諏訪隊でのレンタル最終日。……だけだったらいいなぁ。
諏訪隊の作戦室で漫画読んでだらだら過ごす空気は好きだった。でもそれは初日だけで、昨日は初めての個人戦に時間を割き漫画は読んでない。今日はというと、俺は悪く言えば拉致されていた。流れとしてはこうだ。
ボーダー本部に行く。→個人戦やろうとしたら綾辻さんに見つかる。→手招きされるがままに着いて行くと嵐山隊の作戦室に連れて行かれる。→→→その結果。
パソコンデスクの席に綾辻さん、ソファーに座る俺の左に佐鳥、正面向かって左手に嵐山さん、右にとっきー、そして背後に木虎の配置だ。これでは負けられない戦いでもネコ代表は点を取れないだろう。負けてしまう戦いがここにはあった。
「な、なんでせう?」
「何怯えてんだよ?」
佐鳥が肘で突いてくるが、び、ビビッてねーし、お茶ありがとうだし。
「来てもらって悪いなネコ君。聞いてると思うが、遠征部隊がそろそろ帰ってくる」
嵐山さんが順を追って話し出す。遠征部隊は今日の昼頃に帰って来るそうだ。「どうやって帰ってくるんですか?」とか何とか話を別方向に逸らす突破口を探すが、「そんなことネコ先輩には関係ないじゃないですか」と腕組みした木虎が背後から威圧してくる。怖いよー。
でも、遠征の疲れって言うの? あるだろうし、攻めて来ても明日以降だよね? ほら、この話はまた今度に―――。
「迅が言うには遠征部隊と三輪隊が今夜、玉狛支部に向けて行動を開始するらしい」
「早い!?」
空閑遊真のブラックトリガーが欲しい城戸司令とそれに従う派閥の人達。その考えを良しとしない迅さんに忍田さんと声の掛かった嵐山隊。……と、俺。俺いるー? 絶対いらないよー。
「俺達は防衛任務で到着がギリギリになるだろう。その点ネコ君は夕方には防衛任務が終わっている予定だから遅れる事は無いだろう」
「……はい」
スケジュール調整されたのはそういうことなのか? なら嵐山隊のスケジュールを弄りなさいよ。時間稼ぎにサンドバッグになってろとでも言うのか?
「それから、昨日の個人戦のログを見させてもらったんだが、綾辻」
「はーい、ネコ君トリガー貸してー」
「え、はい」
俺はトリガーを綾辻さんに渡した。すると全員が立ち上がり綾辻さんの使っているパソコンのデスクに集まった。
「何してるんですか。来てくださいよ」
「は、はひぃ……」
木虎の声と手招きに俺も立ち上がりパソコン画面を覗き込む。
「えーと……言ってた通り無いですねー」
「ネコ君。狙撃に大事なことは何か分るか?」
「えーと、一撃で仕留めることと、見つからないことですかね?」
綾辻さんがトリガーの内容を見て“無い”と言う。何が無いのか分からないが、嵐山さんの質問にそれらしい答えを言うと「今はそれでいいだろう」と言って嵐山さんは頷いた。が、横にいる佐鳥は呆れ気味だ。何か間違った事言いました? 『今は』って事は今後は違うのか。
「そこまで分ってて、何でバッグワームがないんだよ……」
「え? あー、ランク戦とか参加することは無いだろうって思ってたから……トリオン兵には必要ないじゃん?」
「確かにトリオン兵に対してはバッグワームの有用性は低く感じるかもしれないが、トリオン兵にもこちらの場所を把握する機能はある」
