力持ちの人魚と祝福の風も神様転生   作:峻天

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012 初バトルとDQの呪文

修行をする為に造られた精神世界で高い所から見れば、2倍大きい陸上競技場みたいな場所。今の空は橙色に染まった夕日だ(外の世界の時間は止まっているので、深夜3時のまま)

 

2回目のスペシャルアスレチックをクリアした仲人達四人はトラックからフィールドへ移動してセレンと向き合っているのだが...

 

「「「......」」」

 

仲人と翔とアキラは、セレンに対して恨めしそうな目で見ている。自分の為だと割り切っているとはいえ「1発、殴らせろ!」に値する程、ストレスが溜まっているので表情を堪えるのは無理である。リインは何とも無いようだ。

 

「セレンさん。この不和な空気...何とかなりませんか」

 

「そうですね...」

 

困ったリインのお願いを聞いたセレンは少々落ち込んだ表情になり、ストレスが溜まらないように工夫をすれば良かったと反省して思案する。

 

「...気晴らしに、模擬のモンスター討伐を行いたいと思います」

 

「「「「え?/は?」」」」

 

行き成りモンスター討伐だと、誰も予想しなかった発言を聞いて目を見開く仲人達四人。だが、セレンは気にせず話を続ける。

 

「特にルールは無く、四人で協力して対象のモンスターを全滅させる事が勝利条件となります。聞きたい事はありますか?」

 

「モンスターを倒せと言われましても...デバイスが無いから、俺と仲人とアキラは強い魔法を使えません。リインの足手まといになるのは嫌ですよ」

 

「ふふ、そんな事はありません。今の魔法が頼りにならなくても、同僚者から頂いた特殊能力があるでしょう」

 

修行ではなく、あくまでも気晴らし。倒す対象のモンスターは命を持たないので、迷わず思いっ切りやれと微笑んで応えるセレン。文句を言った翔は「あっ」と気が付いて特殊能力はOKと理解する。聞いた仲人とアキラも翔と同じ反応を見せ、リインは不敵な笑みを浮かべた。同僚者とは、仲人達四人を転生させた最高神の事を指す。

 

「皆さん。今からフィールドの西端へ向かいます。付いてきて下さい」

 

仲人達四人は頷いて、セレンとフィールドの北端真ん中から西端真ん中へ移動する。その途中、西へ沈む前の太陽が眩しくて前が見えにくかった。因みにセレンの意思で昼夜を自由に変えられるそうで、太陽は動いていない。

 

・・・・・

 

陸上競技場で云うと槍投げの競技を行う場所にあたるフィールドの西端真ん中...

 

「どんなモンスターが出てくるか、ドキドキしてきた...」

 

「はは、そうだね......セレンさん。これから戦うモンスターの特徴を教えてくれませんか?」

 

緊張しているアキラに苦笑して同感した仲人は、顔をアキラからセレンに向けて訊ねる。この先、どんな相手か...分からないからこそ、ハラハラドキドキする冒険的なものだ。

 

「ヒ.ミ.ツです☆」

 

腰を前に曲げて左手を腰に当てて、立てた右手人差し指を自分の口に当てて、左目をウインクしながら秘密と言うセレン。大人の女性だが、その仕草は何となく可愛い。セレンの意外な面を見た仲人達四人はブーイングするところか、キョトンとした。

 

「...でも、攻略法なら教えられます。ザコは早急に数を減らせば、苦戦しないでしょう。それからもう一つ、ボスは弱点を突かないと倒せません」

 

「(ザコが多い様なら、広域殲滅魔法で一気に片付けるか)」

 

「弱点...か(となると、ボスのモンスターは大型になる可能性が高いな)」

 

モンスターの情報を教えない...けれど、セレンは予想がつくようにヒントを教えた。聞いたリインと翔は腕を組んで、如何するか思案する。話によると、討伐対象のモンスターはボスと多くのザコで構成された軍団になる見込み。弱点を突けと聞いてボスは大型になると予想される理由は、フィクションにおいて大きな竜の頭部を攻撃、大きな戦艦の艦橋を攻撃すると云う例で、撃破する為に弱点の部分を狙う事が多いからである。

 

「それでは...打ち合わせをして準備が出来たら、私に声をかけて下さい」

 

テレビゲームのRPGのイベントで良くある確認のセリフを言うセレン。仲人達四人は頷いた後、円を作って作戦会議を始めた。

 

「皆。戦闘方法は、遠距離攻撃で行きたいと思う」

 

「おう、俺も賛成だ。まだ経験が足りない近接戦闘は危ねぇからな」

 

翔は少々悔しい気持ちで、仲人の意見に同意する。修行科目の拳法や剣術・槍術は近接戦闘向けだが、未だ組手をやっていない。だから仲人の意見通り、経験皆無の近接戦闘は避けるべきだろう。

 

「う~ん...遠距離攻撃の場合、私は水を作ってモンスターにぶつけるだけで良いかな?」

 

「アキラ。それだけでは威力が足りないぞ。水を固体化させて硬い氷にした方が効果的だ」

 

