海鳴市内にある国道■■号線の歩道を通った仲人達六人(仲人・翔・アキラ・リイン・はやて・シャマル)は海鳴駅前商店街に入り、東へ3分進んだ所で、彼らと友達であるなのはの家族が経営する翠屋に辿り着いた。この店から喫茶店特有の、食欲が湧く美味しそうな匂いが流れている。
先頭の仲人は翠屋入口の扉を開けて、シャマルとはやてを先に通した。その次に仲人、リイン、アキラ、翔の順で店の中に入って行く。
~仲人 side~
「いらっしゃいませ......あら、はやてちゃんとシャマルさん」
「「こんにちは~。桃子さん」」
中に入ると、桃子さんと呼ばれる栗色髪の女性が営業スマイルでお出迎えに来て、知っている人と気が付く。はやてとシャマルは笑顔で挨拶をした。あの人が、なのはのお母さん...如何見ても、大学生で中年とは思えないよ。
「みんな~、こんにちは~なのっ」
「やっほ~。なのはちゃん」
「こんにちは~。なのはちゃん。二日振りね」
「「「こんにちは~。なのは」」」
「ふふっ、こんにちは。なのは」
「うふふ...なのはが言っていた新しいお友達ね。ようこそ翠屋へ」
僕達六人は奥からやって来たなのはと、お互い笑顔で挨拶をした。その様子を見た桃子さんは微笑んで歓迎する。奥の席にいるフェイト達三人も笑顔で此方を見ている。学校の帰りだからか、なのはと同じ制服を着ていた。あれが四月から通う学校の制服か...白く清楚でアキラやリインにも、似合いそうだ。その日がくるまで、待ち遠しいかな。
「なのは。お友達を案内したら、注文の取り纏めをお願いね」
「うんっ! 皆、私に付いてきて」
「うふふ...私はカウンター席に居ますね~」
桃子さんは翠屋印エプロンのポケットからポールペンとメモ帳を取り出してなのはに渡した。シャマルは、はやてをなのはに任せてカウンター席の方に行く。僕達五人は、なのはに付いていって奥の席へ移動した。
・・・・・
席に着いたら始めに皆で紅茶やシュークリーム等を注文した後、初対面である二人と自己紹介をした。気が強い金髪の子はアリサ・バニングスで、大人しい紫髪の子は月村すずか。二人は気品があって、上流家庭級のお嬢様だ。
「そうそう、アリサで良いわよ。私も名前で呼ばせて貰うから」
「私にも、名前で呼んでくれると嬉しいかな」
「うん、解った。アリサ、すずか、よろしくね」
「「「改めてよろしく。アリサ、すずか」」」
「「うん、此方こそよろしくね」」
僕達はなのは達と関係良好な友達だから、アリサとすずかは名前で呼んで良いと言い、了解するアキラ。続いて僕と翔とリインも名前で呼んだ。そして、アリサとすずかは笑顔で頷いた。
「もうすっかり馴染んでいるようやな。同年代揃って思う以上賑やかやわ~」
「うん、これから先が楽しくなりそうなのっ♪」
「そうだね。いつまでも長く続くといいなー」
此方の様子を見たはやてとなのはとフェイトは、ワクワクした気持ち一杯で談笑している。フェイト...大丈夫だよ。一緒な学校生活は6年以上あるし。
「皆、お待たせ。ゆっくり食べていってね」
「君達が、娘の新しいお友達だね。僕はなのはの父の高町士郎。気軽に士郎と呼んで構わない。よろしく頼むよ」
厨房から来た桃子さんと士郎さんはトレーから紅茶とシュークリームをテーブル上に並べた。自己紹介をしてくれたので僕達も返して、よろしくと伝える。士郎さんも、桃子さんと並ぶほど若くて新婚夫婦に見えるね...