え、マジで? 聞けばその通りかもしれない内容だった。トリオン兵はトリオン能力の高い相手を攻撃や捕獲対象として行動する。遊真のところのレプリカ先生もラッドのことを“トリオンを集めてゲートを開く”って言ってた気がする。すなわち、対象がどこにいるかは分かるということだ。そこでバッグワームを使って目視されない場所に位置取りできている状況でトリオン兵に気付かれないならば、レーダーに引っ掛からないバッグワームは機能してると言えるのだろう。そういう場面は結構あるらしい。
しかしだ、俺から言わせて貰えば、トリオン兵を倒す防衛任務に関してはやはりバッグワームはいらない気がする。見つかったとしても簡単に倒せると感じているからだ。それにバッグワーム入れとくぐらいなら、他の装備入れといたほうが有用な気がする。……まぁ、やんわりとではあるが注意されているのは確実なので口には出さないでおくのだが。
「ネコ先輩は、トリオン兵ぐらい余裕とか考えてますよね?」
「っ!? ま、まさかー。危険な仕事だよー? バッグワーム入れたら、他のトリガーを試す機会が減ると思ったから外してただけで―――」
「『他のトリガーを試す前にヤラれる』とは考えなかったんですよね?」
ぐぬぬ……木虎が鋭い上に厳しい。でも合ってるから何も言えない。
「まぁネコには専属で教える師匠が居ないからなー……」
そうだね。スナイパーでもアタッカーでも模擬戦はやっても、マンツーマンで指導に当たってくれる人は居ない。シューターの師匠なら欲しいけど、「それも弟子にしてください」なんて弟子入りするのも何か気恥ずかしい様な気持ちがある。良い師匠候補も見つかって無いしねー。
出来ることなら俺の理想とするような人が「弟子にならないか?」とか、「師匠にならせてください!」とか言って来てくれたらいいなーとか考えてる。この時点で弟子入りに向いていないだろう。
「ネコ君。スナイパーで行くか? 今ならシューターに変更出来るが」
「え、でも勝手に変えると鬼怒田さんに怒られるかも知れないし……」
「どうして? 使うのはネコ自身だよ」
とっきーの言葉に凄く迷う俺がいる。鬼怒田さんに怒られないだろうか? そりゃあシューターやりたいけどまともに戦えないだろうし……。
うーん、駄々を捏ねても今回の作戦に参加するのは変えられないだろう。でもって、参加するなら必要以上に足を引っ張る事はしてはいけないし、最低限動けないと意味が無い。なら、答えは決まってるな。
「スナイパー装備で行きます。綾辻さんお願いします。ライフルのアイビスとイーグレットをメインから外して、サブの
「はいはーい。すると、グラスホッパーはメイン側でいいかな?」
綾辻さんにトリガーホルダーを開けて貰い、中のチップを弄ってもらう。あまり使うことの無いライフル2挺削ったところにバッグワームとシールドを入れ、最終的にこうなった。
【メイン】ライトニング・アステロイド・グラスホッパー・シールド
【サ ブ】スコーピオン・テレポーター・バッグワーム・シールド
これで今までと違うのは、どの状況でもシールドを使えるようになったし、固い
ライトニングを展開している時はグラスホッパーが使えなくなった。緑川戦法と同じ様にグラスホッパーを使いながらスコーピオンを使えるようになった。
ライトニングとアステロイドの同時使用が出来なくなった。
……それぐらいだろうか?
