ねこだまし!   作:絡操武者

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18 選択ミスをしたネコ

 その日の俺は3件の予定を抱えていた。まず嵐山隊に行って、久しぶりに開発室にも行き、忍田さんのところにも行かなくてはならなかった。

 嵐山隊には作戦室に来るように言われていた。しかし、防衛任務に該当するレンタルではなく、本当に御呼ばれしているだけだ。特に内容も知らされずに、遊真の黒トリガー奪取の件の報告書関連だろうかと思っていた。それ以外に特に思いつかない。

 開発室にはトリガーのデータ収集をするとメールがあり、鬼怒田さんに会いに行く事になっている。迅さんが『風刃』を手放した事によって一応の収束はしたものの、派閥争いが起きてから今日まで行くことは無かったから少し怖い気もする。

 忍田本部長のところには次のレンタル先を聞きに行くのだが、メールでの連絡かシフト表でも出してくれれば楽なのではないだろうかと思ってしまう。

 

 さて、いつもの様に早めに本部に到着したので、休憩所でココアを買って飲んでから嵐山隊の作戦室に向かおうとしていた。何故いつもココアなのかって? そりゃココアパワーがとても大事だからだよ。誰かから怒られてもある程度の恐怖心ならばココアが祓ってくれる気がする。ココアすげー。さすがココアだ、木虎のパンチでもなんともないぜ……実際やられたらビクッとするけどね。

 途中で俺よりも少しだけ(・・・・)(ここ重要だからもう一度)俺よりも少しだけ大きい風間さんが休憩所前を通ったので挨拶をする。この前、迅さんというクッションを置いて話したが、風間さんはクールな人だ。身長が控えめな点がクールすぎるが、風間さんぐらいの歳になった時には俺の身長は伸びてくれてるだろうか?

 

「音無」

「うぇ!? あ、はい? なんでしょう?」

 

 あっぶねー考えが読まれたかと思った。小さいとか思ってごめんなさい。俺の方が小さかったですごめんなさい。

 

「おまえはどこかの隊に所属する気はあるのか?」

「いやー無いですね。誘いがあっても今のところ不自由は無いのでお断りしてます」

 

 だから誘わないでね! という予防線を張らせてもらうが、風間さんはまだ俺の情報はほとんど見ておらず現状としては自分の隊に誘う気は無いらしい。用件は加古隊からの誘いに関してだった。迅さんと加古さんから話を聞いているらしく風間さんは少しだけ教えてくれた。風間さん曰く、加古さんが俺を誘ったのは迅さんからの提案だったらしい。『絶対に無理だと思うけど誘ってみてくれませんか?』という加古さんへの依頼だ。何故にそんな事を? とも思ったが、そこら辺は明かして無いらしい。加古さんも迅さんのサイドエフェクトを知ってるらしく、二つ返事で受けたらしい。理由は『絶対に無理だと思うけど』というのが一つだった。

 加古隊はイニシャル縛りをしているチームで、部隊章(エンブレム)にも蝶に『K』が入っている。KakoにKuroeか……なるほど。オペレーターさんは知らないけどその人もイニシャルKらしい。では何故Kに関係ない俺を誘った? そこで一つの答えが『絶対に無理だと思う』というK以外が入ることは無いと分かっていたかららしい。

 で、もう一つあるらしいのだが、『無理だと思うけど……』というかなり薄い可能性に賭けてみたかったらしい。加古さんもその状況になった際の事を考え、エンブレムの改定を考えたり、無理矢理『K』に繋がりのあるようにする拡大解釈を持ち込もうとしたとの事。

 つまり、加古隊に新たな戦力が欲しいのは確かなことらしい。俺である必要は無いと思うけどね。

 

「んーよく分からないですけど、それなんですか? 俺にKなんて繋がらないと思うんですけど? 動物の猫はCatだし、音無もKなんて付かないですよ? 拡大解釈ってどこまでですかね?」

「ちょうど暇潰しに読んでいた本が『ケット・シー』だったらしい」

 

