「(俺は…何をやっているんだ…)」
一夏は地面に倒れながらもそう思う。
彼は意識はあるものの立ち上がる事ができない。それは先ほどの攻撃を受けた以外にも今までの疲労なども重なっていたと言う事もあるのだろう。
そして彼がこうして倒れている間にも”使徒十字”の発動の時間は刻一刻と迫って来ており友人の上条当麻も一人でオリアナと戦い続けているのは容易に想像できる。
本当ならばこんな所で倒れ続けている暇など無く、一刻も早くオリアナを撃破したいのだが
「(体が思うように動かない…防いだはずだったんだが…)」
彼は思うように体が動かないのだ。もしかしたら先ほど彼が受けた攻撃には相手の動きを封じるような効果も含まれていたのかもしれない。
とはいえ彼もこのまま倒れ続けると言うことは無い。
彼は腰に付けているペンタクルに魔力を込める。ペンタクルと言うのは大地の象徴武器であり大地を司る天使は”神の薬”(ラファエル)だ。
”天使の力”使いの彼にとってみれば”神の薬”の力に頼る以外にこの状況を突破する手立てがない。
そして彼は魔力を精製しペンタクルに魔力を込め回復魔術を発動させようとする。
彼はどういう訳か普通の魔術は使えなく、”天使の力”を使う魔術しか使えない。そこで彼は天使の力を使う回復魔術を生み出そうと考えその術式を構築していたのだ。とはいえ実際に発動させるのはこれが初めてであり失敗すれば最悪の場合死に至るというあまりにも無謀すぎる賭けに彼は出る。
「(とにかく焦るな落ち着け…そして集中だ…)」
術式を使うに当たり彼はとにかく心を落ち着かせることを意識する。地面に倒れている状態で心を落ち着かせると言うのもなかなかに無茶な事ではあるがその位の事が出来なくては魔術師とは言えない。
そして落ち着き術式を発動していく。その途中彼は頭の中に天使を想像する。
流石に天使そのもの実際にを呼び出すと言う事は出来ないが頭の中に天使を想像しその力を使うと言う事なら出来る。
そして回復魔術を使い傷を塞ぐと彼はどうにかして立ち上がる。多少ふらつきはするが戦闘に支障は無いと彼は判断する。
彼が立ち上がるとそれを見ていた上条とオリアナは
「織斑、お前大丈夫なのかよ!?」
「とっさに発動した回復魔術で回復したのね。とはいえそんな状態で私に勝てるのかしらね?」
そう告げる。すると一夏は
「負けられないんだよ…この戦い。約束もあるし…何よりここで死ぬと俺を信じてくれている子たちを悲しませることになるんでね…簡単には死ねないのさ」
そう告げる。彼としてはまだ死ぬわけには行かない。何も聞かず自分を送り出してくれた楯無やIS学園に残っている同僚のティナ、それに事情を知っている鷹月や谷本。
彼女たちの信頼に応えるためにもこんな所で敗北し死ぬわけには行かないのだ。
だからこそ彼は名乗る。己に貸した名を
「(さて…久しぶりに名乗らせて貰うぞ)…iaceo231!!」
彼がそう言うのと同時に短剣を持ちそこから炎を呼び出し短剣に纏わせる。その火力は今までとはけた違いであった。
そして彼はそれを横に薙ぎ払い炎を彼女めがけて射出する。
「成る程…それが君の魔法名って訳ね…!!」
彼女はそう言いながら単語帳のページを口で噛み切り何らかの魔術を発動する。その結果彼の一撃は防がれるが衝撃までは防御できずに後ろに吹き飛ばされる。
すると彼はその隙に上条の近くまで移動する。
上条としては一夏の傷の具合も心配しているが先ほどの一撃を見てあっけにとられる。
すると彼は一夏に
「お前、まだ奥の手隠し持ってたのかよ…」
「本当ならもっと早くに名乗りたかったんだけどね…タイミング逃した結果このザマだよ。さて上条君、そろそろ決着を付けようじゃないか」
「あぁ!」
彼らはそう意気込む。すると彼女は
「そうね。決着を付けましょう」
そう言い放ち単語帳を口にくわえる。切り離すのはページではなく単語帳を纏めている金属リングの方だ
その直後付近に紙吹雪が舞う、そして放たれた紙吹雪の上に筆記体で文字が走る。
記されていたのは”All of symbol”
「わが身に宿るすべての才能に告げる…その力を開放し目の前の敵を討て!!」
彼女がそう言い放つといくつもの紙ふぶきは爆発を起こし、それらが彼らへと放たれる
彼らはそれを確認すると一瞬視線を合わせると二手に分かれる。言葉など必要ない、彼らはお互いを信用しているのだ。
彼らに対し白い光が向かってくる。一定の形を持たず曖昧な形の”それ”は景色さえも歪ませる
すると一夏はその光に対し高速召喚爆撃をぶつけ強引に打ち消す。
高速召喚爆撃と言う危険極まりないその攻撃を彼は使い続ける。相手の空間の歪みを確認しそれを強引に潰すためにタイミングを合わせ攻撃をぶつける。