今まで通りにライトニングで弧月などを受け止めながら、スコーピオンでサックリも出来る。この辺の出来る出来ないを明確にしておかないと、即ベイルアウトになるかもしれない。俺は個人戦に行ってくると言って踵を返すと木虎に首根っこ掴まれた。
「設定が終わったならトレーニングルームです。相手しますから。今日が作戦決行日ですから足手纏いは困ります」
「そうだな。慣れないトリガー設定の凡ミスでポイントを取られるのも痛いだろうし、遠征部隊にログを見られる可能性もある。ネコ君はノーマークだろうが一応な」
こうして俺は久しぶりに嵐山隊の皆に模擬戦で戦ってもらい、自分のトリガーの配置を頭と身体に叩き込んだ。ライトニングとアステロイドの同時使用不可能で詰まる所や、バッグワームの起動忘れを叩き込んでもらい、防衛任務の時間になり諏訪隊へ向かった。
諏訪隊での防衛任務も意識しながらトリオン兵を倒す。アタッカーの動きから距離を取ってシューターに、更にテレポーターで離れスナイパーに、そう動いていれば諏訪隊の面々もいつしか疑問を持っていたようだ。
「変わった動きっつーか、やっぱオールラウンダーとか目指すのか?」
「そういうわけじゃないんですけどね……強いて言うなら、生き残るため?」
『何で疑問系?』
そして防衛任務も終わり、外は夕焼け空。俺は最終日だからと諏訪さんに本部で飯を奢ってもらいお礼を言って別れた。
まだオレンジ色が残りつつも薄暗くなり始めた空。嵐山隊は防衛任務中で、数十分後に終わるだろう。俺は乗り気では無いが仕方なしと覚悟を決めて玉狛支部の方角に足を運んだ。
警戒区域で廃屋だらけの元住民の生活区域を進んでいると、見覚えのある人が現れた。実力派エリートの迅さんだ。
「お、来てくれたかネコ君」
「こんばんは、やるだけやってみますけど、本当に今日なんですか?」
「あぁ、間違いない。嵐山隊もそろそろこっちに向かってくると思うけど、ネコ君は完全に孤立することになると思うけど」
「えー……聞いて無いんですけど……」
嵐山隊はオペレーターの綾辻さんのキャパオーバーを考えればこれ以上面倒を見る隊員を増やすわけにはいかないのは分かる。迅さんは未来予知のサイドエフェクトでオペレート要らずらしい。そんで、浮いた駒の俺は完全に単独行動。オペレーターのサポートも無しとの事。覚悟決めて来たらまさかのぼっち状況に落ち込むしかない。
全く相手を知らない俺は少しばかり迅さんと話をして簡単な流れを聞く。来るのは、まずA級1位
次に2位の冬島隊。隊長さんは来るか視えて無いらしいが、来るのが確定していて厄介なのが
そして、A級3位の風間隊。スコーピオンとカメレオンを得意とする部隊で、隊長の
そんで、前々から絡みのある三輪隊の4チームが来るとのこと。主にアタッカー系は迅さんが抑えて、他は嵐山隊に任せるとの事。
「やっぱ俺いらないじゃーん。お疲れっしたー」
「いやいや、ネコ君には遊撃をお願いするよ」
「遊撃? どこでも戦いに行けってことですか?」
「まぁそういう事だな。ただ、俺の方には助けに来なくてもいい。特に『プランB』って通信を飛ばした時には近付かないで欲しい」
プランBとは? それはほぼ間違いなく起きる未来らしい。
迅さんの視る最良の結果は話し合いでの解決らしいけど、命令で来る以上あちらさんも本気でブラックトリガーを回収する気で来る。だから話し合いが無理でも次点でトリオン切れで帰らせる未来がある。そんでその更に3番目に良い未来として、ほぼ間違いなく起きる未来の『プランB』との事だ。その通信が飛んだら特に意識して迅さんから離れて戦わなきゃいけないらしい。
何故か? 迅さんの持つ黒トリガー『風刃』の力を思い知らせる必要があるからだという。(最初からそうすりゃいいじゃん)と思わないでもないが、迅さんはアタッカーを引き付けてくれるらしいし、嵐山隊の補佐だけで済むならそれに越した事は無い。シューターの出水先輩と当真先輩とやらが見れればいいか。
「!! 止まれ!」
「っと、来た様だぞネコ君」