アキラは立てた右手人差し指を自分のこめかみに当てて思案するが、リインはダメ出ししてアドバイスした。アキラの特殊能力“水の操作”で精製した水を水蒸気(気体)か氷(固体)に変える事が出来る。其処で水よりも、硬い氷の方が威力は高い...と言っても、水圧を極限まで上げれば地球一硬いダイヤモンドを切る事も可能だ。但し、後者は魔力の燃費が悪い。

 

「兎に角、アキラの戦法はこれで決定だね。僕と翔はアイテムクリエイションで、誰でも扱い易い銃火器を作って戦おう」

 

「そうだな。人間サイズにしたガンダムの【ビームライフル】を作るか。スターオーシャンの【フェイズガン】も捨てがたいな」

 

「翔、どっちでも良いよ。アイテムクリエイションは望めば、オリジナルにある欠点を無くす事も出来るし(物騒な物だから作る際、人間に当たっても無効になる安全効果も足そう)」

 

また仲人の意見に同意して、どんな銃火器が良いか?と腕を組んで悩む翔だが、仲人の一言でハッとする。対象物を分子レベルまで破壊する事から【ビームライフル】より威力があると思われる【フェイズガン】はエネルギーのチャージがあるので連射出来ない欠点がある。しかし、アイテムクリエイションは望んで強引に欠点の無い物を作れる。但し、魔力を多く消費する上に科学を無視したブラックボックス扱いとなるが...

 

「ザコモンスターの相手は、私に任せてくれ。広域殲滅魔法で一掃する」

 

「リインは強力な魔法を使えるから、特殊能力の出番が無いね...」

 

広域型の魔導師(騎士)であるリインは余裕で、右手のガッツポーズをしてザコ掃除を引き受けた。アキラは少々引きつった顔で言い、仲人と翔も頷いて同感する。これで仲人達四人の戦闘方法は決まった。

 

リインは黒い騎士甲冑を展開し、仲人はアイテムクリエイションで【フェイズガン改】を作る。翔も同じ特殊能力で人間サイズの【ビームライフル改】を作って準備が完了した後...

 

「セレンさん! 準備が出来ましたので、何時でもOKです」

 

「ふふ、解りました。遠距離攻撃を選ぶとは、賢明な判断ですね」

 

利き手の右手に【フェイズガン改】を持った仲人は、前に出て芝生フィールドの前に立っているセレンを呼ぶ。何時でもOKと伝えると、セレンは微笑んで頷いた後、東の方へ踵を返した。仲人達四人も東の方へ向き、唾を飲んで戦闘態勢に入る。そして、暫く嵐の前の様な静寂。

 

「......出でよ! ヘレティック・キラーマシン3!」

 

「「!?(キラーマシンだって!? ...3?)」」

 

セレンは右手を前に翳して唱えた。知っている名前を聞いて驚く仲人と翔は置いといて、芝生フィールドの向こう(陸上競技場で云うと砲丸投げ・走り高跳びの場所にあたる)にブラックホールみたいな黒い球が出現して、徐々に大きくなっていく。

 

暗い闇で獲物を狙う獣の鋭い眼光みたいに赤い光の1点が灯り、大きな黒い球がフェードアウトする。其処に全高30mもある脚無しのモンスターが、地面の上を浮く状態で佇んでいた。容姿は...両サイドに黄色の雄々しい角が付いた黒い兜、腕と胴体に装甲で覆われたモビルスーツみたいな黒い鎧、顔面には赤く光る一つ目のモノアイだけで鼻も口も無い。右手は先端に斧の形をした剣、左腕肘から手首にはボウガンを装備している。

 

『きらーましんトきらーましん2ヲ召喚スル』

 

ヘレティック・キラーマシン3は剣を天に振り翳して唱えると、その前線でキラーマシン二十体とキラーマシン2二十体の群れがフェードインする様に出現した。ザコなので、大きさは大人の人間より少し大きめ。キラーマシンの容姿は、四脚型で青いボディ、丸い頭部で一つ目の赤いモノアイ、右手は細い曲刀、左手はボウガン、背中に矢筒。キラーマシン2の容姿は、浮遊型で青いボディ、ドラゴンの様な頭部で一つ目の赤いモノアイ、右手はスパイクの丸いメイス、左手は刃渡り短めの曲剣、下半身のテイルにボウガン。

 

「意外な所で、ドラゴンクエストのモンスターが出て来て驚いたぜ...(キラーマシン3は見た事がねぇな、次のドラゴンクエスト9で出るのか?)」

 

「まぁ...何処かにドラゴンクエストの世界があると確信したよ」

 

翔と仲人はキラーマシンの軍団を見ながら会話した。彼等はドラゴンクエスト8までプレイした事があり、メーカーが公開する前に転生されたのでドラゴンクエスト9の存在を知らない。

 

『突撃!』

 

ヘレティック・キラーマシン3は赤いモノアイを一時的に強く光らせて号令を出すと、キラーマシンとキラーマシン2の群れは仲人達四人に向かって前進し始めた。その時、リインは高さ15m高い所まで飛行魔法で飛び上がり、両手の平を天に向くように上げて詠唱を始める。

 

「遠き地にて、闇に沈め...デアボリック・エミッション!」

 

リインは詠唱を終えると、手の平の上に漆黒の魔力球がフェードインする様に出現した。始めの魔力球の大きさは直径50㎝であったが、急に膨張して直径8mの大きさになる。あれはまるで漆黒の元気玉だ。

 

「黒い球が、急に大きくなった!?」

 

「あれが、広域殲滅魔法...」

 

「アニメじゃなくて、本物だと迫力があるな...」

 

「......」

 

仲人達四人は、上に居るリインの様子を見ていた。アキラと仲人と翔は冷や汗をかいて呟くが、逆にセレンは涼しい顔で見守っている。

 

「...はぁっ!」

 

リインは掛け声と共に両腕を振り下ろして漆黒の魔力球を、200m離れているキラーマシンの軍団に放り投げた。見た感じ、その動作は大きい元気玉を放り投げる孫悟空と似ている。

 

ーーゴオォォォォォ...

