IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第80話

上条がオリアナに拳を入れ、彼女は持っていた看板を手放しその結果看板は上条の横へと落ちる

 

「これは…やった…のか?」

 

「まぁそう言う事になるね」

 

上条と一夏がそんな風に話していると

 

「ふふ、乱暴なんだから。ボタン取れちゃった」

 

仰向けで倒れていたはずのオリアナは昼寝から起きるような身軽な動きで上半身を起こす。

今までは看板を持っていた右腕で作業服の胸のあたりを押さえている

 

「(効いて…ない!?)」

 

上条は驚き、一夏は言葉には出さなくとも相手はプロ、受け身を取っていたとしてもおかしくは無いと思う。そんな彼らをオリアナは大して気にせずに

 

「うーん。お姉さんは格闘レディと言う訳ではないわよ、あなたの移動は軌道がずれてい真っ直ぐな移動ではないし、体にはダメージが蓄積していた。バランスも完璧ではないからインパクトも完璧ではなかった…かな。有り体に言うならば、素人の拳にしてみれば上出来でしたと言った所かな」

 

彼女はそう断言する。彼女はおそらく自分の欠点も認識しており、先のような危機も何度も経験してきているのであろう。ここで土御門のような体術を上条が使えていたならばオリアナは完璧に倒れていたであろう

彼女はその後新たなページを咥えると、風が彼女を吹き上げる。

すると彼女は

 

「それは一度そちらへ預けておくわ。ただし、ここでゲームが終わったなんて思わないように。燃えてくるのはこれからよん」

 

「何で…?”刺突杭剣”はこっちに有るんだぞ、テメェが追い詰められた訳でもねえのにどうしてそんな簡単に食い下がるんだ?」

 

彼女はそう告げるが上条はその言葉に疑問を覚える。”刺突杭剣”は彼女たちにとってみれば大事な物のはずなのにそれを簡単に手放すのだから無理もない。しかし彼女は気に留めずに

 

「さて、何故かしらね?それを考えるのも楽しみの一つじゃないかしら」

 

彼女はそう言うと屋上の縁から中央へと移動する、上条はオリアナに対し土御門にかけた術式について聞くと、術式の効果は20分後に消えると言う答えが返ってきた

 

土御門は倒れたまま動かなく、一夏も足を負傷しているため動けない。そして傍には”刺突杭剣”もある。上条にはこれを持ちながら走るような事は出来ないため彼女の追撃を諦め、いったんこの場には居ないステイルと連絡を取ろうとする

しかし上条は彼のアドレスを知らない、そのため彼は申し訳ないと思いながらも土御門の携帯を借り連絡を取る

その間一夏は怪我の回復のための魔術を使う。地属性の象徴の大天使は”神の薬”(ラファエル)その名の通り回復には優れている天使だ。

 

「(土御門の方も回復させなきゃな…とはいえ手持ちの道具じゃ完全回復は無理か。こっちも足の傷を塞がなきゃマズイし…)」

 

彼はそんな事を考えていると上条は一夏に対し

 

「なぁ、織斑。霊装って言うのは、別の物に姿を変える事は出来るのか?」

 

一夏にはその質問の意味が分からなかったため上条に対し

 

「何を言いたいのか分からないけど…全く別の物に姿を変えるのは不可能だぞ。形を変えたり色を変えるくらいは出来るけど…」

 

すると上条は”ある物”を抱え一夏の方に向く、そこに有ったのは”刺突杭剣”ではなく…

 

「なっ…!?」

 

「これって…どういうことだ?」

 

そこに有ったのはどこにでも有りそうな看板であった。

と言う事はオリアナは初めからこの看板を持ちながら学園都市を歩いていたと言う事になる。そうなってしまうとこの話の前提から崩壊する。

本物の”刺突杭剣”は何処に有るのか?彼女は何のために彼らの前に現れ逃走したのか

様々な疑問に答える者は居ない、一夏も考え直し、土御門は昏倒している

 

「一体どうなってるんだよ…ッ!?」

 

上条は一人そうつぶやく事しか出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後土御門が昏倒から回復し、彼らは現場を離れると近くにあるオープンカフェでステイルと合流する。

そしてその場には上条、土御門、一夏、ステイルの四名が席に座っている。

するとステイルの言葉を聞いた一夏が

 

「”使徒十字”(クローチェ・ディ・ピエトロ)か随分と厄介な物を持ち込みやがったな」

 

