ねこだまし!   作:絡操武者

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沢山の方のお気に入り登録もいただきまして、565件になりました。「もうすぐ500件か~」等と思っていたらもう600件が見えそうな勢いで驚きました。これからもよろしくお願いします。




23 ネコクラスター

 今回のゲート発生は『警戒区域外にいるから安全』というわけではない。ボーダー隊員がいない? いや、隊員なら大勢いる。しかし安全とは言えない。以前に出現していたイレギュラーゲートのような緊迫感? それの比じゃないのは目に見えて明らかだった。ゲートの発生数は30を超え、40を超えと、事前情報では聞いていたが、それ以上の大規模なネイバーの侵攻が目の前に広がっていく。

 警戒区域で人が住んでいない廃墟の街並みも更に破壊され、いつの間にか仕掛けられていたトリオンのトラップやミサイルランチャーが地面から生えてはトリオン兵を粉砕しているが、トリオンには限りがある。それを知ってか知らずか、トリオン兵は無尽蔵かのようにゲートから現れ続ける。

 俺はネコ耳フードを外して走り続ける。グラスホッパーやテレポーターは多用出来ない。いつまで続くかも分からないこの侵略行為の街中を走り回るならトリオンが惜しいからだ。そして、様々な破壊活動をほとんど無視してオペレートのままに駆け抜ける。動き回るトリオン兵を無視していいのかと心底不安になる光景が背後で作られていくのだが、命令では仕方がない。せめて確実に届き、尚且つ、走りながらでも落とせる範囲でトリオン兵をアステロイドで撃ち抜いて行く。

 このエリアを無視しているのは近くの隊員が間に合うからだ。俺の今のところの行動目的は間に合いそうにない地点へ行き少しの足止め。近くの隊員が合流できるタイミングで離脱。この繰り返しだ。忍田さんが指揮を執ってるらしいのだが、先ずは隊員の合流を最優先にし、その後に戦線を押し戻す事にしているとの事。

 途中、カーキ色の隊服が俺を飛び越すように現れた。諏訪隊である。

 

「よぉ!いつの間にか服が変わってんな! とりあえず、ここは任せて行け!」

「あ! 諏訪さん死なないでねー」

 

「縁起でもねーこと言うんじゃねーよ!?」

「ネコも頑張れよ!」

「おー! 日佐人もなー!」

 

 諏訪さんはショットガンでトリオン兵を吹っ飛ばしていき現着報告をする。俺はそれを確認しただけでここのエリアは大丈夫だと安堵して足に力を込めるのだった。

 

 

 

 今回の大規模侵攻において『角つき』の人型ネイバーがいるかもしれないとの事だった。角があればトリオン兵なんて比べ物にならないほどトリオン能力が優れているらしい。角は2色。白か黒だ。黒が黒トリガーを使う化け物らしい。風刃持ってる迅さんと考えれば怖さは薄れるが、角つきって完全に鬼じゃないか。

 ネイバーはいくつもの世界があるらしい。遊真がいた世界や、トリオン兵を送ってきている世界。これは今回の大規模侵攻を起こした世界の奴らと同じだと思うが、襲ってくる世界や、平和主義な世界もあるらしい。

 その中でも今回の大規模侵攻で攻めてきているネイバーによっては角つきがいない場合もあるらしいが、俺はそっち側である事を切に願う。わざわざ強い奴に来てもらわなくてもいいし、寧ろお断りである。

 

『―――ネコ君~、次の角を左に入ってー』

「了解です」

 

 そんな中、俺は一人かと言うとそうではなかった。心強い味方として、太刀川隊のオペレーターである国近柚宇さんが一時的に空いていた事もあり、俺のオペレートをしてくれていた。柚宇さんの指示の下、走り回っている。最短ルートで案内してくれているらしい。

 しかしね~、A級1位の隊のオペレーターさんが空いてるって太刀川さんは何してんだよ? とやんわりと聞いたところ、太刀川さんは正月用に買っておいた切り餅の残りを食べて、のんびり過ごしているらしい。正解は越○製菓ってか? ふざけんな出て来いNo.1アタッカー。準備中? 40秒で支度しな!!

