IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第78話

一夏がオリアナを追って戦闘をしているのとほぼ同時刻、上条と土御門もまたオリアナを追っていた

上条に関しては表情に怒りすら感じられる。理由は先ほどの競技の際、上条のクラスメイトであり実行委員の吹寄制理がたまたまオリアナの仕掛けた罠を触ってしまいダメージを受けたのだ。上条が居なければ彼女は最悪死亡していただろう。無関係な周りを巻き込んだやり方に彼は憤っていたのだ。

 

そして土御門も現在携帯電話を使い別の場所で待機させているステイルに連絡を取る

 

<上やんがオリアナの速記原典を破壊した、体調に何か変化はあるかにゃー?>

 

<言われた所で実感はないが…>

 

そう言いながらも彼はルーンカードを取り出し炎をともすがこれと言って異変は無い。

 

<いける…問題はなさそうだね>

 

<そうか、なら理派四陣の捜索術式を頼むぜい、配置は事前に俺が用意していたが使い方は分かるな?>

 

その言葉にステイルは軽く返すと魔法陣を起動させる、彼には陰陽を用いた配置方法そのものは理解できないが、間借りした術式ならば作動させられるのだ

その後も彼らは軽いやり取りをした後、術式が起動する。オリアナを探すための術式が

 

 

そして上条と土御門は人を突き飛ばすような形で歩道を走る、途中人々が迷惑そうに視線を向けていたがそのような事を気にしている余裕はない

土御門の携帯はスピーカーモードがオンになっているため、二人は同時にステイルの音声を聞きながら走っている

 

<オリアナ=トムソンの位置を確認した。第7学区、地下鉄の二日駅付近だ。時間が有れば詳しい位置を特定できる>

 

「二日駅!?もう通り過ぎちまったぞ!」

 

そう言うと上条はあわてて靴底を滑らせるようにブレーキを掛け、今まで走っていた方向へと引き返す。途中の道を横に曲がり細い道へと飛び込む

今までは土御門が主導権を握っていたがここにきて上条が主導権を握る。

 

<三本の道は…今出た、彼女に付着してる天使の力…成程、一足早く追撃戦を始めていた人物がいたようだね>

 

「一番右の道だ、見つけた!!」

 

上条がそう言うと20メートル位前方を歩いていた金髪の女が振り返り彼らを確認すると慌てて脇道へと逃げていく、彼らも勿論追うがその前に別の人物と再会する。それは

 

「ようやく追いついた…!!オリアナが逃げたのはこっち?」

 

そう言いながら走ってきたのは一夏であった、息がかなり上がっていることから全速力で走ってきたと言う事だろう。

彼らは一夏の言葉にうなずくと、すぐにオリアナの後を追う。先頭は上条、次に土御門、最後に一夏と言う形だ、さすがの一夏もこれ以上体力を使うのはマズイと判断したのか走る速度を落とし、上条たちを見失わないような速さにする

脇道を抜け直ぐに別の通りに抜ける。この通りは横一直線に、左右に伸びている

オリアナは左の道を走っていた。彼らは彼女を追いかける中で後ろからやってきた自律バスが彼らを追い抜いていく、そしてその行先を見た上条はそこで驚く、なぜならオリアナの行き先にバス停があるのだ。

 

「マズイ…!!」

 

彼女はバスを停車させるためにバス停にあるボタンのような物を押していた

そしてバスは停車すると彼女を乗せ再び走り出す。走るバスを追いかけるのはさすがに不可能だ。別のバスに彼らが乗ったところで”追跡”は不可能、さらに大覇星祭期間中は一般車両の通過も制限されているのでその方法も使えない

しかも自律バスは無人であるため、彼らが手を振ったところで止まってなどくれない

 

「くそっ!!」

 

「(マズイなこの距離だと召喚爆撃の射程外だ、ほかの魔術を使おうにもバスを周りを巻き込まずにピンポイントで攻撃するのは不可能だな…と言うより俺の魔術は動くものに対して精密攻撃なんて細かい芸は出来ないし…)」

 

彼らはそう言い悔しがっていると、土御門が不意に上条に対し

 

「なあカミやん。こっからじゃよく見えないんだけど、あのバスの中に他の乗客っていたかにゃー?」

 

「あん?そんなのどうだっていいだろ!」

 

上条はそう言い放つが、土御門は真剣な表情になり

 

「良いから、割と重要な事だし」

 

「いなかった気がする」

 

「気がする?」

 

「いなかったよ、言われてみればほかの乗客はいなかった。多分昼間にこの近くでやるリレーの予選をやるためにみんな降りたんだ!!」

 

彼がそう言い名はつと土御門は安心したように、上条にではなく、電話越しでステイルに対し

 

