IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

87 / 126
第81話

一夏と上条の二人は学園都市を歩いていた。本来ならばこの学園で取引されるであろう霊装、使徒十字を探し出さなければならないのだが、彼らにはその発動条件などの情報が無いため土御門とステイルは現在はそれらを調べている。そしてなぜ一夏がそれに加わらないかと言うと、彼は戦闘はともかくこういう調べものに関してはまだまだ未熟であると言うからだ。最低限の知識はあったとしてもそれ以上の事は分からないため調べものと言う分野になると若干足手まといになってしまうためだ。

 

そう言う事で彼は上条と共にいったん休憩を取る事にしたのだが上条はとある少女を探している

 

「インデックスー?どこに行ったんだー?」

 

学園都市では外国人も決して珍しくは無いが彼女のような銀髪シスターは彼女以外あり得ないため簡単に見つかると思っていたが生憎この人ごみのためそう簡単に見つからない

すると一夏は

 

「携帯に電話してみたらどう?」

 

「それがさ、持たせた携帯電池切れで使えねーんだよ」

 

彼らがそんなやり取りをしていると

 

「とうまー…」

 

と少女の声が聞こえてくるが上条は気づいていない、なぜならばその少女は修道服ではなくチアガールのような格好をしているためだ。その後も彼女は再び彼を呼ぶが相変わらず気づかない。

流石に一夏も見てて彼女が気の毒に思えてきたため上条に対し

 

「上条君、呼ばれてるよ」

 

「えっ…うわぁ!!」

 

彼は一夏に呼ばれ反応すると彼のすぐそばにまで少女、インデックスは接近してきていたため彼は大きくのけぞる

その後彼らはしばらく会話をするが一夏はそこには加わらず様子を見ながら

 

「(目の前にこういう事件の専門家が居るのに手を借りれないって言うのはやっぱり痛いな…まっ仕方が無いか。ここであの子が関わるとかなりややこしくなるし…)」

 

彼女の頭には10万3千冊の魔導書が記憶されており彼女の手を借りることが出来るのならばこの事件も早々に解決できるのだがそれは様々な事情によりできない。彼もそれを認識しているからこそこの状況にはもどかしさを感じる。

その後彼らは近くの喫茶店に移動する、そしてその店内の混雑具合にしばらく唖然としていたが

 

「おう当麻、こっちだこっちー」

 

「あらあら、お店でそんな大声を出してはいけませんよ」

 

そう言いながら彼を呼ぶのは彼の父親の上条刀夜と母親の詩菜だ

そしてその近くの席には

 

「ようやく合流出来たわね」

 

そう居ながら手を挙げ一夏を呼んでいるのは楯無だ。どうやら彼女は一夏の席も用意していてくれたため一夏もすぐに席に着くことが出来た。

すると彼女は詩菜に対し

 

「すいません、私たちまでご一緒させてもらって」

 

「いえいえ、食事は大勢の方が楽しいですから」

 

そんなやり取りをしている。一方上条はと言うと美琴と何やら騒いでいた。

すると刀夜は

 

「そうだ、当麻その子は一体誰なんだ海の時も一緒に泊まりに来てたが…そこにいる男の子の知り合いって訳じゃないだろ」

 

そう言い放つ、実を言うと一夏もあの時刀夜と出会っているのだが、”御使堕し”の影響で一夏は当時神裂の姿をしていたためこうして会うのは初めてである。

 

そしてその言葉に上条は吹き出しそうになりさらには美琴もそこに加わり、横の大学生の女性は呆れている。するとインデックスが

 

「そう言う短髪はどこに住んでる誰なの?とうまのガールフレンドかなんか?」

 

そう告げるのは西洋生まれのインデックス。西洋などではガールフレンドと言うのは言葉の通り女の子の友達と言う意味であり何も可笑しくは無いのだが、どういう訳か日本でその言葉を使うと”恋人”と言う解釈をされてしまう。もちろんインデックスはそんな事など知らないため”君は彼の友達なの?”と言う意味で聞いたのだが、美琴は”恋人”の意味で解釈してしまったため

 

「えっ!?私はそんなんじゃぁ…」

 

「とうまの学校の応援にも来てたよね?確か{ぼうたおしー}の時」

 

「ちがっ、ちょっ…黙りなさいアンタ!!」

 

美琴はそう言いながら暴れだし、その様子を見ていた一夏と楯無は

 

「日本語って難しいですよね…」

 