 

 俺はモールモッドをメインに一撃で屠っていく。今回はサイドエフェクトも全開である。どこでもいい。掠るだけでもいい。アステロイドも曲げまくってやる。少しだけでも傷つけられるなら、内部破壊で一撃で仕留めてやる。

 

「―――え? 新型のトリオン兵?」

『そう、呼称は【ラービット】だってさー。ログデータ送るねー』

 

 しばらく疾走する事数分。柚宇さんからの情報で、『ラービット』という新型がいることを知った。サイズは3メートル強、二足歩行の人型タイプで戦闘力が高いとの情報だ。少し恐怖を煽られる情報としてはトリガー使用者を捕獲する行動を取るらしい。

 前に迅さんから聞いてた俺の未来の中に『攫われる』という内容があることから、少しだけ背筋が冷えるのを感じた。

 

『―――あ、不味いよー。諏訪さんが捕獲された(つかまった)みたい』

「げっ! やばいなぁ……あんな事言わなきゃ良かった……これからは? どうしたらいいですかね柚宇さん? 諏訪さんを助けに行ってもいいの?」

 

『んー、諏訪さんの方は風間隊が行ってるみたい。ネコ君が好き放題に動くと大変な事になりかねないから、しっかり誘導するように言われてるからねー。一番手薄なところに誘導するから安心してねー』

 

 あれ? 何で手薄なところ案内するの? 安心できるわけないじゃん。みんなと一緒に戦わせてよー。

 

「あ、迅さんは色んな状況が視えてるんでしょ? 通信できないですかね?」

『迅さんからの事前の指示でもあるんだよー。手薄になるところがネコの手も借りたいところなんだってー。それで助かる人が視えてるんだってさー』

 

 あのエリートめぇ……。俺の未来は視えないから間接的に視える未来を参考にするのは仕方ないが、手薄な危険地帯に一人だけ送るとか酷いだろ……。

 

『大丈夫、にゃんこなら出来るよー太刀川さんにも勝てるんだし、今だって一撃必殺してるじゃん』

 

 そんな伸び伸びと言われても……。仕方ないか。

 

「っと、腹から出てくるとはねー……あれが新型か。ふむ、実験台になってもらおうか」

 

 モールモッドを倒した腹の中から出てきたのは初めて見る新型らしき二足歩行型のトリオン兵だった。さきほど柚宇さんから聞いてたラービットとかいう奴だろうそれは存在感があった。

 俺はバスケットボール大ぐらいのトリオンキューブを作り出す。個人戦で緑川に放とうとして失敗した改良型。新・ネコクラスターだ。簡単に言えば、空から一気に散出して地に爆発を降り注がせるものだ。

 

 ―――【ネコクラスター】は、アステロイドキューブをメテオラと混ぜたように騙したもので、それを分割しない状態で打ち上げ、上空で待機、対象に目掛けて接近しながら落下し、ある一定の距離まで近付くと一気に拡散するように分割され、広がりながらクラスター爆弾の様に対象を包み込むものだ。

 それが緑川戦ではただ上空で待機しているだけの失敗作だった。あれがメテオラになってたかすら怪しいが、今回は成功のようだった。

 

 そのトリオンキューブはラービットの真上に上がり、ラービット目掛けて落下する。ラービットはその耳らしきものが少し動き察知したのか、回避行動を取るが、間に合わなかった。

 いきなりラービットの真上で細かくバラバラになったトリオンキューブは真下のラービットに降り注ぐ。ラービットとその周辺の地に降り注いだ細かいアステロイドキューブはメテオラの効果を持っており、細かく激しく爆発を繰り返す。

 