「あっ、桃子さん。うみなみ寮に留守番が居ますから、帰りにお土産のシュークリームを2つお願いします」
「ふふ、しっかりしているのね......ご注文承りました」
士郎さんと一緒に厨房へ戻る桃子さんを呼び止めて、お土産を頼んだ。2つと云うのは、ドラ丸や生まれるユニゾンデバイスの分だ。
・・・・・
楽しい会話が進んでいる中、アリサはふと思った事を口にする。
「今気になったんだけど、アキラ達は魔法を使えるのかしら?」
「うん、資質はあるよ。今日からアースラで魔法の勉強をしているの」
「そうなんだ...いいなぁ~。私とアリサちゃんは、えっと...リンカーコアだったかな...それが動いていないから魔法を使えないって言われたし」
なのはは頷いてアリサに答える。聞いたすずかは羨ましそうに言った。訊けば闇の書事件...結界に取り込まれた異常を切欠にアリサとすずかは検査を受けたら...なんとリンカーコアは有った。しかし、動いていない。医者の見解では、眠っている状態であると思われる。それはアリサとすずかが初めてで今の所、起こす方法は見つかっていないらしい。方法か...う~ん。
「えっと...念話で呼び掛けるのは如何かな? さっき、アリサとすずかにロックオンしてみたら、出来たんだけど...」
「「「「「「!?」」」」」」
アキラは提案すると、僕達魔導師組は目を見開いた。試してみたら、確かに...ロックオン出来た。魔法が使えない人に対して、ロックオン出来ないのが当たり前で念話を送らないから、気付かないよね...それは。
「で、出来たの...私、何で気付かなかったんだろう?」
「あっ、本当だ...」
「こんなの有りかいな...盲点やったわ...」
「お~お~、アキラの言った通りだぜ...」
「成る程な...念話はリンカーコアを通して言葉を伝える魔法。眠っているのを起こすように、何度も呼び掛けると云う訳か。ロックオン出来るのなら、やってみる価値はあるな」
アキラを除く魔導師組は僕と同様でアリサとすずかにロックオンして確かめたら可能と知り、それぞれ呟いた。
≪アリサー、すずかー≫
「なのは...皆。行き成り驚いたり気が付いたような顔したりして、如何したのよ? 状況が読めないんだけど...」
「アリサ、皆は魔法で確かめているだけだから気にしないで。もしかしたら、貴女とすずかのリンカーコアを起こせるかもしれないんだ」
「えっ、アキラちゃん。それ本当?」
念話を送ってみたけど...アリサとすずかはアキラと話しているだけで、聞こえていないようだ。むむ...一回じゃダメか、なら...
「みんなー。一回じゃ効果が無いと思うので10分間、アリサとすずかに連続で念話を送ってみよう」
「そんなん、いたずら電話みたいやな...了解したで」
はやてはツッコミを入れつつ、僕の提案に了解した。そして、魔導師組全員はアリサとすずかにマルチロックオンして、ひたすら念話を送る。送るメッセージは、名前とか“起きてー”とか“聞こえるかー”とか色々だ。
・・・・・
「「...っ!? 頭の中に声が...」」
念話で呼び掛けて数分後...アリサとすずかは自分の頭に手を当てる動作を見せる。その様子を見た僕達魔導師組は直ぐに念話を止めた。
『マスター、皆さん。魔力を蓄え始める反応がありました。お二人方のリンカーコアが動き出したようです』
リンカーコア起こしに成功したと、レイジングハートが僕達に伝えた。5分を過ぎていないと思うけど、意外と早かったね。
「アリサちゃん、すずかちゃん。喜んで! これで魔法が使えるのっ」
「ほんと? やったぁー!」
「これで、なのはちゃん達の力になれるね。アリサちゃん」
魔法が使えるとなのはから聞いて、アリサとすずかは大喜びして抱き合う。性格から考えて余程、無力な自分が嫌いなんだろうな...うん。
『サー。蓄える魔力の速度をみて計算上、二人ともAAA+ランクになるかと思われます』
「そうなの? 私やなのはと同じだね」
「リンディさん、ビックリするやろうな...」
「そうですね。高い魔力を保有する者は、数少ないですから」
バルディッシュとフェイトの話を聞いて、はやてはアースラがある方の上を向いて呟いた。リインの言う通りだよ...高い魔力を持った人が、二人も増えたからね。生まれるユニゾンデバイスも魔力が高かったら、仰天ものだ。
「魔法の勉強は如何するのかな? アリサとすずかは学校があるし...」
「う~ん...放課後で2時間くらい。なのはとフェイトは、その時間を使っていると思うよ」
「そうだな。俺達も四月からは、部活をする感じで魔法の訓練をする事になると思うぜ」
アキラが思っていた事に対して僕、続いて翔は応えた。部活ね...そうだ!
