「さて、一夏君。何で私がここにいるのか分ってるわよね?」
「はい…」
日は完全に落ち外ではナイトパレードが行われているにもかかわらず一夏は現在病院の廊下にて目の前にいる楯無に対して土下座をしていた。
なぜ彼らがこの場に居ると言うと、戦闘終了後騒ぎに気づいた警備員に彼らが発見されそのまま病院送りとなったのだ。
一夏の場合、戦闘の途中で回復した関係もあり傷が少なく簡易手当だけで済んだのだがステイルや上条、土御門はそうはいかず現在は別室にて治療を受けている。
そして楯無が病院に来た理由と言うのは、一夏が病院に運ばれている時に誰と来たのかと言う事を聞かれ彼女が使った偽名を答えたのだ。その後数分もしないうちに彼女が病院に来たと言う訳だ。
そして現在に至る
すると彼女は一夏に対し
「まぁ、一夏君にもいろいろ理由が有ったわけだし…とやかく言うつもりも無いけど…それでも女の子との約束を破るのはどうかと思うのよ。しかも一夏君自信満々に戻ってくる気だったし」
「自分でも軽率な発言だったと反省しています…」
一夏も深く反省する。
彼としてもやはり約束を破ると言うのは最悪の行為だと感じている。それが女性との約束なら尚更であろう。
そうしていると彼女は一夏に
「まぁお説教はこの位で良いでしょう。ほら一夏君も頭上げて。そこに椅子もあるわけだし座って話しましょ」
彼女にそう言われ一夏は立ち上がり近くにある椅子に座る。
そして二人は椅子に座り暫くしていると人の気配がしたため付近を見るとそこには二人の少女、御坂美琴と車いすの少女が歩いていた
すると楯無は
「えーと御坂さん…であってるわよね?あなたも誰かのお見舞い?」
そう聞かれると御坂は
「そこの後輩のお見舞いのついで…かしらね。」
彼女はそう言いながら車いすの少女の方を見る。すると少女は
「初めまして。白井黒子と申します」
少女、白井黒子はそう自己紹介をする。
彼女の口調は御坂とは違いお嬢様口調で一夏や楯無はIS学園のセシリアを思い出しそれと同時にお嬢様口調を話す中学生が居ることに素直に感心する。
すると黒子は一夏の方を見ながら
「失礼ですが…あなた、以前私とお会いしたことが有りませんか?」
そう尋ねる。
聞かれた一夏は一瞬だが動揺する。彼は以前三沢塾の事件の際に学園都市に来ており事件解決後、街を歩いていた際彼女と出会っているのだ。
今は変装しているとはいえ油断はできない。そのため一夏は冷静になりつつ対応をする
「気のせいですよ。僕は今日初めて学園都市に来たので…」
「そうですか…それは失礼いたしました」
一夏の反応に黒子はそう言いかえす。
そうした後御坂は黒子を置いて歩いて行ってしまったため彼女は慌てて御坂を追いかける。
車いすを高速で操作する彼女の技術を見ていた一夏達は素直に感心していた。
しばらくした後楯無は一夏に
「一夏君は近いうちに学園都市を出るのかしら?」
「そうなりますね。なるべく早いうちに学園都市を出ようかなと考えています」
彼女の疑問に一夏は答える。
一夏が学園都市に来た理由は人ごみに紛れて学園都市の航空機を利用し”必要悪の教会”の拠点があるイギリスに行くためであり、なるべくなら大覇星祭開催期間中に行きたいと彼は思っているのだ。
彼の言葉に楯無は
「そう…私はもう少しここに残ってみようと思うわ。大覇星祭も最後まで見てみたいし」
「そうですか…となると楯無さんともここでお別れですね」
「そうなるわね」
彼らがそんな事を話していると目の前にスーツを来た男性が現れる
「谷本海斗様でいらっしゃいますね」
男性は一夏に向かいそう尋ねる
「はいそうですが…」
「これを渡すようにと言われましたので。中身は飛行機のチケットでございます。時刻等はご自分で確認してくださいませ。」
