修正と書き足しを重ね、7月24日(木)付けで完成しました。
「残酷な描写」の一歩手前なので、ご注意下さい。
繰り返します。
「残酷な描写」の一歩手前なので、ご注意下さい。
それでは、どうぞ。
転生者において、仲人と翔とアキラとリインフォース・アインスと琢磨の他に、ハーレムオリ主君(織村 鉄也)が居て重婚が決まったら...の、本編と一切関係ないIFの短編。
新暦76年春に機動六課が解散して、二日経ったある日の夜...仲人と翔と琢磨と鉄也で四人の男転生者達が、ミッドチルダ首都クラナガン市内にあるファミレスで飲み会をやっていた。皆は今年で20歳になるのだが、まだ誕生日を迎えていない。つまり、お酒はまだダメだ。
「皆、俺から重要なお知らせがある」
長い髪を紐で後ろに下げて括った黒髪黒瞳のイケメン青年...織村 鉄也はコーヒーを口に含んでティーカップをテーブル上へ戻した後に、真剣な顔で仲人達三人に話し掛ける。
「昨日の夜な...行き成り俺の“別荘”に来たなのは達にプロポーズされた」
「あ~とうとう、その日が来てしまったね...」
「ははっ、行動に出たか。スカリエッティ博士が引き起こした大事件の事後処理が、落ち着いてきた時期に丁度良いからな。俺達は良い年頃だし」
「それで、鉄也。返事は如何したんだ?」
鉄也から聞いた仲人と翔は苦笑を浮かべた。それと同じ様子の琢磨は、返事が気になって鉄也に訊ねる。問題児だった琢磨はフレイアから更生を受け、まともな人間になった。もうモブ野郎と呼ばない。
「ああ。俺は応えて、なのは達十三人と結婚するつもりだ」
「「え!?/は!?」」
「そ、そうか...(鉄也の別荘の中は時間が24倍あるから、既になのは達とヤっているだろうな...その場合、手遅れだ)」
鉄也の答えで仲人と翔は驚き、琢磨は顔を引き攣らせた。琢磨がそんな顔をした理由は、沢山重婚した男の末路についてフレイアから聞いているからなのだ。因みに、鉄也と結婚する事になった女性は、なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか、シグナム、シャマル、ヴィータ、ティアナ、スバル、ギンガ、カリムで十三人。
「て、鉄也...それ本気で言ってるの?」
「重婚は不純であると、理解しているさ...だけどな」
鉄也は頷いて、重婚を良く思わない仲人に応える。なのは達は皆で幸せになろうと思っているから重婚しても良いそうで、鉄也は選ばなかった人を不幸にしたくないと考えた結果...この通りとなった。彼の主張は、全員好きで一人を選べない優柔不断の言い訳かもしれないが...
「誰一人も反対しないのなら、俺は何も言わねぇけどよ...此処、ミッドチルダは重婚が可能なのか?」
「ああ、問題ない。なのは達が必死で頑張ってくれた御蔭で、重婚が許される法律になった。だから今は重婚が可能だぞ」
「「「......」」」
鉄也は苦笑して翔の質問に答えた。そんな衝撃的な事実で、仲人達三人は驚愕する。最初は気が進まなかったが、友達想いなアキラとリインフォースも法律改変に協力してくれたらしい。リンディとプレシア(アリシアと一緒で、鉄也に助けられた)とクイント(鉄也に助けられた)も同様だ。
「...鉄也。昨日の夜は楽しめたか?」
「~っ!? た、琢磨。恥ずかしい質問すんなよ...皆を満足させる為に、頑張ったから疲れたぜ。その所為で朝は、かなり寝坊してしまったけどな」
「(ちっ...アレがまだなら、警告するつもりだったんだがな...鉄也が死んだ後、フレイアさんに“去勢”されちまうのは確実か...可哀想に)」
「(鉄也は凄いな...最強の転生者だけあって、体力が半場ない)」
「(未経験だから良く分からねぇけど、十三人相手なんて無理だな...俺)」
自分の質問で顔を赤くした鉄也を見て、琢磨は心の中で舌打ちした。仲人と翔は、流石だと思いながら鉄也を見ている。会話の内容から、鉄也はフレイア城に堕ちる“妻を含む3人以上の女性に処女喪失させた事実”の性的悪条件を満たしてしまった。今更、琢磨が警告しても...もう、後の祭りである。
「それよりさ...彼女が居るお前等の方は、如何なんだ?」
「僕は...婚約指輪を買って今度のデートの時に、リインにプロポーズするつもりだよ」
「おう。俺も仲人と同じで近い内、婚約指輪を買ってアキラにプロポーズするつもりだ」
「くくっ...仲人と翔は、鉄也のと違ってロマンチックじゃねぇか。俺もそれに従ってムードのある場所で、彼女にプロポーズするぞ~」
