 感化されすぎだよ? あくまでも架空の物語だからね?
あー……頭がずきずきとする。やっぱこのサイドエフェクトやべーわ。親になんて言おうか、ボーダーのお仕事どうしようか、学校は……。何とか続けたいなー。
ココアでも飲もうかと立ち上がり、ふと、鼻の下に違和感を感じて、指でなぞると粘着質な赤黒い液体が付いていた。あ、鼻血だわコレ。ティッシュを取ろうとした次の瞬間、その鼻血が勢いよく噴出した。
「―――っ!? ―――っ!?」
……蓮さんが取り乱す様に何かを言っている。それにしては何も聞こえない。あ、この鼻血ですか? 気にしな……あれ、蓮さん何で横に……ん、俺が横になってるのか? どんどん視界が暗くなって視線も下がっていく……あ、倒れてるわコレ。
人生二度目の病院での入院生活……かと思ったら、ボーダー本部内の医務室のベッドだった。横には蓮さんが俺の手を握っており、二宮さんとカトリンが立っているのが見えた。二宮さんと目が合うが、二宮さん達は何も言わずに俺を見下ろしている。んだよー? 目が合ってるんだから何か言ってよ……
(あの、起きましたよ? ってあれ?)
口が動かない事に気が付いた。と言うか蓮さんに右手を握られてるはずなのに、その俺の右手がある。……あ……ゆ、幽体離脱だ!? あ、死んだわ!! 音無ネコ死にました! 享年16歳!! 動物の猫だったらよく生きたほうだけど、ロックスターも驚愕な早死にだわこれ!!
「いつまで寝てんのコイツ……」
「……」
おい、死人になんてこと言うんだよカトリン。あ、まだ死んだって気付いてないのか……。あ、それなら蓮さんが気付きそうなものだけど……。
「二宮さん買ぅて来ました。っと……あ」
「「あ」」
ゴーグルさんがココアを買って来てくれたようだが、ゴーグルさんが入り口のほんの少しの段差にこけてココア缶は宙を舞う。それを見てカトリンと二宮さんが声を揃えて見送る事しかできず、ココア缶は俺の幽体の頭部に当たり、実体に押し戻すように落下し、俺の実体の頭にHitした。
「あいた!! あ、戻った!? 戻ったぁ!!」
「目が覚めたのね良かった」
「アンタ、服血だらけじゃない……」
「うー、あー、頭痛い」
「まことにもうしわけない」
ゴーグルさん改め生駒さんがその場に正座して謝ってくるがテヘペロ感が滲み出ている。まぁ寧ろ俺が感謝する側なんですけどね。
「いえいえ、さっき死んでたんですけど、ココアのおかげで生き返りました」
「アンタ何言ってんの?」
何言ってって、死んでたんだってば。まぁそれも生駒さんのおかげで命拾いした。
「身体は大丈夫か?」
「あ、はい。何とか……いや、分かんないです」
「どっちよ」
二宮さんの声に反応するが、大丈夫かと言われると良く分からない。死んだわけだし……まぁ夢だったのかもしれないけど。そんなあやふやな答えを出すとイラついたカトリンが声を上げる。こ、怖いだろー止めろよー。
さて、俺は帰ろうとしたのだが、蓮さんに止められた。このまま本部に泊まって明日の朝一番に精密検査を予約され、空き部屋に押し込まれた。空き部屋も鬼怒田さんと城戸さんから許可を貰ったようだが、そもそも俺がいつでも使っていいように『音無ネコ用』として部屋が存在してたらしい。
「音無の精密検査!? 明日の朝一番で入れてやる! 部屋!? 部屋なら用意してあるわい! 全く使ってないようだがな!!」
あぁ、そんな鬼怒田さんが容易に目に浮かぶ。城戸さんの方はもっと淡々としてそうな気がするけど……。
晩御飯は食堂で、生駒隊、二宮隊、カトリンと華さんでご飯を食べ親睦を深め、解散すると俺は頭痛薬を飲んで部屋に向かった。部屋に付けばすぐにシャワーを浴びてすぐにベッドについた。
今日は疲れたというよりも、やばかった。この前の病院送りと同じ感じだった。病院送りになって真っ先に思うのは両親の事だ。また倒れたとかバレたら日浦ちゃんと同じ様に引越しとかでボーダー辞めさせられる気がする。
もし、ボーダー辞めさせられたら何も出来ない。俺には何も残らない気がする。あー駄目だ駄目だ。考えると嫌な事ばかり浮かんでくる。考えた所為か胃も痛くなってきた……いや、これは胃が痛いって言うよりも……辻先輩の弧月に腹を刺された時の痛みだろうか……。何でトリオン体の痛みを実体が引き摺るんだ? ……はぁ、明日の精密検査で分かるといいなぁ。
まるで身体測定の様なモノから始まり、寝かされて何かをぺたぺたと貼り付けられたり、機械の前で呼吸を止めたりと一通り終わると、俺は宛がわれた部屋でボーっとしていた。