彼は事務的な事だけ告げるとすぐさまその場を立ち去る
一夏達は知らないが今現れたのは上層部の命を受け彼にチケットを渡すためだけに現れた人物である。
一夏は封筒を開け時刻を確認すると今日の午後10時の飛行機のチケットであった。
現在の時刻は午後7時丁度であり3時間後にはここを出ることになっている。
それを見た一夏は楯無に対し
「どうやら今日中にここを出ることになりそうです」
「そう…本当に分かれって言うのは急ね」
彼女は笑顔を浮かべながらそう言う。
その後彼らは病院を出て学園都市の夜の街を観光し最後のひと時を過ごすのであった。
そして約2時間半後、時刻は午後の9時30分過ぎ
一夏と楯無の二人は学園都市の空港に来ていた。ステイルと上条は治療中であり彼はこの場には来ていない。土御門も急用ができたので来れないと言う内容のメールが届いていた
「えーと楯無さん…本当にすいませんでした。俺のせいでIS学園を脱走する羽目になって学園都市に来たのに最後は俺だけ先に学園都市を出るなんて…」
「いいわよ別に。私も貴重な体験がこうしてできてるわけだし。むしろ一夏君達には感謝だわ」
彼女はそう言うが一夏にしてみれば最後まで自分の都合で振り回してしまったようでどうにも後味が悪い。
すると彼女は
「一夏君、そろそろ行かなきゃまずいんじゃない?さすがに飛行機に乗り遅れるのはシャレにならないわよ?」
「…そうですね。それじゃ俺もう行きます。楯無さんお元気で」
「一夏君こそ、元気でね。また会いましょ♪」
彼らはそう言い放ち別れる。
一夏は飛行機に乗り込んだのちティナに通信用霊装を使い事件が解決しイギリスに向かうと言う内容の通信を送る。
こうして織斑一夏の日本での物語は終わり舞台はイギリスへと変わる。そこでも多くの人達との出会い等が待っていることを彼はまだ知らない
その頃学園都市の外部では二人の男性が歩いていた。
彼らは亡国機業の魔術師のイオとアトラクであり、彼らはリドヴィアが持ち込んだ”使徒十字”を横取りしようと企んでいたが失敗し拠点へと戻る途中であった
するとアトラクは
「事件を解決したのはまたしても子供か…わかってるとは言え子供を戦わせると言うのはあまりいい気がしないな…」
「それは軍人…としての経験からか?」
彼の言葉にイオはそう反応する。その問いに対し彼は
「元軍人だ。まぁ俺たちもクスグやオトゥー、エムと言った子供を戦力としてカウントしている以上批判する資格など無いがな…」
「それは仕方があるまい。事情があってここに入ってきたんだ。それに今回戦っていた少年たちにも戦う理由が有ったから戦った。それだけの事だ。お前が軍にいたころに居た子供もそうではないのか?」
「”彼女”達は違う。生まれた時から戦う事だけを目的として作られた子供だ。」
「”彼女達”…一人ではないのか?」
「ほかにも数名が軍に所属している。表舞台に立つ程有名なのは一人だけだがな。」
彼は忌々しそうにそう呟く。
するとイオは
「まぁ君には君の戦う理由があるのだからとやかくは言わない…私にも戦う理由があるようにな」
「そうか…それじゃぁ急いで帰るとするか。クスグとエムが喧嘩をしていないとは限らないしアジトが味方の喧嘩で消滅などされたくないんでな」
「あの二人ももう少し喧嘩の規模を下げてくれるといいんだがな…」
「喧嘩するほど仲がいいとは言うが…な…」
彼らはそう言い放ち同じタイミングでため息を吐く。
クスグとエムの場合、喧嘩に魔術やISを平然と持ち出すため今まで何度も彼らの貴重な拠点が消滅の危機に瀕していた。今回は比較的おとなしいオトゥーをお目付け役として置いてきたとはいえ彼らとしても心配していたのだ。