そう呟きステイルも土御門もそれに同意するが上条だけがその意味を知らなかったため、ステイルと土御門が彼に説明していく

”使徒十字”、これは簡単に言ってしまえば教皇領バチカンの所有者であるペテロの遺体を埋め十字架を立てたのが由来だ、実はもう少し複雑な物なのだが、ここではこう説明する。そしてローマ正教の信者たちはペテロの眠りを妨げないように遺産の管理共々頑張ります、と言うのが彼らの意見である。

元々はペテロの墓の上に聖堂を立てたのが始まりであるが、ルネサンス時代にインフレが起き大改装、それが現在の聖ピエトロ大聖堂、ローマ正教の本拠地である。

 

そして今までの話を聞いていた上条は

 

「うーん、それってあれか。偉い人を奉る建物とかそんな感じなのか?」

 

「どうかにゃー。裏を返せば、聖人の死体を利用して新しく建てる教会の権威を補強した。ともいえるんだぜい」

 

その後も上条たちは話を進めていく、その際一夏は通信用霊装を使いティナと連絡を取ろうとするが、時間が時間なのか通信に出ない

一夏が一息つくと上条が

 

「オリアナが運んでたのは刺突杭剣じゃなくてクローディなんとかって奴なんだろ。やっぱりそれって危険な物なのか。それとも高価な美術品だったりするのか?」

 

彼の言葉に一夏は

 

「両方含まれてるけど、ここで気にするのは前者だね。連中は”刺突杭剣”の取引以上のよからぬ事を企んでるんだろうね、さっきステイルが言ってたと思うけどローマ教皇領広大な土地と言うより、墓に十字架を立てた場所だって。だったらその逆も出来る」

 

「逆?」

 

「その使徒十字を立てた場所は必ずローマ教皇領にすることが出来るんだ。この学園都市も例外じゃないと思うよ」

 

彼の言葉に土御門は苦笑いしつつ補足していく

 

「元々、刺突杭剣には龍をも貫き地面に縫いとめる剣って、伝説が有ったわけだが、翼をもち財宝の守護から虐殺までを行う龍とは、神に仕える天使を堕とした悪魔の隠語って訳だにゃー。竜を地面につなぐって言うのはこの大地を天使に守護してもらえるような土地にしてもらえるって訳だぜい。」

 

彼はそう言うが上条は信じられない。

すると彼は

 

「バチカンって国は、その内部が巨大な教会になってるようなもんなんだよ。あの内部では何をやってもローマ正教にとって都合がよくなるように幸運や不幸のバランスがねじ曲がってるんだ」

 

彼の説明だけでは上条は上手く理解できないため一夏が補足していく

 

「分かりやすく言うとバチカンって言う国の内部に指向性のある魔力が充満しているんだ。するとあら不思議、そこでは常にローマ正教にとって都合よく話が進むんだよ。そのおかげであの国じゃ女尊男卑何て殆どないんだとか、まっその位は出来て当然かもしれないけどね」

 

そう言われても上条は上手く理解できていないが、彼は”誰かの都合のいいように進む魔術”と言うのを知っている

 

「それって、あれか?あの錬金術師みたいに自分の思った事が具現化されるとかって言う感じなのか?」

 

すると一夏は

 

「あのそこまで自由度は高くないよ、あくまでも”ローマ正教”にとって都合の良いように話を進めるだけそれを…悪い。ステイル続きを頼む」

 

「ん…まぁいいそれでだ…」

 

一夏がステイルに話を譲ったのは丁度話そうとしたタイミングで霊装を通しティナから連絡が来たからだ

 

<あぁ一夏、ごめんなさいね。連絡が来たとき、生徒会長決定戦に備えて作戦会議してたの。どう?お祭り楽しんでる?>

 

<そう言う事だったのか…祭りを楽しむ余裕はなくなったよ>

 

そして一夏は先ほどまでの事を報告していく。刺突杭剣の事やその取引は嘘で本命は使徒十字である事もだ。すると彼女は

 

<使徒十字ですって!?…連中そんなものまで投入するなんて、余程学園都市が気に入らないのね。それとも法の書の事を怒ってるのかしら?>

 

<さぁね。それで聞きたいのはその発動条件なんだけど…>

 

