第74話
一夏と楯無は棒倒しが行われる会場の一般来場者用応援席に来ていた。
会場はとても広くIS学園のアリーナほどの大きさが有るのではないかと思えてしまうほどだ
ちなみにこの場所、熱中症対策なのか日差しを遮る巨大なテントも張られてる。
そうして二人で座っていると楯無が
「人が少ないわね、人気ないのかしら?」
「と言うよりあまり注目されてないような気もしますね」
一夏の言うとおりこの会場に関しては人入りは決してよくなく、空席が目立っている
その理由は簡単、この対戦カードに関してはスポーツ重視の高校対一般的な高校と言う一方的な展開になると予想されているのか観覧者はすくない、やはり客入りが多いのは常盤台中学のように屈指の名門校の生徒が出場するような学校だ
彼がこの競技を見に来た理由は簡単で友人の上条がどの高校にいるのかは分からないが、彼はレベル0と言う事から比較的一般的な高校の競技を見に行けば会えると考えていたからだ
そうしていると選手入場のアナウンスがされ、それぞれの高校の生徒が入場してくる、片方は入念に準備運動をしているが、その動き一つ一つに専門的な匂いが感じられる、そしてそれを見た楯無は
「あらら、こりゃ対戦相手の高校は厳しそうねぇ…私から見てもあの子たちなかなかやるわよ」
「いや…そうでもなさそうですよ」
一夏は冷や汗をかきながら彼女に告げる、そして彼女が不審に思い正面を向くと
そこには本物の猛者達がいた
その一団は妙な気迫を放っているくせに騒ぎやヤジなどは一切起きていない
むしろ無言で一人のツンツン頭の少年、上条当麻を中心として横一列に並んでいる、それは棒倒しと言うより彼から戦争が始まるかのような雰囲気を出していた
すると一夏は
「(上条君や土御門もこの学校だったんだ。…それに他のクラスメイトもすごい気迫だ、これが学園都市の能力者か!!)」
「さすが学園都市、生徒たちの情熱は半端じゃないわ…、これはどうなるか分からないわね…」
彼らは彼らなりの理由で納得していた
実際には彼らの担任先生のエピソードがクラス全体に伝わった結果なのだが、そのような事は彼らは知らない
そうして競技が開始された、その開始と同時に猛者たちは対戦相手へと突撃していく
対戦相手の能力者は様々な能力を使い彼らを迎撃していくがそれでも猛者たちは突撃していく
するとその光景を見ていた彼らは
「すごいな…青髪の生徒とか回転しながら攻撃を回避するとかヤバすぎるだろ…」
一夏が言うとおり上条と並走するように走っている青髪の少年はバレリーナのように回転しながら能力による攻撃をすべて回避していく、さすかにこの光景には一夏や楯無は唖然としていた
「さすが学園都市、生徒の基礎的な身体能力でも次元が違うわ…あっ、吹き飛ばされた」
楯無がそう言うと同時に青髪の生徒は爆発により後ろに吹き飛ばされているがすぐさま彼らと同じ高校の生徒の能力なのだろうか、空中でキャッチされる
「おお、吹き飛ばされた生徒をキャッチするとは。さすが能力者ですね(すごいなこりゃ…はぁ俺も参加してみたいなぁ…無理か、俺魔術師だし)」
彼は心の中でこの祭りに生徒として参加してみたいと言う決してかなわない願望を持ってしまう
そうしている間にも競技は進んで行き、最終的には上条の居る高校が勝利した
とはいえ途中は一夏でも焦る光景が有った、それはどういう訳か上条が味方の陣形など気にせずに単体で敵陣に突撃していき、敵だけではなく何故か味方からの攻撃も受けていると言う事もあっり一夏もさすがに心配になったが彼の右腕の事を思い出し一応安心したと言う事もあったが結果は結果である
そして競技終了後、一夏や観客席にいた人間は全員が拍手を彼らに送っていた。
その拍手を背に彼らは退場していくが、途中上条は一夏に気づいたのかガッツポーズを彼らに向けていた
競技終了後、来客用応援席にいた彼らは
「いやはや開会式直後からこんな試合が見れるなんて来たかいがありましたね」
「そうね。さて次は何にしましょうか…?」
楯無はそう言いながらパンフレットを眺めており、暫くすると、楯無が