仲人達三人の恋愛事情について、気になった鉄也は質問した。ムードを大事にしたい仲人と翔の答えを聞いて、笑いを堪えて賛同する琢磨。
「婚約指輪...ね。十三人分を考えると凄い額になるな...そうだ! 秘密道具の【フエルミラー】を貸してくれよ~」
「うん、それは却下! 血と汗の結晶で一つ一つ、正式な物を買いなさい」
「鉄也、お前の貯金なら余裕だろ? コピー物は、全然愛を感じねぇからな」
鉄也は冗談のつもりで、秘密道具を求めた。微笑んで断った仲人と翔は正論を言う。仲人と翔はアイテムクリエイションで婚約指輪を作れるが、それだと安っぽくて愛が感じられないので、正式に働いたお金で買う事にしている。うん、正道とも云う真理だ。
「ですよね~。そうするわ」
「...ってか、それ以前に指のサイズが一人一人違うだろ!」
苦笑しながら仲人と翔に応える鉄也。琢磨のツッコミは尤もである。秘密道具の【フエルミラー】で婚約指輪をコピーしたら、指輪のサイズが全て同じになってしまうのだ。あと指輪に刻まれる文字も鏡の如く、逆になって価値が無い変な指輪の出来上がり。
「鉄也。君の挙式は壮大になりそうだから、雲の王国でやろうか?」
「成る程。俺達が小学生の頃、なのは達と皆で造り上げた夢の国なら、満足出来る良い結婚式になりそうだな...よし! その案は採用するぜ」
「(盛り上がる楽しい行事が出来て、住人のミッフィー達は喜びそうだな)」
「仲人が考えた国造り、俺も参加したかったな...(厨二病だった昔の自分が恨めしいぜ...それが直ったのも、フレイアさんに感謝だな)」
結婚式について、鉄也は仲人の提案に賛成した。琢磨は悔やんでいる様子で呟く。あの時...琢磨はフレイア城で矯正教育を受けていたので、雲の王国造りに参加していない。それは自業自得だが、悲しい話だ。
こうして仲人達四人は談笑している内に、時計が深夜の11時を指す。そんなに遅いと明日の仕事が大変なので、飲み会はお開きとなった。
・・・・・
「はぁ~~」
ファミレスの外にある駐車場にて...カッコイイ赤いスポーツカーに乗って自宅へ帰って行く鉄也を見送った後、自分の赤白バイクを支えている琢磨は溜め息をついた。
「なぁ、琢磨。そんなに溜め息をついて...如何したんだ?」
「ん、ああ...鉄也の無残な未来を考えたらな」
自分の白いワゴン車(6~8人乗り)の傍に仲人と隣で立つ翔は、琢磨の溜め息が気になって訊ねた。琢磨は、鉄也が去って行った方を見ながら答える。
「無残な未来? それって、如何云う事なの?」
「あいつは...死んだ後、地獄のフレイア城に堕ちて“去勢”されるのさ」
「「!?」」
琢磨は神妙な顔になって、仲人の質問に答えた。それを聞いた仲人と翔に衝撃が走る。そんなに信じられない事だから、無理もない。
「ちょっと待て! あそこは確か...強姦とかで女性に傷をつけた悪い男が行く所だと、数年前にお前が言ってなかったか? 鉄也はそんな男じゃねぇのに、何故そうなるんだ?」
「あ~、言ってなかったな...その他に悪い条件があるんだよ」
琢磨は頭を掻きながら、翔の質問に答えた。その悪い条件とは、先述の通り“妻を含む3人以上の女性に処女喪失させた事実”だ。鉄也は条件を満たしてしまった事について、理解した仲人と翔は顔を青くする。
「...じゃあ、鉄也はもう(普通に正しく生きていれば、関係ない事だけど)」
「手遅れなのか...(其処まで容赦ねぇ女神様だな...セレンさん)」
「そう云うこった。鉄也に言った所で、如何にもならねぇよ。俺達に出来る事なら、それを秘密にして数十年ある彼の幸せを見守るくらいだ」
「「......」」
琢磨は仲人と翔に自分で出来る事を伝えた後、王の財宝から取り出したバイク用ヘルメットを被る。次はバイクに乗って鍵を差し込み、エンジンに点火。
「またな~。二人共、おやすみ」
そう言い残し...琢磨はバイクを走らせて、自宅へ帰って行った。琢磨の家は、鉄也の家と反対の方向にある。
「...ねぇ、翔。鉄也の件で、セレンさんに交渉してみようよ」
「多分、無理じゃねぇかな? 罰は公正だから、贔屓は出来ないと思うぞ」
「むむ...ダメか~。やっぱり、重婚はロクな事にならないね」
「ははっ、全くだ。......さて、帰ろうか。行きは仲人が運転したから、帰りは俺が運転な」
仲人は助手席で翔は運転席で、白いワゴン車に乗り込む。その車は発車して、クラナガン近郊にある新うみなみ寮へ帰るのだった。其処に住むメンバーは、小学生の頃と変わっていない。多分だが、恋人のアキラとリインフォースは寝ないで、仲人と翔の帰りを待っているだろう。
========== 十年単位でキングクリムゾン!