 

「「「っ!?」」」

 

漆黒の魔力球が着弾すると、半球状に渦巻いた闇の激流が轟音と共に拡大していき、キラーマシンの軍団を飲み込んだ。突風も巻き起こり、仲人と翔とアキラは両腕で顔を覆いながら踏ん張って耐えるが、セレンは長い髪が乱れているだけで平気の様だ。なお、デアボリック・エミッションは着弾しなくても“闇に染まれ”と呟くだけで任意に爆発させる事も出来る。

 

それから数分経って闇の激流が止むと、芝生フィールド東側は抉られて大きなクレーターが出来ていた。キラーマシンとキラーマシン2は全て一掃され、両腕を失ったヘレティック・キラーマシン3だけ残っている。胴体の胸部に一つのヒビが入っただけで、頭部は傷一つも無い。敵の戦力を大きくダウンさせた戦果で、仲人達四人は歓喜の声をあげるが...

 

『まほとーん!』

 

「っ!? ...うわぁぁぁ!」

 

リインは突然、騎士甲冑が解けて服装が体操服(紺ブルマ)に戻り、重力に引かれて落下した。ヘレティック・キラーマシン3が唱えたマホトーンは魔法の使用を封印する呪文。つまり...リインは魔法を封印されてしまい、騎士甲冑と飛行魔法を維持出来ず、解けてしまったというわけだ。

 

「「「あっ、危ない!」」」

 

その様子を見た仲人と翔とアキラは慌てて落下地点まで移動し、三人でリインを受け止めた。ナイスキャッチ!

 

「リイン。大丈夫? 怪我とか無い?」

 

「ああ、すまないな...お蔭で助かった(再度、飛行魔法を掛けても発動しない...くっ、魔法を封じられたか。マホトーンは魔導師の天敵だ)」

 

アキラは心配そうな様子でリインに訊いた。リインは大丈夫だとお礼を言い、仲人達三人の腕から降りて立ち上がる。

 

「これじゃあ、特殊能力を使わないといけなくなったね」

 

「そうだな...竜巻を発生させて敵にぶつけるか」

 

リインは悔しい気持ちを抱いたまま考え、仲人に応えた。魔法を封じられた事で、仲人側の戦力がダウンしてしまったのは間違いないだろう。

 

『カラクリ兵トぷろときらーヲ召喚スル』

 

「「「「!?」」」」

 

ヘレティック・キラーマシン3の声が聞こえた。仲人達四人はハッとし、嫌な予感で東の方を見る。其処にからくり兵四十体とブロトキラー四十体の群れが出現していた。敵は両腕を失った分、ザコの数が二倍になっている。からくり兵の容姿は、二足歩行で水色のボディ、縦長い軍帽を被った様な頭部で赤いモノアイ、右手はスパイクの丸いメイス、左手はハンドアックス。プロトキラーの容姿は、からくり兵の色違いで青紫色。

 

「さ、最悪だ...」

 

その様子を見たアキラは顔を青くして呟いた。よりザコの数が多い上に、今度は広域殲滅魔法を使えないので、そうなるのも無理はない。

 

「見た所、ザコは遠距離攻撃の武器を持っていないようだ。飛行魔法を使えたら、かなり楽なんだが...」

 

「仲人。四人分の【タケコプター】を作って黒いキラーマシン3と空中戦だ」

 

「成る程ね...これなら、ザコを無視してボスとの戦闘に集中出来る」

 

「せこいね...この戦法」

 

アキラは、リインと翔と仲人の会話を聞いて苦笑する。せこいと言うが、試合ではなく戦争みたいなものなので、被害を出来るだけ少なくする事が勝利の方程式である。

 

仲人と翔はアイテムクリエイションで【タケコプター】を作り、アキラとリインに配る。そして、仲人達四人は自分の頭に【タケコプター】を付け、スイッチを入れて空へ飛び上がった。因みに仲人と翔とアキラは、空を飛ぶのが今回で初めてである。

 

「制御しない分、飛行魔法と比べて楽だな...これは」

 

「空を飛ぶのって、気持ちいいね...癖になりそう」

 

「ははっ、俺もだ。だから人間は空を飛びたいと夢に想うんだろうな」

 

「僕は宙返りやスクリュー回転をやってみたいけど...今は自重かな」

 

飛行中の仲人達四人は感想を述べながら、ヘレティック・キラーマシン3に近付く。遠距離攻撃があるのに何故近付くのかと云うと、そんなに離れていれば命中率は低いし、攻撃しても回避され易いからである。

