IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第9章 北欧少女と魔槍
第92話


イギリスの現在の日付は9月23日の午前6時30分だ。

一夏がイギリス入りしてから早くも3日が経過した。彼は三日間の間に様々な方法を使い自分の部屋を整理整頓し住みやすい部屋へと変えていた。しかし彼の住んでいる部屋は広く一人暮らしにはもったいない大きさである。

そして今日も一夏は部屋でくつろいでいると突然インターホンが鳴る。

 

(誰だろこんな時間に…?)

 

そう思いながら彼は玄関まで向かい

 

「Who are you? 」

 

そう尋ねる。直訳すると誰ですかと言う意味である。すると扉の向こうから聞こえてきた声は意外にも

 

「僕ですか?僕は今回あなたを任務先まで案内する物ですよ」

 

流暢な日本語が聞こえてきた。

一夏はドアを開けると目の前にいたのは、中学生ぐらいの少年であった。

すると少年は

 

「貴方が織斑一夏さんですね初めまして。僕は今回あなたを任務先まで案内する使命を受けたものです。本来なら専門の女の子が居るんですが、あいにく出払っているため僕が来ました。」

 

「成る程。任務なんだから現地まで自分一人で行くと思ってたよ…」

 

一夏は素直に驚いていると少年は

 

「まぁ自分が現地に行くパターンも有りますが今回は行き方が複雑なんで僕がきたんですよー」

 

「成る程、それで任務の内容と場所は何処なんだ?」

 

彼がそう尋ねると少年は一呼吸置きと肩にかけた鞄から手帳を取り出す。

そしてページを数枚めくり内容を確認すると、それを読み上げる

 

「それでは読み上げます。貴方に課せられた任務はそれは噂の真偽を確認し状態によっては敵勢力の壊滅だそうです」

 

「噂…?」

 

「はい、場所はアイルランドの山中にある小さな村。そこで最近になり数人の魔術師が村の中で怪しげな儀式を行おうとしているんです。術式等も一切不明。ですがそこに入り浸っている魔術師は本物のため最悪の事も考えての判断だそうです」

 

少年の言葉に一夏は驚く、それ以前に情報が少なすぎる。

なので一夏は少年に

 

「もう少し詳細な事が知りたいんだが…」

 

「そうですね…いつも肝心な事を言い忘れてしまいます…ほんの数か月前までは何事もなかったようですが最近になりその村の人間が急激に減ったことで異変に気付いたんです…情報源はその村をよく知っている現地の魔術師です。一応僕も下見で村の近くまで行ってみたんですが明らかにヤバそうな雰囲気が漂ってましたね。何せ人が誰も居ないんです…不気味ですね。貴方が選ばれた理由としては遮蔽物が多く奇襲に向いているためではないでしょうか?」

 

少年の言葉にもどこか自信を感じられない。場所を案内することは出来るが戦闘の知識などは皆無であると言う事が一夏は分かったため、いったん納得すると

 

「分かった。それじゃぁ行こうか。道案内よろしくな」

 

「お任せください!!僕が居る限り絶対に道に迷う事は有りませんよ!!」

 

少年なさっきまでとは違い自身に満ちた表情でその言葉を告げた為、一夏も不思議と安心する。

そして彼は霊装などを準備し現地へと向かう。

移動方法は電車を少年は選択した。理由は少年の趣味であるとか。場所は山中であり移動の際の奇襲は無いと彼は判断したためであるのだ。

彼としても外国の電車に乗ると言うのは初めてであったため純粋に楽しめた。

そうして移動すること8時間弱、電車のほかにもバス等を使い、任務先の村の近くまで来ていた。

そして彼らを出迎えたのは1人の男性であった。歳は40前半位であると彼は判断する。

すると男性が

 

「お待ちしていました…私たちが依頼をした者です。それであの山の中にある村がその怪しい村です」

 

男性は目の前を指さしながらそう告げる。

目の前にあるのは雑木林でありとてもこの先に村が有るとは思えない。一夏がそう思っていると少年が小声で

 

「…今はこんな風に有れてはいますが以前は整備された道が有ったようです。コンクリートではなく草などを刈り取り人や車が通れる道位は有ったようですよ」

 

「成る程な…とりあえずこの先にその場所が有るんですね。住人などは一切見かけていないと」

 

「えぇ、もともと人は少なくのどかな村だったのですかここ最近は不気味なほど静かなのです。数か月前に数人の黒服の男が入っていくまでは…」

 

男性がそう言った所で一夏は疑問に思った事を口にする。

 

「どうしてすぐに連絡しなかったんですか?その村はよそ者を嫌うような風習でもあったんでしょうか?」

 

そう彼の話を聞く限りでは異変はすでに起こっていたのだ。ならばなぜもっと早いうちに連絡しなかったのか。もっと早いうちに気づくことが出来たのではないか、彼はそう思っていた。すると男性は

 

「そのような風習は有りませんがあの村には聖女の加護が有ると言う伝説が有り、数か月間は極力外出を避け聖女に感謝しながら村で暮らすと言う習慣があるんです。買い物などでたまに町に来ますがそれだけです。」

 

「その期間と重なって異変に気付かなかったと。ちなみにその感謝期間と言うのはいつまでですか?」

 

「4日前に終了しているはずです。本来ならもう住人も出てきていいはずなんです…なのに…しかもその男たちまで出てこないんです…!!」

 

「成る程。分りました。それでは今から俺がその村に向かい様子を見てきます。結果はどうなるか分かりませんが、最悪の事態も想定していてください。」

 

「お願いします…私も魔術は使えるのですが昔の怪我で満足に戦えないのです…」

 

男性はそう言い項垂れる。

そして一夏と少年はすぐさま村へと続く道に向かっていく。

こうして一夏の正式な任務としての初戦闘の幕が上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼らが村に入るのと同時刻

暗い倉庫のような場所に、年齢は10代後半の少女が十字架に括り付けられている。

表情はよく見えないがかなり衰弱しており体には殴られたような痣がある。

 

するとそんな少女の前に一人の男が現れる

 

「女、お前が隠した”槍”は何処に有る?」

 

「…」

 

しかし少女は何も言わない、男性は笑いながら

 

「そんな状態でもまだ黙るか。まぁ良い生贄は十分にある。見つければ直ぐにでも私たちが完成させてやろう。」

 

「…」

 

男の言葉に少女はわずかにだが怒りを浮かべるが、このような状態では満足に戦うことも出来ない。

そもそも彼女がこうして括り付けられてある光景事態が異常なのだ。

そうしてしばらく時間が経過するとまた別の男が倉庫に入ってくる

 

「大変ですボス!!」

 

「どうした?」

 

「ついに異変に気づかれました。真っ直ぐ村に向かってきます!!」

 

「数は?」

 

「二人です」

 

「…たった二人か。丁度いい洗脳した村の奴らを迎撃に使う。お前たちはとにかく”槍”を探せ見つけたらすぐこの女を殺して逃げるぞ。まぁ侵入者が二人なら見つける前にやられる可能性もあるだろうがな」

 

男はあくまでも冷静に指示を出す。

そして部下が倉庫から出ると男も少女を見つめ

 

「と言う訳で今から私は侵入者共の処分をしてくる。まぁ寿命がほんの少し伸びたことに感謝するんだな」

 

そう言い男も倉庫から出た後外側から鍵をかける。

そしてその様子を見ていた少女出口を見つめるだけであった。そして彼女は

 

「侵入者…か」

 

そう一言だけ呟いたのであった




更新遅れてすいません
本当に時間が無い…何とか今月中にもう2,3話は投稿したいです

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