IS~科学と魔術と・・・   作:ラッファ

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第76話

この学園に侵入した魔術師を撃退する。その話を受けた後上条は競技に参加するためいったん持ち場を離れる。

ちなみに一夏はと言うと本当ならば観客席から上条の参加する競技を見るか、ステイル達と行動すると言う選択肢が有ったが一夏は両方とも選ばず一人で侵入した魔術師の一人、オリアナ=トムソンの捜索をする事にした。その理由としては現在この学園都市と言うのは様々な問題を抱えておりこうしてステイルや一夏が学園都市に侵入しているだけでもかなり危ない状況なのだ、ましてや一夏は変装しているとはいえステイル達と共に行動している所をほかの魔術師に見つかるとまずいと言う判断である

 

「(取引される物品は”刺突杭剣”…随分と物騒な物を持ち込んだものだ)」

 

魔術師達が学園都市で取引をしようとしている物品、”刺突杭剣”これは一夏やステイルのような普通の魔術師には一切の効力は無いものの特定の人物にとっては天敵の品だ。その人物とは神裂のような”聖人”、その人物に対して剣先を向けようものならば必ず殺してしまうと言う物品だ。

そもそも聖人と言うのは魔術サイドにおいては核兵器と同等の価値を持つ人間なのだ、そのような人間を殺せる武装を持っていると言うだけでも十分な脅威になってしまう。そしてその取引をやめさせるのが彼らの役目なのだ

 

「(運んでる魔術師も有名な運び屋って話だし戦闘は免れない…はぁ敵さんも厄介な時期に取引をやってくれる…)」

 

彼はそう言いながらも学園都市の街を歩いていく、帽子と眼鏡のおかげなのか付近の人物からは誰も彼の正体に気づいていないのだ。

そうして彼は注意深く街中を歩いていると、突然何かとぶつかる

 

「うわっ…ごめんなさい大丈夫です…か?」

 

彼はぶつかった人物に手を差し伸ばそうとしたところでその手が止まる、ぶつかった相手はピンク色の髪が特徴で身長がかなり低い少女だったからだ、格好はチアガールのような衣装である

一夏の思い違いでなければ棒倒しの時にいた少女である。もしかしたら上条の知り合いなのではないかと彼は思う

 

「あっ…はい、大丈夫なのですよ。私の方こそすいません」

 

彼女はそう言いながら自力で立ち上がるが一夏は反応に困る、幼い少女がチアガールの格好をして街中を歩いている、その状況に一夏は別の意味で思考が固まってしまう。

 

「(もしかして…迷子?いやそれにしちゃ随分と落ち着いてるし…上条君の高校の競技の時にいたからやっぱり知り合いかな)」

 

「あのー、大丈夫なのですか?」

 

そう言いながら少女は一夏の顔色をうかがう、もしかしたら具合が悪いと思われているのかもしれない。なので一夏は少女に

 

「えぇ、あと、つかぬ事を聞きますがもしかして棒倒しの時選手用の入場口にいました?」

 

「はい、居ましたよ。もしかして上条ちゃんがガッツポーズをした方向の観客席にいた人ですか」

 

「あぁ、はい上条君とは知り合いでその応援をしていたんです。すごかったですよねあの試合、俺感激しちゃいました」

 

「そうですか、でも先生としましては生徒たちにはあんな危険な事はしてほしくないのです」

 

「はい…先生?マネージャとかじゃなく先生…?」

 

「はいそうですよ、私は上条ちゃんのクラスの担任の先生なのです」

 

時間が止まった。

別に魔術を使ったと言う訳ではない、彼女の言った先生と言う言葉に一夏は一瞬聞き間違えたかと思ったがどうニュアンスを変えてみても”先生”以外に意味は思いつかない。そして彼は心の中で

 

「(この姿で教師…まてよ、魔術にだって不老不死の薬の伝説だってあるんだ、学園都市でも科学的な立場からそんな薬を作れたとしても何もおかしくは無い…さすが学園都市、俺たちの思考を常に上回っているか)そうですか、上条君のクラスの担任の先生でしたか。上条君は良いですね、貴方のような思いやりのある先生に出会えて…」

 

日本の神話や西洋の神話においても不老不死や若返りの薬が出てくる物語が存在し、ここは学園都市、魔術の事を知らなくともありとあらゆる科学知識を使えば彼女のような姿にすることも可能であると彼は判断し、納得する。そして彼は彼女の言った”生徒たちには危険な事はしてほしくない”と言う言葉からすごく生徒思いの先生であると言う事も理解してしまう。理解したからこそ彼の口調はどこか暗くなってしまったのかもしれない。常に千冬の弟としてしか見られなかった小学、中学時代。高校では姉が担任となり、常に危険で理不尽な目に合わされてきたこの数か月。彼にしてみれば担任と言う言葉にはろくな思い出が無かった。もちろん一夏としてもこの言葉には別に嫌味を言ったつもりではない、ただ単に嫉妬してしまっただけなのだ。

そして彼女は彼の言葉に嫌な顔一つせず彼に疑問をぶつける

 

「あの、学校で何かつらいことが有ったのですか?よかったら相談に乗りますよ」

 

「いえ、学校はすごく楽しかったですよ、確かに色々な事が有りましたけど…でも学校生活の中で担任の先生には恵まれなかったんです。貴方のような先生に出会いたかったなって思っただけなので」

 

「私のような先生って…私はそんな大した先生じゃないのですよ。」

 

彼女は苦笑いしつつそんな事を告げる。一夏としてももう少しこの先生と話したいが、あいにく今はそんな時間はない。なので一夏はすぐに

 

「っと…こんな愚痴聞いてくれてありがとうございました。それでは僕はこの辺で失礼します」

 

彼はそう言い彼女に一礼するとその場を歩き去り再びオリアナの捜索を開始する

この時すでに気持ちを切り替えているあたりは流石であろう。

 

「(さて速く見つけて奇襲かけたいけど全くそれらしい人間が居ないって言うのも問題だよな。まぁもし土御門たちが見つけたら連絡は来ると思うけど…)」

 

そう言いながら一夏は携帯電話を取り出す。この携帯電話は先ほど土御門からもらった学園都市では比較的一般的な性能の電話だ。これを貰った理由は簡単。ティナからもらった通信用霊装は無事だったが、携帯電話に関しては学園を脱出する際海に飛び込んだことでお陀仏になってしまったのだ。

ちなみに楯無の電話は防水性能を持った機種なので無事であった

 

一夏がそうしている頃楯無はと言うと

 

「はぁ一夏君どこに行ったのかしら…もしかして置いてけぼり喰らったのかしら…?」

 

そう言いながら学園都市を歩いていると彼女の横を金髪の女性が通りすぎる。外見だけならば普通の女性だがどうしても楯無には違和感を感じてしまう。根拠などは無い、忍びの勘と言う奴だ。そして彼女はどちらかと言うと感を信じる人間なのだが女性を追いかけることには戸惑ってしまうそれは

 

「(明らかに怪しいと思うんだけどここで後を着いて行くのは危険ね、ISは使えない。相手は学園都市の人間だとしたら想像もつかないような兵器を持っている可能性が高い。やっぱあの看板サイズのアレが武器と思って間違いないわね。それに私は部外者…悔しいけどここは見逃すしかないわね)」

 

彼女は苦い表情をしつつその女性を見逃すと同時にこの学園都市で何かが起こっていると言う事を感じ取る

 

その女性が一夏達の追っている人物と言う事を彼女は知らない。そして見逃したことで危機を回避したと言う事も彼女は知る由もなかった

 

 


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