「―――思ってたより硬い装甲してたなぁ」

 

 俺はラービットの原型を割と留めつつ内部破壊で沈黙した姿を見下ろしながらそう口にした。そして、内部破壊されていなかった場合を考えてしみじみと思う。他の隊員だとどう倒すのだろうか? メテオラでも防御に徹されたら倒すのに時間が掛かりそうである。目玉狙いでも口を閉じるし、回避した瞬間の動きだけで判断するのもなんだけど厄介そうな感じだ。旋空弧月の先端斬りで何とかなる硬さなのだろうか? メテオラの連発もトリオンの消耗が激しい気がするな。

 何? 他の人は連係プレーで倒す? こっちは一人でやってんだよ!! 仲間に入れて欲しかったら仲間に入れろよ!!

 

『おめでと~新型撃破はにゃんこが最初だよ~』

「別に競ってませんから~。あ、回収お願いします」

 

 新型って値段設定どうなってるんだろうか? いや、新型モデルをボーダーで出してるわけじゃないから値段設定をしてるわけがない。これからするのだろう。諏訪さんを捕獲したぐらいだから高くしてもらわないと困るが……。なんだっけあのボーナスのやつ、戦功だっけ? あれにならないかなー。

 そんな事を考えていた時だった。本部の方角から爆音と大きな光が見えた。空飛ぶ爆撃型トリオン兵が本部へ体当たりで自爆したようだ。後続に3体見えている。

 爆発直後の通信が乱れる。

 

『おわっ ザザ……わわっ……ザザッ……っ!?』

「柚宇さん!? 大丈夫ですか!?」

 

『―――……ぁ~あ~、聞こえるかね~ネコ君』

「あ、大丈夫でしたか……?」

 

『こっちはなんとか大丈夫みたい。太刀川さんが出るから、ネコ君は一度本部に向かってきてだってさ~。おっ? ……ザザッ―――』

 

 通信を聞きながら本部を見上げると、爆撃型トリオン兵3体の内1体は本部の砲撃で撃ち落とされ、もう一体は何かに斬り落された。斬り落としたのが太刀川さんという事で良いのだろうか? あんだけデカイの斬るとか、本当に太刀川さんの弧月は凄いな……。残りの1体は本部に当たって再び大きな光を生み出し爆音を出すが、遠目に見る限り、本部は原形を留めている。トリオンの壁が少し変色しているが、徐々に戻っていくのも見える。

 再度通信は乱れるが、今度の柚宇さんは慌てた様子を見せなかった。

 

「あー聞こえますか? 太刀川さんが新型の相手するんですかね?」

『うん、そうみたい。私も太刀川さん達のサポートに戻らなきゃいけないからここまでだね~』

 

「あー、ありがとうございました」

『うむうむ~よきにはからえ~』

 

「あ、柚宇さん」

『んぅ? なにかね~?』

 

「ラービット追加で4体片付けたんで回収お願いします。中身は分かりませんけど、外見は綺麗に残ってますんで」

『oh……』

 

 

 

本部に辿り着くまでの間にモールモッドに新型のラービット、空飛んでる小型のトリオン兵や大型のトリオン兵を倒してカウントを忘れずに本部のオペレーターさんに連絡をしておく。\チャリン\チャリン\チャリーン\と、金稼ぎを忘れてはいけない。

 市民が不安がってるのに金稼ぎとか最低と考えていた事もあるし、今でも思う時はあるが、ボーダーにおいて、『金稼ぎ』=『市民の安全』に繋がる事が多い事も確かである。

 トリオン兵を倒さないなら市民にも危険が及ぶ。なら倒した方がいい。つまり、金を稼いだ方が良いに決まっている。

 主目的がどっちかと言われたらどちらとでも答えられるのだ。上辺だけで言うなら市民の安全のためだ。クラスメート相手でも、近所の人にでもだ。嘘ではない。でも個人的な気持ちとしては金稼ぎの面もしっかりと根付いている。