数十年後...寿命を迎えた鉄也は、地獄のフレイア城に堕ちる。仲人と翔と琢磨は何とかセレンに交渉したが...結局、決裂したようだ。
~鉄也 SIDE~
目を覚ましたら、知らない天井...青白く少し暗い牢獄の中だった。その上に、自分の手足がガッチリと磔板(仰向け)に拘束されている。確か、俺は病気で死んだ筈...ど、如何なっているんだ? この状況。
「ふんっ!」
取り敢えず体内の気を練って強化し、自分に掛けられた拘束具を力任せでバキッとぶち破る。自分の肌を見て、何故か俺は20代に若返っていて驚いたぜ...まぁ、死んだら歳は関係ねぇか。しかし...なんで、着ている服装は白いTシャツと白い半ズボンだけなんだ? 下着がねぇから、スースーする。
「ふぅ~」
身体が自由になって一息ついた後、牢屋全体を見回す。青白いレンガ造りで窓は一つも無く、出られそうな所は右にある檻だけのようだ。如何考えても、此処は地獄っぽいな...何か悪い事したか? 俺。
「はぁっ!」
右足に気を込めた強力な回し蹴りで、横薙ぐ様に檻を破壊する。思ったより脆いな...よし、これで外に出られるぞ。
「何の音だ!?」
廊下の方から女の声が聞こえてくる。や、やべぇ...檻の破壊で大きな音を出してしまったか。こうなったら、隠れる方法は...
「レムオル!」
生前にセレンさんから頂いた呪文書で、契約習得したレムオルを唱えて自分の姿を消した。5秒も経たない内に、槍と青い兜と青い鎧を装備した一人の女兵士が牢屋に入って来る。この女兵士、人間じゃねぇな...鬼か?
「...っ!?」
直ぐ女兵士の背後に回り込んで、首筋に手刀を当てて気絶させる。仲間を呼ばれると拙いからな。生前、管理局の仕事で違法研究所潜入の時に、このアクションをよくやったものだ。...さて、此処に長居は無用だな。
俺は走って牢獄から廊下へ脱出するのだった。レムオルの効果時間はゲームのドラクエと違って、魔力が尽きるまで持続が可能だから便利だな。俺の魔力は沢山あるから、24時間は余裕だ。
・・・・・
「...うおっ!?」
3分程、長い廊下を走って右L字曲がり角を曲がったら、驚きの声を上げる。何故なら、この先に真っ赤な溶岩のプールがあったからだ。壁に付いた火の明かりの青白い光と溶岩の赤い光が混じって、明かりが紫色になっている。ゲームのCGではなく、本物の沸騰している溶岩なんて初めて見たな。それを見ただけで、ゾッとするぜ...
「......」
むぅ...向こう側に出口らしき上り階段が見えるんだが、奥行30m位で廊下の右壁から左壁まである溶岩のプールが、進路を阻んでいるな。逃げられない為の仕掛けか?
「トラマナ!」
ダメージ床から身を護る呪文のトラマナを唱えた後...そぉ~と、右足を溶岩のプールに踏み入れる...何と、その面の上に乗れた。よし、これで向こう側まで渡れるな。怖いけど...今は飛行魔法も舞空術も使用不可能だから仕方ない。その原因は判らないままだ。
俺は走って、一気に溶岩のプールを駆け抜けた。それから上り階段で上の階へ上るのだった。さっきの溶岩を見て、此処は地獄だと確信したぜ...天国にあんなモノはねぇからな。
・・・・・
上り階段を上がった先には、八畳部屋九つ分の広い部屋だった。天井も高い。階段の真っ直ぐに、お城の出入り口にある様な大きく重たそうな黒鉄の扉がある。もし、鍵がかかっていたらアバカムで開けよう。さっきの檻の様に破壊したら、大きな音で騒ぎになって面倒だからな。
ーーガチャッ
黒鉄の扉へ足を進めようとしたら...扉の左が開いて、武闘家っぽい半袖青チャイナドレス(ウェストに黄色いベルト、肘丈青ロンググローブと黒スト+膝丈青ロングブーツ装備で、衣装全体の裾部分は黄色)を着た青髪ポニーテールの女性がこの部屋に入って来た。彼女を見て一瞬、翔の妻のアキラかと思ったぜ...体格や髪型が完全に同じだからな...偶然もあるもんだ。
「......」
っ1? 階段近くまで足を進めた女性は、立ち止まってこっちを見た。レムオルの効果が続いている上に、気配を消したんだが...見えるのか? ドキッとしたぞ...しかし、身長が俺と同じくらい高ぇな。瞳は紅くクールな感じだが、凛としているシグナム並みの顔立ちだ。俺が居なくなっても、元気にしてるかな...彼女。
「...姿を現したらどうだ? 織村鉄也」
女性は睨みながら話し掛けてきた。俺を知っているのか? 隠れた存在に気付いたといい...さっきの女兵士と違って、只者じゃねぇな...こいつ。
「...完全に気配を消したのに、よく見破ったな。何者だ?」
レムオルの効果を解除して距離を空け、警戒しながら女性に尋ねる。
「私は、フレイア。お前の友人である琢磨から聞いた事はないか?」
フレイア...? あっ、思い出した! 数十年前に琢磨から聞いた事があるぞ。確か...地獄の神様の王女である鬼姫で、罪のない女性に酷く傷をつけた悪い男を処刑する場所の主だとか...以前、厨二病で性格が悪かったテンプレ踏み台転生者の琢磨を鍛え直したらしいが...