誰かに静止を求める声が大きく響いた。少しビクッとしたのはバレて無いだろうか? そちらに眼をやればバッグワームを装備している集団が居た。なるほど、MAPに映らずに近づけるわけだ。って違う! 嵐山隊は!? まだ来てないよ!? ……あ、あれか? 生贄にされたか? 嘘つかれたのか!? いや、違和感はなかった……サイドエフェクトじゃないという当初の問題に逆戻りか!? 俺はとりあえず迅さんの後ろに隠れることにした。あ、首根っこ掴まれて戻された。
「迅……!!」
「なるほどそう来るか……そっちの小さいのは見た事が無いな」
あ、あの黒髪の目つき悪いのは視たことがある。迅さんに教えてもらったところ、あれが三輪隊の隊長、
「太刀川さん久しぶり、みんなお揃いでどちらまで?」
なるほど、先頭の顎鬚のモッサリヘアーが太刀川さんか。アタッカーNo.1ねー……。で、あのリーゼントが当真さん、小さいのが年上の風間さん。なるほど説明してもらって特徴と合致する人が多い。大体の名前と使用トリガーが分るぞ。
この人たちの目的は黒トリガーの奪取。迅さんは後輩隊員に手を出さないで欲しいと言うが、太刀川さんは言った。1月8日の正式入隊日を迎えるまでは、ボーダー隊員ではなくただの
で、結局迅さんの説得は失敗。風間さんが力で押し切ろうとこちらを説得しようとしてくる。言ってる事がどっちも正しく聞こえて困る。俺を悩ませるな。
「あくまで抵抗を選ぶか……お前も知ってるだろうが、遠征部隊に選ばれるのは黒トリガーに対抗できると判断された部隊だけだ―――」
はい、ここで簡単な算数の時間だ。黒トリガーに対抗できる部隊が相手に3チームいて、こっちに黒トリガーは迅さん一人。……あ、嵐山隊ー助けてー!! まだ防衛任務終わらないのぉ!? 話が違うじゃん! はよー!! はよー助けに―――あ、MAPに新しい反応。
「嵐山隊現着した、忍田本部長の命により玉狛支部に加勢する!」
「嵐山……!」
「嵐山隊……!?」
「忍田本部長派と手を組んだのか……!」
「きゃー! 嵐山さーん! こっち向いてー! 助けてー!」
「遅くなったな迅、ネコ君」
「いいタイミングだ嵐山、助かるぜ」
「本当に助かりました! もしかして生贄にされたかと―――!」
「ネコ先輩うるさいですよ!」
「何だか情緒不安定だね。大丈夫ネコ?」
おぅふっ、トリオン体だから微塵も痛みを感じない。とっきーだけが俺のことを心配してくれる。何故か脳内に『白い恋人たち』が流れて涙が流れそうになる。やだ、とっきー優しい。
そして、迅さんは言う。
「―――嵐山隊が居ればこっちが勝つよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
その言葉を聞いた時、俺に名言が降り注いだ。
『私は常に強い者の味方だ』
……ふはははは、A級トップグループがなんぼのもんじゃい。さぁ迅さん、嵐山隊の皆さんやっておしまい!! あ、通してとっきー、俺後ろの配置がいい。
「なるほど『未来視』のサイドエフェクトか。ここまで本気のおまえは久々に見るな、おもしろい。おまえの予知を覆したくなった」
そう言って弧月を抜く太刀川さん。その行動だけで開戦の合図になった。
「やれやれ、そう言うだろうなと思ったよ」
迅さんも黒トリガーを抜いた。って持ち手の黒い弧月にしか見えませんけど? 大丈夫なんだろうなエリート? 負けたら『口だけエリート』って呼んでやる。
そうは言っても作戦通りに今はトリオン切れ狙いだ。軽く受けて、相手が消耗する度合いを大きくすればいい。しばし交戦して距離を取る俺たち。相手はこちらを分断させると嵐山さんは想定した。
三輪隊は嵐山隊の方に来て、太刀川さんや風間さんは迅さんに向かうだろうと考えているらしいが、そんな事よく分かるのね。分析とか苦手どころのレベルじゃないから理解に苦しみます。
さて、俺はここでお別れだ。バッグワームを使ったまま隠れながら進もう。一応、木虎に釘を刺された。『さっきの交戦、何もしてませんでしたよね?』……ちゃんと働けだってさ。勝手に作戦に組み込んでおいて酷い話だ。まぁ出来る事はしようと思う。
廃マンションの3階のベランダで隠れていると三輪先輩と出水先輩が現れた。昨日会った米屋先輩もいる。嵐山さんと話をしているようだが、説得できるのだろうか?