「みんなー! 切りの良い話があるんだ。聞いて欲しい」
提案が浮かんだので、呼び掛けた。八人の視線が僕に集中する。
「僕は“魔法部”を結成したいと思う」
「「「「「「「「魔法部!?」」」」」」」」
そう宣言すると、八人はキョトンとした。そして解るように説明する。学生兼魔導師が集い、主に放課後の時間を使って魔法の訓練をする部活動と云うコンセプトにしたのが魔法部だ。部の名前が、そのままだけどね。
「単に昼間は学校で、放課後は魔法部と云う平日のスケジュールになるわけ。なのはやフェイトにとって、いつもと変わらないと思うけど...如何かな?」
「成る程。悪くない提案ね...私は賛成よ」
七人も、アリサに同意して頷く。うん、決まりだね。
「...と言っても、僕達は学校に通っていないから、今の魔法部部員はなのはとフェイトとアリサとすずかで四人ね」
頭を掻きながら言うと、八人は上半身を傾けるようにコケた。
「アンタねぇ...自分から立案しておいて、何よ! それ」
「あはは...そう云えば、はやてちゃんと同じで四月から通うって...なのはちゃんから聞いたよ」
僕にツッコミを入れるアリサ。すずかは苦笑して応えた。
「アリサちゃん、すずかちゃん。明日の放課後、予定はないよね? 私とフェイトちゃんと一緒にアースラへ行こう」
「私は義母さんに、この事を伝えておくね」
「「うん、さんせ~い!」」
と言う事で、始めの魔法部活動は決まった。アリサとすずかは凄く楽しみな様子。うん、昨日の僕や翔やアキラと同じだね。
・・・・・
楽しく過ごしている内に午後4時40分と帰る時間になった。桃子さんから「また来てね~」と笑顔で言われながら、お土産を受け取って今は翠屋の外にいる。丁度良くリムジンが来て、目の前に停まった。普通車より頑丈そうで大きいね...初めて本物を見たよ。翔も「すげぇ...」と感激している。
「アリサお嬢様、すずかお嬢様。お迎えにあがりました」
「うん、丁度良く終わったところよ。鮫島」
助手席...じゃなくて運転席から鮫島と呼ばれる老執事が出て来て、アリサとすずかに一礼した。その次は後列席のドアを開ける。外車の運転席は、日本の車と違って、左側にあったな...確か。
「皆、またね。明日楽しみにしているわ」
「またね~。バイバイ」
アリサとすずかは、僕達に手を振ってリムジンに乗った。鮫島は確認した後、後列席のドアを閉める。その車は特殊な窓になっていて、外側からでは車の中が見えない。二人は、また手を振っていると思うので僕達も手を振った。
「皆様も、お気を付けて」
鮫島は僕達に笑顔で挨拶をしてリムジンの運転席に戻る。そして月村家へ発車した。すずかを送ってから帰宅する流れである。
「なのは、皆。またね~」
フェイトは僕達と互いに手を振って自宅へ帰って行った。此処から家のマンションまで近いし、小学生の平均門限を過ぎていないので寄り道しなければ一人で大丈夫だ。
「皆、またね~。車に気を付けてなの~」
「おおきに。さいなら~」
「「「「「さようなら~」」」」」
僕達六人は、なのはと別れてうみなみ寮へ向かった。高町家は翠屋の裏隣にあるので、碧屋の入口前は彼女にとって自宅前と変わらない。
・・・・・
うみなみ寮門前に着いたら、先頭に立つ僕が門を開けて通った。右を向き東にある庭の物干しを見たら、洗濯物は無い。どうやら、ドラ丸が取り入れてくれたようだ。僕の後にはやてとシャマル、次に翔達三人は門をくぐる。
「ほぇ~。想像以上やな...庭も広いわ~」
「そうですね。はやてちゃん(私達を加えたとしても、余裕で住めそうね)」
敷地内に入ったはやてとシャマルは、うみなみ寮と庭を交互に見て感嘆する。予想通り、初めて見た時の僕達と同じ反応だね...