「ふふっ、思い出したようだな」
「...なぁ、フレイアさん。訊きたい事があるんだが...何故、俺は此処に居るんだ? 身に覚えは無いし、納得出来る説明を要求する」
微笑むフレイアさん。綺麗で見惚れてしまうな...此処の主が目の前に現れたなら、好都合だ。俺の知りたかった“此処に居る理由”を訊ねる。
「理由は一つある。お前は欲張って“多くの女性に処女喪失させた”浮気な罪を犯した為、此処に堕ちたと云う訳だ」
「はあ!?」
何だそりゃ!? 妻のなのは達は心を許している上で交わしたのに、地獄に堕ちるに値する罪だと...可笑しいだろ!?
「全ての世界において、一夫一婦を重んじる決まりなのだ。勿論、浮気で肉体関係を持つのも許されない」
フレイアさんは説明した。たとえ交わしていなくても、重婚した位で地獄に堕ちるらしい。結婚しているのに、愛人とか肉体関係を持つ浮気(そう云う関係を持たない浮気なら、何をしても大丈夫)をしたら地獄堕ち。処女喪失させるのは一人で1人までで、2人以上だと普通に地獄堕ち。俺みたいに3人以上だと地獄のフレイア城堕ち。だが少子化は困るので、死別(未亡人)や離婚で再婚の場合は、特例としてノーカウント扱い。
多大な功績を収めた英雄であっても、他人を思いやる善人であっても、容赦なく適用されるとか...なんっつー、理不尽な決まりだ。厳し過ぎるぜ...セレンさん。女遊びで風俗店に行くだけでも、危険じゃねぇのか? 俺は一度も行ってねぇけど...女たらしのヴェロッサには心配だな。
「と云う訳で、鉄也。私と一緒に執行室へ行こうか」
右手で手招きしながら、怖い笑みで俺を誘うフレイアさん。何が“と云う訳で”だよ!? 納得出来ないし、処刑されるのは嫌だっての!
「お断りだ! 俺を処刑したいなら...武力で勝ってみせろっ!」
気を開放し、ストリートファイターのリュウと似た格闘戦の構えを取った。そして覇気のこもった声で、フレイアさんに言い放つ。
「全く、難儀な男だな...仕方ない」
怯まずに呆れて言ったフレイアさんは、こっちと同じ様に気を開放した。構えを取る事なく、行き成り地を蹴って俺に急接近する。は、速い。
「はっ!」
「ぐぅっ!?」
俺の顔を狙ったフレイアさんの右ハイキック(上段蹴り)を左腕ガードで受け止める。重い一撃だ...腕が痺れる~。骨にヒビが入ったかも...一般人だったら、腕と頭が吹き飛んでたぞ。
「無双正拳突き!」
右手に気を込めた正拳突きでフレイアさんに反撃した。しかし、左手で拳を掴んで受け止められる。こいつ...渾身の一撃なのに、表情を変えてねぇ...
「下の階に落ちろっ!」
「うわっ!?」
フレイアさんは、俺の右手を掴んだ左手を動かして右の階段へ投げた。投げられた俺は、さっき上った階段で転げ落ちる。いででででで...
「!? トラマナっ!」
このままだと...転げ落ちる勢いで、下の階にある溶岩のプールに落ちてしまうと気付いた俺は、咄嗟にトラマナを唱えた。
「いででで...ベホマ!」
下の階へ転げ落ちて溶岩のプールの上に出てしまっても、中に落ちる事なく溶岩面の上で止まった俺はヨロヨロと立ち上がった。直ぐにベホマを唱えて、フレイアさんの攻撃と階段落ちで受けたダメージを全回復する。あ、危ない所だった...殺す気か?
「ほう、トラマナで溶岩落ちを回避か...落ちる前に追い撃ちで、向こうまで蹴り飛ばす予定だったんだがな」
上り階段の前で、幽霊みたいにフワッと現れたフレイアさんは、こっちを見て感心する。追い撃ちだと!? トラマナを使って良かったぜ...
「容赦ねぇ姐さんだな......っ!?」
フワッと超低空で浮遊したフレイアさんは、身の周りに沢山の青白い火の玉(ひとだま?)を出現させた。さっきの現れ方といい、まるで幽霊だな...ってか、今の俺は飛べねぇのに、お前は飛べるとか...ずりぃぞ。
取り敢えずバックステップを三回して、フレイアさんと距離を空けた。今の俺は、溶岩のプール真ん中で溶岩面の上に立っている。落ち着けねぇな...蒸し暑いし、居心地悪い。
「鬼火!」
フレイアさんは右腕をこっちに向けて伸ばし、指差して唱えた。すると、沢山の青白い火の玉は生きているかの様な動きで、こっちに襲い掛かる。その動きはゆっくりだが、不気味だ...この場と似合い過ぎる。
「吹き飛べ! バギクロス!」
俺は右手のアッパーと共に、バギクロスを唱えた。放たれた真空波の竜巻は次々と鬼火をかき消しながら、フレイアさんに迫る。
「はっ!」
フレイアさんは右足を斜め上に蹴り上げて竜巻を発生させ、バギクロスの竜巻と相殺した。おいおい...まるでリナリーの蹴り技だな。
その後直ぐにフレイアさんは、超低空飛行でこっちに高速接近した。真正面か、あの技で迎え撃とう。
「喰らえっ、火中天津甘栗拳!」
火の中にある栗を目にも留まらぬ速さで拾う如く、マシンガン乱射の様な拳打(いわゆる爆裂拳)をフレイアさんに放った。
しかし、フレイアさんは喰らう寸前で、飛行コースを左90度直角に曲がって回避した。直ぐに俺の右隣へ到達する。しまった! 技の硬直で隙が...