 うん、やっぱり両方だ。平和維持と実益を兼ねたモノだ。母親にこの前この悩みというか、相談をしたところ『ネコに小判ね』と言われて笑われたが、流石は親とでも言うのか。『それが普通だよ』と言ってくれた。

 大人の階段登る。ネコはまだネコのままさ。つまり、別に大人の汚さに染まったわけではないらしい。『まぁ、お金に執着し過ぎな気もするけど……』とも言われたが……。

 

 でも……だって……自分に出来る事が見つかったんだ。今ではやりたい事になってきてるんだ。一人だけの隊だけど、仲良くしてくれる人たちが沢山いるんだ。

 

 

 

 さて、本部に辿り着いた。俺は何故か開発室に呼ばれているらしいので行ってみることにするが、出迎えてくれたのは今さっき暇になったという諏訪隊のオペレーターおサノ先輩だった。最新情報によると、敵は角つきの人型が出てきたらしい。報告を合わせると黒トリガー持ちは最低でも2人は確認されているとの事。きびしーなー。でも未来が視えるエリートが慌ててない以上はまだまだ大丈夫だ。こっちはこっちで出来る事をやろう。

 おサノ先輩はこの後から俺のオペレートをしてくれるらしい。おサノ先輩が暇になったと言うのは、堤さんと日佐人は一時的に本部に退避してきており、隊長の諏訪さんがトリオンキューブになってしまっているからだった。

 

「―――なるほど、じゃあよろしくお願いします。……あの、諏訪さんは大丈夫なんですか?」

「んー、トリオンキューブになって帰って来たけど、諏訪さんの反応が出続けてて、開発室で調べてるらしいんだよねー……残ってる二人も落ち込み気味だし……」

 

 おサノ先輩の口調はいつも通りだけど、どこか大人し気というかおサノ先輩も落ち込んでいる様な感じである。まぁ『これが諏訪さんです』なんてキューブで帰ってきたら色々と考えてしまうだろう。そりゃあ最悪の結果まで。

 

「ネコ君には開発室に行ってもらって、その後に少しだけ休憩してもらって、北の方を見てもらうって話なんだけど、今の内に回線(チャンネル)合わせしとこうか」

「はい―――じゃあ、開発室行ってきます」

 

「あぁ、そうだ。これあげる。いつも飲んでるもんね」

「あ、どうもです」

 

 冷たいココアを貰ったぞ! ホットも良いけど、動き回ったりした後は冷たいのも良いよねー。……開発室で飲んでも大丈夫だろうか?

 

 俺は開発室を覗いてみる。そこにはチーフ技術者(エンジニア)寺島(てらしま) 雷蔵(らいぞう)さんもいるが、テーブルの上にあるトリオンキューブを囲んでパソコン弄ったり相談してる姿があるだけで、諏訪さんはキューブのままだった。……って、あれ? 別のテーブルにキューブが2つある。

 

「あのー……呼ばれて来たんですけどー、ココアOKですかね?」

「あー来てくれたかネコ。こっち座って、ココアは……飲みながらでもいいか」

 

 雷蔵さんに言われるがままに椅子に座ると、パソコンから変な機材に繋がり伸びるケーブルが技術スタッフさんによって俺の横に用意される。ケーブルの先にはトリガーホルダーが用意されていてそれを握れとのこと。

 片手でココアを、片手で言われたトリガーホルダーを握ると次の指示が来た。目の前には2つのトリオンキューブが用意されていた。

 

「こっちのトリオンキューブを見てくれ、何か分かるか?」

「え……んーただのトリオンキューブですかね? アステロイドとか何も設定してないやつ?」

 

「どうしてそう思った?」

「え、何となくですけど、あと、皆さんが向けて来る視線に何となく違和感を感じてるんですけどなんですかね?」

 