「はやて、シャマル。ささ、中に入ろうか」
そう言い玄関の前へ足を進め、扉を開けて中に入った。続けて皆も中に入る。
「玄関も広いんやな...此処にウチの車椅子を置かせて貰うで」
そう言ったはやては車椅子から降りた後、シャマルはそれを玄関の西端へ移動させた。丁度良くドラ丸が、東の廊下からやって来る。
「皆、おかえりなさい」
「「ただいま。ドラ丸」」
「おう! 今帰ったぜ」
「ああ、ただいま」
僕達四人は、ドラ丸と帰宅の挨拶をした。その後、はやてとシャマルを見ると目を丸くしていた。あ、ドラ丸の事を伝えてなかったよ。
「君は...はやてとシャマルだね。僕はネコ型ロボットのドラ丸と言います(リインとシャマルの大切なアルバムにあった子だ)」
「ウチの事、リインから聞いたんやね。よろしゅう(タヌキと思っていた事、言えへん。それにしても、何処かで見た事があるようなないような...)」
「ふふ...よろしくね。ドラちゃん」
ドラ丸は自己紹介をして、はやてとシャマルは笑顔で応えた。ドラちゃん...ね、いつかドラえもんと会ったら、如何呼ぶのやら...
「仲人。私はユニゾンデバイスの棺を取りに行くから、客人のはやてとシャマルをリビングへ案内を頼むぞ」
「うん、解った」
了解と答えた後、リインは玄関を上がって北の階段を登って行った。
「はやて、シャマル。リビングまで案内するよ......上がって」
「「はい、お邪魔します」」
「あ...」
アキラは玄関を上がって、はやてとシャマルをリビングへ案内した。それは、リインに頼まれた僕の役なんだけど...まぁ、いいか。
「ははっ、男子が最後になっちまったな」
「そうだね......ドラ丸。お土産のシュークリームを冷蔵庫に入れておくから、明日のおやつの時間で食べてね」
「ありがとう。仲人」
玄関を上がって、リビング扉の前で翔やドラ丸と別れ、キッチンへ向かった。シュークリーム入りの箱を冷蔵庫に入れた後、引き返してリビングへ向かう。
・・・・・
リビングでソファに座り、リインを待っている間...ドラ丸はタイムマシンで22世紀から来た事について、あとユニゾンデバイスの製作工程がかなり進んでいる理由も説明した。聞いたはやてとシャマルは驚いていたよ。北のソファで東から僕、翔、アキラ。南のソファで東からはやて、シャマル。テーブルの西(テレビと反対側)で、ドラ丸は用意した椅子に座っている。
「皆、待たせてすまない」
リビングに入って来たリインは、出かける前に見た全長32㎝あるユニゾンデバイスの棺をテーブル上に置いた。僕とドラ丸以外の皆はそれに注目する。
「それ...夜天の書の模様が表面にあって、棺みたいやね」
「その通りユニゾンデバイスの棺ですよ。はやて」
リインは、はやてに応えて棺の蓋を開けた。その中に人の形をした白い板が二枚あった。全長は28㎝で、厚さは8㎜位ある。身代わりの護符みたいだね...どんな材質で出来ているんだろう?
「リイン。もしかして、その板にコピーリンカーコアを詰めるの?」
「ああ、半分正解だ。この板の中に器があって、リンカーコアを蒐集する事でコピーリンカーコアが完成する」
「あら、板の胸部にベルカ語が......男性と書いてあるわね。二枚...あっ!」
リインは僕の質問に答えた。シャマルは人の形をした板を眺めて、何かに気が付く。男性...二枚......あっ、もしかして...