 ケット・シーって猫の妖精だっけ? それは色々と書かれている本があるが、そんな中に『King of cats』という民話があるらしい。加古さんはそれを読んで、もし俺が入ることになった場合はその本を参考に、『King』と俺の通り名を固定化しようとしてたらしい。おいおい、俺が高貴なのは分かるが、妖精とか王様なんて柄じゃないぜ。それに馬鹿にされてる気もするしね! 尚のことお断りだよ! ネコって名前で猫と連想するのはやめて欲しい。幼少期からずっと続く悪しき慣習である。まぁ、仕方ないとも思ってしまうけど……。それを拡大解釈して猫どころか妖精で王様ともなれば行きすぎだ。

 と、そんなところに加古さんも休憩所に登場した。

 

「あ、元凶の加古さんだ」

「あら、ネコ君じゃない。風間さんと一緒って微笑ましいわね」

「おい」

 

 風間さんは少し怒った目を加古さんに向ける。……少し怖い。風間さんって笑ってるとこ見たこと無いからなー。

 加古さんは俺たちの話を聞くと、仮に俺が加古隊に入るなんて状況は深く考えてなかったと言った。隊へのお誘いはほとんどリップサービスだったようだ。そう言われると少し寂しい気もするが、入る気はないからまぁ良いだろう。その辺はお互い様だ。

 でも、入るというなら真剣に考えてくれるらしい。A級でやっていけるレベルなのか、エンブレムをどう変えるか、K縛りを続けるか等……。うん、俺が入ることでエンブレム変えるとかの大騒ぎは申し訳ないし、改めてその気は無いことを伝えた。本当にKingにしようとか言ってそうで怖いしね。

 

「でも、迅さんは何で俺を誘うように言ったんですかね? 無理だって視えてたんですよね?」

「迅くんは、ネコ君がどこかの隊に所属する未来はほとんど無くて、仮に所属する未来があっても加古隊(ウチ)じゃないって言ってたわね」

 

 迅さん何考えてんだろ? 最近では俺のサイドエフェクトのせいで俺の未来は見え辛いとか言ってたけど、俺によく関わってきてる気がするのは気のせいだろうか? 他の人にも同じぐらい関わってるならいいけど、初めて会った時に『ネコ君は凄いな……』って言ってたのは何が視えたんだろうか?

 

「―――多分だけど」

「はい?」

 

「ネコ君に出会いの場を増やしてるのかもしれないわね」

「なるほどな。音無を育てる気か」

 

 何? 勝手に理解し合わないで下さいよ。俺にはさっぱり分からんです。育てるってなんですか? 俺はポケモンでも観葉植物でもねーですよ。

 

「普通に考えてみてもB級に上がりたての子をA級に放り込んだり、ましてや広報の仕事中の嵐山隊に入れたりしないわよ」

「はぁ……まぁ他の人はそんなことしてませんもんね」

 

 加古さんが分析する限りで言えば、レンタルと言う名目で忍田本部長に指示されて色んなところに行ってるけど、基本骨子は迅さんが組み立てたのかも知れない。そして、色んな隊で経験を積ませてあらゆる面で育てているかも知れないとのこと。この前の遊真の黒トリガーを巡っての攻防戦も俺の顔を売るために防衛戦に誘ったのだろうか? ……だとしても広報の仕事は必要か?

 まぁ何にしても掌で踊らされてる感じがして嫌だ。嫌だけど別に良いかとも思ってしまう。何か起こるわけでもないし行動に移すのが面倒くさい。別に困ってるわけでもないし、給料が入らないわけでもない。

 

「まぁ、俺は今の感じが割と好きなんでどっかの隊に入ることは無いかもしれませんけど、イニシャルKでお探しなら玉狛に新しく入った奴で面白そうなのがいますよ? 一言で言うなら普通じゃないのが、引き抜きは難しいと思いますけどね」

「あら、ネコ君が言うなら少し玉狛に注目してみようかしら」

 