「嵐山隊、なぜ玉狛と手を組んだ? 玉狛はネイバーを使って何を企んでいる?」
「玉狛の狙いは正直よく知らないな。迅に聞いてくれ。ネイバーをボーダーに入れるなんて普通はありえない。よっぽどの理由があるんだろう。迅は意味のないことはしない男だ」
「そんなあいまいな理由でネイバーを庇うのか!? ネイバーの排除がボーダーの責務だぞ!!」
「おまえがネイバーを憎む理由は知ってる。恨みを捨てろとか言う気は無い。ただ、おまえとは違うやり方で戦う人間もいるってことだ。納得いかないなら迅に代わっておれたちが気が済むまで相手になるぞ」
ふむ、三輪先輩がネイバーを憎む理由ね。家族かな? 4年前の侵攻で亡くなったのかも知れない。城戸司令の派閥に入るって事はそういう人が多いって事か。今まで深く考えずに派閥の考え方がやだなーって思ってたけど、少し納得した。
「
そう言って出水先輩が大き目のトリオンキューブを両手に構えた……けど違和感があるから違うな。アレは攻撃用のトリガーじゃなくて釣りだろう。俺は嵐山隊の佐鳥に通信を飛ばす。
「佐鳥ー出水先輩狙ってる? もしそうなら止めといた方が良いよ。アレは攻撃じゃない。多分、
『何でそう分かるのか聞きたいけど、攻撃にしか見えないし撃たないとなぁ』
『いや、もしネコ君の言うとおりなら賢を晒す事になるからな……ネコ君、頼めるか』
言わなきゃ良かった!
でもねー、俺ってば出水先輩の最強クラスのシューターの戦い方見たいんですよねー。俺はアステロイドを威力最弱の速度最速で小さい弾を100発ぐらい用意した。テレポーターで嵐山さんの前に出て、そのアステロイドを出水先輩に向けて放つ。当然貫通しろとも願掛けして無いアステロイドは全て両防御に防がれた。
「おぉっ!? さっきの小さいのか!」
「音無ネコです。よろしくです」
小さい言うな。と思いながら挨拶をしておいた。米屋先輩も「よぉ」と軽く挨拶をしてくる。俺も「どうも」と返す。
『本当に両防御だった。何で分ったんだ?』
「(……さぁ、何となく? そんじゃ、また隠れますね)」
『米屋がネコ君を追うぞ、賢フォローを』
『了解です』
俺は再び隠れることにした。が、米屋先輩が追ってきた。
「昨日出来なかった勝負しようぜ」
「イヤだ。イヤだぁ。イヤですと」
マジでイヤだー。アタッカーの飛び込みセールスはお断りです。俺はマンションの室内に逃げ込んだ。中はボロボロで、当時のネイバーの侵攻の痛々しさが伝わってくる。食器もテーブルの上で埃を被っているほどだ。
「おいこら野良猫、勝手に人んち入っていいのか?」
「ネコなら仕方ない(佐鳥ぃ、はよ助けてー)」
『向かってる。少し待て』
米屋先輩の突く、薙ぎ払うといった槍の連続攻撃が俺に向かってくる。マジか、滅茶苦茶早い上に槍というのは初めての対戦でやり辛い。つーかアタッカーじゃなくて出水先輩のシューターを見たいのに……。
「邪魔しないでくださいよー、っとぉ!? 危ねぇ……」
俺は別の部屋に逃げ込み、ドアを閉めアステロイドを部屋の隅に配置する。俺の腹がドアごと斬り払われるが、掠り傷程度だから問題ない。米屋先輩が部屋に入ってくると同時に設置してあるアステロイドが米屋先輩目掛けて突っ込んでいくがそれもまた斬り払いとシールドで防がれた。
『ネコ、自分のタイミングでしゃがめ』
「(ラジャー)これでどうだ」
「真面目に戦ってくれよ」
俺はスコーピオンを突き出すが、槍の形状とはいえ弧月に変わりはなく、強度の劣る俺のスコーピオンは砕かれた。そのまましゃがんで
「……やるじゃん。悪ぃ、俺ここまでだわ」
米屋先輩が三輪先輩に通信を飛ばしたのか、その直後にベイルアウトした。
「サンキュー佐鳥ー」
『相手はアタッカーなんだから自分でも何とか出来たんじゃね?』
そんな事は無い。ラッキーはあるかも知れないが……あ、中距離戦に持ち込めばよかったのか? いや、仮にそれが出来たとしても相手を喜ばせるだけでは無いだろうか? 戦闘バカな感じがするし。
迅さんから通信が飛んできた。内容はプランBへ移行との事。それとほぼ同時に迅さんの戦り合ってる方でも
迅さんは何人相手にしてるんだ? こっちに射撃が来てないところを見る限り、アタッカー4人にスナイパー3人だろうけど、スナイパーはバッグワーム使ってるからどこにいるか分からない。こっち側で狙ってる可能性もある。それでも最低でも4人を相手にしてる迅さんって認めるのも何か変な感情が沸くが、実力派エリートは伊達じゃないかもしれない。
下を覗くと対立は距離を置いているガンナー・シューターの距離での戦闘だった。
(おぉ! 出水先輩の戦い方すっげぇー!)
