IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第85話

彼らは現在地下鉄のホームにいる。

土御門は先ほど電話で学園都市統括理事長と通話をし警備の配置を変えることに成功した。

そしてそれを聞いていた一夏は

 

「(アレイスター…か。科学の長が魔術の有名人の名を名乗るなんてな)」

 

そう、アレイスターと言うのは一夏のように近代西洋魔術を使うような人間だけではなく世界中の魔術師にとってはとても重要な人間であり、以前の戦闘の発端でもある”法の書”を書いた人間なのだ。いわばアレイスターと言うのは魔術サイドの人間の名だがその名を科学サイドの人間が名乗っているのだ。

とはいえ一夏としてはただの偶然と考えている。たまたま彼の両親が魔術師ではなくとも一般人の知る範囲で半端な知識を持ち、その中で有名人の名前を付けたのであろうと判断する。現に魔術を知らない人間が天使の名をいじった名を持つような人間がいたりISで有ったとしてもシャルロットの専用機の名は”大地の再誕{ラファール・リヴァイブ}”その名の由来は大天使の一つである”神の薬{ラファエル}”で有ろう。そのような事もあるのだ科学の長が魔術師の名を名乗ったところで何の不思議もない、それにこの事に対し魔術サイドの人間が騒ぎを起こさなないと言う事は何らかの根拠が有るのであろうとも彼は判断している。

 

彼がそのような事を考えている間も土御門たちは概要を話す。

夜空に浮かぶ星座の配置を利用すると言う事は日没直後が怪しいと言う事。

そして今の時刻は午後5時25分、正確な時間は分からないが最悪あと25分以内に発動を食い止めなければならないと言うのだ。そしてステイルは土御門たちに意志を確認するが彼は勿論参加の意思を示す。

その間にも地下鉄はホームに到着し徐々にスピードを落としやがて停止する。

そしてステイルは最後に上条に対し

 

「この列車に乗ったらもう後戻りはできない。待つのはオリアナたちとの殺し合いだけだ。覚悟は決まったか、上条当麻」

 

ステイルのその言葉に彼はわずかに沈黙する。

今日一日彼の身の回りではいろんな事が有った、そしてそれらをすべて踏まえたうえで彼は

 

「…あぁ、覚悟は決まった」

 

彼はそう告げ、そして最後にこのまま殺し合いで終わらせることもないと言う事を告げると土御門は子供のように、ステイルは皮肉そうに笑みを浮かべ、一夏もまた自分の友人の言葉にその言葉が出るのを期待し当たったような表情を浮かべる。

 

4人は列車に乗り込み、そして最後の戦いの場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

その頃楯無はと言うと、一夏と別れた後一人で大覇星祭を回っていた。

途中適当な店に入り、飲み物を購入したり熱射病対策として帽子を購入したりして彼女なりにこの祭りを楽しんでいたのだが

 

「(一夏君、遅いわね…ちゃんと間に合うのかしら…?)」

 

彼女は一夏の別行動を許す条件としてナイトパレードまでに帰ってくることを約束したのだが。現在の時刻は午後5時半前。ナイトパレードの開始時刻が刻一刻と迫って来ている。場所によってはそのための場所取りをしている人もチラホラと見かける。彼女としてもこの時間まで一夏が戻ってこないのは不安になる。

 

「(うーん、一夏君は約束を破るような子じゃないって信じてるけど…やっぱりあの時行かせなかった方が良かったのかしら?)」

 

彼女はそう思いながらも街を回る。約束した彼が必ずナイトパレードにやってくると信じながら。

何故彼女がここまで一夏を信じているかと言うと、脱走を企てたあの時、リスクを冒してまで自分を助けに来た彼ならば必ず約束を守ると信じているからなのかもしれない。そして彼女は最悪間に合わなくとも無事に自分の前に再び現れてくれればそれはそれで良いとも思っていたりする。

 

 

 

 

 

彼らは第23学区に到着する。

そこは学園都市の住人でない一夏にとっては衝撃的な光景であり、学園都市の住人である上条にとってもこの光景は圧倒的であった。

何処までも続く地平線、その色はアスファルトの黒一色。その敷地のいたるところにはフェンスが建てられている。そして管制塔や実験場もかなり大きく、ここが一つの学区と言う事実が信じられないくらいだ。

 

「すごいなこりゃ…まるでSFの世界だぞ。生きてるうちにこんな光景が見られるなんて俺はついてるな…」

 

一夏が感心してそう呟くと土御門は苦笑いしつつターミナル駅真正面にあるバス停を見ながら

 

