一夏とイギリス清教トップであるローラ=スチュアートとの対談は何とも締まらない雰囲気である。
それは彼女が意図して行っているのかそうではないのかは一夏には理解できない。
その後、彼と彼女の会話と言うのは事務的な事ばかりでこれと言って変わった事は無かった。
内容としては住む場所などは自分で確保と言う事や呼び出しの際には必ずここに来るようにと言う事、後はこの場所の大雑把な説明であった。詳しく知りたければ自分でやれと無言で語っていた。
最後に彼女は一夏に一枚のクレジットカードを手渡す。彼女曰く金額は少ないが最低限の衣食住は確保できる額が入っているとの事。
そして一夏は彼女に一礼しその場を去ると彼女は
「(織斑一夏…”あの組織”の連中と同じ体質を持つもの。今は泳がせておくのが先決と言いたる所ね)」
彼女が一夏と会話をしたのには理由があった。
その一つとしては今までの事件の報告書を読んだ際に見つけた彼の”天使の力に関係する魔術しか使えない”と言う部分を見て彼女は”とある組織”のメンバーと同じような事であることを知ったのだ。
しかも一夏に関しては原因不明。彼女が興味を持つには十分な理由だった。
だからこそ彼女は一夏と会ったのだ。
「(織斑一夏…上手くいけばこちらのジョーカーと言いし所かしら)」
ジョーカーは一枚しか持ってはいけないと言うルールは無い。多く持てばそれだけこちらが有利に立てる。
そう思い彼女は大胆不敵な笑みを浮かべるのであった。
そして当の一夏はと言うと現在自分の住む場所を探すためにイギリスの街中を出歩いていた。
中学時代に自分の師であるエイダに英会話を習っていたと言う事もあり、言語に苦労すると言うことは無いため後は自分の住む場所を見つけるだけだ。
とはいえ普通の不動産等に入れば自分の正体がばれてしまうため口の堅く魔術に精通した不動産を探しているのだ。
そして街中を歩いていると
「おーいそこの少年。こっちだこっち」
彼がそう呼ばれ周りを見るとそこにはジーンズショップが有り彼を呼んだのは店の前にいる20代の男性であった。
しかも英語ではなく日本語で呼ばれたため彼としては驚きながらもそこに向かうと男性は
「こうして会うのは初めてだが中々のイケメンじゃないか。”必要悪の教会”の織斑一夏君?」
「俺の事を知ってるんですか?」
「あぁ、こう見えても俺はアンタらの仕事を強制的に手伝わされているのさ…そのおかげで本業が滞ってな…俺は民間人でこの店の店主なのに…」
「はぁ…」
彼のボヤキに一夏のどう返答していいか分からずに困っていると男性は、一つ咳払いをすると
「まぁいい、自分の拠点を探すならこの先を暫く道なりに行けば魔術にも精通した不動産屋が有るぞ。イギリス清教だっていえば格安で紹介してくれるんじゃないか。」
「分りました。ありがとうございます」
彼は男性に頭を下げ店から去ろうとすると
男性は
「それとこれを持って行け」
そう言いながら一夏に大きな袋を手渡す。中身は
「黒いジーンズに青いジーンズ…良いんですか貰っても」
「もちろん。ジーンズを買う時はうちの店をよろしく!!」
男性はそう言い放つ。一夏もそれに手を振りかえすと、男性に言われた通り道なりに歩いていく。
するとそこには見るからに怪しげな不動産屋が建っていた。一件すると普通の店に見えるが、外装などは魔術的な加工がされており魔術師ならば一目でわかるほどだ。
一夏は一呼吸置き中に入ると
「いらっしゃい…って、えぇ!?ちょっと待っててくださいね。」
店に入るなりいきなり若い女性の声が遠くから響き、その後周囲に風が吹く。そしてその風は器用に付近にある埃やゴミを片づけていく。そして内部がきれいになるのに5分もかからなかった。
そして奥から出てきたのは
「すいませーん。何だが慌ただしくて。この店にお客さんなんて久しぶり何で」
現れたのは長い銀色の髪を後ろで纏め、青い淵の眼鏡をかけた20代ほどの女性であった。
そう言いながらも彼女はカーテンを閉め鍵をかけると近くにあったテーブルに一夏を座らせる
そして一夏の正面に女性が座る。
すると彼は
「えっと…今日はその住む場所を紹介してもらいたくて尋ねたんですが」
