IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第86話

彼らの戦場は実験空港である。

大覇星祭期間中は普段行っているプロジェクトなども休みのためか付近に人は誰も居ない。

彼らとオリアナの距離はおよそ300メートル。

 

その間合いの中、上条とステイルの二人は彼女めがけて走り出し一夏もまた彼女めがけて走るとはいえ彼の場合正面からではなく彼女の死角に入るように移動する。

数で言うならばこっちの方が多いのだから別々に散らばり多角攻撃を仕掛けた方が彼女を仕留めるのにかかる時間が短くなると彼は判断したからだ。

そしてもう一つの理由としては、単に自分の攻撃に見方を巻き込みたくはないと言うのもある。ステイルも魔術師なのだからそのような案が浮かんでもいいのだが根は14歳やはり心の中では自分が彼女を倒したいと言う願望を持っているのだろう。

 

そのような状況の中彼女は

 

「あはは!追加の警備員や増援の魔術師も来ないところを見るとそちらのメンツは4人って事ね。お姉さんすっかり下の上で転がされてたのね」

 

そう言い放ちながらも単語帳をカードを噛みきる。そして彼女が言葉を放ち終わるのと同時にガラスの割れるような音が彼女を中心に四方へと飛び散る。

 

それと同時にすべての音が消える。

付近には無数の旅客機が飛び交っているにも関わらず一切音がしない。

その理由は簡単である。彼女の死角に入りこむように移動していた一夏は子の正体に簡単に気づく

 

「結界…だね。物理、魔術を問わずにありとあらゆる通信方法を遮断するタイプの結界か…はぁこれじゃティナからのアドバイスは期待できないな…」

 

その音と同時に彼の通信用霊装は魔力を込めても反応がなくなり携帯電話も通話不能状態になる。

上条もその事態に付近を見渡そうとするが、敵は目の前にいるため諦める。

そして上条とステイルは彼女へと突撃する。

彼らは彼女の左右から攻撃を加えようとする、ステイルは炎剣を構えているため自然と拳の上条よりリーチが長いため攻撃の届くタイミングはステイルの方が早い。

さらに一夏は彼女の背後から攻撃を繰り出す。高速召喚爆撃の使用も考えたが、味方を巻き込みかねないため無数の炎の刃を彼女めがけて放つ

 

「んふ。」

 

そのような状況でも彼女は小さく笑う。単語帳の一ページを噛みきると彼女の右腕にはバスケットボール程の水球が二つほど現れる。彼女はそれを使いステイルの炎剣を受け止め、もう一つは自らの後方に配置し一夏の攻撃を受け止める。

さらに後方に現れた水球は一夏の攻撃を受け止めた後、そこから無数の水の槍が現れ彼を貫きにかかる。

 

「遅い!!」

 

しかし彼はその無数の槍に向かい短剣を振り下ろすのと同時に槍が一斉に爆発する。

一夏は高速召喚爆撃を槍に対し放つことで槍を強引に消し飛ばしたのだ。そのせいか付近には小雨が降っているように水が降り注ぐ。

一夏は彼女の攻撃を無事にかわすことに成功するがステイルはそうはいかず彼女の攻撃を受けてしまっている。上条は彼を助けようとするが、彼女は隙が出来た彼に対し蹴りを叩き込む

 

「ぐっ…!!」

 

上条はどうにか体制を立て直そうとするが、オリアナは彼に追撃を叩き込む。

その結果上条は地面に倒れ、オリアナは彼に対し止めを刺そうとする

 

「くそ…間に合え…!!」

 

一夏は左手に杯を構え水の槍を呼び出し彼女に攻撃をしようとするがそれよりも早くに

 

「IAB!!」

 

ステイルがそう言い炎剣を爆発させる。そして新たな炎剣を右手に生み出し、低い体勢から突き上げるような形で彼女を狙う。しかし彼女はその突きすらも後ろに探り簡単にかわす。

そして彼女は拳を構える。それだけならば何の問題もない攻撃が来ると思えば簡単にかわせる。

しかしステイルはそうはいかなかった。なぜならば彼は突きを繰り出しさらには勢いをつけ彼女に突撃していたせいで彼は彼女の拳に自分から突撃することになってしまい、彼はそのまま地面に倒れる。

 

そしてそれを見ていた一夏は彼女めがけ高速召喚爆撃を放つ。

閃光が走るのとほぼ同時に彼女の付近が爆発する。彼は彼女の気を自分に向けさせるために放ったのだ。理由はダメージが有るがまだ動ける上条が大勢を立て直すための時間稼ぎだ。

すると彼女は

 

「あらあら坊やの腰はそう簡単には砕けないのね。そこの坊やと違って君はもう大人の階段を登っちゃったのかしら?」

 

「うるせぇ!!俺にはまだそんな相手はいねぇよ!!」

 

彼女の冷やかしに一夏は割と本気で否定する。そして彼女に岩の大剣を落とし攻撃するが器用に回避されてしまう。

 

そんなやり取りをしている後上条は起き上がり呼吸を整えながらも

 