 うん、普通じゃない。だってネイバーだもんな遊真は。まぁ勧誘されても組んだばかりの三雲君の隊から抜けることは無いと思うし注目してもらう分には良いだろう。

 結局は俺の事は現状維持って事で加古さん風間さんと別れて嵐山隊の作戦室に向かった。

 

 

 

「失礼しまーす。今日の菓子折りは『ぐんまもん饅頭』ですよー」

 

 嵐山さんの「いつも悪いな」なんて言葉を貰うが、2回目だし気にしないでほしい。というか、前回の三輪先輩や出水先輩をまともに抑えられなかったから怒られる可能性があると思い、ゆるキャラが描かれた包み紙や饅頭で少しでも和んで欲しいという願いを込めて買ってきた菓子折りだ。

 何でも『群馬』と『熊本』のゆるキャラが合体したと言う設定で作られたコラボ商品で、『大怪獣ぐんまもん』というシリーズはお子様に人気らしい。知らんけど。

 

 さて、前回の黒トリガー争奪戦についてだが、嵐山さんが言うには予想外にも俺は良くやったらしい。そんな褒められて照れている中、「そもそもB級がA級遠征部隊を相手に活躍できるなんて思ってませんよ」何て腕を組んだ木虎が言って来る。なんだよーおまえはベイルアウトしただろー、あ、やめて! 熱いお茶をなみなみと注がないで! 熱くて飲めないから! 表面張力まで!? 持つことも許されない!?

 

 さて、呼ばれたのは遠征部隊との戦闘行動についてでは無いらしい。報告書に関しては嵐山隊で忍田本部長に提出済みで、良い意味で俺は必要なかったらしい。うん何となく分ってた。報告書とかは隊の人がやってくれて楽が出来るから単独行動すきー。

 

「じゃあ今日はなんですか?」

「コレが出来たんだよー」

 

 饅頭を2つ食べた綾辻さんが3つ目を取る前に何かの雑誌を持ってきた。付箋が貼られているページを捲ると、嵐山隊がデカデカと載っていた。背景を見る限り、本部前で撮った写真だ。あーなるほど、これはこの前の嵐山隊レンタル時の広報の仕事の雑誌か。

 俺はそれに気付くと、佐鳥がニヤニヤしてる事に気が付く。

 

「んだよー」

「次のページ見てみ?」

 

 まだ記事内容を見てないのだが、言われるままに饅頭を食べながらページを捲る。

 

「んー? …………っ!? ふぐぅっ!?」

 

 饅頭詰まった! お茶熱いし溢しちゃうから持って飲めねぇ! そこにすかさず冷たいお茶を出してくれたとっきーマジ神。息を整えてお礼を言いつつ、記事に視界を戻す。

 嵐山隊のインタビュー記事が前のページから続き、写真もチラホラと載っている。そこまでは良い。それは正常だ。しかし……その左下の記事ぃッ!! なんだその小さい記事で載ってるやつは!?

 

【今回のボーダー隊員】『音無音鼓くん』

『成長著しい期待の新人ボーダー隊員。愛称はネコ。現在はB級隊員だが、嵐山隊も認めるほどの―――』

 って、やめろーーー!?

 綾辻さんや嵐山さんは褒めてくれるが、俺の記事を作るなー! 俺は広報担当になった覚えはないし、なんだこの写真は!? 写真撮影したやつじゃないし、角度的に絶対に隠し撮りじゃないですかー本当にやだー! あ、俺と嵐山隊の集合写真もある!? 使って良いのコレ!?

 佐鳥はニヤニヤしたままこの雑誌の前回や前々回のモノを見せに来た。そこには【今回のボーダー】等というコーナーはなく、今回だけのモノらしい。嵐山さんは「良いじゃないか。根付さんもチェックした上で発行されるんだし」なんて爽やか笑顔で言ってる。汚い! 大人って汚い!!