「自律バスの整備場でバスの側面にルーンカードを張り付けてたな。それがまだ生きてるならオーダーを頼む。車体番号5154457に張り付けたルーンカードを吹っ飛ばせ」

 

彼がそう言い終わった直後、バスの車体面から勢いよく火が噴いた、その数秒後に車体が爆発し横転するとそのまま地面を跳ね回り、アーケードにぶつかる

それを見ていた土御門は

 

「効果は絶大…すぎたかにゃー?」

 

「成る程、この手が有ったか!!(あれ、でもステイルってカード単体であれだけの火力出せたっけ?)」

 

土御門は困ったように苦笑いしつつ、一夏はこの方法を見て納得していた

確かに動いている物に対して正確に攻撃を当てるなど、それこそプロのスナイパーでなければ出来な様な芸当だが、あらかじめバスに爆発物を仕掛けると言う方法ならばボタン一つでバスだけを正確に仕留めることが出来る。ルーンカードを配置することで力を発揮するステイルだからこそできたのだ。

そして上条はさすがにこの光景に絶句する。これはバスを”止める”と言う範囲に当てはまるのか

そして一夏はステイルの放った光景にどこか疑問を覚える、確かに彼の魔術は強力だ、それは法の書の際にも目にした事だが、それでもあの時は天草式の力を借り、大量にルーンカードを配置したことでなせた出来事だ。単体であれだけの火力を出せるなど聞いた事が無い、と言うかそれだけの事が出来るなら、教会での戦いの際にももっと早くに決着がついていたはずだ。

 

すると上条と一夏の表情を見て何を言いたいのか理解した土御門は

 

「いやいや、アレですよ。本来はちょっと火を点けてバスの安全装置を発動させて車体を止めようと思っていたんだぜい、電気カーと思って油断したにゃー、ありゃ電気のほかにも天然ガスやらいろいろ使ってるハイブリットカーだな。それにステイルが単体であれだけの火力を出せるならもうちょっと楽に事が進んでるぜい」

 

特に緊張もなく、そう告げる。幸い店の店員も全員外出中、衛星などの目線もうまく塞いでくれているでろうからこの騒ぎが気づかれる事もない、と彼は告げていくが、上条は

 

「何でそんなに冷静なんだよ!つか消火器はどこだ!?早く助けないとアイツ死ぬぞ!!」

 

「いや、さすがにこの程度じゃ死なないだろ」

 

「右に同じく」

 

上条はあわててそう言うが一夏と土御門は大して慌てていない。彼らの言葉とほぼ同時に、燃える火柱が渦を巻き、竜巻に吹き飛ばされるように跡形もなく消える。

その正体は水分を纏った風である”霧”だ。さらによく見るとバスの残骸には薄い水の膜がコーティングされている

そしてその中心点にいるのは一人の女。全身を水で濡らしたオリアナ=トムソンだ

彼女は右腕で看板のようなものを掴み、左手には単語帳。口にはその一ページを加えている

 

「うふふ、魔力を通した炎ならともかく、普通の炎ならおねーさんは焼けないわよ。もっとも少々焦って全身濡らしちゃったけど…見る?」

 

このような状況でも彼女の口から出るのは冗談

その事実に上条はほんのわずかに目を細めながら

 

「お前の仕掛けた術式で生徒が一人倒れたんだぞ、覚えてるか俺と一緒にいた女、お前にはアレが魔術と関係のある人間に見えたのかよ」

 

「この世に関係のない人間なんていないわ。その気になれば人は誰だって関係になれるのよ」

 

「(束さんとは正反対の思考だな…これはこれで厄介な相手だ。)」

 

上条とオリアナの会話を聞きながら一夏は考える。

束とオリアナ、この二人は全く正反対の思考の持ち主だ。束は自分とその周りの人間以外は関係ない、人を人ともみなさないような考えの持ち主だから平気で傷つけるしその事に罪悪感を感じるつもりもない。対してオリアナは大雑把にいえば世界中の人間はみんなかかわり合っている、たとえ道でぶつかろうが、視界に入ろうがそれでその二人は関わりを持つ、だから敵と共にいた無関係な人間で有ろうとも関係になっているのだから躊躇いつつも攻撃する、と言う考えの持ち主だ。

 

そしてオリアナは最後に

 

「今更どうこう言うつもりはないけど、あの子を傷つけるつもりが無かったのは本当だよ?お姉さんだって一般人を傷つけるのはためらうもの。」

 

そう言いながら彼女は単語帳の一ページを切り抜く。

こうして一夏にとっては第2ラウンド、上条にとっては第1ラウンドの戦いが幕を開ける

 

 

 

 


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