「男性と女性のコピーリンカーコアを使うという訳ね...誰にするか決めてあるの? 女性の方は、リインち...リインフォースになりそうだけど...」
「そうやね...リインにとって、元の体なんやし」
シャマルの推測に、はやてとリインは頷いた。さっき、ちゃん付けで言おうとしたね...シャマル。一瞬だけど、眉間にシワを寄せるリインが見えたよ。
「じゃあ。男性の方は、仲人と翔のどちらか...になるね」
アキラは僕と翔を交互に見ながら言った。確かに...此処に居るリンカーコア持ちの男性は、僕と翔だけだ。
「俺よりも......はやてのユニゾンデバイスになるから、はやてと似ている仲人の方が良いんじゃねぇか?」
「「「あっ、そうか」」」
「ふふっ、そう云う結論に至って今朝、仲人にお願いしたんだ」
「フフ...」
翔は僕を見て言うと、アキラとはやてとシャマルはポンッと自分の掌を叩いて僕を見る。リインは微笑んで頷いた。予定通りの結果になったからか、ドラ丸はニコニコして此方の様子を見守っている。
「えっと...如何やって、僕とリインのリンカーコアを蒐集するの?」
「私は自分で出来るが...仲人はシャマルに頼んで蒐集して貰うと良い」
リインはシャマルに目をやって質問に答えた。
「うん、解った......シャマル。蒐集をお願いします」
「ええ、任せて。リンカーコアを蒐集している間、見た目は怖いから目を瞑って下さいね~」
リインに頷いた後、シャマルに近付いてお願いした。シャマルは微笑んで了承する。見た目は怖い? あっ、思い出した。アニメでは、シャマルの手がなのはの胸を貫いた描写があったような気がする。ホラーだよね...あれは。
「はやてちゃん、アキラちゃん、ドラちゃん、翔君。私が良いと言うまで、目を瞑っていて下さいね」
人の形をした板を左手に持ち、ワキワキと右手の指を動かしながら言うシャマル。翔とアキラとはやてとドラ丸は、それに従って目を瞑った。うぅ...ドキドキしてきた。まるで歯医者の所に行く気分だよ...
「あら、不安なのね...痛みは一瞬だから大丈夫よ。リラックスして」
シャマルは右手で僕の胸を擦りながら、不安を取り除くように笑顔で言った。白衣の天使(ナース)みたいだね...取り敢えず、深呼吸っと。
「すぅ...はぁ......早くお願いしますっ!」
深呼吸して...覚悟が出来た今、目を瞑った。
「行くわよ......えいっ!」
「うっ!?」
一瞬、胸に激痛が走った。まるで心臓を鷲掴みにされたような感じで、気分悪いな...これ。注射と比べて、二度と受けたくない。
「蒐集!」
シャマルの声が聞こえたその時、脱力感に襲われた。
・・・・・
「終わった...仲人君、みんな~。目を開けて良いわよ」
シャマルの呼び掛けを聞いて目を開けると、彼女の左手に持つ人の形をした板は、黄色い光を放っていた。射撃魔法で生成した魔力弾と同じ色をしているね...僕のリンカーコアは黄色だと云う事か。
「こっちも終わったぞ。次はコピーリンカーコアが出来た板を棺の中に入れてくれ」
リインは、シャマルを呼んで白銀色に光る人の形をした板を棺の中に入れた。皆が見ていない隙に、蒐集を終わらせたようだ。シャマルは頷いて黄色く光る人の形をした板を棺の中に入れた。すると、棺の中から白銀色と黄色で二色が交互に光る状態となった。なんという神秘的な感じ...
「リイン。後は夜天の書の断片を棺の中に納めるだけなんやね?」
「はい、その通りです。はやて」
はやては、身に着けている夜天の書の断片と呼ばれる十字架のペンダントを外してリインに預けた。彼女は両手で夜天の書の断片を大事そうに持つ。それを胸に添えてはやてに応える。
「はい、お預かりします」
その後、リインは夜天の書の断片を棺の中に納めて蓋を閉めた。僕達は唾を飲んで、その様子を見守っている。何が起こるか、ドキドキしてきたな~。
暫くすると...棺を中心にテーブルの端まで、紫色のベルカ式魔方陣が展開された。その魔方陣は円の内側に正三角形が重なっている。3分経ち、徐々に魔方陣の色が紫色から白に近い水色へ変わっていき...眩しい強烈な光を放った!