「悪いけど少し我慢してくれ、じゃあ諏訪はこっちって事で良いか?」

「え、諏訪さんのキューブはあっちのテーブルの奴ですよね? あ、もしかして、それを隠してたんですか?」

 

 いきなり違和感が散ったので隠していたのかと判断した。質問する雷蔵さん以外のスタッフさんが驚きの声を上げる。なんだろう? トリオンキューブを7つ集めると願いが叶って諏訪さんが復活するのだろうか? 『残りのドラゴ……キューブは後5つ、急げぇ~迅~』とか触覚の生えた界○様みたいな人が言ってるのだろうか?

 

「試して悪いな。そのサイドエフェクトが使えるかも知れないって室長が言うから呼んだんだ」

「鬼怒田さんが?」

 

 何で知ってるんだろう? いや、ザックリとした能力の検討はつくのか? 『騙し』とは気付かないまでも、トリオンに作用させるサイドエフェクトってところまでは気付いてるのかもしれない。

 というか、雷蔵さんの質問にも誤魔化す事無く答えてしまった。これはこれで問題だ。嘘を吐けるようにならなくては……いや、嘘吐きになる必要はないか。利用されない人間になればいいのだ。……い、今は利用されてるんじゃないし良いよな? 手伝っているだけだ。人助けである。

 握らされているトリガーホルダーは諏訪さんのキューブに影響を与えるらしいが、失敗はしないらしい。正しい解き方をしないと傷も付かないというところまでは分かっている状況らしい。拉致する技術も凄いもんなんだなと感心してしまう。

 

 トリガーホルダーからキューブへと送られる情報はデータとしても蓄積され、他のキューブ化されてしまっている隊員にも役立てられるらしい。

 俺は諏訪さんのトリオンキューブを見つめる。どう解けば正解か? そう考えるのは技術者側である。俺はサイドエフェクトを使ってイメージするだけである。戻れ戻れと念じるだけだ。

 

「キューブが人型に実体化していきます!!」

「―――成功か。ログは取れたな?」

「はいっ! 他のキューブ化した隊員にも転用できます!」

「こちら開発室。隊員キューブ化の解除に成功しました。解除された諏訪隊員は現在意識を失っていますが、問題はなさそうです」

 

 気を失っている諏訪さんがトリオン体のまま実体化し、それを脇のベッドに運ぶと、雷蔵さんから感謝の言葉を貰う。

 

「助かったよネコ。こっちだけでも出来ただろうけど、時間短縮になった」

「いえいえ、なーんか少し疲れましたけどねー。あ、今のところのログって見れますかね?」

「じゃあ、これどうぞ」

 

 俺は女性スタッフさんからタブレット端末を貸してもらい各地のログデータを確認し始めた。

 ―――嵐山隊から木虎だけ離れ三雲君と共にC級のフォローに回ったが、新型のラービットを1体倒したものの、後から送り込まれてきた複数体の前に木虎が捕獲される。そこには玉狛の木崎さん達が向かい対応中。徐々に基地へと退避しているようだ。

 ―――各地域で人型の角つきネイバーの登場があり、風間さんがベイルアウト。風間隊は一度退避しているようだ。風間さんはこの戦いからは脱落って事か。相手は黒トリガーで液体化する能力に見えるがそれだけではなさそうだと風間さんも報告を上げているようだ。

 ―――東さんたちは空を飛ぶ人型と交戦中。米屋先輩・出水先輩・緑川の3人が合流したようだ。他にも荒船隊などのB級隊員も合同で当たっているようだ。

 ―――太刀川さんが本部から少しずつ離れ始め、新型を対応中。黒トリガーと戦いたい顔してるな。本当に戦闘バカである。

 

 その他の地域でも奮戦しているようだが、ベイルアウトしている隊員もいるし、捕獲されている隊員もいるようだ。人型のネイバーが4人か……。まだいるだろうなー……と、ログを見終わると諏訪隊の堤さんと日佐人が駆け込んできた。