夕方頃になりメールが入り、俺は会議室に向かう。そこには上層部の人たちが待ち構えていた。嫌な予感しかしない。何で医療担当さんじゃなくて上層部だ? ボーダーをクビになることも視野に入れつつ、俺は頭を下げつつ入室した。
「音無、全てではないが大まかな検査結果が出た」
忍田さんが口を開くが、その顔はいつもよりも少し暗さが見えた気がした。やっぱ駄目なやつだろコレ。
「しばらくの間、音無には広報の仕事と開発での仕事を任せたい」
「……もう、俺って戦えないんですか?」
俺はいらないですか? 俺はどこに行けばいいですか? 俺は……。
「音無君、正直に言おう」
「城戸さん!」
「―――君の身体はいつ倒れてもおかしくない状態だ。サイドエフェクトの影響なのかまでは判断が出来ない状態だが、少しばかりの痛みや苦痛で済んでいるレベルだ―――」
忍田さんが止めようとしたが、城戸さんはそのまま続けた。少しばかり理解が追いつくのが遅れるが、噛み砕いて言えば、俺の内臓とかはボロボロらしい。それが自分では理解しきれていないが、病院送りになれば長くて数ヶ月は出られないぐらいらしい。
しかし、幸いにも俺にはトリオン能力がある。開発室で出来る処置をしてもらって、その他はサイドエフェクトを使わない戦闘以外の仕事を回すとのことだ。
「右も左も分かりませんが、よろしくお願いします」
俺の居場所はまだボーダーにあるらしい。
「さて、音無君。迅からはある程度聞いているが、そろそろ君の口から正解を聞きたいところだがどうだろうか?」
「正解、と言いますと?」
「サイドエフェクトの事だ。お前が持っているサイドエフェクトは相手に影響を与えるモノの様だが、本当のところどうなのだ?」
あー……遂に言われたよ。まぁもうバレバレ一歩手前だしいいだろう。
「あー、俺のは『騙しのサイドエフェクト』です。自分への嘘とか隠し事も何となく分かる感じで、狙撃ポジションとかカメレオン、バッグワームとかの奇襲とかも位置が何となく分かります。アステロイドを曲げたり、開発室での活動でもよくやってた内部破壊もサイドエフェクトによるモノです」
「そうか、概ね想定通りだ。では鬼怒田開発室長」
「音無、開発室に行くぞ。改めてお前のトリオン能力を測定させてもらう。サイドエフェクト抜きでな」
トリオン能力を測定して開発室を出た。
溜息を吐き、家に帰ろうと思っていると、同じく帰ろうとしていたクマちゃん先輩に出会った。
「ぁー……えっと、大丈夫?」
「どもっす。しばらく戦闘出来ないらしいですけど、多分大丈夫です」
「そっか……こっちは、ごめんね。色々としてもらったのに昨日負けちゃって」
「太刀川さんも褒めてましたよ」
「……ネコも倒れたって聞いたからさ。試合は見てたんだけど、完全試合惜しかったね」
「いやーネイバー役は大変でしたー。でもほらトリオン兵も使ってましたから楽でしたけどね」
そして、クマちゃん先輩は俺の頭に手を置いた。チョップとかではなく撫でるような感じだ。労ってくれているのだろうか。
「なら、もうちょっと楽が出来た顔してなよ。顔色悪いよ?」
「……今は色々痛くて難しいっす。あ、お腹空いたしご飯行きません? 負けた者同士で」
「それやだなー……ま、いっか。どこ行くの? 倒れたなら消化に良い物がいい?」
「あ、助かります」
「じゃあうどんね。私、肉うどん」
「かけうどんに天ぷらのせよー。エビとちくわにイカ」
「イカは消化に良くないでしょ」
「え、そうなんですか」
他愛の無い会話をしながら、俺達は慰め合う様にうどん屋さんへ向かうのだった。
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誤字脱字報告等々、随時受け付けております。
誤字脱字報告くださる方。毎度ありがとうございます。
◆九州の端っこにいるらしき妖怪
前話、生駒さんと相対した時はコデアルの剣だったのに妖怪に成り下がるネコ。これは蓮さんや宇佐美との設定の話合いをした時のを混ぜすぎた結果である。
※実際(?)は『妖怪首置いてけ』という島津家の30歳
◇速攻自爆イルガー君(8pt)
もうちょっと空飛ばせてくれても良かったのに……なんて思ってるかもしれない。
◆カトリンと生駒隊
仲が良いかは知らないけど、咄嗟に「うっさい」とか言ってそう。イケメンでも隠岐には靡かず、とりまるが好みというカトリン。
◇1回死んだネコ
本当に死んだのか、ネコの夢だったのかは誰も知らない。でも、ネコ自身は生駒に助けられたと思っている。夢だった可能性もあるので強くは伝えておらず冗談だと思われている。
◆しばらく戦闘出来なくなったネコ
広報の仕事の一環として、ネコはアイドルになります(嘘)