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
棺を注目していたから光の直撃を受けてしまい、目がくらんだ。他の六人も僕と同じ目に遭っている。特に翔は「目がぁっ...」と喚いていた。
・・・・・
目が回復してテーブルの上を見ると、魔方陣は消えていて棺は無くなっていた。其処に身長30㎝位と人形みたいな女の子が仰向けで横になっている。容姿はリインから受け継いだ銀髪で髪型も同じであり、寝顔だけど...はやてと似た顔。着ている服は長袖でスカートの丈が膝まである白いワンビース。なんと夜天の書の断片と同じペンダントも身に着けてあった。体に合わせてあるので、とても小さい。
「お~。棺が無くなっていてビックリしたが...無事に生まれたみたいだな」
「うん、本当にね...リインに妹が出来た感じかな?」
「「「「か、可愛い...」」」」
僕と翔は安堵の表情に染まった。女性陣はキラキラと目を輝かせてユニゾンデバイスを見詰めている。思い出したけど、アニメの最終回で出て来た子だ。
「まぁまぁ...皆、落ち着いて。そんなに見詰めていると恥ずかしがるよ」
「「...はっ!?」」
「...っ! ...そうだな」
「ごめんなさいね...可愛さのあまりに、我を忘れてしまったわ」
苦笑したドラ丸に呼ばれて、女性陣は我に返った。可愛いもの大好きだから無理もないよね...うん。正直言って僕も同じだけど、見て癒されるな~と感じるだけ。
「......ん~」
ユニゾンデバイスは目を覚まして立ち上がり、キョロキョロと周りを見回した後、リインを見て笑顔になった。それからクルッと右一回転し、身長110㎝位へと通常サイズまで大きくなってテーブルから跳び降りる。行き成りなので、僕達は驚いてしまった。
「ママ~。リアンの頭を撫でて欲しいですぅ」
ユニゾンデバイスは、ねだるように言ってリインに抱き付いた。リアンって...もう名前があるんだね。...しかし、リインがママ?
「私が・・ママ?」
「あっ、そうか。リインフォースの魔力が流れているから、その子のお母さんになるのね」
リアンと呼ばれるユニゾンデバイスに抱き付かれたリインは、目を見開いて困惑する。その様子を見たシャマルは気が付き、理由を伝えた。成る程、そう云う事か......ん? と云う事は...
「...と云う事は仲人が、その子...リアンのお父さんになるのかな?」
「だな。仲人の魔力も流れているから、リアンの父で間違いねぇ」
翔はリインとリアンを見ながら、アキラの思っていた事に同意した。あ~、やっぱり...僕はまだ結婚していないのに、子供を持ってしまった...如何して造る前に気付かなかったんだろう?
「仲人君...男として責任を取らなアカンで?」
「そう...だね。リインと話してみるよ」
はやては僕の肩に手を置いて言った。それに応えた後、リインに近付いた。リアンは彼女に抱き付いたままである。今のリインはまだ子供だから、親子と云うより姉妹に見えるけどね。
「リイン。お互い大事な話だから、聞いてくれるかな?」
「仲人...」
「あっ! パパ~」
こっちに気付いたリアンは笑顔のまま、リインから僕へ抱き付いた。甘えん坊だな...この子。近くで見ると瞳の色は青いね...取り敢えず、優しくリアンの頭を撫でた。髪はサラサラしていて良い感じ。
「~♪ ~♪」
リアンは幸せそうな顔になる。なに、この可愛い生き物? と思ってしまった。まぁ...大人しくなったから、これで話が進められる。
「う、羨ましい......あ、ゴホン...大事な話というのは?」
「うん、子供の身で言うのは如何かと思うけど...十数年後の結婚を前提に僕と付き合って欲しい」
「!? ああ、いいぞ。その子...リアンは、そう願っているからな」
僕の告白に対してリインは驚くが、躊躇いもなくOKと返事した。アッサリと返事したのは...お互い関係は良く、まだ恋に芽生えていないからかもしれない。この場合、幼馴染の恋愛でよくある話なのかな? まぁそれは兎も角、結婚に向けて頑張ろう。
「やけにアッサリしとるなぁ...お互い本気なのかどうか、分からへん」
「うん、そうだね...でも、一緒に暮らしているから関係を深める機会が毎日あるよ」
「うふふ...アキラちゃんは、翔君とくっつきそうね」
つまらなさそうに呟くはやてに応えるアキラ。シャマルはクスクスと笑って冗談染みた事を言う。うん、可能性はかなり高いね...聞いたアキラと翔は顔を紅くしているし。