「連打のお返しだ!」
「あががががががががががががが!」
フレイアさんは膝を曲げる形で右足を上げ、ストリートファイターの春麗みたいに百裂キック(突き蹴り連打)を繰り出して来た。俺は如何する事も出来ず、蹴り乱打の攻撃をまともに喰らう。く...もし、彼女が履いているブーツの踵がハイヒールみたいに尖っていたら...考えただけでも、恐ろしい。
「がはっ!」
フレイアさんの蹴り乱打のフィニッシュで蹴り飛ばされた俺は背中を近くの壁(溶岩のプールの横。上り階段を見て左の方)に叩きつけられる。
「ぐ...うっ......太陽拳!」
「!? 目が...」
俺は受けたダメージの痛みに耐えつつ、両手で前髪をかき分ける様なポーズを取って眩しい光を放ち、フレイアさんの目を眩ませた。彼女は両手で目を覆う。よしっ、成功だ! ...この姿、泣いている女に見えるな。
「ベホマ!」
二度目のベホマでダメージを回復した後に、瞬動で溶岩のプールの上から上り階段の前へ移動し、もう一度上の階へ駆け上がる。戦っても、勝てる気がしねぇ...逃げるが勝ちだ!
が、しかし...
「んなっ!?」
「ふふ...お久しぶり。中々の不意打ちだったぞ」
再び上の階へ上がった俺は、黒鉄の扉の前で腕組みしながら立っているフレイアさんを見て驚愕した。お久しぶりって...超高速で退却するピッコロを、超々高速で回り込んだ第三形態フリーザのセリフだろ!
「目の回復が早ぇな...おい」
「目が眩んでも、気合で直ぐに治る。それより...降参するか?」
フレイアさんはベルトの左腰に掛けてあった手錠を左手に持って、勝気あふれる余裕な顔で俺に降伏を薦めてきた。まるで婦警...いや、チャイナドレスを着ているから中国の女刑事さんだな。勇ましくて、似合い過ぎるぞ。
「いや、まだだ! ......分身!」
「(鉄也が三人...分身の術か。少し本気を出そう)」
まだ諦めない俺は忍者の様に両手で印を結び、分身の術を使った。右隣と左隣に自分の分身体(計二体)が現れる。忙しくて手が離せない時に、なのは達の護衛で重宝した技だ。分身体でも、本物の俺と同じ位強いぜ。新婚気分が抜けていない頃...夜の相手をする時に使った事もあるが、猛反対されたけどな~。 ※当たり前です! 本人じゃなきや、嫌だろうに...
≪俺は全力全開のかめはめ波で、あの扉をぶち破る。気を溜めている間に、強敵のフレイアさんを抑えてくれ≫
≪≪おう、了解だ。任せろ!≫≫
フレイアさんに悟られないように、分身体二人に念話で指示を出す。逃げた先に回り込まれた以上...あの扉ごと吹き飛ばして突破するしかねぇ!
「はあああああああああああっ!!」
両腕を前にクロスして振り抜き、力を溜める体勢に入る。そしてドラゴンボールのZ戦士の様に力みながら掛け声を上げ、フルパワーまで気を溜め始めるのだった。頼むぞ...俺の分身達よ。
~SIDE OUT~
「どどん波!」
鉄也の左隣に立つ分身鉄也Bは、右手の人差し指をフレイアに向けて、どどん波を放った。指一点まで集束された気の黄色い光線が、超高速でフレイアの方へ伸びる。
しかし、フレイアは右手でどどん波を受け止めて防いだ。その隙に、鉄也の右隣に立つ分身鉄也Aは、瞬動でフレイアとの間合いに入る。
「今度は外さねぇぞ。火中天津甘栗拳!」
「甘いな」
分身鉄也Aはフレイアに火中天津甘栗拳(爆裂拳)を繰り出すが、彼女は両手で拳打を全て捌いている為、一撃も入らない。ダダダダッと打撃音がマシンガンの様に響く。
このままじゃ、反撃されると思った分身鉄也Bは加勢するべく、瞬動で分身鉄也Aの左隣(フレイアの右隣)まで移動する。
「二人掛かりの攻撃を避けられるかっ。火中天津甘栗拳!」
加勢した分身鉄也Bも、フレイアに火中天津甘栗拳を放った。それに気付いた彼女は、防御より回避の方が負担は少ないと判断し、瞬動サイドステップで扉の前から右へ移動して回避する。
分身鉄也達二人は火中天津甘栗拳をキャンセルし、素早いステップで扉の左へ移動した。直ぐに横一列の陣形を取ってフレイアと向き合い、右手の平の上に燃え盛る火の玉を出す。あれはメラゾーマか!?