 記事には爆撃型の空飛ぶでかい鯨のようなトリオン兵が三門市上空に現れた時のコメントも少し載っていて、市民の救出に貢献したと書いてある。違うよー。木虎がアレと戦ってるって言ってたから三雲君と避難誘導とかやってただけだよー。ボーダーなら誰でも出来る簡単なお仕事だったんだよー。

 

 ……しばらくして、少し落ち着くと諦めている自分がいた。絶望しきった視界の中で綾辻さんや木虎の写真に目が行く。木虎なんて取材前や撮影前にも身嗜みを気にしていたプロ根性があり、やはり写真写りは良い。綾辻さんも綺麗だ。アイドルとかの写真を集めてたりはしないが、している人の気持ちも薄らと分かる気がする。

 そんな写真を今回の雑誌だけではなく、遡って確認していく俺の目には力が戻ってきていた。綾辻さん綺麗。木虎可愛い。綾辻さん綺麗。木虎可愛い。綾辻さん綺麗―――。

 

「―――木虎可愛い」

「なっ!」

「言うねーネコ」

 

 佐鳥が俺の肩を組んでくるが、ニヤニヤ顔が腹立つので払い除ける。がるるるるー。

 しかし、間違いなく木虎は可愛い。だって写真写り完璧すぎでしょう。うん可愛いよこれは。アイドルだと騒がれても不思議じゃない。中身とかは残念かもしれないけど……。ふと、顔を上げると鬼気迫る顔の木虎に弁慶キックを貰った。やめて! 青あざ出来ちゃうから! せめてトリオン体にならせて!

 

 

 

 雑誌のこと以外は世間話だけだった嵐山隊を後にして俺は開発室に向かう。鬼怒田さんにも呼ばれてるからだ。久々に呼ばれたが、前回上層部の会議室で怒られてるから怒られはしないだろう。迅さんのおかげだ。

 

「貴様! 勝手にトリガーを弄ったな!!」

 

 ―――怒られた。そういえば怒りを吐き出させる前に迅さんが宥めた気がする。消化不良で更にトリガーも勝手に設定変えたから怒っているようだ。

 

「い、いやぁ最適化といいますか、アイビスもイーグレットも使い辛いなーって思って……あ、それから俺のアレってサイドエフェクトで間違いなさそうだったので……その、研究も……」

「なぁにぃ~~?」

 

 あぁ怖い。目の下のクマが鬼怒田さんの怖さを引き立てている。鬼怒田さんの身長がその怖さを抑えてくれている。小さいって凄い。などと自分のことを棚に上げている場合じゃない。

 いや、でもそうなんですよ。鬼怒田さんに伝えてなかったけど、サイドエフェクトで間違いなさそうなのだ。だからこれ以上研究しても無意味なのである。それを伝えると更に怒られた。だって言う暇なかったんだもん……。

 

「だって鬼怒田さん黒トリガー強奪賛成派だったじゃないですかー……」

「むぅ……いつサイドエフェクトだと分ったんだ……?」

 

 えーと、そうだと思ったのはラッド一斉駆除の後に迅さんに視えたモノを少し教えてもらって……あれ? もしかして何のサイドエフェクトか分らないだけで、サイドエフェクトだとは分ってた……な。うん、分ってたぞ確か。騙しだと判明したのは玉狛に行った時か? その直後だかで木戸司令派VS忍田本部長派と玉狛派での争いになったから……。

 

「何をだまっとるか! そんなに前なのか! 何故言わなかった!」

「あ、違います。派閥争いに入った時だったので……その、言い辛くて」

 

 嘘は言ってない。サイドエフェクトの内容が明確に分ったのは最近だ。だから嘘は言ってないのだが、鬼怒田さんもそれを言われては何も言えないようだ。こちらも申し訳ない気持ちがある。そんな少し気まずい空気を破ったのは一人の来訪者だった。

 

「あぁ、こちらでしたか室長」

「柏木か、何だ?」

 

 どこかで見た顔だ。開発室のデザイナー部門の人だったっけか? 俺に関わりの無い人だから挨拶ぐらいでしか面識はないが、男の人だけど肩に付くぐらいの長髪でメガネの人。柏木さんって言うのか。

 

「このライフルの銃口部位を言われた仕様にしてみましたけど、形状テストに回す前に一度室長に通すように言われたんで持って来ました」

「ライフルの銃口? ……なっ!? わ、分かった! お、音無! また呼ぶ事もあるかも知れんが、もう帰っていいぞ!」

「え? あ、はい。失礼しました」

 

 鬼怒田さんは柏木さんに渡されたデザインらしき書面を見ると慌て始めた。俺はとりあえず言われるままに帰る事にした。

 

(―――馬鹿モノ! 何故本人がいるところに持ってくる!?)