 

「......」×80

 

地上に群がるからくり兵とプロトキラーの大軍は、上空を飛んでいる仲人達四人を見ているだけで如何する事も出来ない。これは「こらーっ! 空を飛ぶなんて卑怯だぞ! 降りて来い!」と笑える様な絵図だ。

 

『体当タリ!』

 

ヘレティック・キラーマシン3は体を水平に傾け、きりもみ回転頭突きで突進してきた。仲人達四人は飛行進路を90°曲げて回避する。

 

「皆! 赤い目を狙って集中攻撃だ!」

 

「「「おう!/うん!/ああ!」」」

 

翔とアキラとリインは仲人の号令に了解と応え、全員攻撃態勢に入る。

 

仲人は【フェイズガン改】で、翔は【ビームライフル改】で狙い撃った。青白い色と緑色で二条の光線がヘレティック・キラーマシン3の赤いモノアイに命中する。そして、赤いモノアイにヒビが入った。

 

「水球! 固体化! やぁっ!」

 

アキラは両手の平を上に上げ、直径2mの水球を作り出す。次に固体化で水球から氷塊に変え、掛け声と共に両腕を振り下ろして放り投げた。その動作は、さっきデアボリック・エミッションを放ったリインと同じ。高速で飛ぶ氷塊はヘレティック・キラーマシン3の赤いモノアイに命中する。激突した氷塊は砕け散って、赤いモノアイに更にヒビが入った。

 

「はぁぁぁっ!」

 

リインは拳の振り上げ(アッパー)で前方に大きな竜巻を発生させた。その竜巻は地上の進行コース上に立つからくり兵とプロトキラーを蹴散らしながら、ヘレティック・キラーマシン3へ向かう。そして激突し、赤いモノアイを破壊した。更にヒビがある胸部のハッチも破壊され、コアと思われる直径2mの青く光った宝玉が剥き出しになる。

 

「弱点は赤い目かと思ったけど、違うみたいだ...」

 

「だな...赤い目を破壊したのに、倒れる様子もねぇし」

 

「という事は...胸部にあるアレが弱点?」

 

「多分な...(暴走した夜天の書の防衛プログラム・ナハトと似ているな...それと違って攻撃が激しくない事とバリアや無限再生が無い分、楽か)」

 

ヘレティック・キラーマシン3は動きを止め沈黙している中...仲人、翔、アキラ、リインの順に思った事を話した。

 

『ばぎくろす!』

 

ヘレティック・キラーマシン3は上級真空呪文バギクロスを唱えた。さっきリインがやったのと同じ大きな竜巻が前方に発生して、仲人達四人を襲う。その竜巻を見た仲人達四人は慌てて横へ移動し、竜巻の進行コースから回避した。竜巻は此処で終わらず、猪突猛進で進行コース内のからくり兵とプロトキラーを巻き込んでいく。そして、残り数が半分に減った。

 

次は仲人達四人のターン...仲人と翔は射撃、アキラは氷塊投げ、リインは竜巻でヘレティック・キラーマシン3の胸部コアに集中攻撃する。電気パチパチと云うダメージのエフェクトが入り、胸部コアは青から紫に変色した。

 

突然、ヘレティック・キラーマシン3は体を右の方へ向いた。その分からない動作に、仲人達四人は首を傾げる。

 

『すーぱーれーざー!』

 

ヘレティック・キラーマシン3の胸部コアから直径5mの電気パチパチな紫白いレーザーを発射した。そのレーザーは発射したまま薙ぎ払う様に、胴体を右から左へ150°水平回転する。それを見た仲人達四人は上へ移動してレーザーを回避した。

 

...が、此処で終わらずヘレティック・キラーマシン3はレーザーを発射したまま、仲人達四人のいる高さまで上へ移動した後、レーザーを直径5mから直径10mに太くした。そして、また胴体を左から右へ150°水平回転する。それを見た仲人達四人は驚き、全力で下へ移動してレーザーを回避した。その後、レーザーが細くなって攻撃が止む。

 

再び反撃のチャンスが来て、仲人達四人はヘレティック・キラーマシン3の胸部コアに集中攻撃を加える。そして、電気パチパチと云うダメージのエフェクトと共に胸部コアは紫から赤に変色した。

 

『体当タリ!』

 

前回の体当たりと違い、ヘレティック・キラーマシン3は胴体を高速で水平回転させて突進してきた。もし、両腕があったらラリアット攻撃になる。仲人達四人は素早く横へ移動して回避した。そして、敵との距離が200m以上開く。仲人達四人は反撃の為に近付こうとするが...