「(良かった…織斑も俺と同じか…ってそんな事はどうでもいい)お前は、ここで止める。”使徒十字”も使わせないし、大覇星祭を滅茶苦茶にしようとするならそれを止める」

 

「メチャクチャって言うのは酷いわね。むしろお姉さん的には最高の演出だと思うのだけれど。”使徒十字”はありとあらゆる壁をなくし世界中の人々を幸せにするものよ」

 

彼女の言葉はあながち間違っていないのかもしれない。少なくとも魔術などを知らない人間からすれば”使徒十字”と言うのは幸せに導くものであろう。

そしてそれを聞いた上条もそれには興味を示す。

 

しかし彼は興味を示すだけである。そもそも彼にはそんな支配権などどうでもいい、彼にとってみれば彼女が”使徒十字”を使う事によりこの大覇星祭がつぶれることが余程問題なのだ。

 

その後も彼女と上条のやり取りは続く

そしてそのやり取りを聞いたのちに一夏も彼女に対し

 

「学校行事ってさ、あんたが思ってる以上に多くの人がその行事を成功させようと頑張るんだよ。そしてその行事を第3者の身勝手な理由で潰されてみろ。どれだけ多くの人が悲しむと思ってるんだよ。お前はその人たちの悲しみや無念が分かるのかよ。魔法名を持つくらいだきっと俺たちには分からないほどの信念があるんだろうさ、けどよお前が今やろうとしていることは”使徒十字”で幸せに導こうとしてる多くの人々に絶望や無念を叩き込むかもしれないんだぞ!!」

 

彼らはそう言うが彼女はその言葉に対し彼女は

 

「…小さな小さな意見をありがとう。坊やたち、でもその程度の理論でお姉さんが揺らぐと思う?それ位で動揺するならお姉さんは最初から動いてなんか居ないわよ」

 

彼女はそう言い放つ。そして彼はその後彼女に対し、その言葉を自分が傷つけた吹寄や姫神に言えるのかと尋ねる。彼としてはもし彼女は何もしないのであればこれ以上追う事は無いと言い放つ。

 

そして最後に彼は

 

「だが、テメェがまだこの街で何かをやるって…傷ついたアイツらにまた魔術を使うって言うなら…そんな舐めた幻想はこの場でぶち殺してやる!!」

 

 

彼はそう言い放つ。時刻は午後6時。一時間以内にどこかで”使徒十字”が発動してしまう。

空には星が一つ浮かんでいる。複数の星によって作られる星座はまだ完成しない。

 

そのような状況で上条は彼女に対し突撃し一夏は動きを止めず彼女の後方を陣取るように移動していく。

一夏は上条が拳を叩き込めるような状況を作り出す。岩や風の魔術を使い彼女を攻めて行き、隙が有れば上条が拳を打ち込むと言うのが彼の計画なのだがそうはいかない。事前に話し合いをしていないためどうしてもタイミングがずれてしまう。上条が先に接近し過ぎ彼女にカウンターをお見舞いされ、自身の魔術によって一夏も攻撃する。

 

「クソッ…これもダメか…上条君大丈夫!?」

 

「あぁ、大丈夫だ…」

 

彼らはそんなやり取りをしつつ徐々に動きを合わせようとするが彼女はそれをいなしていく。

そしてそのようなやり取りの中で上条はある事を思い出してしまう。それは

 

「(オリアナの動き…これは海の家でハミルトンにやられたカウンター戦法みたいなものか。)」

 

彼は一度”御使い堕し”の際にティナと交戦しており彼は彼女の体術をもろに受けていた。

そしてオリアナの体術はそれに似ていると感じる。しかし彼は

 

「(ハミルトンや土御門と違うのは向こうはその体術に自信を持っていたからこそ体術だけで俺を叩き潰した…だけどコイツは違う…)」

 

土御門やティナと言うのは体術を主体として戦うがオリアナの場合は体術とさらに魔術も組み合わせた戦法だ。体術だけしか使わない彼ら相手に大苦戦を強いられた上条にとってみればそのハードルの高さは計り知れない。

しかし彼らはその体術に圧倒的な力が有ったからこそ魔術を使わずに自分を叩き潰すことが出来た。彼が幸運なのはオリアナが土御門やティナのような体術を主体とする魔術師ではなかったと言う事か。彼女の魔術はあくまでも自身の術式を突破された際の保険のようなものなのだから。

 

そしてそれは現在足を止めずに移動しながら戦闘している一夏にしても同じであった。

 

「(オリアナを倒すヒントは接近戦だ。あのカウンターをどうにかすれば流れは一気にこっちにくる…!!)」

 

そうしながらも彼は彼女の攻撃を避けつつ、高速召喚爆撃とその後の発動までのタイムラグを利用した召喚爆撃を行っていくがうまい具合に魔術によっていなされてしまう。

 

こうして彼らの戦いは激しさを増す。使徒十字の発動時間に追われたギリギリの戦いが




ついに楯無と簪の中の人が決まりましたね。
楯無の中の人が斉藤さんなのはなぜか納得が出来てしまったw
簪の中の人はまだその人が出演してる作品を見たことが無いのでこれから見てみようかなと思います

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