「さらに魔術的なカモフラージュがされた場所…でしょ?この店に来るなんて大体魔術師だけだから。民間人は大体この先にある大手不動産屋に行くし。」
女性はそう言いながら軽く手を振ると今度はかわいらしいデザインの人形がトレイを持ちながら現れそこから一夏の前にお茶を置く。置かれたのは紅茶ではなく緑茶で有った。
すると一夏は
「これは…霊装…ですか?」
「そんな所。呪いとかそう言うのは私の専門外なんだけれど、こうしてお手伝いとか直接戦闘なんかには最適の子たちよ。それとさっき掃除したみたいに風も使えるのよ。」
彼女は自慢げにそう話す。
そして彼女はさらに
「そんなわけで指名手配中の魔術師なんかが立てこもろうとした時にはこの子たちで返り討ちにしてお宅の魔術師に引き渡すって訳よ。だから内に来るお客さんは君みたいな人ばっかりって訳。…最後に来たのは3年位前かなぁ…だから私は副業で人形やおもちゃの修理もしてるの。でもほら最近の子たちってほとんどゲームじゃない?だからこの商売も上がったりでねー」
「確かそうですよね…」
彼らはそんな世間話をしていく。そしてそれは一時間にも渡るほどの長話であった。
そして一通り世間話が終わると彼女は
「さて、それで君の住む場所ね…希望はある?」
「とりあえず安全な所ですね…それ以外は特に…」
「欲が無いわねぇ…まぁ紹介するのはほとんど私の管轄だから安全や衛生面については保障するわ。広さは…家賃によるわね。君若い男の子だし今後を考えると少し広めがいいわよねぇ…」
「いや、男一人なんで広さは必要ないかと…」
「若いからこそ必用でしょ?君だって男の子何だから若い女の子複数連れて込んで色々したいお年頃でしょ?」
「あの、今不穏な言葉がいくつか聞こえたんですが…」
「そう?君モテそうだし意外と押し切られたら流されそうな感じに見えるんだけれど…まぁいいわ。そうねぇ…ここなんてどう?広さもそこそこ、バス洗面所は勿論トイレは水洗。付近に魔術師の拠点もないし暗殺なんかの心配もないわ。付近に人は住んでないから最悪戦闘になっても被害は出ないわよ」
彼女はそう言いながら見取り図を一夏に見せる。
住宅街から多少離れた所に目的のアパートは有り、その部屋の付近に人は住んでいないようだ
理由としてはやはり住宅街から離れていると言う事が大きな理由であると言う。プラス彼女は魔術師に物件を紹介すると言う事で有りもしない噂を意図的に広め極力民間人との接触を避けさせており仮に同じアパートに民間人書いたとしてもごくわずかな人数にしているのだ
他にもいくつか理由があると言うがあえて一夏は追及しなかった
最後に契約書をいくつか記入しサインをする。
そしてその場所までは彼女自らが道案内をすると言う。
彼女は戸締りをすると一夏と共に店を出発し目的地まで向かう。
すると彼女は彼に
「家具なんかは最低限の物は部屋に確保してあるわ。と言うか私が紹介する部屋はいくつか私の名義で借りてある部屋だったりするから当然と言えば当然なんだけれど。今案内する場所も日本人の君に逢うような部屋よ」
「そうなんですか」
「えぇ、報酬とかでそう言うのを買い揃えているのよ。私の住処はあそこで十分だし、私の使命はそこに住む魔術師が安心して帰る場所を提供することだと思ってるから。イギリス清教の場合女子寮は有るのに男子寮は無いからねぇ…」
「そうなんですか?」
「そうなのよ。まぁ野郎ばっかりの場所なんてむさくるしいだけだし。いろいろ大変でしょうから。」
彼女の言葉に一夏も苦笑いをする。
そして彼らは住宅街を抜けると、目の前にアパートが見えてくる。
彼女はそこを指さし
「あそこの2階が君の部屋よ。これが鍵。」
「ありがとうございます。それで家賃はどうすれば…」
「振り込みか手渡しになるわね。後聞きたい事とかある?」
「今は何もないですね」
一夏がそう言うと彼女は安心しその場で一夏と別れる。
そして彼は鍵に書かれた部屋番号の部屋に入ると
「何と言うか日本の家に似ているな」
入ってすぐに玄関が有るなど、日本の家の造りと大して変わっていなかった
その後も部屋を見渡し場所を確認するなどして時間を潰すのであった。
この小説のためにイギリスの文化等を学習中ですw
住宅何かも日本と同じように考えてはいけないんでしょうね…