 

『いおら!』

 

ヘレティック・キラーマシン3は中級爆裂呪文イオラを連発した。胸部コアから無数の黄色い魔力弾が嵐の様に飛ぶ。仲人達四人は引きつった顔で近付くのを止め、回避行動に専念した。何時まで経っても、攻撃が止まない。東からの攻撃なので、必然的に流れ弾が西に居るセレンに当たる事もあるわけで、彼女は手でイオラの魔力弾を弾いている。実力者の成せる業だ。

 

「(凄い弾幕だ...)」

 

「(ダイの大冒険で登場する大魔王バーンのイオラと同じじゃねぇか!)」

 

「(弾が多過ぎて近付けないよ...)」

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

仲人と翔とアキラはイオラの魔力弾を回避している中...リインは全力で拳を振り上げ、バギクロスの上位であるバギムーチョ級の超竜巻を引き起こした。その竜巻は地上に居るからくり兵とブロトキラーを蹴散らし、イオラの魔力弾を掻き消しながらヘレティック・キラーマシン3へ向かう。

 

「はぁっ...はぁっ...今の内に...竜巻を盾に...して進むんだ」

 

「「「りょーかい!/おうっ!/うんっ!」」」

 

仲人と翔とアキラはリインの指示に頷いた後、竜巻を盾にして前に進んだ。リインは特殊能力を思いっ切り使った為、かなり疲労している。

 

「エネルギーバッテリーを全て使って最大出力ーっ!」

 

「フルオートモード。全弾持って行けーっ!」

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

竜巻はヘレティック・キラーマシン3にダメージを与えて止んだ瞬間、仲人は【フェイズガン改】の最大出力で太いレーザーを撃ち出し、翔は【ビームライフル改】のフルオートモードでビームを連射し、アキラは両手を前に翳して厚い鉄板を抉れるほど水圧が高い太い横水柱(レーザーみたいな)を放った。三人掛かりの攻撃がヘレティック・キラーマシン3の胸部コアに命中する。胸部のコアは段々ヒビが入り、最終的に砕け散った。

 

ーーパチパチッパチパチッ...ドカァーーン!

 

コアを失ったヘレティック・キラーマシン3は、胴体全体が電気パチパチした後...自爆して煙と残骸は光の粒となって消滅した。そして、地上に居た残りのからくり兵とプロトキラーもフェードアウトする様に消えていく。

 

「か、勝った...(ボスを倒せば、ザコも一緒に消えるのか...倒す手間が省けて良かった~)」

 

「よっしゃー! ミッションコンプリート!」

 

「はぁっ...はぁっ...やったね」

 

仲人と翔とアキラはモンスターを倒し、勝利を手にして喜び合った。アキラもリインと同じく特殊能力を思いっ切り使ったので、息を切らしている。彼女は仲人や翔と比べてストレスを大きく発散出来たからか、清々しい顔だ。

 

「皆! お疲れ。お見事なトドメの一撃だったぞ」

 

「「「リイン! それにセレンさんも...」」」

 

西から飛んできたリインとセレンは、仲人達三人に合流した。仲人達四人は【タケコプター】で空を飛んでいるが、セレンは飛行魔法でも飛翔呪文トベルーラでもなく、気法の舞空術で空を飛んでいる。

 

「皆さん。気晴らし出来ましたか?」

 

「はい! 最後の一撃でスカッとしました」

 

仲人は清々しい顔でセレンの問いに答えた。続けて翔とアキラとリインもそうだと頷く。返答を聞いたセレンは、女神らしくニッコリと微笑んだ。

 

「ふふっ、それは良かった。後はクールダウンと私のマッサージで終わりですね...さあ、地上に降りましょうか」

 

仲人達四人はセレンに付いて行って、リインのデアボリック・エミッションで空いた地上のクレーターの傍である芝生フィールド西端に降りて行った。

 

・・・・・

 

地上に降りた仲人達四人は【タケコプター】を頭の上から外して地面に置いた。続いて仲人と翔は【フェイズガン改】と【ビームライフル改】も【タケコプター】と纏める様に地面に置く。因みに、その銃火器は二丁ともエネルギーが空なので、アイテムクリエイションでエネルギーバッテリーを作って交換しないと役に立たない。

 

次にセレンも含めて仲人達五人はクールダウンで、軽くクレーターを反時計回りに一周してアイテムを置いた所まで戻った後、セレンはアキラ→リイン→仲人→翔の順に労いのマッサージを行う。うつ伏せにして上半身のマッサージの場合、何故か馬乗りの体勢であった。セレン曰く、この体勢ならやり易いと言うらしいが...客観的に見てエッチかもしれない。

 

「セレンさん。ホイミ・ベホイミ・ベホマと云う回復呪文はありますか?」

 

マッサージが全て終わった所で、仲人は気になった事を思い出してセレンに訊ねた。ヘレティック・キラーマシン3と戦闘の時、ドラゴンクエストに登場する呪文を幾つか目にしたから気になった故の質問である。

 

「ええ、3つともあります。あと一つ、ベホイミとベホマの間に上級回復呪文のベホイムが入りますよ」

 

「じゃあ...死者を生き返らせる呪文のザオラルやザオリクも?(ベホイム? 聞いた事がねぇな...次のドラゴンクエスト9に出るのか?)」

 

「下級蘇生呪文のザオを加えて、その2つもあります。但し、死者を蘇生させるには幾つかの条件が付きますが...」

 

セレンは仲人と翔の質問に答える。彼女は異世元・平行世界において何でも有りと認識しているので、何で此方の呪文を知ってるの?と訊かない。蘇生の条件は始めにホイミ系で生命維持機能が回復出来る肉体の状態である事、次に定まった寿命を迎えていない事、それから死者魂が輪廻の輪に入って転生していない事、最後に生き返りたいと云う死者魂の意思がある事と蘇生呪文の説明もした。因みにザオは死んで一時間を過ぎると無効になってしまう。