「おっ、常盤台中学の生徒が参加する借り物競争が始まるみたいだからそれを見に行きましょうか」
「会場は…ここからは遠いですね…もしかしたら着いたころにはもう始まってるかもしれませんよ?」
「まぁそうなったらそうなったで、出店周りでもしましょ」
そう言いながら彼らは次の会場めがけて歩いてくと、途中常盤台中学の生徒と思わしき少女が全力で走ってくのを見かけたりした事からもう競技が始まっているのだと理解する
そうしながらものんびり歩いていると、同じく常盤台中学の生徒の一人が一夏のもとにやってくると
「えっと…外部の人ですよね?」
「あっ、はいそうですけど」
「私と来てくれますか?」
そう言いながら女子生徒は借り物が書かれた紙を一夏に見せるとそこには
{外部から来た10代の男性}
と記されていた、この競技では多少の制限はつくが、外部の人間も間接的に関われる競技なのだ。
とはいえ一夏もこれには一瞬悩む、この競技は先ほどの棒倒しとは違い外部にも放送されている可能性が有り、そこから死亡したと発表された一夏が学園都市に居ると言う事がばれると大変な事になるからだ、すると彼の足もとにはいつの間にか眼鏡と帽子が置かれていた。なので一夏はそれを付けると
「待たせてごめんなさい、行きましょう」
「眼鏡を落として周りが見えていなかったのならそう言ってくれれば良かったのに…一位は無理ですけど今ならまだ上位は狙えるので大丈夫ですよ」
そう言い彼らは女子生徒に連れて行かれる形でその場を走り去っていく、一夏も足は速い方でありこれは上位に行けるかもしれないと楯無は感じていた。しかし楯無にはそれ以上に気になる事が有った
「(あの眼鏡と帽子…いつの間に一夏君の足もとに置いたのかしら)」
彼女は不振に思い周りを見渡すがそこにいるのは全員が普通の人間であり、”裏”の雰囲気は感じられない
暫く彼女は不振に思い、その場を歩いていくと、途中から背後を付けているような感覚に襲われる
しかも向こうは気づかれること前提で彼女を付けてきているのだから、これはこれで不気味である
なので彼女は人気の少ない所まで歩いていくと
「それで私の後を付けてきているのは誰かしら…?」
彼女がそう言い放つと後ろから現れたのは外見だけなら比較的美少年の部類に入る男子生徒だった
すると彼は、軽く手を叩きながら
「ばれる様にしたとはいえ、外部の人間がまさか僕に気が付くなんて驚きました。忍びの当主、更識楯無さん」
「要件は何かしら、やっぱり厄介事の私の暗殺かしら?さっきの変装道具もあなたのしわさかしら」
彼女はそう言いながら身構えると彼は腕を振りながら
「いえいえ、本当に暗殺するつもりならあなたはすでに死んでいますよ。道具を送ったのは僕ではありません。あなたを引き入れろとの指示を受けたのでその挨拶に来たんですよ」
「引き抜き?学園都市から見たら私なんてそこらの石当然の私を?」
彼女の言うとおり、ISを抜きにしても学園都市から見れば彼女の実力など能力者に大きく劣ると彼女は自覚しているため、学園都市の重役と思われるこの少年が亡命者である自分を引き抜くなどあり得ないと判断しているのだ
すると少年は
「上層部からの指示なので詳しいことは分かりませんがね。それに条件は決して悪くは有りませんよ」
そう言いながら少年は彼女に条件を話していく、その内容は外部の人間を入れるにしては破格の条件であったため、彼女は怪しみながら
「それでもし仮に私がこの条件を受けたとして、今すぐに行かなきゃダメなのかしら?」
「僕たちの事を話さなければ、この祭りの間は自由にしてくれて構いませんよ。どうですか?」
そう言われ彼女はしばらく考えたが自分は亡命者の身であり、これを飲むしかないと言う事も理解したため彼女は
「分ったわ、この更識楯無、貴方たちと契約します」
「それは何よりです、それではようこそ…”…へ”」
そう言い少年は去り、彼女もその場から去っていく
祭りの裏では新たな波乱が幕を開ける
それは彼女たちに限った事ではなかった