(え? あぁ、今のがネコ君だったんですか。いつも挨拶してくれて良い子ですよね)

 

(まったく……もう一つの頼んであるデザインはどうだ?)

(2つほどサンプルを用意しましたが、本人の意向は確認しないんですか? 折角この場に居たのに)

 

(迅が言っていたが、音無は既存の隊には所属しない可能性が高いからな。念の為に用意しておく必要がある)

(まぁ、もう少しデザインを細かく弄りたいと思いますけど、参考に出来ればいいんですが、前に言ってた特殊能力かサイドエフェクトが有るとか言ってたのは変化ありましたか?)

 

(サイドエフェクトで間違いなさそうだ。こっちで調べておこう)

(よろしくお願いします)

 

 ふむ、ドア越しに最初の怒りの音だけは少しだけ聞こえてきたが、何て怒ってるかは分らなかった。その後の会話は響いてこないから緊急性の高いものでも、柏木さんが怒られているというわけでもなく、いつもの様に鬼怒田さんが声を張り上げていただけなのだろう。

 ドアの向こうから聞こえなくなった音を後にし、俺は忍田さんのところに向かうことにした。つーぎのレンタルーはどーこじゃろなー♪ っと。

 

 

 

「―――音無、しばらく防衛任務は休んでかまわない」

 

 母さん事件です。まさか突然のクビ宣告である。世に言う本職のメイドという方々はクビになる時には決まって『暇を出す』と言われている。漫画とかの知識だけど俺にも当てはまるのでは無いだろうか? しばらく休み? つまり暇を出すってこと? つまりクビじゃなかろうか? 貯金はするようにしているから少しの間は大丈夫だ。いや、三門市で暮らすのは早めに切り上げるべきだ。引越しのお金とかは大丈夫だが、学費は駄目だろう。また両親に迷惑をかけることになるが―――。

 

「お、音無……?」

「おーいネコ君? 凄く焦った顔してるけど、お給料は特別手当が出るからねー?」

「はっ!クビじゃにゃい!?」

 

 沢村さんの声に我に返ると噛んでしまった。

 防衛任務は休みだが、別の案件を頼みたいらしい。

 

 帰って来た遠征部隊(トップチーム)は早々に黒トリガー争奪の任務に当たり、その結果は失敗。遠征の疲れがなかったわけではないが、それを言い訳に出来ないのがトップチームという実力を持つ悲しいところだろう。

 任務失敗は何が原因だったのか? 黒トリガー風刃を持っていた迅さんが居たこと? 広報の仕事がなかったと仮定すれば遠征部隊入りをしていてもおかしく無い嵐山隊が玉狛と手を組んで現れたこと? 予想外の展開もあっただろう。しかし、これもまた言い訳に出来ない。迅さんは玉狛の人間だし、嵐山隊に関してはランク戦でも戦り合う仲なのだから、対応が出来てこその遠征部隊だ。黒トリガーに対抗できると想定されて選ばれたチームなのだから尚更だ。

 

「そこで、遠征部隊の中で可能性を一つずつ確認し対応できるようにしていきたいとの意見が出た」

「はぁ……嵐山隊や迅さんと合同訓練でもするんですかね?」

「それがねーネコ君と戦いたいらしいのよ」

 

「……は?」

「嵐山隊や迅の対策は既に取れていると話し、最後の問題点として音無の名前が挙がった」

 