「「カイザーフェニックス!」」
分身鉄也達二人は唱えながら右手をフレイアに向けて翳し、火の玉から変化した火の鳥を放った。直ぐに二羽の火の鳥は合体し、一回り大きくなった火の鳥がフレイアを襲う。
「(今度は火の鳥か...超高温の太陽やマグマでも、温い私には平気だ)」
ーーゴォォォォォォ...
大きい火の鳥がフレイアに命中して、大きな橙色の火柱が巻き上がる。だが、火柱に包まれた彼女から苦痛の悲鳴を上げる様子はみられない。それで手応えを感じない分身鉄也達二人は、左手の平の上に冷気がこもった青白い魔力弾を出す。あれはマヒャドか!?
「「マヒャデドス!」」
分身鉄也達二人は唱えながら左手を火柱に向けて翳し、青白い魔力弾を放った。それが火柱に命中した瞬間、青白い光の柱が上がって火柱を飲み込む。
暫くして青白い光の柱が収まると...其処には、氷漬けでフレイアを閉じ込めた氷柱が出来上がっていた。手応えあった分身鉄也達二人は喜び合ってハイタッチする。そんな事よりフレイアの衣装についてだが、さっき炎に包まれたのに全て無傷だ...焦げ跡も無い。
「(流石だぜ...俺の分身達。これで楽に時間を稼げるな)」
気を溜めながら、感心している鉄也。其処で...
ーーゴォォォォォォ...
「「「!?」」」
突然、青白い火柱が氷漬けフレイアの氷柱を飲み込む様に巻き上がる。1分も経たない内に、その火柱が止むと...其処には何も残っていなかった。
「...次はこっちの番だ」
暫くして...さっき氷柱があった場所で、幽霊みたいにフワッと現れたフレイアは、手の甲を前に見せる様に右手を顔の高さまで上げて全ての指をワキワキと動かし、何かを掴もうとする手つきで分身鉄也達二人に言った。その直ぐに瞬動で、分身鉄也Aの左隣に立っている分身鉄也Bに急接近する。鉄也達三人が反応出来ない程、かなり速い!
「うぐっ!?」
間合いに入ったフレイアは右手で分身鉄也Bの喉首を掴み、持ち上げた。首を絞められる彼は、両手で彼女の右腕に捕まりながら苦しんでいる。マッチョでもない女性の細い腕なのに、凄い腕力だ...
「まずは一人、消えて貰うぞ」
「ぐ...あ...がぁっ!?」
そう言ったフレイアは右手の握力を段々と強めていき、グシャッと分身鉄也Bの喉首を握り潰した。そして活動を維持出来なくなった彼は、黄色い光の粒となって霧散する。成長限界無しの転生特典がある上で、数十年修行してきた鉄也の身体はバグ的に丈夫な筈...それ同等の分身体なのに握り潰せるとは、握力も凄い。因みに分身体は気と魔力の塊なので、血は出ない。中身の内臓だって簡単な造りだ。
「...脆い」
「「(お、恐ろしい女だ...)」」
右腕を上げたまま、つまらなさそうに呟くフレイア。現在進行形で気を溜めている鉄也と、フレイアの豪快な行動で硬直している分身鉄也Aは、分身鉄也Bの最後を見て顔を引き攣らせる。そう、彼女に首を掴まれたら一巻の終わりだと認識したのだ。
接近戦は危険だと判断した分身鉄也Aは、瞬動で鉄也の左隣へ移動して、自分の間近に立つフレイアと距離を空けた。その直ぐに彼は右手を天へ上げ、手の平の上に円盤状の黄色い気刃(直径1m)を出現させる。
「気円斬!」
「(あの回転気刃は...私を真っ二つにする気か?)」
技名を呼んだ分身鉄也Aは、円盤状の気刃をフリスビーみたいに高速回転させ、右手を振り下ろしてフレイアに投げつけた。その気円斬はギュルルルルルッと風を切る音を出しながら、かなりの速度で彼女に迫る。
「楯!」
フレイアは右手を気円斬に向けて、手の平の前に気で構成された青白い盾(直径30㎝)を出現させた。気円斬がフレイアの盾にぶつかり、ガリガリと削る音を鳴らす。チェーンソーで、硬いダイヤモンドを削る様な感じだ。
数十秒後...気のエネルギーが少なくなった気円斬は、回転の勢いが弱まって霧散した。それを確認したフレイアは、気円斬を防いだ盾を消して扉の左から扉の前へ足を進める。反撃して来ないので、分身鉄也Aは様子見だ。
「...鉄也。此処を突破する為に気を溜めているようだが、無駄な足掻きだ」
「ふんっ、絶対に突破してみせる。俺等は諦めねぇからな」
扉の前に立ち止まったフレイアは、鉄也の方に振り向いて「無駄な抵抗は止めろ」と呼び掛けた。分身鉄也Aは鼻を鳴らして、鉄也の代わりに返答する。鉄也は気を溜める事に集中しているので、今は話せない。
「本当に難儀な男だな。お前は(全力の抵抗を止めた後で制裁だ)」
呆れた様子で応えたフレイアは、左手に持ちっ放しの手錠をベルトの左腰へ戻した後、ニュートラルの立ち状態で密かに戦闘力を上げながら、鉄也と向き合って見構える。気を溜めている鉄也への妨害はしないようだ。
≪分身、今は待機だ。かめはめ波で扉をぶち破った後、疲労で動けない俺を背負って此処を脱出してくれ≫
≪了解した。あのフレイアさんに負けるなよ!≫
鉄也と念話で打ち合わせをした分身鉄也Aは、かめはめ波に巻き込まれないように部屋の隅(鉄也から左離れ)へ避難する。
それから2分経って...鉄也の気が、フルパワーまで溜まったこの時!