「まぁここは学園都市の中でも特別な場所だからにゃー…そんな機密事項の塊のこんな場所でもバスが走っているぜい。まっ、こっちは運転手が居るにゃー、産業スパイが途中下車しないか監視するためのもんだ」

 

そう言い放った土御門の声を飛行機の爆音が遮る。

彼が言うにはここの警備の基本は空だと言う。さすがに学園都市の技術をもってしても地上に人などを配置するには広すぎるのであろう。

そして上条とステイルがどのようにこのような場所を移動するのかを尋ねると彼は上空を見ながら

 

「ここの空は混雑していいるんだにゃー。そして空を飛ぶ旅客機の様子を眺めりゃ上空監視の死角に潜り込みながら進める。問題の場所はここから割と近いし徒歩でも何とかなるにゃー」

 

そう告げる。ここの上空と言うのは旅客機と監視用の飛行機が常に飛び回っている。そして監視用の機体と言うのは旅客機が来た際には航路を変更するためそこのすきを突きながら移動すればいいと言う事だ。

 

そして彼らは移動する。

上条の前を走る土御門はダメージの影響か時折体制を崩しつつも走る速度は衰えない。

気を抜けば置いて行かれるほどだ。そして彼の先導に従い飛行機が飛び交う真下を走る。

そうして足を進めていく後、目的地の”鉄身航空技術研究所付属実験空港”が見えてくる。そしてフェンスの元まで一気に走り土御門はフェンスに手足を引っかけ一気に飛び越えようとするが、突然フェンスが高熱のオレンジ色に変色する

 

そのせいでフェンスに手足を掛けていた土御門は慌てて手を放すが時すでに遅し。彼は手足にダメージを追ってしまう。その原因はオリアナがフェンスに仕掛けていた単語帳。普段の彼ならば見落とすことは無かったであろうがダメージのせいかそれを見落としてしまったのだ。

 

そうしながらも彼は

 

「行け、カミやん…ここで時間を食う訳にもいかない。右腕でその単語帳を破壊して早く行け!!」

 

それを聞いた上条は土御門の火傷を心配しステイルに相談するが彼は

 

「確かに火傷の治癒なら僕にでもできる…が」」

 

彼の言葉に一夏が続く

 

「原因を作った張本人がそんな猶予をくれる訳ない!!」

 

彼らの言葉に上条は振り返る。フェンスの先、500メートルほど離れた先に長い金髪の女、オリアナ=トムソンが居る、その手には武器となる単語帳。それを口に運ぶと同時にステイルは

 

「上条当麻!!」

 

「分ってる!!」

 

そう言った後フェンスに仕掛けられている単語帳を右手で殴り破壊する。

そのおかげで熱を帯びていたフェンスは熱を失う。その後彼らはフェンスに手足を掛け一気に飛び越える。本来なら一夏の召喚爆撃で吹き飛ばしたいところだがそれを行うと爆音が聞かれ騒ぎになる可能性もあり、さらにはこの事件が終わったのちにフェンスの破損が原因でこの学区に混乱が起きてしまう可能性もあり一夏自身それを望んでいないためフェンスを飛び越える。

 

それと同時に彼女は単語帳のページを口で噛み千切る。そして術式が発動し目に見えない巨大なハンマーがアスファルトを抉りながら彼らに向かってくる

 

上条はとっさに右手を振るい高圧の壁を吹き飛ばすが吹き飛んだのは魔術で発動した高圧のみ、アスファルトの勢いは衰えず津波のように彼らに向かってくるが

 

「GASTTH TFIAS TRIC」

 

ステイルはそう言うとルーンを刻んだカードが宙を舞い、同時に彼に右手から炎の剣が飛び出す。彼はそれをアスファルトの津波に向けて横殴りに振るう。もちろん隣の上条など無視をして

 

そして一夏は向かってくるアスファルトに対し、武器の一つである杯を取り出すと左手に持ちそれを下から上に勢いよくふるう。するとその動きに合わせるように水が勢いよく現れアスファルトを防御する。

 

ステイルの攻撃を避けた上条はどうにか体制を立て直し、ステイルは新たな炎剣を構え、一夏は杯をしまい今度は右腕で短剣を構える

彼らは激突する。現在の時刻は午後5時50分、タイムリミットはあと10分から70分と言う時間に追われながらの戦いが幕を開ける




ISのリヴァイブは本来「疾風」ですが禁書のラファエルが大地の属性なのでそれに合わせました
色的にも学園の量産機の色だと禁書の概念のラファエル=緑なので有ってるかなと

シャルロットの専用機の場合、彼女の髪が金髪なので機体の色も黄色にカスタムしたと言う事になってます

ちなみに現実や四大の歪みが治ればラファエル=風だったりします

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