 

「セレンさん。私等魔導師が扱っている魔法と、さっき仰った呪文と如何違うのですか?(ロストロギアではなく、人に対して魔法の使用封印や死者の蘇生...どちらの効果も、扱っている魔法で未だ実現していないな)」

 

「そうですね...」

 

リインの質問を受けたセレンは考える。ヘレティック・キラーマシン3が使用した呪文はミッド式・ベルカ式の魔法と違って契約してライセンスを取得する必要がある事と、細かい術式を組む事無く単純なイメージをして唱えるだけで発動出来る事と、魔力注入は効力・威力の調整なので失敗は無いと説明した。ミッド式・ベルカ式の魔法より優秀に見えるが...応用の幅が狭く、非殺傷の設定が出来ない。因みに、ヘレティック・キラーマシン3が使ったバギクロスとイオラはセレンの特権で都合よく非殺傷設定に変えていた。

 

あとライセンスの取得方法は、決まった絵柄の魔方陣を描いて上に乗って決まった契約の文を唱えて祈る事と、儀式で特殊な薬を浴びる事など、幾つかあると追加説明した。後者について、ドラゴンクエスト5の主人公はルラムーン草で調合した特殊な薬を浴びてルーラを習得すると云う例がある。

 

「セレンさん。呪文を使う為の契約は、誰とされるんですか?」

 

「呪文を司る神のアスペルと契約します」

 

セレンはアキラの問いに答える。呪文神アスペルはセレンの部下であり、神の一族が関わっている星々の一部しか契約方法が伝わっていないそうだ。

 

「ねぇ、翔。セレンさんの話通りなら、もしかして...」

 

「ああ。何気に辻褄が合うから、あの中に含まれるだろうな」

 

聞いた仲人と翔は会話して“神々が関わった星々の中に、ドラゴンクエストの世界が含まれる”と推測する。ドラゴンクエスト1~3に出る大精霊ルビスやドラゴンクエスト4~6に出るゼニスとマスタードラゴンやドラゴンクエスト7に出るかみさまやダイの大冒険に出る三大神(人間・魔族・竜族)が実在するかどうかは不明だ。

 

「私の世元に来られて一週間になる記念として、契約方法を載せた呪文書を差し上げますので、良かったら契約してみて下さい。ご友人に教えてあげても構いませんが、管理局には内緒ですよ?」

 

ニコニコ顔なセレンは言い終わる時に、立てた右手人差し指を自分の口に当てた。仲人達四人は呪文習得のフラグ建ちに目を見開いたものの、了解と頷く。それから、セレンは「呪文書は今日中に、うみなみ寮へ送る」と伝えた。ドラゴンクエストに出る呪文の契約方法が管理局に内緒な理由は、管理世界における魔法文化の保護の為。他にデバイスの利用価値が下がる事から、デバイス市場に大打撃を与えて経済に響いてしまう理由もある。

 

話が終わり、空は夜になる。全員で「お疲れ様でした」と終わりの挨拶をした後...仲人達四人は近くに出現した光の柱の中に入り、現実世界へ戻って行った。土曜日と日曜日はお休みなので、次の修行日は来週の月曜日になる。

 

「...ん(あれは、皆の忘れ物...自宅に持って帰って呪文書と一緒にうみなみ寮へ送るとしますか)」

 

最後の一人に残ったセレンは、仲人達が置き忘れて行った【フェイズガン改】と【ビームライフル改】と4個の【タケコプター】に気が付く。彼女はそのアイテムの数々を全て回収した後、姿がフェードアウトする様に消えて行き、修行場を去った。

 

・・・・・

 

今日の午後1時頃、白い段ボール箱を持ってうみなみ寮に訪れた着物姿のセレンはリビングに入った。北のソファに座っているドラ丸と南のソファに座っているリアンは、北の壁の東端にある扉の前に立つセレンを見てビックリする。因みに三人とも、初対面だ(ドラ丸は22世紀のセレンと会っている)

 

「初めまして。リアンとドラ丸の事は仲人達から伺っています」

 

セレンはドラ丸とリアンを見て微笑み、白い段ボール箱をテーブルの上に置いた後、丁寧な御辞儀で挨拶をした。ドラ丸とリアンは応える様に少し頭を下げた後、ソファから降りて立つ。

 

「どうも、初めまして。僕もセレンさんの事を存じております」

 

「リアンも初めましてですぅ。お婆ちゃん」

 

ドラ丸とリアンは笑顔でセレンに御辞儀で挨拶を返した。セレンはリアンの両親である仲人とリインの保護者で親代わりの為、お婆ちゃん呼びとなる。地球いや、宇宙より年上でも外見が二十代前半と若いセレンは、お婆さん呼ばわりされても、全然気にしていない様だが...