 ―――嵐山隊への対策としては連携を取らせないように出来る限り分断させる。迅さんへは面制圧として読み切れないほどの手数で対応するという考えらしい。

 仮にもう一度あの夜を再現出来るとすれば、チーム分けを変更し、迅さんを抑える側に出水先輩が向かい、スナイパーの当真先輩を最初から嵐山隊側に持って来る。風間隊も分けて行動し、迅さんを優先して叩く。嵐山隊にはスナイパー2名態勢で動きを止めておき、迅さんが落ちた次点で一気に嵐山隊も潰すという考えらしい。

 

 しかし、問題なのが俺らしい。エリートでも無い。A級でも無い。広報担当で顔が売れてるわけでも無い。遠征部隊以外のA級チームなら俺の個人情報は流れてるらしいから知ってるだろうが、遠征部隊はネイバーの世界に旅行中で俺の情報がなかった。

 そして、『B級の小さいぼっち』という扱いなのか知らんけど、初めて見た人も当然多く、俺の力量を知りたいらしい。個人戦も片手で数えられるほどしかやって無いし、とにかくデータが無いらしい。『あの小さい奴は嵐山隊や迅と一緒に居たんだから強いんじゃね?』という誤解が生まれているようだ。

 ってバカかー。

 

「あのー……力量が知りたいって言っても、前に加古さんから聞いたんですけど、俺の情報ってA級なら見れるんですよね? それを見てもらえれば―――」

「閲覧できるのは公式の戦闘ログと、模擬戦の結果だけね。勿論それを見てからの判断らしいわ」

「音無の公式戦データは少ない。緑川にも勝ち越したようだが、3本勝負で実力は測れないと言っている。那須に負けているログを見て思うところもあるらしいが……」

 

「えーと……その活動はいつまででしょうか?」

「次のランク戦が始まる前には終わらせる予定だが、1ヶ月ぐらいと見ていいだろう。模擬戦の形式を取り、個人戦成績やポイントには影響させない様に話をしてあるが、両者共に同意するのなら個人戦を用いても構わない」

 

 突っ込んでお金の話をしてみると、イレギュラーゲートの発生しなくなった防衛任務よりも圧倒的に特別手当が良さそうだ。模擬戦だし、気楽に受けて良いのだろうか? 出水先輩が模擬戦してくれるならシューターを教わる機会もあるかもしれないし、上位グループの人たちと戦えるというのは経験値的に考えてもメリットが多そうだ。

 

「や、やってみます」

「イジメられたら言ってね!」

 

 イジメられるの!? 模擬戦とか言ってボコボコにされるの!?

 

 




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◆さすがココア、なんでもないぜ
ココアの加護を受け、ゴッグ級に守備力が上がる。気分的な問題だが精神的にも安らぎ、医学的にも様々な効果がある魔法の飲み物だが、ネコはただココアが好きなだけ。

◇加古隊からの誘い。
以前お誘いのあった加古隊。ツッコミがなかったから不安でしたが、今回のお話で説明。仮に加古隊に入るとしたらKako・Kuroe・Kingということにされそう。小さいネコが沢山いれば集まって合体してキングネコになる……なんてことは無い。

◆大怪獣ぐんまもん
群馬の『ぐんまちゃん』熊本の『くまもん』が奇跡の合体!? その名は『大怪獣ぐんまもん!!』完全に非公式で小さなお子様から大きいお友達まで大人気!! という無駄設定。饅頭の他にストラップなどもあるが、映画製作中らしい。という裏設定。

◇ネコ、雑誌で全国デビュー!?
嵐山隊も認めるほどの実力と書かれてるらしいが、全国の書店には次週並ぶ予定。クラスメートにあげた『嵐山隊との集合写真』も使われている模様。

◆何か企んでいる鬼怒田さん。
現在出来上がっているモノ。デザインサンプルのみだが、銃口部分を変更するデザイン。それとは別に2種類のデザインがあるが、こちらは何に使われるかは分らない。

◇オリジナルキャラ柏木さん(男性)
開発室デザイナー部門で働くデザイナーさん。特徴ロン毛でメガネ。今後関わるかは不明。

◆案の定トップグループと模擬戦漬けの1ヶ月をやることになるネコ
ネコにとってプラスになるかマイナスになるかは不明。ただ相手には戦闘バカが数名いる模様。

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