<ごめんなさい…私も詳しくは知らないの。でも話を聞く限りだと連中は何かを待ってる感じよね。少なくとも直ぐに発動できるような霊装じゃないのは確かね。大規模な霊装となると条件にするなら”時刻”それか”太陽”や”星”の位置、霊装を配置する”方角”…このあたりね。分ってるとは思うけどこの取引…>

 

<もちろん止めさせてもらうよ。そうしないと世界は崩壊よりも恐ろしい現実になるからね。>

 

それだけではない。もしこの取引が成功などしてしまえば、次はIS学園を狙ってくるであろう。

IS学園を最初にに狙わなかったのは、学園都市よりも警備がぬるく混乱している学園などすぐに落とせると思われているのであろう。

そして一夏はティナと通信を切ると土御門が

 

「話は終わったかにゃー?」

 

「あぁ、この取引は確実に止めてみせるよ」

 

たった四人で何が出来るかなんて分からない。しかし彼らの目的は変わらない

使徒十字の取引をやめさせる。その目的のために彼らは行動を始める

 

 

 

 

 

一方、楯無はと言うと

 

「はぁ一夏君どこに行ったのかしら…」

 

時刻は午後一時、丁度昼休みの時間帯と言う事で彼女は一夏を探し昼食を摂ろうとしていたのだが、肝心の一夏本人が見当たらない。

そして昼食を食べる場所も見当たらない。と言うより場所取りをするのをすっかり忘れていたのだ。

これだけの大人数が一斉に昼食を食べるのだから場所も早々に確保しないといけない。

 

「(場所取りなんてすっかり忘れてたわ。…どうしましょ)」

 

彼女がそう言いながら周りを見渡すと、付近には親子が沢山いた為彼女の入り込む余地はない

そうしながら付近を歩いていると

 

近くに立っていた女性とぶつかってしまう

 

「あらあら、大丈夫ですか?」

 

「私なら大丈夫です、それよりあなたの方こそ大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫よ…それよりも貴方一人?」

 

「私ですか…友達と来てるんですがはぐれちゃって」

 

彼女はそう女性と話していると、目の前にいたオールバックの男性が彼女たちの方を向くと

 

「母さんもそう言う事で良いかな…あれ、その子は…?」

 

「お友達と一緒に来ているんですけどはぐれてしまったそうです…それにしても刀夜さんったらいつもこんなのばっかり。私にどうして欲しいんですか…?」

 

そう言いながら女性は刀夜と言った男性に向けてい言い放つが口調はどこか冷たいが、彼女は

 

「(ここで暴力が出ない辺り、やっぱり大人よね。そう考えると一夏君よく今まで耐えたわね…)」

 

楯無はIS学園にいた一部の専用機持ちを思い出しため息を吐く。目の前にいる女性は恐らく刀夜と呼ばれた男性の妻であろう。流石に自分の夫が見ず知らずの女性相手に半ば口説きにかかれば怒ってもいい。しかし一部の専用機持ちの生徒に関しては別の生徒と話すだけで重火器を持ち出す、楯無も彼女たちの将来が本気で心配になった

 

そう思ってるとその男性は妻の表情に驚き、後ろに下がるが今度は別の女性とぶつかる

彼らは話しているが楯無にはその女性は見覚えが有った。以前怪しいと思いつつも追跡を諦めた金髪の女だ

 

「(さっきの格好とは大違いね…着替えた…にしては随分と派手な格好ね…それにあの見せつけるような胸…イラッと来るわ…)」

 

そう言う楯無の胸も結構あり、今の彼女の言葉をもし彼女の妹や、二組の専用機持ちの生徒、さらには一夏の同僚の結界使いが聞いたならこういったであろう

 

「「「お前が言うな!!」」」

 

と。

 

そして彼女の胸に見とれていた刀夜は女性に

 

「あらあら、あらあらあら。これはどうやったら刀夜さんは目を覚ますのかしら?関節技じゃ物足りないかしら。刀夜さん、懺悔の用意は出来ていますか?」

 

彼女はそう言い放つか彼は全力で謝罪する

その光景を見ていた常盤台の生徒、御坂美琴は、ツンツン頭の少年を思い出しつつ

 

「やっぱ親子なのね…」

 

そして楯無は

 

「一夏君は大丈夫よね…いやでも…危ないわね…」

 

一夏の将来を考えつつもそんな事を思っていた

 

 

学園都市の祭りはさらに盛り上がりを見せていく

 

 

 

 

 

 

 

 




途中途中でセリフパロを入れてみましたが…つまらなかったらすいません



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