さらに彼はオリアナに対し向かっていく上条の援護も忘れない。とはいえそれは援護と言うより強引に道を切り開いているという表現の方が正しいのかもしれない。途中召喚爆撃や放った火柱が彼に当たりそうになり彼は驚きながらも回避し彼女に向かっていく。
それを確認した一夏は自身に向かってきている攻撃に対処する
地面が抉れいくつものコンクリートの破片が彼に向かい、さらには風の刃もほぼ同時に向かってくる。
「(最優先に対処しなきゃダメなのはコンクリートだ。アレは魔術攻撃じゃない。風はこっちの攻撃で相殺できる)」
そう素早く判断すると彼はラグの発生する召喚爆撃を放つ。こちらは先ほどの高速召喚爆撃に比べ速度は劣るが破壊力は魔法名を名乗っていることもあり相当な威力を期待できる。
そして向かってくる風の刃に対しては彼は短剣に風を纏わせそれをぶつける。一夏の攻撃は刃ではなく小さな竜巻とも得るそれは放たれた刃を打ち砕く。
しかし攻撃はそれで終わりでは無かった。爆撃で粉々にしたコンクリートの破片のいくつかが再び彼に向かって来たのだ。攻撃の終わった彼は隙だらけ、これが決まれば一夏は倒れる…そのはずだったのだが
「不意打ちは俺の専売特許だ!!」
彼はそう言うと火柱を生み出し破片を防ぐ。
そしてしばらくした後、彼女が張った結界が解除されるのを彼は感知する。
そして別な場所を見ると、そこには倒れたオリアナと傷を受けながらもどうにかして立ち上がっている上条が居るのだった
すると上条は一夏に対し
「織斑、お前のおかげで助かったよ。ありがとな」
「おう。それより悪いな途中攻撃当たりそうになって、大丈夫だった?」
「あぁ。どうにもそれがうまくオリアナの目くらましになったみたいでな。アレが無かったら俺も危なかったぞ」
彼らがそんな話をしていると血を流しながら倒れているステイルは
「談笑は後だ…それより”使徒十字”だ場所をオリアナに吐かせろ…僕はいい。自分で、何とかするから」
そうしていると突然言葉が聞こえる
「心配する必要はないかと。もうすぐすべてが終わりますので」
言葉は一夏達が初めて聞く人物の声であった。そしてその状態はすぐに思いつく
「(リドヴィア=ロレンツェッティ…オリアナの雇い主…だな)」
一夏は冷静に考える。そして同時に違和感を感じる。雇い主の彼女は使徒十字を発動させるためにこの滑走路に居るはずだ。それなのに同じて通信系統の術式を使っているであろうかと彼は疑問に思う。
そして彼の疑問はすぐに解決される。なぜならば彼女は
「一つ告げておきますが…”使徒十字”は学園都市にはありませんので」
その言葉に全員が驚愕する。そして彼女はさらに言葉を続ける
要約すると”使徒十字”によって生み出される教皇領莫大な領土を持っておりそれは学園都市の外からはなったとしても余裕でカバーが出来る。とはいえ発動には時間がかかりすべてのポイントを芸芸要因にカバーされるのは厄介である、ならばそれを防ぐためにもオリアナを囮にし学園都市に放つことで目を彼女へと向けさせ、その隙に使徒十字を持った自分は外部のポイントへと行くと言う内容だ。
そしてそれを聞いていた一夏は
「(やべぇ…打つ手が…ない…ここで終わり…なのか…?)」
彼は愕然とする。するとポケットから携帯が落ち、どこかのスイッチが押されたのか時刻が表示される。すると一夏はその時刻を確認した後あわてて楯無から時刻表を確認する。バスの発車時刻などが記されたその紙には一つだけ別な情報も書かれていた…それは一夏にとってはとても重要な時刻であった
「確かにこりゃダメだわ。俺たちにはもう打つ手はない、俺たちの負けだ」
一夏の言葉に上条も続く
「あぁ。そうだ俺たちは終わりだよ…」
そうして一区切り置いたところで彼は言葉を放つよりも先に、異変は起きた。
それは”使徒十字”が発動したのではない。
強烈な光が夜空へと上げられたのだ、それはありとあらゆる光である。電球やネオンサイン、スポットライトと言った物だ
現在の時刻は午後6時30分。ナイトパレードが始まってしまったのだ
そしてそれらの光は夜空を埋め尽くし、”使徒十字”の発動条件を妨害しているのだ
上条とリドヴィアは何やらやり取りをしているが一夏は気にしていない
「(あーぁ間に合わなかった…こりゃ楯無さん起こるだろうなぁ…はぁ。)」
そんな事を内心思い浮かべていた
これにより今回の騒動は一応の幕引きとなる
そして言えるのは一つ、祭りの主役となるのは外様ではなく一人一人の生徒であると言う事だ。
ようやく大覇星祭編が終わった…
次回はエピローグ、その後はイギリス篇と続きます
番外編の更新もしなきゃなぁ…
ここで思いついてしまった一発ネタ
もしも禁書のキャラが遊戯王のナンバーズを召喚するとしたら…
「来なさいNO.91雷鳴纏いし蒼き竜よ、その雷撃を使い全てを薙ぎ払え!!
サンダー・スパーク・ドラゴン!!」
by御坂美琴
ダサいようなカッコいいような…
続編未定!!