 

「ふふ...私は初めて孫を持ってしまいましたね」

 

「えへへ~」

 

セレンは孫を溺愛する祖母の様に、温かくリアンの頭を撫でた。リアンは喜んでセレンに抱き付いていて、ドラ丸は微笑ましい顔でその様子を見ている。

 

「ドラ丸。持って来た箱の中に呪文書と忘れ物が入っています。夕方になって仲人達が帰って来たら、これを渡して頂けますか?」

 

「はい、解りました。お預かりします」

 

ドラ丸はセレンからのお願いを聞いて了解と頷いた後、テーブルの上にある白い段ボール箱を持ち上げ【四次元ポケット】の中に入れた。

 

「リアン。私はお城に戻りますので、そろそろ離してくれませんか?」

 

「え~、お婆ちゃんはもう帰ってしまうんですかぁ~?」

 

「ええ、ごめんなさい。仕事のスケジュールがぎっしり詰まっている中、何とか暇を見つけて此処に来ました」

 

寂しい顔をしたリアンは話を聞いた後、渋々セレンから離れる。セレンは時間を15分空ける為に、いつもより速いベースで仕事を進めてきたのだ。

 

「リアン、そんな顔しないで。僕は未来の世界に居た時、ナコト達とセレンさんと泊まりの旅行に出かけた事があるよ。あと、年に何回か...余裕を持って一緒に居られる日もあるんだ」

 

「ドラ丸の言う通りです。5月の連休で家族旅行に行けるように頑張りますので、楽しみにして下さいね」

 

「うんっ! リアンは楽しみにしているですぅ~。お婆ちゃん、お仕事頑張って下さい~」

 

「ふふ...ありがとう」

 

ドラ丸とセレンの説得でリアンは明るい顔になって、またセレンに抱き付いた。セレンは微笑み、またリアンの頭を撫でる。少しして二人は、その体勢を解いた。

 

「いつか、また来ますね...さようなら」

 

「「はい、お気をつけて/バイバイですぅ」」

 

セレンはまた微笑み、ドラ丸とリアンに手を振ってリビングを出て行く。ドラ丸とリアンはセレンの姿が見えなくなるまで手を振った。

 

・・・・・

 

午後5時20分、仲人達六人はうみなみ寮のリビングに集まっていた。ドラ丸は【四次元ポケット】の中から白い段ボール箱を取り出してテーブルの上に置く。因みに、皆がソファに座っている場所は昨日と同じ。

 

「扇風機を解体して収納出来るくらい、大きいな...」

 

「確かに...この中にある呪文書は、何冊もあるのかな?」

 

「呪文書は日本語版と英語版の2冊で、他に忘れ物が入っているとセレンさんから聞いたよ」

 

翔は白い段ボール箱を見ながら呟いた。それに同感する仲人。ドラ丸は二人に応えて、セレンから聞いた事を話した。忘れ物と聞いた仲人と翔とアキラとリインは心当たりがあって、修行場に居た記憶を遡る。

 

「......あ! 【タケコプター】を持って帰るのを忘れた」

 

「この私ともあろう者が...不注意だった」

 

「ママ~、忘れ物は誰でもあるですよ~。世の中、完璧な人は居ないですぅ」

 

思い出して声を出すアキラ。リインは頭に手を当てて恥じる。リアンの言う通り、完璧な人は何処にも居ないのだ。神様だってミスはする。勿論、完璧に見えるセレンも例外ではない。

 

「あー。こんな大きさになったのは、俺が作った【ビームライフル改】の所為だな」

 

「はは...そうだね。作ったアイテムの中で、あれが一番長いから」

 

「皆。箱を開けるよ」

 

翔は頭を掻きながら言い、仲人は苦笑した。ドラ丸は白い段ボール箱の上面にある紐(封筒に付いてあるのと同じ)を2つ解いて開け、厚い百科事典...呪文書を2冊取り出す。濃いブラウンカバーのは日本語版で、濃いグリーンカバーのは英語版。そして、ドラ丸は日本語版を仲人側に渡し、英語版はリイン側に渡した。受け取った双方は早速、呪文書を開いて読み始める。

 

呪文書の構成は...攻撃呪文や回復呪文と云ったカテゴリーに大きく分かれ、適正レベルが低い順に左から右へ呪文が並んでいる。本を開いて左のページは説明文とその上に呪文の題名と必要適正レベルで、右のページは魔方陣の図とその下に契約の詠唱文で、一つの呪文に2ページも使っている。

 

リイン側...アキラは左から、リアンは右から覗き込む形で、リインは適当に呪文書のページをめぐって行き、マホカンタのページで手を止める。

 

「マホカンタと云う呪文、魔法を跳ね返す効果があるのか...砲撃型魔導師にとっては、かなり脅威だな」

 

「魔法を跳ね返すなんて反則ですぅ...」

 

「そうだね...でも魔法で怪我を治そうとしても、跳ね返してしまうデメリットもあるみたい」

 

次はパルプンテのページ。

 

「パルプンテの説明は“何が起こるか分からない”の一文だけか...例え、この呪文を使おうとしても勇気が要るな」

 

「使ったら、お菓子が降ったりするんですかぁ~?」

 

「それはない...と思う。本当にそうなったら、気味が悪くて怖いよ」

 

それからマダンテのページ。

 

「魔力を全て使う最強の呪文か...守護騎士達が使うとしたら、海鳴市が消えて無くなるな。私とはやてとアキラの場合は......想像出来ん」

 

「はわわわわ...物騒な呪文ですぅ」

 

「うん、この呪文が使える敵と会いたくないなぁ...」

 

リイン達三人は、それぞれの呪文のページを見て思った事を述べる。自らドラゴンクエストの世界へ行かなければ、恐怖のマダンテを使う敵と会う事は無い...たぶん。マダンテの他に最上級攻撃呪文や即死呪文も怖いが...