「そうね、でも彼女たちもそう言う反応しそうだけど?」

 

「言えてます」

 

そんなやり取りをする。そうしていると彼もどうにか話題をずらす。

どうやら彼女たちは上条達が来るまで食べるのを待っていたらしくお礼をするように刀夜が言う

すると大学生ぐらいの女性は

 

「まぁまぁようやく待ち人が全員そろったんだしそろそろ食べましょうか。お名前は上条当麻君と横の帽子と眼鏡の君は…」

 

彼女がそう言ったため一夏は

 

「谷本海斗です。すいません待たせてしまって」

 

偽名で自己紹介をする。そして上条も一夏の自己紹介が終わった後で

 

「えっと…そう言うあなたは御坂のお姉さんですか?」

 

「ううん。私は御坂美鈴。美琴の母親です。よろしくね」

 

その言葉と同時に空気が固まった。

そしてしばらくすると

 

「「「HAHAぁ!?」」」

 

そう言い全員が絶叫する。その中でも刀夜の慌て方は尋常でない

 

「だ、だって先ほどは大学がどうとか言ってたじゃないですか!?」

 

「えぇ、近頃になってもう一度学び直しているんですよ。この年になってから分からないものに遭遇できるって言うのも結構刺激的なのよねー」

 

そう言い上条と刀夜の親子二人はその様子にかなり驚く。すると楯無は

 

「御坂さんは大学ではどういった事を学ばれているんですか?」

 

「色々と学んでいるわよー。最近だとそうね…”ISが社会に与える悪影響”なんて論文も書いてみたわ。教授に思いっきり怒られたけど」

 

「それは…なかなかにハードですね」

 

楯無はそう言いながらも外部の女性にもこのような考え方を持つ女性がまだいた事に対し内心賞賛をする。外部ではISは絶対正義と言う風潮でこのような正しい考え方を持てる女性はまず居ないと思っていたからだ

そして美鈴は

 

「ISってスポーツとしてならいいと思うけど軍事利用となるといろいろまずいわよね。候補生の年齢も若くなっていくし、最近だと学生を候補生にする国も多いじゃない。やっぱりそう言うのはマズイと思うのよ、子供の内から殺傷兵器を持たせれば間違いなく感覚がマヒするんだし候補生の年齢を上げ、教育を徹底するべきって考えてそれを論文にしたのよ。」

 

「御坂さん。IS学園の教員とかどうですか?結構向いていると思いますよ。あの学園教師不適任者結構多いですし意外と使用されるかもしれませんよ」

 

「そう?この年齢だし厳しいんじゃないかしら…ところで随分と納得しているけれどあなたIS学園の関係者?」

 

「私は違いますが従妹が通っているんです。私はただの人間ですよ」

 

「(いやいや…楯無さん貴方IS学園の元生徒会長でしょうが…ちゃっかりしてるなぁ)」

 

一夏は彼女たちのやり取りを見てそう考える。とはいえ一夏としてもこの光景は若干だが羨ましいと感じる。何せ彼には両親が居ない、もし自分にも両親が居たら彼らのような家庭だったのだろうかと考えてしまう。とはいえ一夏も最近になり千冬は両親の居場所を知っているのではないかと言う疑問も感じ始めている。捨てられたときは千冬はある程度成長しており居場所を知らない方がおかしいのだ。

とそんな考えを持っているがすぐに切り替える、せっかくの食事位楽しく過ごしたいからだ

 

すると会話を終えた楯無は一夏のそんな表情に気づいたのか

 

「大丈夫…なんか元気ないみたいだけど…」

 

「大丈夫ですよ、ちょっと過去に思いを馳せていただけです」

 

そう反応する。するとその様子を見ていた詩菜は楯無に対し

 

「そう言えばまだあなたの名前聞いてなかったわね、名前はなんていうのかしら?」

 

「真月マミです。悪役っぽい名前だってよく言われますね」

 

「あらあら、かわいらしくていい名前だと思うわ」

 

彼女も偽名の自己紹介をする。彼女の場合変装しなくても大丈夫なのは、彼女は一夏が死亡したと言うニュースに隠れそれ程重要視されず顔写真なども放送されなかったのが大きいだろう。それ以前に彼女の顔写真は暗部と言う事もありあまり出回っていない。

 

こうして一夏と上条は戦いの中の休息を得る

それは戦いの中で傷ついた彼らにしてみれば十分な休息である

 

戦いの幕開けはもうすぐだ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。