上に上げたのは……ハウンドか!嵐山さんの死角から
そこにガンナーとして攻撃を加えるのが三輪先輩だ。アレは確か重い……
そこへ出水先輩のアステロイド群。しかし嵐山さんはテレポーターで背後に回り、とっきーと連携しての十字砲火を出水先輩に浴びせる。目まぐるしい攻防がそこにはあった。そんな時だった。木虎がベイルアウトで落ちたのは。
『すみません嵐山先輩。当真さんが来てます』
『反省は帰ってからだ。まだ終わってないぞ』
スナイパーか。全員迅さん側じゃなくこっちにも来てたようだ。しかも狙撃No.1の当真先輩がだ。
俺はどうだろうか? 十分に役に立てただろうか? 言われたし怖いので迅さんの方には行かないが、こっち側で倒したのは連携して米屋先輩だけだ。しかも倒したのは佐鳥。
木虎は落ちて、ぱっと見の感じだと互角ぐらいの戦況に見える。スナイパーが邪魔だけど、佐鳥に何とかしてもらおう。その為には……。
『ネコ君聞こえる? 当真さんの最終位置情報送るね』
「え、綾辻さん?」
何故に通信を取った? あ、そうか。木虎が落ちた分、余裕が出来たのか。ほっといてくれれば良いのに、これでは本気で働かなくちゃいけない。
「仕方ないか……」
俺は身を隠していたマンションから姿を消した。
ご感想、ご質問や誤字脱字のご報告いただけると嬉しいです。
◆ネコのトリガー少し変更。
近・中・遠をバランスよく育てるのか? とでも言われそうなトリガー構成です。ネコの中でテレポーターで相手の目の前に現れてライトニングを使う。という流れが出来てきていますね。
◇さらっと終わる諏訪隊レンタル活動。今後もすれ違いざまに挨拶する関係に、余裕が出来れば麻雀を覚えて一緒にやる関係になるかと思います。
◆迅さんのフォローをしないのは仕方ない。
プランBは風刃の圧倒的な力を見せ付けるための作戦です。その為、フォロー入れると、風刃の力を存分に見せ付ける形にはならないと判断し、ネコは嵐山隊に付けておきました。ほら、フォローしなくても迅さんは強いから。
◇『私は常に強い者の味方だ』
もう、DVDとかでしか聞くことは出来ないんだな……。とても好きな言葉です。あの流れも微笑ましいですね。
◆三輪秀次の過去を何となく理解するネコ。
もう少ししたら、もう少し深く書くつもりです。何故ネイバーが憎いのかとか、この文章だけでは分らないところが多いですものね。
◇イヤだ。イヤだぁ。イヤですと。
ネコはこの前日にアタッカーはお断りだと何度も緑川少年の個人戦申し込みを断りました。何度も聞いてれば嫌になりますよね。
◆原作との相違点。『木虎がベイルアウト』
これによって一気に難しくなる展開に困ってます。書き直す可能性ありますが、何とか出来ればとも思います。