 

仲人側...翔は左から、ドラ丸は右から覗き込む形で、仲人は呪文書のページをめぐってドルマのページで手を止める。

 

「ドルマ...ドラゴンクエスト8に出る闇の道化師ドルマゲスの名から引いただけの呪文名だな」

 

「はは...そうだね。効果は闇の魔力をぶつける攻撃で、そのまんまだし」

 

次はブレイクのページ。

 

「石化させる効果は同じ...ファイナルファンタジーの魔法も混じってるな」

 

「という事は...石化状態を治す呪文が在るかもね。その呪文名はドラゴンクエスト5に出る【ストロスの杖】のストロスだったりして」

 

「石化して破壊されたら、蘇生呪文で蘇生は不可能になるとナコトから聞いたよ。だから石化されないように気を付けてね」

 

「「え!?/マジで!?」」

 

それからメラガイアーのページ。

 

「おー。メラゾーマより上の呪文が在ったなんて...驚いたぜ」

 

「うん、僕もビックリ。ギラ系やイオ系等にも、上位呪文がありそうだね」

 

その後、呪文書の索引で確認した所...ダイの大冒険で有名なドルオーラとメドローアは無かった。しかし、マホカトールやミナカトールと云う破邪呪文は在った。しかも、呪文を習得する為の試練は無い。もし、女王フローラとレオナ姫が実在したとして、この呪文書を見せたら如何思うのだろうか?

 

厳密に言うとメドローアはメラ系とヒャド系の合体呪文である。従って呪文書には載っていない。ドルオーラは竜の騎士特有の竜闘気を圧縮して撃ち出す“特殊”な呪文。その為、契約で得られる呪文ではない。

 

数十分経って、仲人達六人は呪文書をテーブルの上に置いた後、一息ついた。

 

「明日、はやてと臨海公園へ出かける前に、庭でホイミの契約をしてみよう」

 

仲人は皆を呼んで、提案する。スペースが広い庭で魔方陣を描き、契約をするのだが...今は夜遅い。明日の天気が悪かったら、ドラ丸の秘密道具で何とかする予定だ。

 

「おっ、それは良いな。ホイミは呪文の初歩だし」

 

「うん、傷の手当てで回復の呪文を使ってみたいな」

 

「あっ、お姉ちゃん。リアンもやってみたいですぅ」

 

「ふふっ、怪我しないように気を付けるのが一番だがな......仲人。契約の為の魔方陣は、矢張り仲人か翔の特殊能力で魔方陣のシートを作るのか?」

 

翔は賛成した。アキラやリアンの言った事に苦笑したリインは仲人に訊ねて確かめる。因みにリアンは翔の事をお兄ちゃん、アキラの事をお姉ちゃんと呼んでいる。

 

「うん、そうするつもりだよ。普通に描くより、特殊能力で魔方陣のシートを作った方が早いしね」

 

普通に魔方陣を描くと1~2時間掛かってしまう。だから仲人の答え通り、アイテムクリエイションで魔方陣のシートを作れば1分も掛からない。更に、持ち運びも出来て便利。

 

「皆。攻撃呪文も契約しておくと良いよ。アイテムクリエイションで作るアクセサリーで非殺傷に出来るし、ミッド式・ベルカ式の魔法と違って管理局法に縛られないからね」

 

ドラ丸の説明で、仲人達五人は成程と理解する。ミッド式・ベルカ式の魔法の技術は管理局法で制限されているが、ドラゴンクエストに出る呪文は管理外なので行使は自由である。ドラ丸の話によると、未来の仲人達はアイテムクリエイションで【非殺傷の印】を作って使用しているそうだ。

 

「取り敢えず、明日はホイミとメラの契約で良いかな?」

 

仲人が皆に確認を取った所...賛成の満場一致で、明日は出かける前にホイミとメラの契約をする事になった。メラは火の玉をぶつける攻撃呪文で、ホイミと同じ初歩の呪文になる。

 

「腹が減ったな~。今は18時半か」

 

「遅くなっちゃったね...話は此処までにして晩御飯を作ろう」

 

腹が鳴った翔は、東の壁に付いた時計(テレビの上)を見た。次にアキラの一言で話し合いはお開きとなり、呪文書を白い段ボール箱の中に片付けた後、アキラを先頭に皆はリビングを出て東のキッチンへ向かった。

 

・・・・・

 

今日は節分の日なので、夕食を食べ終えた仲人達六人は豆を食べた。食べる豆を精神年齢と同じ数にするとリインは数百粒になってしまうので、肉体年齢+1粒(体が丈夫になって風邪を引きにくいと云うならわしがある)にした。ドラ丸は13粒で、仲人と翔とアキラとリインは10粒で、リアンは1粒になったが...リアンは「そんなの、不公平ですぅ」と頬を膨らましたので、外見は小学一年生の8粒に変えた。

 

 

つづく...

 


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