「リアン。君のマスターになるはやてと挨拶してね」
「はいですー!」
そう言うとリアンは笑顔で右手を挙げて元気よく返事をした後、はやてに近付いた。
「はやてちゃん。これをあげるですぅ」
「それは...夜天の書の断片?」
リアンは身に着けていたペンダントを外して、はやてに差し出す。彼女は目を見開いてリアンに訊き返した。そのペンダントも通常サイズになっている。
「これはシュベルトクロイツ・ツヴァイと言いますぅ。ストレージデバイス並みの性能を持ったアームドデバイスでリアンの体の一部なんですよー! だから緊急時に、いつでもリアンを召喚出来るんですぅ」
「ほぇ~。他のデバイスもあって驚いたわ~、大事に使わせて貰うで。よろしゅうな、リアンちゃん」
自信あふれた様子で説明するリアン。はやては感嘆してシュベルトクロイツ・ツヴァイと云うデバイスを受け取り、リアンの頭を撫でた。
「えへへ~♪」
「ところで、リアンの着替えは如何するんだ?」
「それなら大丈夫。未来のリアンから荷物を預かっているよ。自分が生まれたら渡して欲しいって」
喜んでいるリアンを見て思った事を口にした翔に対して、ドラ丸は腹部にある【四次元ポケット】を叩いて答えた。過去の自分へ送る...か、ややこしいと云うか何と云うか変な気分だな...正に逆タイムカプセルだ。
「そうなんだ...リアンの部屋は如何するの?」
「リアンは、パパとママと一緒に寝たいですー!」
アキラは質問すると、横からリアンが行き成り割り込んで来て言った。
「リアン。悪いけど...それは結婚しないと無理だよ。取り敢えず、リインと一緒に寝てね」
「はいですぅ...」
今は無理と答えたら、残念そうに落ち込むリアン。ごめんね...18歳になって早く結婚出来るように頑張るから。
「リインは、それで良いかな?」
「ああ、構わない。私が責任持って面倒をみる」
「ママ...」
異議はないか...と確認したら、リインは頷いて答えながらリアンを抱きしめる。微笑ましいね...皆も温かい目で見ているよ。
はやてがリビング東の壁にある時計(テレビの上)を見て、午後6時過ぎと知るまで...僕達八人は楽しい話を続けた。話題は勿論、最後までリアンについてだったよ。
~side out~
用事が終わった仲人達八人は、リビングを出てうみなみ寮の玄関に居る。仲人とはやてとシャマルは玄関を下りた。次に仲人は、ドラ丸から【どこでもドア】を受け取って玄関扉の前に置く。うみなみ寮から八神家まで遠くないが、空き巣の問題を抱えている現況で夜の道は危ない。身の安全の為に【どこでもドア】を使う事になった。
「行き先は...近くにある八神家の玄関前」
仲人は行き先を言って【どこでもドア】を開けた。先にある八神家の玄関前を見たはやてとシャマルは感嘆する。彼女等は秘密道具の凄さについて理解しているので、そんなに驚いていない。
「あらあら、転移魔法より手軽で便利ね~」
「便利だけど、違う次元世界へ行けないよ」
ドラ丸は苦笑してシャマルに応えた。今の【どこでもドア】は22世紀の市販品である。違う次元世界(別宇宙)へ移動する機能は無い。
はやては先に【どこでもドア】を通って、次にシャマルは此処の西端にある車椅子を動かして【どこでもドア】を通った。八神家の玄関前に足を踏み入れた二人は、踵を返して仲人達六人に振り向く。
「バイバイ。休みの日になったら、また会おうな~」
「ふふ...またね~」
「「「「さようなら~」」」」
「はやて...足のリハビリ、頑張って下さいね」
「はやてちゃん、シャマルさん。バイバイですぅ」
はやて達二人と仲人達六人は、お互い手を振り...次に仲人は玄関の扉を閉めるみたいに【どこでもドア】を閉めた。あっちのはやてとシャマルは、消えていく【どこでもドア】を見送って八神家の中に入って行き...こっちの仲人達六人は【どこでもドア】を片付けて、夕食の支度をする為に東の廊下を通ってキッチンへ向かって行った。
余談...うみなみ寮での夕食メニューは、リアンの誕生祝いにお子様好物のハンバーグである。仲人とアキラはレアスキルの皇帝特権を駆使して、とても美味しいハンバーグを作った。それを食べたリアンは大喜びでした。
今日生まれたリインフォース・ツヴァイ...愛称リアンは甘えん坊だが、そんなに駄々っ子ではない...寧ろ、親孝行の方だ。最後のうみなみ寮メンバーになり、平日の昼間はドラ丸と留守番する日々が始まる。因みにリアンの面倒をみる事も、ドラ丸が22世紀から来た理由の一つだったりする。
つづく...