「...か~~め~~は~~め~~」
鉄也は両手を開けている形で合わせ、右腰近くへ構えた。溜めた体内の気を収束させる段階に入り、両手の平の間に青白い気の光が現れる。
「波ぁっ!」
少し時間を掛けて、かめはめ波を完成させた鉄也は大きな掛け声を上げ、フレイア(正確には扉の方)に向けて撃った。一つの惑星を貫いて破壊する威力を秘めた太い光線が、かなりの速度で伸びる。
「(全力でこの程度か...例え100倍であっても、片手だけで余裕だな)」
フレイアは右足を一歩前へ踏み込み、突き出した右手だけで鉄也のかめはめ波を受け止めた。あまり抵抗を感じない彼女は、涼しい顔をしている。そんな信じられない止め方を目の当たりにして、驚く鉄也と分身鉄也A。
「くっ...界王拳20倍だぁぁぁっ!!」
焦った鉄也は叫ぶと...全身が赤く光り、爆発的にかめはめ波のパワーが20倍跳ね上がった。その光線は一段と太くなって勢いも増し、光が強くなって逆光により、フレイアが見えなくなる。
・・・・・
数十秒後...鉄也の気が少なくなってきて、かめはめ波が止んだ。段々と光が収まり、扉がある方向の視界が良くなっていく。
「はぁ...はぁ...はぁ...(かなり疲れて、驚く気力もねぇよ...無理に20倍の界王拳を使ったから、全身が痛ぇ...畜生)」
「あ、有り得ねぇ...(数十年修行を積んで、聖王のゆりかごを破壊した時より格段にレベルアップしたというのに...化け物か? この鬼姫さん)」
傷一つも無い扉の前に居る無傷のフレイア(衣装全体も無傷)を見た分身鉄也Aはまた驚いているが、鉄也は疲労と全身痛でリアクションの余裕が無い。
「......」
かめはめ波を止めた体勢から、ニュートラルの立ち状態に戻ったフレイアは何も言う事無く、幽霊みたいにフワッと姿を消した。その数秒後、部屋全体の空気が一変する。温度が下がった様な冷たい感じにより、寒気がして金縛りに遭う鉄也と分身鉄也A。これが彼女からの、恐ろしい制裁の始まりだ。
「わっ!? ......ぐふっ!?」
「んなっ!?」
数分経って鉄也の疲労が、ある程度回復した所で...突然、部屋中央へ飛ばされた分身鉄也Aの胸に風穴が開き、直ぐに身体がバラバラに切り裂かれた! やがて黄色い光の粒となり、霧散する。そんな恐ろしい光景に目を見開いて驚愕し、恐怖する鉄也。あのバラバラ切り裂きは、気円斬の仕返しなのだろうか? 彼女は根に持つタイプかもしれない。
部屋全体を見回して、姿が見えないフレイアを探している鉄也。彼の背後...下り階段の前で、幽霊みたいにフワッとフレイアが現れる。何処でも、よくあるパターンだ...勿論、鉄也は気付いていない。
「...がっ!?」
一撃目...フレイアは左足のミドルキック(中段蹴り)で、鉄也(背中にヒット)を黒鉄の扉の方へ蹴り飛ばした。その攻撃は彼の反応より速い。
二撃目...瞬間移動で黒鉄の扉の前へ回り込んだフレイアは右足のトゥーキック(爪先で突く蹴り)で、鉄也(下腹部にヒット)を天井の方へ蹴り上げた。ブーツを履いたままなので、かなり痛そう... ※トゥーキックは危険なので、格闘技試合では禁止だ。
三撃目...瞬間移動で天井付近へ回り込んだフレイアは右足の踵落としで、鉄也(背中にヒット)を地面の方へ蹴り落とした。
四撃目...瞬間移動で地面へ回り込んだフレイアは左足のジャンピングニーキック(飛び膝蹴り)で、鉄也(みぞおちにヒット)をまた天井の方へ蹴り上げた。逆走による正面衝突と同じな為、二撃目と比べて強烈な一撃である。
五撃目...瞬間移動でまた天井付近へ回り込んだフレイアは左足の斜め踵落としで、鉄也(背中にヒット)を下の階へ、下り階段を通す向きの斜めに蹴り飛ばした。
再び、下の階へ蹴り飛ばされた鉄也は、階段前の足場にバウンド(顔面から直撃)して後ろ回転しながら、溶岩のプールの上に出た。彼は苦痛に耐えている為、トラマナを唱えていない。絶体絶命か!?