 

「諏訪さんが戻ったって本当ですか!?」

「お、堤さんに日佐人だ。お疲れーっす」

「ネコがどうして!?」

『ネコ君がキューブ化解除に一役買ってるんだってさ』

 

「あっ諏訪さん寝てる!?」

「気絶してるからもう少し待ってくれ、そろそろ目が覚めるんじゃないかな」

「よかった……あれ? 何か諏訪さんからココアの匂いがする!?」

『え!? 何それ私も嗅ぎたい!』

 

「へぇ、ココア飲みながら治すと匂いも付くのか」

「あーごめんなさい。でも和むから良いですかね?」

 

 寺島さんが冷静にそう分析するが、俺は謝る事しかできなかった。まぁ、タバコの臭いよりは良いだろう。

 

 さて、ココア成分も入ったし、今ならヤル気も満ちている。楽なとこに行きたいが、それは叶わないだろう。それは仕方ないと理解している。俺も太刀川さんと同じ様に新型を相手したいな。倒し方が分かっていると楽だ。

 

<侵入警報! 侵入警報!>

 

 基地内全体に響き渡る警報と基地内放送。

 

「侵入警報? 初めて聞いたな……侵入者ってことか」

『音無! 今は開発室か!?』

 

「あ、忍田さんですか? はいそうですけど?」

『お前が一番近い! 時間稼ぎを頼む! 諏訪隊も連携してくれ!』

 

 えー……。時間稼ぎって、倒せない相手って事か?

 

「「了解!」」

「んぁ? ……ここは? 何だこの甘ったるい匂いは……?」

『あ、諏訪さん起きた。今の諏訪さんはココアの匂いがするんだってさ~』

 

「何でだよ!?」

『はいはい侵入者の対応だよー』

 

 日佐人と堤さんが俺に視線を向けてくる。俺の所為だけど俺を見ないでくれ! でもさ、おサノ先輩も口調はいつもどおりになり、日佐人も堤さんも表情が和らいでいる。これも諏訪ココアのおかげだろう。

 俺は忍田さんの指示に従い、目覚めた諏訪さんに説明しながら動き出す諏訪隊と共に侵入者らしきMAPに表示された赤い点を目指して走るのだった。

 

 




感想、評価、誤字脱字の報告、意見や質問など、胃に優しく溶けて早く効くものを随時受け付けております。

◆安心してください。ネコ耳フード外してますよ。
次回か次々回辺りで被る事になると思いますが……今はここまで。大規模侵攻を次回で終わらせられるか、次々回まで行くかで変わります。

◇『ネコ君』と『にゃんこ』
大体の人は主人公のことをネコ君と呼びますが。国近柚宇さんは両方で呼びます。彼女なりの使い分けがあるようです。

◆ネコクラスター
クラスター爆弾の様に、対象の上空でキューブが分割されて飛来するメテオラ。最初からメテオラ放出よりも相手の虚を突く攻撃方法です。貫通力も多少あるため、アステロイド成分も配合しています。尚、作り手のネコは合成弾だと気付いてない模様。

◇さらっと追加でラービットを倒すネコ。
合わせてラービットを5体倒して単独トップの成績ですね。内部はズタズタなので研究材料としては使えないでしょうけど。他の人が綺麗に倒してくれる事でしょう。

◆ネコに小判。
『猫に小判』ではなく『ネコに小判』なので、諺とは違い、ちゃんとお金の価値は分かってます。お金に執着しがちですが、市民の安全の事や仲間の事をちゃんと考えてます。ある意味、様々なストレス等の気の紛らわせ方としても金稼ぎは良い働きをしているかもしれません。

◇ココア香る諏訪さん。
絶対に飲食禁止の場だと思うんですけどね~。まぁネコですから。
あ、別に『諏訪ココア太郎』なんて呼ばれませんと思いますですはい。

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