最後の六撃目...このまま溶岩のプールに落ちてしまう寸前の鉄也は、瞬間移動したフレイアによる右足の後ろ回し蹴りで腹部を蹴られ、溶岩のプールの向こう側へ飛ばされる。フレイアは蹴ってばかりだ...正に、キックの鬼。
「がはっ!」
蹴り飛ばされた鉄也は、そのまま...背中をL字曲がり角の壁に叩きつけられた。やがて膝から地面に付き、うつ伏せに倒れる。連続蹴り飛ばし攻撃で、かなりのダメージだ。体の骨全体は大丈夫か?
「う...ぐぅ...ベ...ホマ」
瀕死状態の鉄也は三回目のベホマを唱えて、フレイアの連続攻撃で受けたダメージを全回復した。しかし、立ち上がる気力は無い。圧倒的なレベル違いで、心が折れたようだ。
「......」
溶岩のプールの前(階段の向こう側)で、幽霊みたいにフワッと現れたフレイアは、凍る様な冷たい目で鉄也を見下ろしながら歩いて距離を縮める。こ、怖い...処刑の執行者(エクスキューショナー)そのものだ。もし、血塗られた武器(特に刃物)を持っていたら、これ以上ない最恐だろう。
「...ひっ!」
倒れたまま顔を上げてフレイアを見た鉄也は、恐怖を感じて短い悲鳴を上げた。今のフレイアは、凄まじい殺気と威圧感を表しているから無理もない。あ...鉄也のズボンと下の床が濡れてる。失禁か!?
「フレイア様! 俺は何でもします! 何でもしますから、どうか...どうか処刑だけは、ご勘弁を」
フレイアに向けて、必死に土下座をして命乞いする鉄也。今の彼は鼻水を垂らした泣き顔で、折角のイケメンが台無しだ。お漏らしもあって、何という無様な...
「ふぅ...鉄也。情けで処刑の取り消しは、絶対に無い。長年...このように命乞いする亡者を数え切れない程、沢山見てきたからな」
「そ、そんな...」
一息ついて雰囲気が戻ったフレイアは非情になって、許しを乞う鉄也のお願いをバッサリ断った。もう如何しようもないと、理解した彼は絶望する。
「鉄也...お前は一番好きな女の子を早く心に決めていれば、優柔不断でこんな事にならなかった。...違うか?」
「......」
鉄也は黙ったまま、俯いている。反論出来ず、今は後悔で一杯だろう。好意がある状態で時間を掛ければ、お互いの結びつきが強くなり、断りにくくなる。だからフレイアが言った通り、付き合う相手を早く決めた方が良い。
四つん這い状態である鉄也の両手に手錠をかけたフレイアは、彼の右隣へ足を進めた。それから左手で鉄也のTシャツ後ろ襟を掴む。
「時間を取られてしまったな......さあ、逝こうか」
フレイアはズルズルと鉄也を引き摺って、廊下の奥にある執行室へ連行するのだった。其処で処刑の前に、鉄也はフレイアに“痛み10倍”と“気絶しない”の呪いをかけられる。勿論、力の封印も。
・・・・・
此処は執行室付近の廊下...その床に、多量の赤い液体が散乱している。ソレはフレイアに処刑された亡者達の......怖いから言いたくもない。
今...大量の短剣や鋼の鞭を乗せた台車を押している青服青ガントレット装備のメイドさんが、この廊下を通り過ぎて行った。新たに入荷した処刑用の武器を、奥の倉庫へ運んでいるらしい。普通に考えて、この場にメイドさんは似合わない...と云うか、メイド服にガントレットはシュールだ。
ーーブチュッ
「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
鉄也がフレイアに連行された執行室から...二つ重なった破裂音の直ぐに、断末魔の叫びとも云う彼の声が響き渡るのでしたー。南無阿弥陀仏...
これぞ...交わす重婚など、ふざけたハーレム王の末路なり!
完
執行室の中で、如何なっているのか...その内容は、
Rー18(女→男)で恐ろしい残酷な描写になるので、書けません。
花嫁の座を取り合う燃える乙女のバトルなら、ハーレムは文句ないです。
但し...重婚はダメだ! ざけんじゃねーぞ!
と云う主張で、このIF短編を書きました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物の最大戦闘力データ
鉄也 1000億 ※標準は50億であり、20倍の界王拳を使った場合。
分身鉄也 50億 ※本体と違って、界王拳は使えない。
フレイア 2京 ※スーパー17号Afterと同じレベル。
女兵士さん 1万8000
メイドさん 1万2000
仲人達三人 不明 ※鉄也より数段低いと云う事は確か。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー